第21星:教授
国舘 大和(24)
再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。自身が『グリッター』であることを隠そうとするが…?
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『天照す日輪イノセント・サンシャイン』を覚醒させ、仲間の命を救った。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負った。
樹神 三咲 (22)
千葉支部所属。夜宵の率いる『輝く戦士グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。
佐久間 椿(22)
千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。
「そうです、必要以上に力を入れる必要はありません。大切なのは重心です。まずは自分の重心をしっかりコントロールしていきましょう」
「「「はいっ!!」」」
それからはあっという間だった。
咲夜の姿に充てられ、朝陽を筆頭に『グリッター』の戦士たちは言われるがままに咲夜の指示に従い、組まれた訓練を行っていた。
もちろん全員が納得しているわけではない。
三咲は訓練こそ行っているが、その表情は冴えず、他にも数名は咲夜の行動に納得していない様子だった。
咲夜が指揮すること以外にも、彼女が課した訓練の内容に不満を感じている者も居るようだった。
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朝陽との模擬戦後────
「さて、今の模擬戦を見て頂いた上で説明をさせていただきますと、貴方方は『グリット』の能力に頼り過ぎているきらいがあります」
倒れていた朝陽の手を引いて起こしながら、咲夜は模擬戦を行った意味の説明を始める。
「どういうことでしょうか?我々がメナスに対抗するためには『グリット』の力を頼らざるを得ないと思いますが…」
「間違いではありません。メナスの基本スペックは『グリッター』として覚醒した私達の身体能力でさえも大幅に上回ります」
咲夜はポンポンと体周りに着いた土埃をはらいながら、「ですが…」と続ける。
「『グリット』の力が全てではありません。能力の相性、戦闘補具不所持、これらのような様々な戦闘場面において、最も信頼できるのは『グリット』ではなく、己の身体です」
両腕を僅かに広げ、咲夜は身体の大切さを表現する。
朝陽の高速攻撃を躱し、気付かぬ間に抑え込んでいた咲夜の動きを実際に目の当たりにした後では、簡単には反論できない。
寧ろその言葉の正しさを全員が理解していた。
「私達の『グリット』は確かに強大で、メナスに対抗しうる力を有しています。だからこそ、その力を最大限に活かし、解放するために万全を期す必要があるのです。肉弾戦もその一つに過ぎません」
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それからして、咲夜は全員に組手の訓練を課した。
戦いは、実戦に近い形が一番覚えるという咲夜の考えに則ったものである。
武器、能力の使用は無し。ただひたすら徒手による戦いが繰り返されるだけだ。
彼女達も決して肉弾戦の素人と言うわけではない。
能力覚醒の見込みのある者には専用の養成学校のようなものがあり、そこで『軍』についての知識を始め、実戦に向けたトレーニングも行われる。
その中には当然戦闘を想定された訓練がある。とはいえそれは申し訳程度に課されたモノである。
あくまで主体となるのは『グリット』の力。
徒手による戦闘知識、経験はあくまで補助的なものでしかないと教わってきたのだ。
咲夜の今の教えとは真逆である。それが、三咲達の反感をかっていたのかもしれない。
しかし、当の本人である咲夜はそのことに気が付きながらも知らん顔だ。
真剣に取り組んでいる人のもとに向かい、身振り手振りを交えながら教えている。
「力で相手を投げるのではありません。相手の姿勢と重心を崩し、崩れた時に直そうとする勢いを利用するのです。一度お手本を見せましょう」
最初の印象とは打って変わり、咲夜は柔和な笑みを浮かべながら親切丁寧に教えていた。
そのギャップがまた彼女達の咲夜への印象を良くしているようだった。
組手開始から30分程したところで、咲夜は両手を叩いて組手を止めた。
「今日はここまでにしましょう」
「え、もうですか?でもまだ時間はありますよ?」
全員息は上がっていたが、まだ余裕があるように見える。
伊達にメナスと戦ってきたわけではなく、スタミナは十分にあるようだった。
しかし、咲夜はそれ以上組手を続けさせることはしなかった。
「朝の訓練はこれで十分です。このあとはそれぞれ軍務があるでしょうし、必要以上に疲労を残してしまってはいけません。残りの十五分はしっかり休んで仕事に勤しんでください。休憩中は組手相手からフィードバックを聞くとより効果的ですよ」
咲夜の説明を聞き、全員が成程といった様子で頷き、言われた通り互いに互いのフィードバックを始めていた。
咲夜はそれを満足そうに見届ける。
「それでは、私は司令官のもとに向かわなくてはならないのでお先に失礼します。午後に正式な着任式を行います。その後各々の仕事をこなしていただいた後午後の訓練を開始します。早朝訓練とは違ってより実戦に沿ったモノを行いますので頭に入れておいてください」
咲夜はそれだけを伝え残し、一同に一度頭を下げ、その場を去っていった。
強制されたわけでも何でもないが、「「「ありがとうございました!!」」」という声があたりに響き渡った。
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午前九時。大和が執務室に入ると、そこには既に咲夜の姿があった。
「おはよう咲夜、早いね」
「おはようございます、大和。許可していただいた訓練をみていましたので」
座れるよう引かれた椅子に腰かけ、咲夜の話に耳を傾けた。
「はは、そうか早速今日から始めたのか。けれどいきなり過ぎて彼女達から反感を買わなかったかい?」
ティーポットにお湯を注ぎながら、咲夜は僅かに苦笑いの笑みを浮かべていた。
「そうですね、全員が全員納得しているわけではないでしょう。それでも私の言動が少しでも彼女達の生存率を上げることに繋がるのでしたら、私は喜んで嫌われ者になりましょう」
適温で香ばしい香りを漂わせた紅茶を口に含み堪能した大和は、そっとカップを机の上に置く。
そして「美味しいよ」と一言伝えてから答えた。
「大丈夫、君の想いは必ず彼女達に届くよ。ボク達が誰であって、どれだけの経験を積んできたといってもここでは新参者だ。少しずつ理解され、理解していこう」
大和の答えに、咲夜は嬉しそうに目を細める。
「そうですね。理解していただけなかった方がいたとは言え、皆素直で良い方ばかりでした。この根拠地はきっともっと良くなります」
互いに目を合わせ、笑みを浮かべ合う。
早朝の訓練では、大和以上に過激ともとれる応対を繰り返していた咲夜だったが、本来は大和同様、聡明で温和な人柄であり、訓練の終盤に見せた姿こそ本来の咲夜である。
恐らく大和と立場が逆であったのなら、咲夜が大和と同じ対応をしていたかもしれない。
しかし咲夜は司令官ではなく指揮官である。より現場に近く、そして隊を任せられている身である。
そして現場の過酷さと非情さを知っている咲夜は、優しさだけでは決して生き残れないことを身をもって知っていた。
だからこそ、敢えて厳しい発言をすることで緊張感というハリを持たせたのだ。
「(咲夜は時にボク以上に過激だからなぁ…昨日の様子を見ると恐らく三咲君あたりが良くない感情を抱いているかもしれないな…)」
一方で大和もすべてを咲夜に任すようなことはせず、咲夜の話からメンバーの現状を思案していた。
もちろん、昨日の咲耶の提案を承認していた時点で、そうなる可能性は考慮していた。
「(とは言えボクも彼女から見て良い人物であるとは思われていないだろうね…さて、どうするかな)」
頭をクリアにするため、大和はもう一度紅茶を口に含む。咲夜の淹れる紅茶は素晴らしい味だった。
熱、湯の量、淹れ方、その全てが高クオリティである。
何より飲む人を喜ばせたいという素直な想いが込められていた。
そこでふと、大和は考えた。
「素直な想い…か」
「……?」
大和が零した言葉の意味を咲夜は汲み取れず、首を傾げた。
「そうだな…難しく考えすぎていたのかもしれないな」
大和は再び言葉を溢すが、それも咲夜の理解を深めるには至らなかった。
大和は一度頷いて、カップの中に残された紅茶を飲みほした。
※ここからは筆者の後書きになります!興味の無い方はどうぞ読み飛ばして下さい!
ども、琥珀でございます。
え?感嘆符が無い?
はい、元気が無いのであります…
じゃあ何で小説投稿しているかですか?
一番楽しい時間だからであります…
4/29日の琥珀から未来の琥珀へ…アナタはいま、お元気ですか??
と、言うわけで!
本日も【Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―】をお読みくださりありがとうございます!次の更新は明後日水曜日になりますので宜しくお願いします!




