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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
254/481

第220星:ガッカリ

国舘 大和(24)

 千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに指揮をとりつつ、根拠地内の環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。実は関東総司令官という立場であるが、それを隠している。


早乙女 咲夜(24?)

 常に大和に付き従う黒長髪の美女。一度は誰しも目を奪われる美貌の持ち主。落ち着いた振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』を導く。その正体は100年前に現れた伝説の原初の『グリッター』本人であり、最強の戦士。


新島 夕(10)

 大和と咲夜をサポートする報告官を務める。『グリッター』としてこ能力には未だ開花していないが、自分にできることを精一杯こなす純真無垢な少女。10歳とは思えない礼儀正さを兼ね備える。


斑鳩夜宵(22)三等星

千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?


【夜宵小隊】

私市 伊与 (19)

 年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。自身の肉体の動きを加減速する『グリット』を持つ。


早鞆 瑠衣 (18)

 十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。人体・物体を強化する『グリット』を持つ。


矢々 優弦 (16) 四等星

 幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。自然の声を聞き取る『グリット』を持つ。


五十嵐 歪(25)

 礼儀正しく誠実で、やや堅苦しい口調ながら気さくな女性。臨時として夜宵小隊に配属されるがその正体は…


佐久間 椿(22) 四等星

千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。元『アウトロー』であり、一時『アウトロー』としての自分が蘇るも三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』の隊長を務める。


【椿小隊】

写沢 七 (21)

 写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。


重袮 言葉 (20)

 活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…幻覚・幻視・催眠の『グリット』を操る。


海藤 海音 (16)

 誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな機微から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。

「はぁ〜あぁ〜…面白そうな『メナス』が出てきたかと思ったらこの程度でありますか。ちょっとガッカリであります」



 爆発の衝撃で僅かに湧き上がった水飛沫を浴びながら、歪は退屈そうに伸びをする。



()()の前の肩慣らしにでも…と思ったでありますが、準備運動にもならなかったでありますな……おっと!」



 と、そこで歪はそれまで浮かべていた表情を一変させ、真面目な面持ちになる。



「歪さん!!」



 そこへ現れたのは、通常個体の『メナス』を倒し駆けつけた夜宵達であった。



「や〜や〜皆様方。ご無事で何よりであります」

「それはこっちのセリフです!あの『メナス』は!?」



 夜宵達は周囲を警戒するが、当然その姿は見当たらない。


 歪はニッコリと笑みを浮かべ、夜宵達を安心させる。



「いや〜実は交戦しているうちに一瞬隙が出来ましてな!上手くその隙を突いて何とか倒したところなんであります!」



 ワッハッハ、と豪快に笑う歪を、夜宵達は呆然とした様子で見ていたが…



「す……」



 やがて伊与、瑠偉の二人がパァッと目を輝かせ、歪のそばへと詰め寄った。



「すごぉい歪さん!!」

「苦戦を強いられたあの『メナス』を相手に勝利してしまうだなんて!!感激ですわ!!」



 ここまで熱烈な反応をされると思っていなかった歪は、詰め寄る二人に対し苦笑いを浮かべていた。



「いや、本当にたまたまであります。その場にいたのが自分なだけであって、夜宵殿が同じ状況であったのなら、倒していたのは夜宵殿でありますよ」

「強いだけじゃなくて謙虚……『グリッター』の鑑ですわね!」



 詰め寄るだけでなく、瑠衣は勢い余って手を握りしめる。


 その握り締められた手を、歪は何故か悲痛な面持ちで見つめていた。



「瑠衣、歪さん迷惑そうだよ?」



 伊与に言われハッと我に帰ると、瑠衣は握っていた手をパッと離す。



「も、申し訳ございません!私としたことがつい興奮してしまいまして……」

「い、いや……お気になさらず……であります……」



 歪はそう言うものの、その表情は明らかに困惑していた。


 瑠衣は申し訳なさそうにしつつ、再度謝罪をしようとした時であった。



「おや…?皆様怪我をなされているのでありますか?」



 それよりも早く、歪を除く全員が小さい傷を負っていることに気がつく。



「うん……ちょっと合流…を、急がないと……って焦ってた…ら、ね」



 その理由は、一刻も早く歪に合流し中ではならないもいう焦りからであった。


 冷静に対処していれば難なく倒せた敵に、一同は歪を助かるべく慌ててしまっていたようであった。



「そう…でありますか。僭越ながら自分、簡易的な医療キットを持っているであります故、治療をさせて欲しいであります」

「え、でもそんな大層な傷じゃ……」



 伊与が歪の治療を断ろうとすると、歪は苦笑いを浮かべて答える。



「お願いであります。自分を助けるために傷付いてしまった、と聞いては、居てもたってもいられないのであります」



 そう言われれば、夜宵達は断ることが出来ない。


 全員は歪の言葉に応じ、その場で治療を受けていく。



『みんなご苦労様』



 とその時、壊れて放棄した歪を除いたメンバーに、大和から通信が入る。



『今回は少し厄介な個体が居たようだけど、まずは皆無事で何よりだ』

「いえ、司令官と指揮官のおかげです」



 大和の労いの言葉を受け、一同はこの時ようやく肩から力を抜くことが出来ていた。


 夜宵達がここまで早く駆けつけることが出来たのは、大和と咲耶の指揮によるお陰であった。


 数でも質でも上回る状況ではあったが、それを最大限に活かす二人の手腕があってこその迅速さであったと言えるだろう。


 焦り、慌てていた夜宵達を咲耶が沈め、大和が的確な指示を出すことで、あの局面を乗り越えることが出来たのである。



「それにしても、あの個体は一体何だったんすかね。確かに他の個体よりは強かったしめんどくさそうだったけど、絶対的に強いわけじゃなさそうだったす」

「そんなこと言って、実際に戦ったら私達じゃまず勝てませんわ。夜宵さんや歪さん程の経験値があったからこそ勝てたのであって…」



 瑠衣、伊与の二人の会話を耳にしながら、歪は治療を続ける裏で、先程読み取った情報からその正体を掴んでいた。



「(……ま、わざわざ教えるメリットはないでありますな。あの正体不明のメナスを不安材料に、根拠地が埋葬してくれればシメたものであります)」



 考え事をしつつも手際は良く、歪は素早く四人の治療を終えていた。



「ありがとうございます、歪さん。本当になんでも出来るんですね」

「いえいえ、年の功…と言いますか、これも経験してきたことでありますから」



 にこやかに答える歪に、もう一度感謝すると、夜宵は大和に通信を入れる。



「司令官、こちらの戦闘は終わりました。どうしますか?」

『朝陽くん達の戦闘も既に終了している。これ以上の出現は無いと思うけど、念のため周囲を警戒しながら帰還してくれ』



 夜宵は「了解」と返答し通信を切ると、メンバー達に指示内容を伝え、帰路についた。


 歪もその後を一番最後についていく。


 その手に、4つのスピッツが握られていることは、誰も気付かなかった。






●●●






『と言うわけなんだ。戦闘は無事に終了。軽傷者は出たものの重傷者は一人もなし。いまは帰還を始めているから、安心して欲しい』

「了解了解〜」



 大和は万が一に備え、巡回中であった椿小隊に増援のを依頼していた。


 しかし、朝陽、夜宵それぞれの小隊が無事に撃退したため、その必要は無くなったと連絡が来たところであった。



「にしても、ちょっと強化された『メナス』か〜。また不思議な個体が現れたモンだね〜」

『そうだね。でもまぁ【知性】を兼ね備えた【メナス】の出現、新たな【悪厄災(マリス・ディザスター)】の顕出、そして【オリジン】の復活、もうこのくらいじゃ驚かないだろう?』

「確かに〜」



 椿はケタケタと可笑しそうに笑う。



『まぁ今回の個体については、ボク達の方で調査を進めていくよ。二小隊とも帰還を始めているから、椿くん達も巡回しながら帰還してくれ』

「はぁい」



 大和からの指示を聞き終え、椿は通信機のスイッチを切る。



「と、言うわけだから皆〜。もうちょっとだけ巡回してから帰るよ〜」



 同じく大和からの通信を聞いていた小隊の面々が、椿の言葉を聞いて頷く。



「それにしても気になるね。これまでのただ『知性』を持った『メナス』とは違う、意図的に強化された個体…一体どう言う意図なんだろう」



 巡回を続けていく途中で、やはり気になるのか七が尋ねる。



「意図も何も…『メナス』の目的は人間を殺すことなんだから、それを有利に進められるようにしようとしたんじゃないの?」

「それはそうなんだけどさ。でも、それこそ『メナス』は独自に成長を始めてきたわけじゃん?わざわざ似たような強化を施した理由が分からなくない?」



 何の気も無しに答えた言葉であったが、七の鋭い指摘に今度は返すことができない。


 その代わりに答えたのはカンナであった。



「私も良くは分からないけど、その強化を施した『メナス』は、成長を恒常化させようとしたんじゃないかしら?」



 カンナが始めた説明に、全員が耳を傾ける。



「確かに『メナス』は独自に成長を始めたわ。でも例えばそれが個体によって差が生じていたとしたら?指揮を執る立場の『メナス』からしたら厄介だと思わない?」



 カンナの仮説に、話を切り出した七が頷く。



「成る程。だから統一化を図るために自ら強化を施したってわけですね」

「あくまで仮説に過ぎないからどね。でもあり得るんじゃないかしら」



 七は納得した様子であったが、椿はほんわかした笑みの裏でその事態の重さをしっかりと認識していた。



「(つまり、『メナス』の強化自体は成功していたってことだよね〜。それも、私達個人じゃ手に負えないような個体…もしそれが通常の個体とすり替わるようなことがあれば、正直かなりまずいんだよね〜)」



 椿が陰でヒッソリと頭を悩ませていると、その影を吹き飛ばすような明るい声が発せられる。



「『メナス』が強くなろうが賢くなろうが関係ない!!私達のやることはいつだってシンプルだろ!!」



 その声は、海音のもの。


 恐らく話の趣旨を全ては理解していない海音だが、何かしらの不穏な空気を感じ取ったのか、いつもよりもその声は増して明るかった。



「守るために戦って、生きるために立ち向かう!!今の私達じゃそれが無理なら、私達も強くなれば良い!!今までだってずっとそうだったじゃん!!」



 思考もへったくれもない、一種の根性論のような発言であったが、同時に的を射てもいた。


 海音の通り、敵が成長し強大になるのなら、自分達も成長し強くなれば良い。


 そして今の自分達と、恵まれた環境下ならそれは十分に可能なことだ。


 そう考えたのは椿だけではなかった。


 七、言葉、そしてカンナも笑みを浮かべると、海音と七の肩を掴み抱き寄せた。



「ん〜前向きで素敵な発言!!そうね、私達も強くなっていきましょう!!」



 抱き寄せるだけでなく頬擦りまでするが、日頃のセクハラで少し耐性がついたのか、海音は多少は嫌がりつつもこれを受け入れていた。


 その光景を微笑ましくも敬遠しながら、椿、言葉の両名はそれを遠巻きに眺めていた。

※後書きです







ども、琥珀です


ちょっと年度末の仕事の変動もあり、ちょっと今後の見通しがつかない状況です


もし更新が滞りそうであればまたご連絡します。

できる限り更新は行いたいと思っておりますので、宜しくお願いします。



本日もお読みいただきありがとうございました!

明日も朝の7時ごろに更新されますので宜しくお願いします!

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