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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
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第222星:回収

国舘 大和(24)

 千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに指揮をとりつつ、根拠地内の環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。実は関東総司令官という立場であるが、それを隠している。


早乙女 咲夜(24?)

 常に大和に付き従う黒長髪の美女。一度は誰しも目を奪われる美貌の持ち主。落ち着いた振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』を導く。その正体は100年前に現れた伝説の原初の『グリッター』本人であり、最強の戦士。


五十嵐 歪(25)

 礼儀正しく誠実で、やや堅苦しい口調ながら気さくな女性。臨時として夜宵小隊に配属されるがその正体は…


霧島 カンナ(28)

 ミステリアスな雰囲気を醸し出す女性。落ち着いた振る舞いで同じメンバーをフォローする包容力を持つ。臨時的に椿小隊に配置される。


無値(14)

 無感情・無機質な反応の少女。歪、カンナの命令に忠実に従う。臨時として朝陽小隊に配属される。


日浦 透子(16)

 常に何かに怯えているような様子の少女。歪、カンナに従う。臨時として夜宵小隊に配属される。

「夕くん、お疲れ様。これから夜宵くん達と朝陽くん達が戻ってくるから、リナくん達の所へ向かって整備とかの依頼を伝えてくれるかな?」

「わかりました!!」



 大和の指示を受け、夕は立ち上がると急ぎ足で部屋を後にした。


 勝利を素直に喜び、明るい面持ちを隠さない素直な性格に、大和と咲耶は思わず頬を緩める。


 しかし、ドアが閉められると二人の表情は一変する。



「……結局動きはありませんでしたね」

「『メナス』達かい?まぁ今回はあくまで実験みたいなものだったんだろうね」



 大和は脱力しながら背もたれに体重をかける。そして帽子を取り、大きく息を吐きながら答えた。



「もちろん今回の戦いでも危険なところはあったし、今後も十分に注意していかなきゃいけない事案だ。けれど恐らく今回の首謀者である『エデン』も、暫くは経過を見ていくだろうし、直接手を出してくることは無いだろう。動いてこなかったのは、ある意味想定内かな」

「その事は、勿論そうなのですが……」



 大和の答えに対し、咲耶は僅かに口籠る。やがて意を決したように口を開いた。



「私が言っているのは『メナス』の事ではなく、()()()のことです」



 帽子を顔の前に乗せ、大和は咲耶を見る。


 名前こそ出さなかったが、大和は咲耶が誰のことを言わんとしているのかはすぐに理解していた。


 僅かな沈黙の後、帽子を被り直した大和は、これに答える。



「そうだね。ボク達の目から離れ、戦力も分断された。ある意味で動くには絶好の機会だった。けど彼女達は動かなかった。()()()()()()()()()()、今はね」



 もたれかかっていた背もたれから起き上がり、誰もいない方を向きながら続ける。



「現状は、ボク達が勝手に彼女達のことを疑っているに過ぎない。それだって杞憂に過ぎないかもしれないし、それならそれで良いことだし、その時はボク達が咎められるべきだ」



 大和の言葉に、咲耶も返す言葉は持っていなかった。


 実際、大和の言う通り、ここまでの中で歪達に怪しい動きはない。


 それこそ、現状では大和達が一方的に歪達を怪しいんでいる状況である。



「気持ちは分かる。けれど焦っちゃダメだ。今の彼女達はしっかりと根拠地と小隊のために働き、そして力になってくれている。根拠地の面々も歪くん達を信頼している。ここで朝陽くん達から信頼を失うような行動をすれば、それこそ思う壺かもしれない。今は我慢と見極めの時だよ」



 大和に嗜められ、咲耶は暫く眉を顰めながらもゆっくり頷いた。



「……そうですね、仰る通りです」



 それでも、やはり咲耶は不服そうであった。


 大和もその心境が理解できないわけでは無いわけではない。


 指揮をとるだけでなく、咲耶は日頃から『グリッター』の面々と親しく接し、そして鍛えている。


 加えて、自身が『グリッター』であり、更には最初の『グリッター』であることも打ち明けている。


 その状況を鑑みれば、咲耶が大和以上に彼女達の心配をしてしまうのも無理はない話である。



「(桐恵くんからの連絡は無い。このまま手をこまねいているつもりはないが……)」



 咲耶は不満を抱いたからと言って、それを自身の責務に持ち込み支障をきたすような人物では無い。


 しかし同時に、人への想いや思い入れが強く、それ故に感情的に動いてしまう事はある。


 最愛の友人を亡くした時は、それで失態を犯し大勢の仲間を失った。


 現代においても、大和に固執するあまり視野が狭くなり、感情的にここのメンバーと衝突することもあった。


 その直情的な性格であるからこそ、これまで多くの仲間が咲耶に惹かれ、そして着いてきたのだと大和は思う。


 しかし、現在の咲耶は最前線に立つ『グリッター』ではなく、彼女達の指揮を執り導く指揮官という立場にいる。


 感情的に動くだけでは、咲耶ではなく『グリッター』である朝陽達にその影響が及ぶ。


 だからこそ、大和は咲耶の考えに理解を示しつつも、あくまで司令官の立場として冷静であれ、と諭すことを選択していた。



「(護進さんは以前に、咲耶は実戦向きだと言ってたけど、正直ボクもそう思う。けれど、指揮官としての着任を望んだのは咲耶自身。だから今は耐える時だよ咲耶)」



 例え相手が100年前の人物であろうと、始まりの『グリッター』であろうと、今は関係ない。


 大和は上に立つ者として成長してほしい。そう心の中で願っていた。






●●●







「無事に()()は果たせたかしら?」



 その日の戦闘を終え、休息を与えられた歪達は、巡回帰りのカンナとも合流して話し合いをしていた。



「はい。命令通り戦闘に勝利。()()も完了しています」



 無値がカンナに答え、カンナはその視線を隣に立つ透子に向ける。


 透子は怯えた様子を見せながらも、その無言の訴えに応えるようにして頷いた。



「ん〜良い子ね、それで良いわ」



 二人の頭を撫でようとするも、二人は途端に表情を一変させ、同時に身体を震わせ始めたため、カンナはゆっくりとその手を引っ込めた。


 しかしその表情は悪びれた様子は一切なく、寧ろしっかりと()()が行き届いているという事実に喜んでさえいるようであった。



「ま、こっちは良いわ。それで、アナタの方はどうだったの?大活躍だったそうね?」



 次いで目を向けられたのは歪。


 当然、歪も次は自分の番であると分かっていたため、直ぐにその問いに答える。



「おっしゃ通りでありますな!自分のお陰で勝利を収めたと言っても過言ではないであります!無論、仕事もキッチリ果たしたでありますよ」



 えっへんと胸を張り答える歪みに、カンナは満足そうに答える。



「流石ね。長い間活躍してきただけはあるわ」



 そう言うカンナの言葉は、抑揚こそついているものの、感情はこもっていない様に思えた。


 しかし、歪も鼻からそれを期待してはいなかったのか、さして気にした様子は無かった。



「じゃあとっとと終わらせちゃいましょう。あまり長い時間話し込んで目をかけられても面倒だわ」

「で、ありますな。それではお預かりするであります」



 歪が手を差し出すと、まずは無値、透子がそれぞれ小型のスピッツを受け取る。



「わ、わわわ私達は小隊長の朝陽さんを除く三名の分を回収してきました!」

「ふむ、朝陽殿は回収は難しかったでありますか?」



 歪に問い返されるも、透子はそれに気圧され直ぐに答えることが出来ない。


 代わりに無値がこれに答えた。



「…肯定。残念ながら私達の力では難しかったと言わざるを得ません。特に戦闘中の小隊長の力は頭ひとつ抜けていました。あの最中に回収する事は、現状困難です」

「成る程、であります。逆を言えばそれ程の戦闘能力を有する人物のデータは手に入れたかったところでありますが、まぁ戦闘はつい先程でありますから、この三名からでも得ることは出来るでありましょう」



 それを懐に仕舞い込むと、今度はカンナから二つのスピッツを受け取る。



「残念ながら私は二人しか回収出来なかったわ」

「おや、これは意外。カンナ殿程のお方が手こずるのは珍しいでありますな」



 歪の言葉に、カンナはどこかわざとらしく落ち込んだ様子を見せる。



「私も驚きだわ。小隊長の椿ちゃんとメンバーである言葉ちゃんはどうも隙が無くてね。前にも言ったように、どこか警戒されているみたいなのよ」

「ふむ。確かに以前からそう仰られていたでありますな。しかし何故でありましょうか……」



 歪が頭を悩ませていると、カンナは思い当たる節があるのか、考えながらもゆっくりと答えた。



「なんて言うか、ちょっと不思議なんだけど、あの二人からは同じ臭いがするのよね」

「匂い…と言いますと?」

「そうね…うまくは言えないけど、強いて言うなら同族…みたいなイメージかしら」

「……()()()、ということでありますか?」



 歪の答えに、カンナは首を振って否定する。



「それは違うと思うわ。私はそれなりに顔が広いけど、あんな子達は見たことがないもの」

「ふむ、カンナ殿がそう言うのであれば…しかし同族の臭いというのは……」



 そのまま暫く考え込み、歪は一つの結論に至る。



「まさか……あの野蛮な『アウトロー』でありますか?」

「可能性はあるわね」



 その結論をカンナも否定しなかった。



「特にうちの小隊長からはそんな気配を感じるわ。彼女達が私と同じような感覚を持っているのだとすれば、警戒されるのも納得できるわね」



 歪はカンナの言葉に「成る程…」と頷きながら、受け取ったスピッツを同じようにしまう。



「自分は小隊全員の分を回収してきたでありますから、不足は三人のみ。機会の少ないなかで考えれば、まぁ上々でありましょう」

「そうね。それで、どのくらいで読み取れそう?」



 カンナの問いに、歪はわざとらしく指を折りながら数え、ニィっと悪どい笑みを浮かべ答えた。



「まぁ、三日ほどいただければ」

※後書きです







ども、琥珀です


すいません、年度末、新年度の都合でいつもより一時間早く更新しました。


凄い忙しく更新もギリギリです…


暫く後書きもお休みになると思います…

対してお楽しみにされている方はいらっしゃらないかと思いますが念のため…


更新時間は7時を原則としつつ、やむを得ず6時に、という事が増えるかもしれませんがお許しください…


本日もお読みいただきありがとうございました!

明日も朝の朝に更新されますので宜しくお願いします

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