表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
248/481

第214星:成長

国舘 大和(24)

 千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに指揮をとりつつ、根拠地内の環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。実は関東総司令官という立場であるが、それを隠している。


早乙女 咲夜(24?)

 常に大和に付き従う黒長髪の美女。一度は誰しも目を奪われる美貌の持ち主。落ち着いた振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』を導く。その正体は100年前に現れた伝説の原初の『グリッター』本人であり、最強の戦士。


斑鳩 朝陽(18)四等星

 千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。


新島 夕(10)

 大和と咲夜をサポートする報告官を務める。『グリッター』としてこ能力には未だ開花していないが、自分にできることを精一杯こなす純真無垢な少女。10歳とは思えない礼儀正さを兼ね備える。


【朝陽小隊】

譲羽 梓月(23)

 冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。


久留 華 (22)

 おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。


曲山 奏(20)

明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。


無値(14)

 無感情・無機質な反応の少女。歪、カンナの命令に忠実に従う。臨時として朝陽小隊に配属される。


日浦 透子(16)

 常に何かに怯えているような様子の少女。歪、カンナに従う。臨時として夜宵小隊に配属される。

「朝陽小隊現場に現着!あと2分で交戦予定です!」

「夜宵小隊間も無く到着します。交戦は恐らく5分後です」

「わかった」



 咲夜、夕のそれぞれの報告に答え、大和はモニターに目を向ける。


 歪達新加入メンバーに期待を向けつつ、一抹の不安を抱きながら、大和は戦況を見つめる…






●●●






「敵影確認!!まだこちらには気付いていていませんね!!」



 マスクを無事に外した奏が、真っ先に『メナス』の姿を確認し、いつものような大声で朝陽達に伝える。



「分かりました!いつものように私が前に出ます!奏さんは近くで援護を!華さん、梓月さんは後方で支援をお願いします!」



 千葉根拠地のなかでは『グリッター』としての歴が短いとはいえ、朝陽が覚醒してから半年近くが経とうとしている。


 直感や勢いだけでなく、朝陽は早くも小隊長としての風格を見せ始めていた。


 朝陽の素早い指示を受け、奏、華、梓月の三名も素早く動き出す。



「透子ちゃんと無値ちゃんは先ずは後方での支援をお願いします!状況を見て戦列に参加して下さい!」

「……わ、分かりました」

「……了承しました」



 いつも通りの返答を返す無値に対し、透子の返答に何故か距離を感じた朝陽であったが、直ぐに戦闘が始まるため、今はその疑問を押し込める。



「先手を取ります!!『光輝く聖槍ブリリアント・ヘレバルデ』!!」



 朝陽の外見が解放状態のものへと変貌すると、その手の先に、光を纏った槍が顕出する。


 そして槍の先端を『メナス』の方へと向け、叫ぶ。



「『光の矢(プフェイル)』!!」



 技の名前を叫んだ直後、槍の先端から、否、槍の周囲を漂う六枚の刃、『光の翼(フリューゲル)』からも光線が放たれていった。



『────ッ!?』



 完全に不意をつかれた『メナス』達はこれに直撃。


 下が海面であるため、熱で海水が蒸発し霧が発生。直後の様子は分からなかった。



「気を付けてください!手応えはありましたが、まだ分かりません!」



 朝陽に言われるまでも無く、誰一人警戒を解くことはしていなかった。


 数秒ほど沈黙と緊張が続いた直後、霧の中から一筋の光が発光する。



「…!来ます!」

「ここは私が!!『目的地変更ディスティネイション・ホールド』!!」



 『メナス』が放ったレーザーは、朝陽達を確実に捉えていたが、これを奏が対応。


 朝陽の前に立つと片手を前に翳し、物質を屈折させる『グリット』でレーザーを曲げる。



「ありがとうございます!」

「なんのお安い御用です!」



 奏にお礼を告げると、二人の視線は晴れつつある霧の中にいる『メナス』へと向けられる。


 そこには、6体いた筈の『メナス』が5体に減っていた。



「…あの場所ならもっと数を減らせてたはず…なのに一体だけしか減らせてないのは…もしかして味方の一体を盾にして防いだ…?」

「のようですね!敵ではありますが、あまり気分は良くないですね!」



 意味がないと分かりつつも、奏は思わず憤りを感じてしまう。


 しかし、ここは命を掛けた戦場。


 奏は直ぐにその雑念を捨て、もう一度戦場と向き合う。



「残り5体。数の上でも勝りましたし、私達が優位な状況ではありますが、『メナス』も今や成長する個体です。確実にいきましょう」



 梓月の言葉で全員が気を引き締め直すと、朝陽、奏の両名は再び前へ出る。


 それに続くように残りのメンバーも進み、全員がそれぞれ援護出来る場所に位地取る。



『────ア゛ア ッ !!』



 近付く朝陽達に、『メナス』はレーザーで応戦。


 後方支援組は『耐熱反射鏡ゲトゥルト・シューピゲル』で、奏は『目的地変更ディスティネーション・フォールド』でそれぞれこれに対応する。



「……スゥ…」



 一方で朝陽は、一人突出した動きを繰り出していた。


 5体の『メナス』から放たれる無数のレーザー。


 光速に迫るその攻撃に、朝陽は目視で捉え回避していた。


 それだけでなく、直進する速度を緩めることなく、必要最小限の動きでこれをかわしていく。



「…『盾よ(シルト)』」



 勿論、攻撃の全てを避けることが出来ている訳ではない。


 回避しきれない攻撃に対しては、『フリューゲル』を展開し防いでいく。


 但し正面全域に展開するのでは無く、直撃する方向にのみ展開。


 これにより、『メナス』のレーザーを『受ける』のでは無く『流す』ように捌いており、全く速度を落とさないことに成功していた。



「うっそぉ……あれ、本当に朝陽ちゃんなのぉ?」

「この間までとはレベルが違う……この短期間で一体何が……」



 朝陽の急激な成長に、梓月達は驚きを超えて困惑してしまう。


 その一方で、奏はその光景をどこか悔しそうに見ていた。



「(先程の攻撃……私の役割だと思って防いでいましたが、あの動きを見るに、その攻撃も見切っていたようですね朝陽さん!)」



 自分の行動が、味方を救うどころか足を引っ張っていたかもしれない。


 そう思わざるを得ないほど、今の朝陽の動きは段違いであった。


 上空から海面沿いへ、500m以上はあった距離をものの数秒で詰めた朝陽は、驚くべきことに、『メナス』達の中央に降り立った。



『────ア ァ !!』

『────ア゛ァ ッ!!』



 当然、『メナス』達は血眼になって朝陽に襲い掛かる。


 触手で手数を増やし、逃げ道を塞ぐようにして全面から攻撃を仕掛けてくる。



「ッ!!朝陽さん!!」



 その声が誰のものであったかは朝陽にはわからない。


 聞き取れなかったこともあるが、朝陽の集中力はもはや外の音を殆ど取り入れていなかった。



「……ハァ…」



 急降下する時に吸っていた息を小さく吐きだし、朝陽は槍を掴む手に力を入れる。



「『光の聖槍よ(シェペーア)』!!」



 次の瞬間、『光輝く聖槍ブリリアント・ヘレバルデ』の先端にある刃に光が集い、光を纏って肥大化していく。


 光の槍は真正面から迫り来る一体の『メナス』の胴体を貫き、あっという間に消滅させていった。


 しかし、他の個体の『メナス』は、それに怯むことなく攻撃を続ける。



「…『光の槍よ(ランツェ)』!」



 しかし、朝陽はこれにも冷静に対応。


 槍の水晶付近で浮遊していた『光の翼(フリューゲル)』を展開。


 『フリューゲル』にも既に朝陽の光が纏われており、それぞれが槍の刀身の形を成していく。


 『フリューゲル』はまず『メナス』の触手を切り裂いていき、次いで次々と『メナス』の身体を切り裂いていった。


 小型である分、致命傷にまでは至らず、傷はすぐに癒えてしまうものの、退かせるには十分な効果であった。



「華さん、梓月さん!!」



 その動きを見計らって、朝陽が後方の二人に指示を出す。



「はぁい、『朝陽輝(サンシャイン)』発射ぁ♪」



 朝陽が何度も改名をお願いした、朝陽の『(エナジー)』が圧縮されたポットを解放する。


 ポットから朝陽の光線が放たれるが、その方向に『メナス』はいない。



「ほいさ!私の番ですね!」



 奏はその光線の前に立つと、『グリット』でこれを曲げ拡散させる。



「『念力操作ユニヴァ・コントロール』」



 次いで梓月の『グリット』である念力で『偏光反射鏡リベルベロ・シュピーゲル』を複数枚操作。


 奏が拡散させた朝陽の光線全てに当てていく。



『────ギッ!?』



 腐っても人間を越える身体能力を持つ『メナス』。跳ね返され反射した光線をかわしていく。



「あら、当たり外れの勝負ですか?負けませんよ」



 が、梓月はこれに対応。


 かわされた光線の進行先に、鏡を操って先回りさせ、更に再び反射させていく。


 避けても、かわしても繰り返し跳ね返される攻撃に、『メナス』達は次第に追い詰められていく。


 当然、意識は拡散され跳ね返される光線に向けられ……



「『光の矢よ(プフェイル)』」



 離れた位置から放たれた、朝陽の新たな矢に対応する程の余裕は残されていなかった。


 一体の『メナス』は胸を撃ち抜かれ、その身体は黒い塵となって消滅していった。



「残り……三体」



 どこまでも冷静に、それでいて的確に。


 朝陽は小隊の力を最大限に活かしつつ、圧倒的な力で『メナス』を追い詰めていっていた。



『────ッ!!ア゛ァ !!』



 このままではあっという間に全滅することを悟った一体の『メナス』がレーザーを放つ。


 レーザーは、朝陽の光が反射されるタイミングを見計らって放たれており、『偏光反射鏡リベルベロ・シュピーゲル』は二つ分の熱量に耐えきれず破壊されてしまう。


 その隙間を縫うようにして、残った三体の『メナス』は、鏡の枠から抜け出すことに成功する。



「以前ならあそこまで追い詰められれば、ただ単調に突っ込んで終わっていたのに……」

「反射鏡に朝陽さんの光線が当たるのを狙っての攻撃かぁ。やっぱり頭良くなってるねぇ」



 『メナス』の知性が間違いなく上がっていることを理解した二人であったが、この時に限っては驚きは薄かった。


 それよりも遥かに成長を見せている朝陽の姿が、それ以上に驚きをもたらしていたからだ。



『────ア゛ァ ァ ァ !!!!』



 一体の『メナス』の咆哮とともに、それぞれがバラけるようにして移動を始める。



「逃げた!?いえ、違いますね、これは!!」

「的を絞らせないように距離を取ることで、私達の連携を弱めようという狙いのようです。まさかここまで臨機応変な戦いが出来るとは…」



 三体それぞれが広範囲に散り、奏達の意識も広く散らされていく。



「奏さん」



 その時、奏の側にまで戻っていた朝陽が、奏に話しかける。



「皆さんのところに行ってください」

「なんと!?」



 朝陽の提案に、奏は思わず、いや、いつものような大声を上げてしまう。



「皆さん『耐熱反射鏡ゲトゥルト・シュピーゲル』を持っていて、四人も固まっているので大丈夫だとは思いますが、あれだけ動き回られてレーザーを放たれたら反撃が出来ません。なので、奏さんが加われば、『耐熱反射鏡ゲトゥルト・シュピーゲル』を使用しない分余裕ができて反撃に転じられます」



 朝陽の作戦内容に、奏は成る程といった様子で頷くが、直ぐにハッとした表情を浮かべる。



「で、ですが朝陽さんはどうされるおつもりで!?」

「私は大丈夫です。レーザーなら私の『グリット』で対応出来ますし、近接戦闘も、さっきの一瞬で渡り合えると感じました。なので順番に私が倒します」



 たしかに、先程までの圧倒的な強さを見せた朝陽なら、一体の『メナス』を倒すことはなんて事のない作業だろう。


 しかし、朝陽自身のリスクが高まることに違いはない。


 その点で奏が返答に躊躇っていると、朝陽はこれまでの平静な相好を崩し、いつもの笑みを浮かべた。



「大丈夫です奏さん!見通しのない無謀な作戦じゃないですし、危険だと思ったら直ぐに合流します!でも、この局面を打開するには、必要な行動だと思うんです!」



 あくまで合理的な作戦だと言う朝陽に、奏は朝陽の信頼をもとに頷き、これを了承した。



「私達で出来るだけ二体引き付けます!それでも危険だと思ったらすぐに戻ってください!!約束ですよ!!」

「はい!約束です!」



 奏はそう言い残すと、後方の梓月達と合流すべく、足につけられた『戦闘補具(ジェットパック)』で飛翔し、朝陽の側から離れていった。


 一人になった朝陽であったが、その表情はどこまでも冷静であった。



「大丈夫。先生との訓練の結果、バッチリ出てる」



 朝陽は一度だけ深呼吸をすると、周囲を飛び交う一体の『メナス』を標的に定め、槍を構えた。



「さぁ……行きますよ!!」



 そして、カナリア色の粒子を霧散させながら、追うようにして飛翔を始めた。

※後書きです







ども、琥珀です


原因不明の頭痛に悩まされていましたが、もしかしたら大雨による気圧のせいかもしれないと思い始めました


さて、実は第195星の後書きにも密かに追記したのですが、こちらでも投稿させていただきますね。


素敵なイラストを描いていただきました!

本作品の主要キャラ達です!

誰が、誰だか当てられますか?笑


挿絵(By みてみん)





本日もお読みいただきありがとうございました!

明日も朝の7時ごろに更新されますので宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ