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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
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第231星:『カルネマッサ』

国舘 大和(24)

 千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに指揮をとりつつ、根拠地内の環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。実は関東総司令官という立場であるが、それを隠している。


早乙女 咲夜(24?)

 常に大和に付き従う黒長髪の美女。一度は誰しも目を奪われる美貌の持ち主。落ち着いた振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』を導く。その正体は100年前に現れた伝説の原初の『グリッター』本人であり、最強の戦士。


新島 夕(10)

 大和と咲夜をサポートする報告官を務める。『グリッター』としてこ能力には未だ開花していないが、自分にできることを精一杯こなす純真無垢な少女。10歳とは思えない礼儀正さを兼ね備える。



◼️悪厄災◼️

20年を周期に現れる、強大な力を有した『メナス』


『エデン』

 人類に匹敵する知性を備えた『悪厄災マリス・ディザスター』。高い知性を活かした戦略を駆使し『メナス』を操る他、『メナス』の知性を高める能力を有する。


『アイドス・キュエネ』

 20年前に現れた、特殊能力に特化された力を有する『悪厄災マリス・ディザスター』。絡め手を含め裏をかいた狡猾な手段を多く駆使し、人類に脅威を与えてきた。

「対処法はこれから検討するとして、一先ずあの異形の存在は、『カルネマッサ』としよう」



 完全に足踏み状態となっていた大和は、少しでも指揮をスムーズにすべく、モニターに映る肉塊に呼称名を付ける。



「瑞樹くんと沙雪さん、両者の意見から出たのは、まぁ要約すれば始末しろ、ということになるんだけど…どう思う咲耶」



 流石に一人では対処方法が考え付かず、大和は右腕である咲耶にも尋ねる。


 咲耶はモニターをしばらくの間凝視し続け考え込む。



「…『カルネマッサ』を消滅させるだけであれば、いくつか手は考えられます」



 そして咲耶は考えをまとめた上で、大和の問いに答えた。



「というと?」

「一つは朝陽さんの『天照す日輪イノセント・サンシャイン』の最大火力で攻撃する手です。彼女の能力、そして火力を持ってすれば、可能であると思います」



 咲耶の提案した作戦を大和が吟味しようとすると、咲耶は直ぐに続けた。



「ですがこの作戦には、不確定要素も付きます。一つは必ずしも消滅させ切れるとは限らないこと、そしてそうなった場合の『カルネマッサ』の動きが分からないことです」



 大和も直ぐに同じ考えに至っていたのか、一つ頷いた。



「他には?」

「夜宵さんを合流させ、彼女の『闇夜の月輪ダークネス・エクリプセ』で飲み込むことです。四次元の壁さえ破った彼女の能力であれば、確実に『カルネマッサ』を消失させることは可能であると思います」



 もう一つの作戦を提案した咲耶だったが、これにも懸念点があるのか「しかし…」と続ける。



「考えられるリスクは、夜宵さんの『グリット』は展開速度があまり早くありません。その為、夜宵さん自身が『カルネマッサ』に近付く必要があります」

「動きも性能も、そして『カルネマッサ』の危険性すらまだ把握しきれていない状態だ。実行するには少し対策するための情報が不足しているな…」



 大和の問いに対し、咲耶は十分な答えを返してくれた。


 しかし、それでも大和は直ぐに行動に移れないでいた。



「(とにかく情報が少な過ぎる。リナ君と瑞樹くんに頼んで、技術班と科学班の人員を派遣するか…?)」



 机の上に手を乗せ、その上に顔を置きながら大和は頭を悩ませる。



「(けれど『カルネマッサ』が居るのは海上だ。一時的な足場を作るにしても、万が一に備えて対応するための『グリッター』の人数を考えると、せいぜい4、5人が良いところだ。それだけの人数で情報を得られるのか?)」



 思考を張り巡らせながら、大和は「いやいや…」と首を振る。



「(そもそもそんな悠長に構えていて良いのか…?もしここから活発な攻撃活動に移られてしまったらどうする。早めに処分する作戦を検討すべきじゃないのか?)」



 大和の頭の中での葛藤が続く。


 大和のなかでの優先順位は、基本的に最前線で戦う朝陽達『グリッター』の身の安全の確保である。


 勿論、命をかけて戦う朝陽達の志と想いを無碍にするつもりは全く無いが、それでも生きて帰らせることを止める理由にはならない。


 そのため、最悪命を堕としかねないようなリスクは出来うる限り避けさせようとするのが大和の指揮の前提である。


 その前提条件が、今回の指揮を取る上で弊害となっていた。


 その後も、大和が次の一手で頭を悩ませていると、現場にいる三咲から連絡が届いた。



『司令官、一つ気になったことがあるのですが』

「気になること?」



 三咲からの連絡に、大和が答えると、三咲はその内容について報告する。



『はい。私の『グリット』で全体を見ていく中で気付いたのですが、あの肉体にはどうにも繋ぎ目のようなものがあるんです』

「繋ぎ目…?」



 最初は訝しげに思い眉を顰めた大和であったが、先程の沙雪の言葉を思い出し、すぐにその繋ぎ目の正体に気が付く。



「(沙雪さんは『カルネマッサ』のことを無理矢理つなぎ合わせた生命体だと言っていた。そして三咲くんの言う目視可能な繋ぎ目…)」



 三咲の僅かな報告をもとに、推測をどんどんと進めていく大和は、一つの仮説に至る。



「もしかして、『カルネマッサ』は……」

『……!司令官、《カルネマッサ》に動きが!!』



 仮説を導き出した大和であったが、それを活かすよりも先に『カルネマッサ』が動きを見せたのであった。






●●●






『アレハ一体何ナノ』



 前回同様、陸地から遥か離れた海域で2体の厄災がその光景を覗き見ていた。


 前回と異なる点を挙げるのであれば、結果ではなく経過から見ていることであろう。



『ん〜?また来たの《アイドス》。もしかして毎日暇してるの?』

『殺スワヨ貴方』



 背後から話しかけてきた『アイドス・キュエネ』に対し『エデン』が軽口で答えると、『アイドス・キュエネ』は殺意を放って再び答えた。



『冗談だよ冗談。君は硬っ苦しいなぁ』

『私達ニソウイウ馴レ合イは必要ナイデショ』



 やれやれといった様子の『エデン』であったが、『アイドス・キュエネ』の答えを否定することも無かった。



『デ、結局アレハ何ナノヨ』



 このやり取りは飽きた様子で、『アイドス・キュエネ』は再び尋ねる。


 『エデン』も二度も同じことをするつもりは無く、今度は素直に答えた。



『以前、私が作った個体のこと覚えてある?』

『…通常ノ同志ダト、器ガ小サ過ギタ、ッテヤツ?』

『そう、それ!!』

『私ヲ指差スナ』



 『エデン』はニッコリ笑いながら両人差し指を『アイドス・キュエネ』に向け、『アイドス・キュエネ』はそれを片手で払い除けた。



『ま、つまりは器が小さい事が問題だったわけでしょ。だから()()()()()()()()()()()()()()って考えたんだ』



 そう答える『エデン』の表情は、どこか狂気染みた笑みを浮かべていた。



『一つの器で足りないなら二つ。二つの器で足りないなら三つ。そんな感じで複数の同志を合成していったんだけど…』

『…ソレデ出来上ガッタノガ、アレッテワケ…』



 説明された内容に、厄災と呼ばれる自分でさえも嫌悪してしまう異形の姿となってしまった同志を、『アイドス・キュエネ』は憐れみの目で見つめる。



『多分十体くらいまでは、まだ形を保ってたんだよね。そこから少しずつ形状が可笑しくなっていって、三十体目辺りで()()()()()

『加減ッテモノヲ知ラナイノ貴方ハ』



 続けて紡がれた内容に、今度は呆れた様なため息を溢す。



『まぁこうなるかもしれないっていう結果は見えてたよ、正直ね。でも十体目じゃ成功の兆しは見られなかった。だったらあとはもう知的好奇心に従うしかないでしょ』



 チラッと横目で見ると、そこでは自分の欲望を満たし、歪んだ笑みを浮かべる『エデン』の顔が目に映り、『アイドス・キュエネ』は僅かに身体を震わせた。



『趣味ガ悪イワネ。仲間意識ハ無イケド、今回バカリハチョット同志達ニ同情スルワ』

『アッハッハ!我ながら今回はなかなかに非道な行いだったと思うよ。でもそれは人間達が組み上げた常識の話。《私達(メナス)》には関係ないね』



 口にはしなかったが、『アイドス』も『エデン』の発言を否定はしなかった。



『デ、アレハドウスルノ?』

『結局《知性》は愚か芽生えてきてた自我や意思すら持たない、ただの胎動してる物体になっちゃったからね。だからあそこに捨ててきたんだけど』



 自分で創り上げておいて失敗したから捨てると言う、どこまでも『エデン』は欲望に忠実であった。



『ジャア、アレハ本当ニモウタダノ物体ナノネ』

『ん〜…でもそろそろ…』



 その時、遠く離れた位置で留まっていた『カルネマッサ』が、突然不規則な動きを始めだした。


 周囲に漂っていた『人間(グリッター)』達も、慌てて動きだした様子が確認できていた。



『…ナニ?急ニ動キダシタワヨ?』

『そろそろかなって思ってたけどドンピシャだったね。アレは拒絶反応だよ』



 既に放棄したモノであるとはいえ、これまでとは違う行動、そして予測していた反応に、『エデン』は再び興味を示し出す。



『拒絶反応?』

『ソウ。人間で例えるなら、臓器とかの移植をするとたまに身体に合わず拒絶反応を示すでしょ?それと一緒で、器は同じでも元々は個別にあったモノ。それを無理矢理繋ぎ合わせただけだから、器同士が拒絶反応を出してるんだよ』



 『エデン』の言う通り、二人の視界の先では『カルネマッサ』が不規則ながらまるで苦しむように時折肥大化しているのが見てとれた。



『…無茶ナ進化ノ代償トイウ訳ネ。ソレデ、アレハドウナルノ?』

『どうなるかな。さっき言ったように、知性も自我も失ってるから、それに沿った動きはもう出来ないだろうね。そもそももう、ただの肉塊みたいなもんだし』



 『エデン』は『でも…』と続ける。



『逆を言えば、私達の本能そのもので動く、謂わば《原始回帰》に至っているとも言えるから、多分人間と認識したら無差別に襲う、ある意味《人間達(アイツ等)》からしたら最も恐ろしい存在になるかもね』



 その日最高に狂気に満ちた笑みを浮かべた『エデン』は、嫌悪感を向き出しにした『アイドス・キュエネ』と共に、その経過を見届けていた…

※後書きです







ども、琥珀です


やはり仕事が忙しくなると頭に余裕がなくなり、どうしても筆のノリが悪くなりますね…


お休みもらった意味がこのままでは無くなってしまいますので、もう少し奮起したいと思います。


頑張ります←


本日もお読みいただきありがとうございました!

明日も朝更新されますので宜しくお願いします!

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