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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
2章 ー小隊編成編ー
24/481

第23星:模索

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。自身が『グリッター』であることを隠そうとするが…?


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『天照す日輪イノセント・サンシャイン』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負った。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『輝く戦士グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。

「それじゃ失礼するよ。無理せず、しっかり治してくれ」

「はい、ありがとうございます。直ぐに戦列に復帰できるよう養生します」



 夜宵の返事に頷くと、大和はゆっくりと扉を閉め、ゆっくりと執務室へと歩き出した。



「…正直、意外でした」



 途中、咲夜が両手を前に置いた丁寧な所作のまま大和に語りかける。



「意外?」

「彼女が、小隊編成に賛同したことです。これまで一人で全員をまとめてきた本人だからこそ、部隊編成に拘るのではないかと考えていました」



 咲夜の考えに、大和は「成る程…」と何回か頷く。そして窓の外の景色を見ながら答える。



「ボクは寧ろ逆だと思っているよ。今まで一人でまとめてきた彼女だからこそ、今のままでは限界が来ていることを誰よりも感じていたんじゃないかな」



 大和は「それに…」と続ける。



「彼女は誰よりも仲間のことを思っていた。仲間の力を活かせていないのではないか、自分の指揮で傷付いてしまうことを悔いているようにも見えた。だからこそ、少しでもメンバーの為になるのなら…そう言う考えもあったんじゃないかな?」



 咲夜は窓の外を見つめる青年の横顔を見る。



 『誰よりも仲間を思っている』、『限界を感じている』。当然夜宵自身は一度もそんなことは言わなかった。


 実直に、小隊編成には賛同しているという旨を伝えただけだ。


 やり取りはほんの僅かな言葉のみ。


 その間に目の前の青年は、夜宵の心の奥底の訴えを読み取り理解したのだ。


 改めて、目の前に立つ青年に畏敬の念を感じ得ない。


 ひとの機微を敏感に感じ取り、理解する。側にいて、これほど心地の良い、信頼に足る人物はそうはいない。



「ボクも同じ気持ちさ。少しでも彼女達のために、もちろん夜宵君のためにもね。その為には、時には反対を押し切る。例え信頼を得られなくなったとしてもね」



 視線を窓の外から離し、真っ直ぐ咲耶の目を見る。



「それが、()()が少しでも生き残れる道に繋がるのなら」



 陽射しが大和を照らし、咲夜の目を眩ませる。


 それはまるで大和自身が放っているような後光のような眩しさだった。



「とは言え押し切るのは最後の手だ。彼女達の賛同を得られるにこしたことはない。だから辛い思いをさせてしまうかもしれないけど、手伝ってくれるかい?咲夜」



 大和はソッと手を伸ばす。そうして差し出された手を、咲夜は間髪いれずに手に取った。



「はい、もちろん。私はどこまでも、アナタと共に参ります」






●●●






 時刻は午後の三時。


 この時間になれば既に『グリッター』の職務はほとんど終了する。


 この後行われるのは午前と同じ訓練だ。


 定期巡回に出ている三名を除き、既に訓練場には全員の姿がある。



「皆さん、本日も職務お疲れ様でした。疲労はあるでしょうが、一日一日の訓練が戦いの日々を生き残れる糧となります。ですから全力で取り組んで下さい。私もその頑張りに応えられるよう、誠心誠意努めます」



 咲夜の言葉に、全員が力強く返事を返す。今朝の不穏な雰囲気は最早一切感じられない。


 依然として三咲含む一部のメンバーからは良くない印象が見受けられたが、今朝ほど明確なモノではなく、訓練をさぼるようなことはしないだろう。



「午前は組手を中心にしていただきました。現在の皆さんの純粋な実力を図るためです。午後は今朝もお伝えした通り、より実戦的な訓練を行います」

「具体的にはどのようなことを?」



 一人の隊員が挙手をして質問する。


 咲夜はどこに隠していたのであろうか大量の紙の資料を取り出し、ニコリと笑う。



「鍛えられた自分自身と『グリット』の能力を掛け合わせて、一人一人の戦い方を創り出していくのです」






●●●






 いかに頭脳明晰で指導力の高い咲夜をもってしても、一度に全員を教えることは出来ない。


 そこで午後の訓練では、少数のグループを作り、それぞれのグループ内で各々の能力について話し合い、理解を深める形を取ることとなった。


 そして一日一グループの中に咲夜が入り、話し合いと実戦形式の訓練を行っていく。


 初日は大刀祢おおとね タチ、海藤かいどう 海音あまね矢々(やや) 優弦ゆづるの三人のグループ。


 そこへ咲夜が付くことになり、残りの11人は各々のグループ内で話し合うことになる。



「それでは最初はあなた方三人になります。まず確認ですが、三人は互いの能力をキチンと理解し合っていますか?」



 三人は顔を見合わせ、やや困った顔をした。


 その中の一人、額の部分にヘアバンドを巻いている大刀袮 タチが答えた。



「能力の特性は聞いています。しかし、理解となると…」

「また…別案件…だね…」



 最後の方は口ごもった結弦だったが、その部分を口にタイトなマスクを着けている矢々 優弦がたどたどしい口調で答えた。



「やはりそうでしょうね。夜宵さんは隊長としても優れた能力を持っていられましたが、それ故にシンプルな戦術を用いていたのでしょう。だから、貴方方の『グリット』が活かされる場面が少なかった」



 咲夜の言葉に、二人は「確かに…」といった様子で頷いた。



「それが間違いであったなどとは言えません。前任の指揮官が指揮官でしたから、その中で彼女は最善を尽くしていたと言えるでしょう。ですが、この先、変化していくであろう戦場において、それだけでは生き残れません」



 咲夜はしまっていた書類を再びどこからともなく取り出し、交互に目を向けながら話を続ける。



「大刀祢 タチ 四等星。扱う能力グリットは『残志彷徨う不朽の刃イリュージョン・ラーマ』…あら、どうやら少し武道に心得があるようですね?」

「えぇ、まぁ…うちの家系は代々武の道を受け継いできたそうで、私も叩き込まれてきました。ですので武器エモノも銃よりは刀の方が戦いやすいと感じています。まぁここにはそういったバトル・マシナリーがないので意味のない話ですが…」



 タチの話を聞き、咲夜は数回頷くと、書類になにやらスラスラと記入し始める。



「成程、分かりました。それでは司令官に頼んで刀剣型の戦闘補具バトル・マシナリーを用意して貰いましょう。確か『機刀きとう影漆かげうるしー』のストックが……」

「…えっ!?ちょちょちょちょ!!」



 それがバトル・マシナリーを用意するための資料であることに気が付くと、タチは慌ててそれを制止した。



「どうしました?あぁもしかして刀よりも薙刀型の方が良かったですか?」

「いやそうではなく!!そんな簡単にホイホイと用意出来るモノではないですよね!?それに、量産型でないバトル・マシナリーは相当軍費を使ってしまいますよね?そんなことをしたら他の資材が…」



 バトル・マシナリーは決して安モノでない。


 量産型の『グリットガン』ならまだしも、量産型でないバトル・マシナリーはそれなりの資金が必要になる。


 当然個人の資金を使うわけではないが、一つの根拠地に割り振られた軍費は決められている。


 モノにもよるだろうが、特注品などともなれば軍費の半分は飛ぶだろう。


 『機刀きとう影漆かげうるしー』は個人に合わせたカスタム品ではないためそこまでの費用はかからないが、それでもこれまで使ってきた『グリットガン』とは比べ物にならない額になるだろう。


 これまで節約に節約を重ねてきた彼女達にとって、抵抗感が生まれるのも当然の反応だと言える。


 しかし、咲夜は表情を微動だにせず答えた。



「えぇ、確かにこれまでここで扱ってきた資材に比べれば相当に費用はかかりますね。ですが、それが何か?」

「え?い、いやここにはそんなお金はないし、それならもっと別のモノにお金をかけた方が…」



 咲夜はタチから目を離し、再び書類にサインを書き始める。



「費用のことなら何も問題ありません。不平等に割り振られていた軍の資金は司令官のお陰で是正され、十分に運用できる金額が割り当てられています。加えて今回の塚間義一の騒動で、横領されていた資金も上乗せされています。()()()バトル・マシナリーを支給してもやりくりできるでしょう。流石に個人特注オーダーメイドのモノはできませんがね」



 咲夜はサインをしていた手を止め、記入を終えた書類を三人に見せる。


 そこには、咲夜のサインのほか、承認の欄には既に司令官(やまと)の印が押されていた。



「既に司令官の許可を頂いています。そしてこれは当の本人からの意思でもあるのです。『金額の問題じゃない。バトル・マシナリーが少しでも皆の生きる力になるのなら安いものだよ』、と」



 咲夜はそっとその書類をファイルの中にしまい、呆然としたままの彼女達に微笑みかけた。



「さぁ、話し合いを続けましょうか」

※ここからは筆者の後書きです!興味の無い方はどうぞ読み飛ばして下さい!

※お知らせがありますので【今回は読み飛ばさずにご覧頂けると幸いです】


どうも、琥珀です!

今回は後書きをお借りしてお知らせさせていただきますm(_ _)m


実はリアルの都合がつかなくなってしまい、一時的に更新を止める決断をしました…

期間は長くても五月いっぱいを予定してます。早ければ五月後半には再開するかもしれません。


突然のご報告になってしまい申し訳ありません…


本日も【Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―】をお読みくださりありがとうございます。



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