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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
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第206星:想定戦

早乙女 咲夜(24?)

 常に大和に付き従う黒長髪の美女。一度は誰しも目を奪われる美貌の持ち主。落ち着いた振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』を導く。その正体は100年前に現れた伝説の原初の『グリッター』本人であり、最強の戦士。


斑鳩 朝陽(18)四等星

 千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。


【新加入メンバー】

五十嵐 歪(25)

 礼儀正しく誠実で、やや堅苦しい口調ながら気さくな女性。 


霧島 カンナ(28)

 ミステリアスな雰囲気を醸し出す女性。落ち着いた振る舞いで同じメンバーをフォローする包容力を持つ。


無値(14)

 無感情・無機質な反応の少女。歪、カンナの命令に忠実に従う。


日浦 透子(16)

 常に何かに怯えているような様子の少女。歪、カンナに従う。

「たぁッ!!」

「大振りし過ぎて脇がガラ空きです」



 『グリット』を開放し、顕出させた朝陽の槍を、咲耶は悠々と交わし、隙だらけとなった脇から払いのける。



「ッ!!まだまだぁ!!」



 地面を転がされながらも、直ぐに姿勢を直し、再び攻め込む。


 側から見れば十分な攻撃速度を繰り出しているように見えるが、咲夜はこれを難なく捌いていく。



「(…ここ数週間でだいぶ体感が身についてきましたね。『グリット』解放時の変化にもだいぶ慣れてきたようです)」

「たぁッ!」



 激しい攻防の中で作り出した隙を、朝陽は的確についていく。



「甘いですね」



 しかし、それは局面を切り開こうと用意していた咲夜の罠であった。


 そして、その動きを見切っていた咲夜が反撃に転じようとした瞬間────



「ッ!!」



 朝陽は攻撃の手をピタッ!止めた。


 掴んで投げ飛ばすことで反撃しようとしていた咲夜の手は虚空を切り、先程以上の、しかも作られたものではない大きな隙が出来る。



「ココッ!!」



 そして、その隙を突くようにした朝陽の鋭い攻撃が繰り出され…



「『衝撃槌インパット・マルテッロ』」

「えっ!?わっ!?」



 バトル・マシナリーを取り出した咲夜の反撃にあった。


 右腹部を襲った強い衝撃により、朝陽の身体は側面くの字に曲がり、飛ばされていった。



「いったたたた……そう言えばバトル・マシナリーもOKなんでした……うぅ、油断してました…」



 脇腹を押さえながら、朝陽は寝転んだ姿勢で苦悶の表情と悔し気な表情を浮かべていた。



「いえ、今のはお見事でした。バトル・マシナリーは確かに有りと言いましたが、まだ当分使う予定はありませんでした。それを使わざるを得ない状況にまで持っていかれたのです。十分ですよ」



 その倒れ込む朝陽に手を差し出し、咲夜はゆっくりと起き上がらせる。



「今のは、私が敢えて隙を作っているのを見抜いての動きですか?」

「い、いえ…正直直前までは全然分かってなかったです」



 咲夜の問いに対し、朝陽は素直に答える。



「でも攻撃した時、今まで隙なんて無かったのにいきなり出来るのはおかしいなって思って、それで身体が咄嗟に動きを止めたんです」

「……成る程」



 その答えを聞いて、咲夜はしばらく考え込む。


 自分の動きに問題があるのでは、と考えた朝陽は、不安げな表情で咲夜に尋ねる。



「ごめんなさい、本当はこういうのは理解して読み切った上でやらないと行けない動き…ですよね」



 自分の仕草が朝陽を不安にさせてしまっていることに気付いた咲夜は、優しい笑みを浮かべ首を振った。



「いえ、そんなことはありませんよ」

「…え?」



 自分の予想とは違う答えが返ってきたことで、朝陽は思わず驚いた表情を浮かべる。



「確かに相手の動きを理解し読み取ることは大切です。ですが、全ての人がこれに適しているわけではありません」

「…えっと?」



 直ぐには理解できず、朝陽は首を傾げる。



「つまり、貴方の場合は直感力に優れている、ということです。臨機応変さや、咄嗟の場面に強い…貴方にとっての長所であると言えるでしょう」



 (恐らく)褒め言葉をかけて貰い、朝陽は嬉しそうに笑みを浮かべる。



「こと対『メナス』に関しては、私のような特定のメソッドに従った杓子定規のような戦い方よりも、貴方のようなその場に応じて戦う臨機応変さの方が強さを発揮されます。この点に関して言えば、貴方のその直感力は強みであると言えます」



 咲夜は「ですが…」と続ける。



「ここ最近は『メナス』と知性をつけています。私が直接対峙したことのある【オリジン】はまた少し別ですが、『アイドス・キュエネ』や『エデン』といった高い知性を持つ『悪厄災(マリス・ディザスター)』相手には、それだけでは勝てません」



 咲夜の言葉に、その通りだと朝陽も頷く。


 『エデン』や『アイドス・キュエネ』とはまだ直接対峙したことはないものの、歴代の『悪厄災(マリス・ディザスター)』の強さを鑑みれば、その実力もまた相当だろう。


 そして高い知性を身につけた両者は強力且つ危険。


 いつか直接戦う時がくれば、直感だけでなく、考えで動くスタイルも必要になる。


 それを咲夜は学ばせようとしてくれていた。


 そこでふと、朝陽は気になったことを尋ねた。



「先生は、もし『悪厄災』と戦うことになった時、勝つことが出来ますか?」



 悪意も何もなく、純粋に気になり好奇心から尋ねたことであったが、咲夜は意外にも真剣に考え出した。



「…そうですね。私も【オリジン】以外の『悪厄災』とは戦ったことも見たこともないので、あくまでデータを基にした推察ですが……」



 咲夜は尚も考え続けながら、朝陽の問いに答える。



「恐らくは()()()であると思われます」



 その答えに、当然朝陽は目を見開いて驚く。



「二代目の『イージス』の防御力はまさに絶対防御。例え私の『原初の輝(イルミナル・オリジン)』を全力で放ったとしても、恐らく致命傷を与えることは叶わないでしょうね」

「…先生のあの威力でも…」



 先日の【オリジン】との戦いを僅かながら見ていた朝陽は、思わず固唾を飲む。



「三代目の『ロンギヌス』。この個体の最も恐ろしいのは、形成された槍に触れると消滅してしまう能力ですが…槍を当てるための高い身体能力も兼ね備えています。槍とこの身体能力を掻い潜って戦うのは至難の技です」



 槍の能力ばかりに目がいってしまっていたが、確かに当たらなければ怖くはない。


 咲夜はその当てるための身体能力にまで目を行き届かせており、この段階で今の朝陽との違いを見せつけられていた。



「四代目、『アイドス・キュエネ』。はっきりいってこの個体が一番厄介ですね。正攻法では太刀打ちできない絡め手や魔法のような能力を兼ね備えた『悪厄災』。それこそ、人類の知恵と科学を用いることでようやく勝利を収めることが出来るでしょう」



 以前、この根拠地に攻め込まれた時は、進歩した科学と大和の機転により切り抜けることが出来たが、もしこれを個人で相手することになれば…


 そう考えただけで朝陽の全身に悪寒が走る。



「さて、最後の『エデン』ですが…正直この個体だけは私だけでも倒せるかもしれません」

「え…?」



 ここまでの内容とは一転して、咲夜は強気な発言わする。



「まだデータが少ないので何とも言えない点は多いですが、『エデン』の恐ろしい点は人間を凌駕するやもしれない高い『知性』です。一部の情報によれば、その『知性』を分け与えることも可能という噂も聞きますが…」



 咲夜はその時、不敵な笑みを浮かべた。



「こと戦闘においては、寧ろ好都合と言えるでしょう」

「好都合…ですか?」



 困惑する朝陽に、咲夜は頷いて続ける。



「かつての【オリジン】がそうでした。出会って間もない頃は本能的な動きを強さに直結させ、とにかく動きが読めない…厄介な相手でした」

「あ…そっか」



 朝陽もそれで咲夜の過去の話を聞いた時のことを思い出したのか、合点がいった表情を浮かべる。



「ですが【オリジン】は次第に知性を身につけていきました。それは本来の強さである筈の本能を押し殺し、理知的な動きを取るようになっていったのです。私はそこから一時的に逆転の手を得ることが出来ました。まさか、本能を全開にした『狂化形態』を引き出してしまうとは思いませんでしたが…」



 咲夜は苦笑いを浮かべたあと、話を続ける。



「分かりましたか?『知性』を身につけることは確かに脅威ですが、ある意味で『メナス』は人間の土俵に自ら上がろうとしているのです。それならば、我々に十分勝機があります」



 確かに、と朝陽は頷く。


 『メナス』が知性を身につけることは危険だと漠然と考えていたが、咲夜の捉え方なら確かにプラスに働かせることができる。


 厄介なことであることには変わりはないが、考え方次第でこうも変わるのか、と朝陽は素直に感心してしまっていた。



「そう言った意味で、『エデン』は私にとっては高い易い相手であると考えることが出来ます。もちろん、『エデン』の身体能力や、兼ね備えられた『知性』の高さにもよるとは思いますけどね」

「成る程……」



 『エデン』の話については感心した朝陽であったが、他の三体の『悪厄災』については、改めて脅威であることを認識させられていた。


 そして、そのうち二対を倒した歴代の『グリッター』及び『軍』の偉人に、畏敬の念を抱かざるを得なかった。



「他人事ではありませんよ。『アイドス・キュエネ』は健在で、『エデン』は未だ未知数。そして【オリジン】が生存していることも発覚しました。今の世界はかつて無い程危険な状況です。これに立ち向かうは私達、そして貴方自身なのです」

「…はいッ!私、頑張ります!そして、みんなのことを守れるように強くなります!」



 朝陽の力強い返答に、咲夜も思わず頬を緩ませる。



「良い心がけです。ですが一つ、絶対に忘れては行けないことがありますよ。私達は…」

「『生きるために、立ち向かう』…ですよね!」



 満点の返答に、咲夜は今度こそ満足気に頷いた。



「さぁ、訓練を再開しましょう」

※今日の後書きはお休みです

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