第24星:反発
国舘 大和(24)
再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。自身が『グリッター』であることを隠そうとするが…?
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『天照す日輪イノセント・サンシャイン』を覚醒させ、仲間の命を救った。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負った。
樹神 三咲 (22)
千葉支部所属。夜宵の率いる『輝く戦士グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。
佐久間 椿(22)
千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。
「さてお次は…矢々 優弦 四等星。能力は『精霊の囁き声』。得意としている獲物は弓とのことですが…」
書類から目を離し、優弦に問いかけると、優弦はコクッと小さく頷いた。
「うん、そう…ボク生まれが山で、狩人…として生きてきた…だから、弓とか銃…とか、遠方からのモノが得意…」
「あぁ、成程…それならば確かにその手の武器を扱うのも理解できます」
咲夜は納得して頷くと、もう一度資料に目を向ける。
「(能力の発見による抜擢ではなく、育て親がメナスに殺されたことによる保護からの発見ですか。これは『メナス』に対しての私怨が強そうですね…)」
「別に…復讐なんて考えて…ないよ?父ちゃん…は『自然は互いに生きて互いに殺し合うもの。だから突然の死が訪れようとも、それが自然の成り行きなんだ』…って言ってたから」
まるで心を読んだかのような発言に、しかし咲夜は表情を崩すことはなく、ただ資料から優弦の方に目を向けるだけに留めた。
「今のは、貴方の『グリット』の力ですか?」
「ごめん、なさい。悪気は無い、です…ただ山で育って…きたからか、その人…が何を考えている…のか、何を思っているのか…を、肌で感じれる…の」
優弦は嘘のことを言っている様子は無く、今も申し訳なさそうに俯いたまま話を続けていた。
「意識…して使ってるわけ…じゃあなくて、無意識に…呼吸をするのと、同じ感覚…だから止められ、なくて…だから、ごめんなさい…」
過去にこのグリットで良くない体験をしたのだろうか、優弦はどこか怯えた様子で咲夜を見つめていた。
しかし、やはり咲夜の表情に変化はなかった。寧ろ、優弦に対して笑みさえ浮かべていた。
「いいえ、素晴らしい力だと思いますよ。『グリット』によって感覚が研ぎ澄まされているとはいえ、自然の声を聞くなんて普通はできません。自然環境のなかで育ててくれた親に感謝しなくてはいけませんね」
思考を読まれたことに不快感を現すどころか、理解を示してくれたことに優弦は驚きを隠すことができなかった。
しかし、同時に嬉しくも思い、マスク越しでも分かる笑みを浮かべた。
「その『声』を聞くことで、敵を正確に射ることが出来るわけですね」
「う、ん。正確…には、『声』が聞こえる…わけじゃない…けど、風の動きや水の流れ…とかが射ちこむ位置を教えてくれる。ボク…はそれに沿って射る…だけ」
ここまで表情を崩すことのなかった咲夜であったが、この時初めて興味を持ったような表情を浮かべる。
「聞けば聞くほど素晴らしい『グリット』です。今後常にアナタの支えとなる力でしょう。ですが、最初に私が伝えた通り、それだけではいずれ通用しない場面に出くわすかもしれません」
自分の力を否定されたわけではないことを既に理解している為、優弦は素直にどういうことなのか分からないといった様子で首を傾げる。
「実際に試してみましょう。今から私を『精霊の囁き声』で感じてみてください」
咲夜が何をしたいのか理解できなかったが、言われて通りに『グリット』を発動させ、精霊に咲夜を探らせる。
しかし…
「あ…れ?」
何も感じ取ることが出来なかった。
風も水も、そして木々たちも、咲夜のことを告げるモノは一つもいなかった。
「なん…で?」
「恐らくですが自然の声は、人の生命であったり、我々の『グリット』のエナジーであったり…そういった自分達とは違うモノを感じ取り、伝えているのでしょう。ですから、私はいま自分自身を顰め、一瞬だけですが自然と同化しました」
これには優弦も目を大きく見開いて驚く。
それは十年自然の中で育った優弦でもできない芸当であったからだ。
暗殺のプロは行動に移す時に気配を消すというが、咲夜がやってのけたのはそれ以上のことだ。
人だけでは無く、自然さえも欺く御技をやってのけたのだ。
「必ずではありませんが、このように自然と一体となって気配を隠すようなメナスもいるかもしれません。その時に『グリット』に頼り切っていては打つ手がなくなってしまいます。強力な『グリット』であるからこそ、もしもの際に対処できるよう己を研きなさい」
目の前で、自分の『グリット』が破られたことで優弦は……目を輝かせていた。
「すご…い。長い間自然…を感じて来たけど、こんなこと…はじ、めて!指揮官さん…凄い人、なんだね!」
普段は感情の起伏が薄い優弦が、珍しく興奮して咲夜を讃えていたが、対照的に咲夜の表情には陰っていっていた。
「凄いことなんてないですよ。これは私にとって副次的なモノでしかありません。望んで…こんな力なんて…」
「…?どうした…の?」
聞き取ることすらできない小声で何かを呟く咲夜を心配してか、優弦がソッと顔を覗き込み、咲夜はハッとする。
「いえ、なんでもありません。失礼しました。優弦さんの内情も理解しましたので、タチさんと同様に弓のバトル・マシナリーを用意していただけるよう申請しておきます」
元の笑みを浮かべ、書類にサインをする咲夜。
書き終えた二枚の書類を見ながら、二人の経歴を振り返る。
「(長年培ってきた武の心得と、それを活かせるであろう超能力系『グリット』、全身で自然を感じれる特異体質に、それを促進させる強化系『グリット』…この二人だけでも十分に戦力の向上が見込める。もし残りのメンバーがこの資料通りであるのなら、この根拠地は化けるかもしれませんね…)」
『グリット』の能力は、主として三種類の分類に分けることが出来る。
肉体、感覚など、人間が本来持っている機能を限界以上に引き出す『強化系』。
通常では起こり得ない超常現象を操る『超能力系』。
仕組み、効果、性能、その全てが解読不能とされる『特異系』の三種類だ。
朝陽や夜宵のグリットはこのうち『特異系』に当てはまる。
『超能力系』と『特異系』は混在されることが多いが、『超能力系』は理論上可能であるとされるものが当てはめられる。
例えば氷を操る『グリッター』が居たとして、手元で氷を創り出しても、大気注の水分を凍らしていると推察すれば、理論上実行することは可能であるため、『超能力系』と分類される。
しかし、朝陽や夜宵の『グリット』は常識を全く当てはめることが出来ない。
光を発光させることはできても、それを自在に動かしたり、莫大なエネルギー質量をもたらして光線にするなど現代の科学では再現どころか理解することさえ出来ない。
夜宵の『闇』も同様だ。
すべての物質を飲み込む『闇』は、当然解析出来るはずも無く、吸い込んだ物体がどこへいくのかも解析できない。
宇宙規模で例えるなら、夜宵の『闇』はブラックホールとして例えられるだろう。
そういった現代では理解も解析もできない『グリット』が『特異系』と分類されているのである。
「(特異系の『グリット』の持ち主はいなさそうですが、それぞれ個性的な能力を持っている人が多いようですね…大和の言う通り、これら全てを活かせる小隊編成を組むことが出来れば、今までよりグンと生存率は上がるはず。この話し合いの場が、少しでもきっかけになると良いのですが…)」
咲夜は資料をめくり、本日の最後の一人の資料に目を通す。
「さて、最後は貴方ですね。海藤 海音 四等星。扱う『グリット』は強化系の『ノれない波はない』…あぁ、確か負傷した夜宵さんを救出した一人でしたね。海に恵まれた土地で生まれたから付けられた名前だと書かれていますが、まぁ…納得ですね」
『グリット』の名前も含め非常に個性的であると咲夜は思った。
しかし、それ以上に、プロフィールには明るく活発な人物であると書かれているにも関わらず、ここまで終始無言なことの方が気にかかっていた。
その理由は直ぐに分かった。
耳元までの短い赤い髪を僅かに揺らしながら腕を組み、髪色と同じ紅い瞳のなかに敵対的な色を移しながら、自分よりも背の高い咲夜を見つめ、海音はようやく口を開いた。
「私はアンタ達を認めてないからな!!不正を暴いて、隊長救出を指示してくれたのには感謝してるけど、部隊を解散させようとしてるんだろ!?いきなり出てきて私達の関係を壊そうとしてることは許さない!!絶対反対だかんな!!」
開口一番の敵対発言に、流石の咲夜も面くらう。
恐らく発言の内容は三咲から話を聞いたのだろう。
大和も特段口止めはしていなかったことから、予め話すことも計算していたに違いないと咲夜は考えた。
彼女も三咲同様、大和と咲夜の考えに反対している人物の一人であった。
三咲程頭のキレる人物では無いため、本能的な考えが強いのだろうが、それでも強い意思を持って反対の意を示しているように見えた。
ここでそれは誤解だと告げても火に油を注ぐようなものだろう。
だから咲夜は自分の考えを押し通すようなことはせず、海音の考えを聞くように促した。
「なるほど…司令官と指揮官の権限を行使すれば無理やりにでも決行することは可能ですが、当然それでは納得していただけないでしょうね。どのようにしたら納得していただけるでしょうか?」
困り顔の笑みを浮かべながら尋ねる咲夜に、海音はニヤッと豪快に笑って答えた。
「そんなん決まってら!!私と勝負しろ!!」
※ここからは筆者の後書きです!興味の無い方はどうぞ読み飛ばして下さい!
どうも、琥珀です!というかお久しぶりです…
何と1ヶ月も空いてしまいました…申し訳ないです泣
一先ず仕事も落ち着きまして、更新を再開していきたいと思います!
However…今現在安定してある…という段階でして、今後安定して更新できる保証が無いのが正直なところで御座います…
そこで、今後の更新ですが、まずは確実性を重視しまして、更新を週3から週2(月、火)に変えたいと思います。
落ち着いたらまた週3に戻したいと思っていますのでよろしくお願い致します!
それでは、本日もお読みくださりありがとうございました!!




