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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
The everything Origin Saga
219/481

ー Saga 19 ー

早乙女 咲夜

 『メナス』の襲撃により地下の施設へと逃げ延びた17歳の少女。英才教育により歳不相応の知識と身体能力を兼ね備える才色兼備。人類初の超能力に覚醒した。


早乙女 白夜

 咲夜の五つ下の妹。姉とは違い英才教育を受けていないため、年相応の振る舞いを見せる。人の内心を鋭く見抜く洞察力を持つ。


泉 奈緒

 咲夜に次いで能力に覚醒した防衛隊の女性。明るく天然気質だが、他者のことをよく見ている。咲夜の友達。【オリジン】との戦いに敗れ、命を落とした。


柳瀬 舞

 実直真面目な女性。足りない能力は努力で補う、諦めない才能の持ち主。重症を負いICUで治療を受けるも再起不能と診断される。


天音 夏希

 ショートヘアで小柄・ボーイッシュな見た目通り、強気でポジティブな女性。天性のアクロバティックムーブの才能を持つ。江南と共に咲夜と離別し『軍』を抜ける。


江南 唯

 メガネをかけたミドルツインテールで、知識豊富な女性。場面に応じた判断力に優れる。柳瀬の重傷により、『軍』に不信感を抱き咲夜と決別。天音と共に『軍』を抜け出す。


伊吹 加菜

 髪をポニーテールにまとめ、常にクールで凛とした女性。サブリーダーとして咲夜に付き従う。初めての戦闘で咲夜を見てから、彼女に心酔する。

「対【オリジン】殲滅作戦…ですか?」



 ある日のこと。


 『軍』の上層部に呼び出された私は、開口一番にその話をけしかけられました。



「そうだ」

「作戦の内容を伺う前に、本作戦を立案するにまで至った理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」



 前回の戦闘での傷が癒えるまでに三日程を要してしまっており、その間の情報は伊吹さんからの口頭で伝えられたもののみとなっていました。



「(……といっても、恐らくこの作戦自体は極秘に練られていたものでしょうけども……)」



 上層部の作戦はいつも突拍子もなく伝えられ、多少の無理は前提の上で挑まされます。


 その作戦が有効だったことは殆ど皆無で、悪戯に犠牲を出すだけでした。


 恐らく、あの満影という男は一度も立案に加わっていないでしょう。


 認めたく無いですが、彼の先を読む能力は本物です。


 彼が作戦を立案していれば、かなりマシなものになっているでしょう。


 責任を負いたくないのか、はたまた荒唐無稽な作戦を立案する上層部の面々を面白おかしく見るのが好きなのか…


 どちらにしても下劣だとは思いますが。



「理由は君が一番分かっているのではないかな?」

「…私が?」



 と悩んで見せたものの、直ぐにその理由に分かりました。



「……私が【オリジン】に対して有効打になり得ないと、ご判断されたわけですか?」

「その通りだ」



 とどのつまり、私は見切りをつけられたということでしょう。


 正直に言えば理解は出来ます。


 この一年近く、私は【オリジン】に敗北を続けてきました。


 寧ろよくこの一年もの間、短気な『軍』上層部の面々が我慢したものです。



「……成る程、経緯は把握致しました。作戦の概要を教えていただけますか?」



 私に進行されるのが気に食わなかったのか、上層部の面々はあまり良い表情をされていませんでしたが、必要以上に食いつくのも面倒だと思ったのか、特に何も言ってくることはありませんでした。



「本作戦の実施は一回のみ。有する現勢力の五割を用いて【オリジン】を殲滅する作戦だ」

「現勢力の……五割も?」



 正直馬鹿げていると思いました。


 そもそも【オリジン】の戦闘能力は規格外で、数を増やせば良いというものではありません。


 私達の強さが『個』ではなく『和』にあることは重々承知です。


 ですが、その『和』の強さを力でねじ伏せることが出来る理不尽さが、【オリジン】の圧倒的な『個』なのです。



「……賛同しかねます。もし仮にそれで【オリジン】を倒すことが可能であったとしても、その後の『メナス』との戦いに間違いなく支障をきたす程の犠牲が出てしまうかと」

「分かっている。その為の作戦と戦力を今後重ねていくのだ。そもそも君の賛同など求めていないがね」



 賛同を求めていないというのならば何故話すのか。


 ……いえ、話されなければそれはそれで面倒ですね。


 話して下さるのは、良いことであると捉えましょう。



「我々とてバカではない。【オリジン】程の敵にして正面からただ火力をぶつけるような作戦は作らん」



 …思っていたよりも頭を使われているようですね。


 流石の彼らも【オリジン】は危険すぎるという認識を持たれたようです。



「より具体的な内容が決まり次第改めて通達する」

「過去にも無い大規模な作戦だ。直ぐには実現せん。その間は……任せたぞ、早乙女 咲夜」

「……了解しました」






●●●






 そう告げられてから三日が経ちました。


 作戦内容が分からない以上何も言えませんが、それが決行されるまでの間をワタシ任せにしている時点で、底が知れてしまいますね。


 とはいえ、実を言うと作戦が直ぐに決行出来ないというのは、私にとっては好都合でした。


 何故なら……



【ヴヴァッ!?】



 今日の私は、【オリジン】に対して優勢だったからです。



「(予想通り、動きがだいぶ読みやすくなっていますね。なまじ知性的な動きを身につけてしまったが故に、私にとって有利にしか働かなくなっています)」



 当の【オリジン】はと言うと、どこか困惑しているような様子でした。


 当然です。ついこの間まで圧倒していた筈の相手に、今度は優位に立たれているのですから。



【ヴヴヴ…】

「ハァ…ハァ…残念ですが…ハァ…私も負けるわけには…行かないのですよ」



 とはいえ、私に余裕があるわけではありません。


 動きが読めるようになったからといって、圧倒できるわけではなく、『全開放(リベレイト)』状態を維持しながら、全力の戦闘を続けなくてはならないのです。


 とはいえ、私個人の有用性を示す必要はあります。


 現に、こうして私個人で【オリジン】を倒すことが出来る可能性を見せ続ければ、五割もの戦力を割く大掛かりな作戦を実施する必要性が減るからです。


 無謀とも思える作戦に、仲間を送り出すわけにはいかない。


 なんとしても、私の手で【オリジン】を仕留めなくては…



【ヴヴ…ア…アハッ!♪】

「ハァ…ハァ…追い詰められているこの状況で…ハァ…笑みを浮かべますか…ハァ…理解が、出来ませんね…」



 地に這いつくばりながらも、【オリジン】は笑いました。


 ですがその笑みは、これまでとはどこか異なる、何か得体の知れない恐怖を感じました。


 そして、その答えは、直ぐに分かりました。



()()……()()

「ッ!?」



 聞き間違い?


 いえ、間違いなどではありません。いまハッキリと、【オリジン】は「楽しい」と喋りました。



【タノ…シイ!!オマエトノ戦イハ楽シイ!!】



 もはや認めざるを得ません。


 【オリジン】は完全に人間の言語を話しています。



「(…成長している兆しは見られていましたし、以前から私の言葉を理解しているような素振りは見せていました。ですがまさか…『メナス』が人間の言葉を…)」



 これはとても恐ろしいことです。


 戦闘に限らず、戦略や連携といった、人類の絶対とも言えるアドバンテージは『知性』です。


 その絶対の有利性がいま、揺らごうとしている。


 改めて、私はこの目の前の生物を、いち早く仕留める必要があると再認識しました。



「…貴方は危険すぎます。私の手で、終わらせて差し上げます」

【……?終ワリ?ソレヤダ。モット遊ビタイ。楽シミタイ】



 予想は出来たことですが、会話も成り立っています。


 まだ話す言葉はカタコトですが、元が話せなかったことを考えると、直ぐに流暢なものへと変化していくでしょう。


 他の個体もここまで至るのかどうかは不明ですが、兎にも角にも、その危険性を孕む【オリジン】は、最優先に倒さなくてはなりません。



「(動揺している場合ではありません。直ぐにトドメを……)」



 すかさず体を動かそうとしたその時でした。



【ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!】



 それまで会話さえこなしてきた【オリジン】が、まるで獣のような雄叫びをあげたのです。


 一瞬たじろいでしまったものの、死ぬ間際の断末魔だと思い、私は再度距離を詰めようとしました。



『咲夜さんッ!!左下後方!!』

「ッ!?」



 通信機から聞こえてきた伊吹さんの声に咄嗟に反応し、私は身を捩らせました。


 直後、服を掠るようにして一筋のレーザーが私の真横を突き抜けて行きました。


 その攻撃は、伊吹さん達が対応していた複数のうちの『メナス』の一体でした。


 決して優勢ではなかった筈の『メナス』は、その後すぐに対峙していた『グリッター』によって討たれたものの、私は疑問を感じざるを得ませんでした。



「(今までこちらを見向きもしなかった『メナス』が、急に攻撃を……?それも、まず間違いなく倒されることを理解したうえで……?)」



 信じたくはありませんが、まさかの可能性を疑いました。



「…貴方、まさか他の『メナス』を従えて……」



 言葉による返答はありませんでした。


 変わりに、否定も肯定もしないような不敵な笑みを浮かべたのです。



「(言語を話す知性だけでなく、集団をまとめるような能力まで……一体どこまで成長するというの)」



 人間味を増しているのは、その戦闘能力だけではありませんでした。


 統率能力まで兼ね備えている【オリジン】は、その圧倒的力を相まって、『メナス』からすればカリスマ的存在でしょう。



「これ以上、時間を与えてはいけない」



 危険性を改めて認識した私は、まだ戦闘中の他の『メナス』にも最大限警戒心を持ちながら、再び【オリジン】へと向かって行きました。



【ア゛ア゛!!】



 動揺と躊躇いで動きを止めていた隙に、【オリジン】の肉体は僅かながら回復を果たしていました。


 回復が追いつかない程の傷を負わせた触手も、半分近くが回復しており、再びその猛威を奮いました。



【バラケロオォォォォ!!】



 触手は腕のように太い形状から分裂し、細かなものへと細分化されていきました。



「手数が数十倍に増えるのは厄介ですが……」



 しかし、私は加速を止めることなく、真っ直ぐと【オリジン】へと向かっていきます。



【……?】



 予想外のことだったのでしょう。【オリジン】は僅かに困惑したような表情を見せました。


 そして、【オリジン】の触手の射程範囲に入ろうとしたその直前、私は身体を捻り、そのまま回転させました。



【ウッソ!!!!】



 身体に纏われた光の形状を、複数箇所変形させ、刃を作りました。


 それにより、私の身体を拘束しようと近付いてきた触手を片っ端から切り裂いていったのです。


 再生したてということもあり、すぐに触手は無くなりました。


 【オリジン】との距離は残り100m程。



「これなら……!!」



 そう思った矢先のことでした。



【ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!】



 再び【オリジン】は野生の獣のような咆哮を轟かせたのです。



「(また『メナス』に襲撃を…?ですが方角と動きは全て把握しています。今なら振り返らずとも対応は……)」



 結果として、私の推測は当たっていました。


 【オリジン】の咆哮は、『メナス』に私を襲撃させるものであったからです。


 但し、その場にいた『メナス』ではなく、()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()



「ッ!?どこ…から!?」



 戸惑っている暇はありませんでした。


 目の前に現れた『メナス』の数は三体。


 以前は苦戦したことはありますが、今の私にとっては問題にならない数です。


 ですがそれは、万全であれば、の話です。


 エネルギーの大半を使用し、ここまでの【オリジン】との戦闘で心身共に疲弊した状態で相手をするのは……



『ア゛ア゛!!』

『ア゛ア゛ア゛!!』

『ォ ア゛ア゛!!』

「くっ……邪魔です!!」



 光を纏って薙ぎ払いますが、無造作に振るった攻撃は、いとも容易くかわされます。


 加えて、この『メナス』達は積極的に攻勢に出ようとはしませんでした。



「くっ…!!この個体の狙いは……」

【ソウッ!!ワタシ逃スタメニ呼ンダ!!】



 私の考えを読み取ったかのような発言に、私は苛立ちを覚えました。



「……私を前にして逃げ出すのですか【オリジン】」

【《オリジン》…?私ノ名前?アハッ!!良イソレ気ニ入ッタ!!】



 私の問いに答えるより先に、【オリジン】は自分に名がつけられていることを喜んでいました。



【アッハハ♪逃ゲ出スノカッテ?当タリ前!消エタラモウオマエトハ戦エナイ!ソレ、ツマラナイ!】

「ッ!」



 挑発のつもりで発した言葉は、逆効果でした。


 【オリジン】の考え方がより明確になってしまっただけでした。



【アッハハハハハハ!!ジャアネ!!コレカラモ遊ボウネ!!()()()!!!!】

「…ッ!!待て!!逃げるなぁ!!!!」



 私の叫び声も虚しく、直後に三体の『メナス』から同時にレーザーが放たれ、私は身を守るためにやむを得ず、『原初の輝(イルミナル・オリジン)』で対応しました。


 そして次の瞬間、三体の『メナス』を飲み込みつつ、レーザーと衝突した激しい閃光によって、私は視界を奪われていきました。






●●●






 後日


 私はその日の出来事を偽りなく上層部に報告しました。


 私達の前では毅然と振る舞っていた(つもり)の上層部の面々も、動揺を隠さずにいました。



「そんな…バカな…」

「『メナス』が知性を持つ…だと?」

「もしそれが事実ならば、大変なことになるぞ…」



 本来ならば堂々としていて欲しい上層部の方々は、ここにいる誰よりも動揺する姿を見せていました。


 正直に言えば、話すことさえ躊躇っていました。


 話したところでどうにかなるとは思っていなかったからです。


 とはいえ、流石に秘匿出来るような内容でもないため、やむを得ず話しただけです。


 予想外だったのは、この男、道影が興味を持ったような表情を浮かべたことです。


 この時、結局彼は何も発言をすることはありませんでしたが、兎にも角にも不気味でした。



「『知性』は想定外過ぎるが…」

()()は対応出来るだろうか」

「(……彼女?)」



 その時、上層部の一人が発した発言を、私は聞き逃しませんでした。



「(私と伊吹さん以外に、幹部クラスはもう誰も残っていないはず。一体誰のことを……)」



 その正体は分からないまま、その日の会議は終わりを迎えました。


 ですが、彼らの言っていた人物の正体は、直ぐに分かることになったのです。

※後書です






ども、琥珀です。


やはりなかなか厳しいですね…

執筆の時間がとれず、アタフタしております…


木曜日に決断しようと思いますが、やはり土日の更新はお休みにさせていただこうと思います…


また追ってご連絡させていただきます。


本日もお読みいただきありがとうございました!

明日も朝の7時に更新されますので宜しくお願いします!

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