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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
233/481

第199星:違い

国舘 大和(24)

 千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに指揮をとりつつ、根拠地内の環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。実は関東総司令官という立場であるが、それを隠している。


早乙女 咲夜(24?)

 常に大和に付き従う黒長髪の美女。一度は誰しも目を奪われる美貌の持ち主。落ち着いた振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』を導く。その正体は100年前に現れた伝説の原初の『グリッター』本人であり、最強の戦士。


斑鳩 朝陽(18)四等星

 千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。

 翌日。


 通常の訓練と軍務を終えた朝陽は、咲夜に指定された場所へと移動した。


 それは、かつて朝陽が一人で訓練を積んでいた、そして、大和と初めて対話を重ねた、あの海岸であった。


 時間が時間のため、すでに周囲は薄く陰っていたが、ここは陽を遮るものが無い為、まだ幾分か明るかった。




「それでは本日より訓練を始めていきますが…その前に朝陽さん、一つ確認をしておくことがあります」

「は、はいッ!!」



 改めて、根拠地の指揮官であり、原初の『グリッター』である咲夜と一対一で話す状況に、朝陽は今更ながら緊張感を覚えていた。



「私と貴方の『グリット(能力)』の差はなんだと思いますか?」

「へ…?差、ですか…?」



 咲夜に問われ、朝陽は腕を組んで考え込む。



「えと……出力の差…ですか?」

「違います」

「あぅ……」



 朝陽なりに必死になって考えた答えを、咲夜は一蹴する。



「『グリット』における出力は、訓練と慣れによって上昇します。最初は相手をふらつかせる程度であったものが、年数を重ねていくにつれて相手を吹き飛ばす程の威力にまで強化した例があります」

「ふえぇ…私は全力で撃てば多少大きな建物くらいなら壊せるかな…」

「まぁ私は最初から山を消し飛ばせましたけども」

「えっ?」

「なんでもありません」



 耳を疑うような咲夜の発言に思わず聞き返すものの、咲夜はそれ以上答えなかった。


 話された内容に感心しつつ、朝陽は本来の質問内容を思い出す。



「えと…じゃあ、私と指揮官の『グリット』の差って…?」



 咲夜は僅かに考える素振りを見せた後、次の瞬間、自身の『グリット』を解放した。


 髪は白銀に、眼は蒼玉色に染まり、全身からは眩く美しい白銀の光が溢れていた。



「私の『原初の輝(イルミナル・オリジン)』の能力は《光を操る事》です。より具体に言うと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です」



 咲夜は右手に光を集約させ、剣や槍、螺旋させたり固定したりと自在に操り見せてみる。



「ご覧のように、形状から性質まで自在に操ることができます。高出力且つ汎用性が高いことが大きな特徴でしょう」



 確かに、と朝陽は頷く。


 咲夜の過去の話を聞いていたときにも、放つ、防ぐ、切るなど、光単体で様々な役割をこなしてきていた。


 どんなことも高いレベルでこなす咲夜にとって、まさに理想の能力であると言えるだろう。



「さて、それに対して朝陽さんの『グリット』ですが、こちらはもっと広義且つシンプルです。貴方の場合はそのままの意味で、『光を操る事』そのものであるからです」

「えぇ…っと?」



 咲夜にとっては簡単な説明であっても、元々考えるよりも直感で動くタイプの朝陽は理解が出来ないでいた。



「つまり、貴方にとって光全てが支配の対象であるということです。自分のエナジーから作られたものだけで無く、自然光・人造光。その全てが貴方の能力の対象ということです」



 自分の能力の説明を受けて、朝陽は少なからず驚いてしまう。


 これまでに、確かに太陽光を収束させたり、『メナス』のレーザーを跳ね返したりすることはあった。


 しかし、それは無意識に、直感的にやってきたものであったため、改めて説明されると、自分でも畏怖するくらい強力なものであると認識させられたからだ。



「能力の性能としては同じ《光を操る》能力であっても、ハッキリ言って貴方の方が遥かに優れています。貴方が能力を極めれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()



 その時、朝陽が感じたのは歓喜か恐怖か。


 手足から、額から、全身から、今までとは違うような汗をかいていた。



「つまり貴方が伸ばすべきは『グリット』への慣れと強化、そして経験です。そして貴方にはそれらが圧倒的に不足しています。本来は時間の経過とともに積み上げていくものですが、『大輝戦』を期日と私がした以上、通常のままでは到底時間が足りません」

「え、じゃあどうすれば……」



 朝陽の返答は予想通りのものだったのだろう。


 咲夜はニコッと穏やかながら圧のある笑みを浮かべる。



「今日から毎日、ここで私と組み手をしましょう」

「く、組手…ですか?」



 朝陽は緊張した面持ちでゴクリッと唾を飲む。


 かつて朝陽は、就任した直後の咲夜と組手を行い、一瞬にして敗れたことがあるからだ。



「ただの組手ではありません。『グリット』や『戦闘補具(バトル・マシナリー)』の使用も可とした、より実戦に近い形式とした模擬戦を行います」

「バ、『戦闘補具(バトル・マシナリー)』もですか!?」



 予想を上回る本気ぶりに、朝陽は思わずたじろぐ。



「先程と申したように、通常の訓練では時間が足りません。これからに必要な経験や慣れを素早く習得するには、その分身体に覚え込ませるしかないのです」



 実戦に限りなく近い模擬戦に、最初こそ戸惑ったものの、次第に朝陽は理解し納得していった。



「時間がない中で効率的に鍛えていく…私は過去に、100年前の時にも同じ訓練を実施したことがあります」

「…ぁ、『地上奪還作戦』の時の…」



 朝陽の答えに、咲夜は頷く。



「最も、その時でさえ最低限の戦力にまで持っていくのに、一年以上を要してしまいましたけどね」

「え、じゃあ一ヶ月なんてとても無理じゃ…」



 またしても、咲夜はその答えを待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべた。



「ご心配なく。その時は100名以上の方を一斉に鍛えなくてはならず、その期間を要しましたが、今回は貴方一人です。十分効果は見込めますし、時間も足りるでしょう」

「……あの、それって100人に分散していた負荷が私一人に全部かかるということでは……」



 朝陽は今度は全身から冷や汗を流しながら尋ねるも、やはり咲夜は静かに圧のある笑みを浮かべるだけで答えなかった。


 代わりに…



「それでは早速始めていきましょう。今日は初日ですので、()()()()()()()()()()()()()()()



 朝陽の息を飲む音とともに、咲夜との訓練が始まりを告げた……






●●●






「…………………」

「………あの〜…」



 翌日、根拠地内の訓練場では、朝の訓練を前にして、フラフラと立ち尽くす朝陽の姿があった。



「だ、大丈夫ですか朝陽ちゃん」



 その様子を心配に思った梓月が声をかけるも、朝陽はぐったりとした状態で、指でオッケーサインをするだけの返答に留まっていた。



「朝陽さん!!もしかしてそれは先日の戦いの後遺症なのでは!?これから市原先生のところへみせにいきましょう!!」

「ふえぇっ!?ち、違います違います!!これはその……えっと……ちょっと夜更かししちゃって……」



 確かに朝陽の目の下にはクマが出来ており、単なる寝不足のようにも見えた。


 ただそれ以上に疲労感が見られ、それが奏達の心配を煽っていた。



「(け、結局昨日は…というか今日は二時間近く指揮官と模擬戦を続けて…流石にヘトヘトだよぉ……)」



 とは言え、朝陽もこのくらいの訓練は覚悟の上で咲夜に弟子入りをしている。


 過酷とはおもいつつも、弱音だけは吐くまいと心に誓っていた。



「(奏さん達にも心配を掛けないようにして、軍務もしっかりこなさなくちゃ!)」



 パンパンと両頬を叩き、自分を気付し、訓練に挑んだ。


 そしてその様子を、大和は執務室の窓の外から眺めていた。



「朝陽君、相当疲れてる様子だね。初日から随分と張り切ったみたいじゃないか」



 室内では、大和のお茶を入れ終え、書類をまとめる作業に入っていた咲夜が自身の机に座っていた。



「あのくらいで根を上げられても困ります。訓練はここからが本番。私に弟子入りしたからには、それくらいは覚悟してもらわないと」

「ははは…厳しいね」



 淡々と答える咲夜に対し、大和は苦笑いを浮かべる。



「…昔と同じ…むしろ人が少ない分早く鍛え上げられる…そういう風に伝えたんじゃないかな?」



 ピタリ…と咲夜の作業の手が止まる。




「やっぱりね」



  その反応を見て、大和は今度は見透かしたような笑みを浮かべた。



「まぁ間違いではないけどね。君はかつて何百人もの人を鍛えるためのメソッドを仕立て上げて、成功させた功績があるから」



 大和は「でも…」と続ける。



「それが一人に向けられる分、確かに効果はより高くなる。同時に、その負担も朝陽君一人に掛かることにもなる。その事を忘れちゃいけないよ」



 咲夜も大和の発言内容について考えていなかったわけでは無いだろう。


 それでも、改めて指摘を受けた事で、再度自分の中での認識を誤らないよう考え直した。



「あら?大和、そちらの資料は?」



 と、そこで咲夜は大和の机の上に四枚の資料が置かれていることに気がつく。



「ん?あぁ、これかい?これはまぁ…()()()()()()()()()…かな?」



 トントン、と机を叩きながら、大和は机の上に並べられた書類に目を向けた…

※後書きです






ども、琥珀です。


なんかおかしいなと思ったら、先週は土曜まで更新して、月曜お休みいただいていたんでしたね…


どうりで何か短いスパンだな、と…笑


今週は通常通り月曜〜金曜日で更新して参りますので、宜しくお願いします!!


本日もお読みいただきありがとうございました!

明日も朝7時に更新されますので宜しくお願いします!!

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