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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
245/481

第211星:地域巡回にて

斑鳩 朝陽(18)四等星

 千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。



【朝陽小隊】

譲羽 梓月(23)

 冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。


久留 華 (22)

 おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。


曲山 奏(20)

明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。


【新メンバー】

無値(14)

 無感情・無機質な反応の少女。歪、カンナの命令に忠実に従う。


日浦 透子(16)

 常に何かに怯えているような様子の少女。歪、カンナに従う。

 大和が夜宵から事情聴取を続けている最中、医務室には一人の人物が訪れていた。



「ごめんなさい、面会宜しいかしら?」

「あん?…あぁアンタは確か…」



 その人物、霧島 カンナを見た沙雪は僅かな躊躇いを見せた後、奥の部屋を指差した。



「一番奥、窓際のベットよ。一応今日は安静にしてろってのが私の診断だから、面会は短めにお願い」

「分かったわ。ありがとう」



 笑顔でお礼を言いながら、カンナは奥の病室へと入っていった。


 姿が見えなくなるまで目で追っていた沙雪は、机に手を置き頬杖を突きながら僅かに考え込む。



「…アイツに連絡しとくべきかしら…?」



 ん〜…と数秒唸った後、露骨なため息をこぼし、沙雪は再び机へ向き直った。



「ま、いいかめんどくさいし。こういうやり取りは私の役目じゃないしね」



 机に置かれた事務作業に取り掛かろうとし、ペンを握ったところで、沙雪の手が止まる。



「……ま、バイタル値に異変があれば、そん時は動くとしますかね。()()()()()



 それだけ小さく呟くと、沙雪はゆっくりとペンを走らせていった。




────




「……ここは、潮風が気持ち良いでありますな」



 窓の外から入ってくる風を、歪は心地良さそうに浴びていた。



「……不思議でありますな。私はこの空気を、知っているような感じが……」

「お邪魔するわよ」



 その風に、どこか懐かしさを感じていた最中、シャッ!と遮られていたカーテンが開けられる。



「おや、これこれはカンナ殿。わざわざお見舞いに来てくださるとは恐縮であります!」



 わざとらしく元気に振る舞いながら挨拶をする歪を見て、ジッと観察していた。



「……この様子なら、()()大丈夫か…」

「…ん?なんでありますか?」



 歪でさえ聞き取れない程の小さな声で呟いた後、カンナは「何でもない…」と首を振る。



「思ってたより元気そうで安心したわ。アンタが倒れるのは()()()()だからね」

「で、ありますなぁ…最後はいつだったでありますかなぁ…ッ!」



 過去を思い出そうした瞬間、歪みの頭に激しい痛みが走る。


 その様子を、カンナは心配するのではなく、冷めた目で見つめていた。



「……やっぱり()()の任務はリスクが高すぎたかしらね…」



 それだけを述べると、カンナは喉をトントンと叩き、歪に何かを伝えようとする。


 歪はすぐにその意図に気が付き、襟元に仕掛けられた通信機のスイッチを入れる。



『盗聴は無さそうだけど、万が一聴かれても面倒だわ。通常の会話も交えながら、この通信機で話すわよ』

『了解であります』



 二人の声は聞こえなくなり、一見すれば沈黙の時間が過ぎているように見える。



「それで、体調の方はどうなの『任務は遂行できそう』?」

「はい!安静にとは言われておりますが、明日には問題なく復帰出来るかと『イレギュラーではありましたが、遂行に問題はないであります』!」

「そう…心配しちゃったけど、安心したわ『任務はここからが本番。貴方が要なんだから居ないと困るわ』」

「はい!ご安心下さい『これ以上支障はきたさないでありますよ』」



 同様のやり取りを続け、15分程が経過したところで、再びシャッ!とカーテンが開けられる。


 そこに立っていたのは沙雪であった。



「面会中悪いけど、今日はこのくらいにしておいて頂戴。何でもなく見えても倒れてるんでね」



 チラッとカンナは歪を一瞥した後、ニコッと笑みを浮かべて立ち上がった。



「そうね。あまり無理をさせても良くないものね」



 そして、沙雪の隣を通り過ぎ、ゆっくりと出入り口へと向かっていった。



「じゃあね歪。あまり無理はしないように『精々役には立ってね』」

「…ッ!」

「……」



 それだけ言い残すと、カンナは今度こそ部屋を後にした。



「……ふぅ」



 アレ程明るく振る舞っていた歪が、珍しく人前でため息をこぼしていた。


 沙雪は特に声をかけるようなことはしなかったが、何かを感じ取っていた。



「(……私が聞こえた限りで言えば、あくまで常識的な会話だけ。怪しい箇所はどこにも無かった。なのに……何か違和感を感じるわね)」



 とは言え、沙雪はこう言った手合いは専門外であり、いつまで考えようとその答えは出なかった。


 ひとまず歪を休ませ、違和感の正体を突き止めるため、時間をかけて考え出した。






●●●







「と言うわけで、代わりに私達がこれから地域巡回に行くんですけど……」



 新しい任務に向けて、根拠地の正門口に集合していた朝陽小隊の面々であったが、朝陽の目線は奏に向けられていた。



「えと…奏さん、そのマスクは…」

「………」



 普段騒がしい奏は、朝陽に尋ねられても沈黙を保っていた。


 その理由は、恐らく口元に付けられたマスクが原因だろう。


 マスクには口元に赤文字で「×」が描かれており、俗に言う発言禁止を意味している印である。


 そこまでは理解出来ていた朝陽は、何故それが奏に付けられているのかを梓月と華に尋ねる。



「逆に聞くけどぉ、朝陽ちゃん、普段の奏ちゃんをそのまま地域巡回に行かせて大丈夫だと思う〜?」

「え……えっと、それは……うぅ…」



 理由らしい理由は説明されなかったが、朝陽は思わず納得してしまう。


 ただでさえ、一般の人々には僅かな発言が刺激になりかねない状況。


 そこへ多弁かつ大声の奏がいけば、間違いなく一悶着が起きてしまう。


 その為、そのリスクを避けるために着用させているのだろう。



「一応正当な理由もあるんですよ?朝陽さんがまだ『グリッター』になる前にも一度奏さんを連れて地域巡回に行ったことがあるんです。その時にその……まぁそういう事が起きてしまって…」

「あ、もう経験済みなんですね…」



 朝陽が苦笑いを浮かべる中、奏が何かを訴えるように朝陽の方を勢いよく見つめる。


 律儀にキチッと無言で。



「………ッ!!(だからって!!この扱いはあんまりではないですかッ!?)」

「うわぁ……無言なのに言いたい事がハッキリと伝わってくる…」

「ん〜これは予想外だねぇ…」



 まさかの無言でも伝わる高いコミュニケーション能力に、一同も最早困惑するほかない。



「じゃ、じゃあとりあえず行きましょうか…奏さん、圧はあまり放たないで下さいね?」

「……ッ!?(放っているつもりはないんですがッ!?)」



 放っているつもりはないと言う意図を、強い圧とともに感じ取った朝陽は、苦笑いを浮かべる。



「…ふふっ」



 その時、朝陽達の耳に聞き覚えのない笑い声が届く。


 振り返った先では、透子が思わずと言った様子で笑い声をあげていた。


 朝陽達の視線に気付いた透子は、ハッ!とした様子で口元を塞ぎ、顔を隠そうと俯いてしまう。



「笑った……笑ってくれた!」



 朝陽は直ぐに透子に話しかけようとするが、それではせっかく開きかけた心の扉が閉められてしまうと思い直し踏みとどまる。


 ただ、自分達の行動で笑顔を浮かべてくれた。その事実が朝陽の心を強く喜ばせていた。






────







「…また来たよ」

「毎日毎日…随分と暇してるんだな」

「これだから『軍』の『グリッター』は…」



 予想通り、直接的に言われることは無かったが、ヒソヒソと、常人ならば聞き取ることの出来ない程の小声で朝陽達は悪態をつかれる。


 決して暇を持て余しているわけではなく、寧ろ人々を守るために時間を割いて巡回しているのにこの始末なのだから、皮肉としか言えないだろう。



「無視無視ぃ。私達は100%善意で動いてるんだからぁ、周りから何て言われようと気にしなくて良いんだよぉ」



 華に諭され、一同は頷き気丈に振る舞う。



「奏ちゃんも、黙ってれば……そんなに圧は無いから、プレッシャーを与えちゃダメだよ?」

「……!!(何ですか今の沈黙は!!)」



 と、一瞬吹き出した圧に気付いた人物達が、奏の方を見て小声で話し出す。



「おい見ろよアレ…ふざけたマスクつけやがってさ…」

「……ッ!?(わ、私だって好きで着けているわけではないのですがッ!?)」



 その瞬間、奏はたまらずその二人組に目を向け圧を放ってしまう。


 不幸なことに、常人では聞き取れないような小さな声であっても、『グリッター』の強化された聴力ならば優に聞き取れてしまうのである。


 そして相手は素直実直な奏。


 残念ながら理性が働く前に本能が動いてしまったのである。



「ヒッ!?な、なんだよその目は!!俺達に歯向かうのか!?」



 華、梓月の両名は、「あちゃー…」と頭を抱え込む。


 二人がどうにかして避けようとした、一番恐れていた事態が起きようとしていた。


 朝陽達はともかく、民衆にはその二人組の敵意が蔓延し、一触即発な雰囲気にまで至ろうとしていた、その時であった。



「あぁ!!あの時のお姉ちゃんだ!!」



 一人の幼い少女の声が、その空気を拭い去っていった。

※後書きです







ども、琥珀です


あまり数字を気にするのは良く無いことなのですが、残念ながらここ数日のPV数が激減しました…


ただこれは、原因究明よりも小さな要因で読まれなくなってしまう私の力量と、本編の魅力不足によるものです


そんな時に私にできるのは、書き続けること。

駄文であろうと自己満であろうと、読んで下さる皆様のために、筆を取り続けようと思います。


どうか、本作品を引き続き宜しくお願いします。


本日もお読みいただきありがとうございました。

明日も朝の7時に更新されますので宜しくお願いします。

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