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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
The everything Origin Saga
211/481

ー Saga 11 ー

早乙女 咲夜

 『メナス』の襲撃により地下の施設へと逃げ延びた15歳の少女。英才教育により歳不相応の知識と身体能力を兼ね備える才色兼備。人類初の超能力に覚醒した。


早乙女 白夜

 咲夜の妹。姉とは違い英才教育を受けていないため、年相応の振る舞いを見せる。


泉 奈緒

 咲夜に次いで能力に覚醒した防衛隊の女性。明るく天然気質だが、他者のことをよく見ている。咲夜の友達。強個体との戦いに敗れ、命を落とした。


柳瀬 舞

 髪をポニーテール状に束ね、実直真面目な女性。足りない才能は努力で補う、諦めない才能の持ち主。


天音 夏希

 ショートヘアで小柄・ボーイッシュな見た目通り、強気でポジティブな女性。天性のアクロバティックムーブの才能を持つ。


江南 唯

 メガネをかけたミドルツインテールで、知識豊富な女性。場面に応じた判断力に優れる。戦う理由を見出し、咲夜達と共に戦う覚悟を決める。

 目の前に立つ『メナス』が、奈緒の命を奪った個体であるという確証はありませんでした。


 しかし、()()()()()()()()


 何より私の攻撃を難なく交わすほどの力を持っているだけで、この個体がこれまでの『メナス』よりも強いことは直ぐに分かりました。



「ようやく見つけた…奈緒の仇…ッ!!」



 この時の私には、平静さなど微塵も無かったでしょう。


 目の前に現れたのが奈緒の仇であると分かった瞬間、私の目にはその個体しか映っていませんでした。



【ア゛ハハハァ〜♪】



 その個体の様子は、明らかに今まで対峙してきたモノとは違う存在感を放っていました。


 今までの私ならまず最大限警戒していた相手。


 ですが今の私は、そんな警戒心すら忘れる程冷静さを失っていました。


 纏った光を全身に張り巡らせ、推進力を与えていきます。


 グッ…と力を溜めた後、一気に加速。飛翔しながら遠くにいた『メナス』とこ距離を縮めました。



「ハアァッ!!!!」



 そして光を剣のように変え一閃。横に薙ぎ払いました。



【ア゛ア゛〜 ♪ 】



 これを『メナス』は悠々と回避。


 更には仰反った姿勢から足だけを伸ばし、反撃をしてきました。


 薙ぎ払った勢いで身体が回転していた私は、その勢いのまま身体を捻り、『メナス』の足に自身の足をぶつけました。



「ッ!!」

【ア゛ア゛!!】



 両者の攻撃がぶつかり合った瞬間、大気が震えるほどの衝撃が辺りに轟き、それと同時に私達はその衝撃によって吹き飛ばされていきました。


 互いに宙にいたためにある程度の距離で制止し、再び正面を向きました。



「(何という重さ…彼女達の報告は嘘ではありませんでした。あの『メナス』、これまで戦ってきた個体とは次元が違う)」



 今のぶつかり合いの中で多少なりとも冷静さを取り戻した私は、ようやくその強さを理解しだしていました。



【……ア゛〜…】



 一方で『メナス』は、ぶつかり合った箇所(あし)をジーっと見つめた後、ゆっくりと私の方へ向き直りました。


 そして…



【…ア゛ハ ッ!♪ 】



 見ている私がゾッとするような、()()()()()()()()()()()()()



「(強いだけではありません。この『メナス』…感情に近い何かを持ってる…!)」



 私は本能的にこの『メナス』の危険性を理解しました。



「(必ずここで倒す…!倒さなくてはいけない…!)」



 そして私が再び攻勢に出ようとした時でした。



【ア゛ア゛!!】



 『メナス』は無造作にレーザーを放ちました。



「ッ!?」



 モーションも間も関係なしのレーザー攻撃を、しかし、私はギリギリのところで回避しました。


 柳瀬さんの訓練に付き合う中で、私もレーザー攻撃を見切る術を身につけていました。


 とは言え今の攻撃に予備動作のようなものは一切なく、半分は直感、もう半分は奇跡で回避出来たようなものでした。



「…なっ!?」



 そして視線を再び『メナス』に負けた時、既にその姿は私の目の前にまで迫っていました。



【ア゛ア゛ア゛ア゛!!】



 伸ばされる手、私を囲う無数の触手。


 完全に後の手を踏まされた私に回避の手段はありませんでした。



「スウウウゥゥゥゥ………!!」



 ですから、()()()()()()


 まず逃げ場を塞ぐようにして囲う触手を、小型のナイフのような形状に留めた光を手に纏わせ、細かい手の動きで全て切り裂きます。



「ハアアアァァァァ………!!」



 死角から迫る触手は、その箇所にのみ広く展開させた光で感じ取り反応、身体を回した蹴りで全て吹き飛ばします。



【!!】



 またその対処の動作で伸ばされていた『メナス』の拳を寸前のところでかわし、そのまま掴み投げました。


 腕を掴んだ瞬間、絞技や関節技を仕掛けることも可能でしたが、人体とは構造が異なる『メナス』には効果がありません。


 先手を取られたことで私の状態も十分では無かったため、投げ技で距離を取ることにしたのです。


 これは功を奏し、動機が早まっていた心臓を落ち着かせる時間を作ることが出来ました。


 片や『メナス』の方はと言うと、切られた触手を見て再び歓喜の笑みを浮かべていました。


 その様子はまるで、自分と遊んでくれる相手を見つけて喜ぶ子どものようでした。



「(子ども…そうか、子ども…どうりで…)」



 ここに来て、私は目の前の『メナス』の違和感の正体に漸く気付きました。


 私と対峙している『メナス』は、外見が他の個体よりも幼いのです。


 これまで見てきた『メナス』の外見は、人間で言うと16〜20の女子・女性の年齢。


 ところが目の前にいる『メナス』は、10を越えた程度の少女の姿をしていました。


 だから喜ぶ姿を見て幼さを感じ、違和感を覚えていたのです。



「(これはあの『メナス』特有の姿なのでしょうか。それとも新しい個体種…?)」



 私は一瞬頭の中で考えを張り巡らせたものの、直ぐにその思考を捨てました。


 目の前の『メナス』が奈緒を殺したと言う事実は、いずれにせよ変わらないからです。



「そうです…今はあの個体が何であろうと関係ありません。同じ個体が存在するのならば全て殲滅するだけです」



 纏っていた白銀の光を更に強め、私は笑みを浮かべたままこちらを見る『メナス』を睨みつけました。



【ア゛ハ ッ !】



 その殺気すら、『メナス』にとっては愉悦の対象でしかないのでしょう、愉快そうな笑みを浮かべました。


 その笑みが、私の心を逆撫でして行きます。



「…『全解放(リベレイト)』」



 私は能力の全てを解放しました。


 光は更に肥大化し、周囲の空気がヒリつくほどの圧を放ちました。



「貴方が他の個体とどう違おうと、私の目的は変わらない…!!貴方を倒す!!」



 そして私は、距離がある中で光の形状を変え、そのまま横に薙ぎ払いました。



【ッ!!】



 この『メナス』が笑う以外の表情を見せたのは、この時が初めてでした。


 振われた私の閃光を、『メナス』は急降下することで回避します。


 その直後、先程まで『メナス』が浮いていた位置から後方の()()()()、その衝撃で雲は全て吹き飛んでいきました。



【オ゛… オ゛オ゛〜!】

「喜びの次は感心ですか。いちいち人間味らしさをだして…腹が立ちます」



 勿論腹が立つ理由はそれだけが原因なのではありません。


 こんな…こんな巫山戯た奴に奈緒の命が奪われたこと…それが腹立たしいのです。


 次の攻防は私が先手を取りました。


 まずは閃光を放ち牽制。その後両手に光の剣を形成し、延伸させ『メナス』を威嚇しながら距離を詰めて行きます。


 『メナス』もただ私に振り回されているわけではなく、攻撃の合間にレーザーで反撃をしてきました。


 かわし攻め、かわし攻めの繰り返し。互いに攻防一体の鬩ぎ合いが続きました。


 やがて間合いを詰めた私達の攻防は、更に激しくなりました。


 気付けば再生し終えた触手を交え圧倒的な手数で攻める『メナス』に対し、万能性の高い白銀の光で全てに対応する鬩ぎ合いが苛烈さを増していきます。



「ッ!!」

【ア゛ハ ハ ァ !!】



 既に私達の距離は回避不可能な位置にまで迫っており、お互いに小さな傷を帯びて行きました。



「(まずい…!!このままでは…私が押される!!)」



 しかし、それでは私が不利であることは明白でした。


 小さな傷など一瞬で回復する『メナス』に対し、私は生身の人間です。


 いかに強化された『グリッター』の身体であっても、傷を一瞬で回復することは出来ません。


 小さな傷といえど積み重なれば大事に至ります。


 とはいえ、この『メナス』の戦闘力は想像以上で、『全解放』してもなお押し切ることが出来ないでいました。



「(このままでは…私のエネルギーが先に尽きてしまいます!!一度引いて体制を…)」



 その時、頭を過ったのは奈緒の笑顔、思い出、そして共に過ごしてきた日々でした。



「(…否!!)」



 私は引くことをやめました。


 ここで引いてしまえば、私は二度とこの怪物に勝利することは出来ないと、そう直感したからです。



「(怪我を恐れるな…!痛みに屈するな…!奈緒の命を…私から友を奪ったこの怪物を…許すな!!)」



 この瞬間、溜めに溜め込んだ怒りを爆発させ、私は更に前へと進みました。



【ウ゛ウ゛ッ !!】



 それが不快だったのでしょう。『メナス』はこれまでとは違う、顔を顰めるような表情を浮かべていました。



「(間合いを詰め切れば私に分があります…!!あと一歩…いえ、あと半端前へ…!!そうすれば、私の『原初の輝(イルミナル・オリジン)』で倒せる…!!)」



 無理をしたことで、私の傷は更に増えていきました。


 ですが、その甲斐もあり『メナス』との距離は数センチにまで縮めることが出来ていました。



「(これなら…いける!!)」


『リーダー!!周囲に複数の《メナス》を確認しました!!指示を!!』



 その時でした。通信機からサブリーダーからの声が届いたのです。


 千載一遇の好機に、私は一瞬意識を彼女達の方へと向けてしまいました。



「…ッ!!()()()()!!」



 その一瞬が致命的であったと理解していたにも関わらず、私は彼女の声を無視し、攻撃を試みました。



「『原初の(イルミナル・)』…!!」

【ア゛ハ !!】



 その時、『メナス』は()()()()()()()()()()


 予想だにしない行動。


 これ程の攻防の中でのその行為は、一見すればただの自殺行為。


 だからこそ、私の理解も遅れてしまいました。


 『メナス』にとっての視線の先は、全てを射抜く矛であるということを。



「…はっ!?まっ…待ちなさ…ッ!!」



 私の判断は遅すぎました。


 次の瞬間、『メナス』の眼からレーザーが放たれ、()()()()()()()()()()()()』の集団中央に直撃しました。



「「「キャアアアァァァ!!!!」」」



 無線から聞こえてきたのは大量のノイズと彼女達の悲鳴。


 私の視線の先では、陣形を崩された彼女達が複数体の『メナス』に襲撃されていました。



「…ッ!!き…さまっ!!」



 ギリギリと歯を食い縛りながら睨み付ける私の姿を、強個体の『メナス』は、これまでのどれよりも愉快そうな笑みを浮かべて眺めていました。



「う…あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」



 狙いもへったくれもない。


 私はただ無造作に、光で『メナス』を薙ぎ払いました。


 高出力で放たれた光は眩く輝き、私の視界さえも一瞬奪いました。


 そして次の瞬間、その『メナス』の姿は無くなっていました。



「ハァ…ハァ…ハァ…!!」



 行き場のなくなった怒りと、冷静さを失った私の行動で味方を窮地に陥れてしまったことで、私は気が触れてしまいそうになりました。



「…ッ!!」



ーーーーーパァン!!



 なので私は、自分の頬を全力で引っ叩きました。


 馬鹿で愚かで救いようのない自分を叱咤し、私は触れそうになった気を僅かに取り戻しました。


 そして、残された力全てを振り絞り、仲間の救出に向かったのです。






●●●






「ハァ…ハァ…ハァ…」



 仲間が襲撃されてから30分後。


 彼女達を襲っていた五体もの『メナス』の全ての討伐を終えることができました。


 陣形を乱され混乱していたこと、私のエネルギーが残り少なかったこともあり、想像以上に時間を要してしまいました。


 そして、事態はそれだけに留まりませんでした。



「……今の戦闘で…犠牲者は……」

「…まだ、正確には分かりませんが、恐らく50名近くに及ぶかと…」

「ッ!!」



 奇跡的に生き残ることが出来たサブリーダーの報告を受け、私は思わずその場に崩れ落ちました。



「私の…せいです!!私があの時…判断を間違えなければ…迷わず攻撃を仕掛けていれば…犠牲者は出なかった!!」



 何度も…何度も何度も何度も、私は地面を叩きつけました。


 そう、全ては私のせいだったのです。


 最初の襲撃の時から、私が独断で強個体に挑まなければ、私が初めから仲間達と行動を共にしていれば、私が迷わず光を放っていたら…


 例えあの個体を相手にしても、犠牲は出さずとも済んだはずなのです。


 自惚れであるかもしれません。実際は違ったかもしれません。


 しかし、この現実は、私が招いたことである事実は変わらないのです。



「貴方の…言う通りでした…」

「え…?」



 そばに立ち、私の扱いに困っていたサブリーダーである女性に、私は話しかけました。



「…私は変わってしまっていた…私は…周りが見えなくなってしまった…奈緒の仇を取ることに固執し、貴方達(仲間)を蔑ろにしてしまった…」



 もはや嘆くことも、怒ることも、皮肉を交えて笑うことさえ出来ない状態のまま、私は呟きました。



「私はもう…貴方達の前に立つことは…出来ません…」






●●●






 その後、復活した科学機能により分析を行った結果、映像と照らし合わせることで、その強個体の正体が判明しました。


 強個体は『メナス』の中で最初に姿を現した個体だったのです。


 何故、その個体だけなそれ程の力を持っているのか、何故姿が違うのかは不明なままでしたが、最初に現れた個体として、【オリジン】と名付けられました。


 その後、【オリジン】は数度に渡って姿を現しましたが、いずれも私との直接戦闘を繰り広げていきました。


 仕留めることこそ叶わなかったものの、力は拮抗しており、どうにか撃退には成功していました。



 そして、そのような戦闘を続けること半年。



 柳瀬さん、天音さん、江南さん、そしてサブリーダーから新たにリーダーへ昇格した伊吹さんを筆頭に、作戦は進められ、最後の地となった北海道地方を取り戻したことで、私達の『地上奪還作戦』は成功を収めたのです。


 人々は喜び、感謝し、そして噛み締めました。


 奈緒の死と、大勢の仲間を死なせた私の罪のもとに取り戻した地上の世界を…






●●●






 奈緒の死を前にした時から、私の物語は破綻を迎えていたのです。


 彼女の死は…彼女の存在は、はじめての友人であり、その友を亡くした私にとって大きすぎたのです。


 この後も、私達の命を狙う『メナス』との戦いは続きます。


 ですが、幾多の日々が過ぎようとも、私の心が上を向く日は訪れませんでした…



※後書きです






ども、琥珀です


他人のフリ見て我がふり直せ、という諺がありますが、自分の行いが誤っていると少しでも認識していないと、理解するのは難しいですよね…


例え過ちだと気付いても、その時にはもう遅い、なんてことも…


小心者のワタシは、常に自分の行いが誤っているのではないかとドキドキする毎日を過ごしているため、寿命が短くなるのでは、と思っております…


何の話なんですかね


本日もお読みいただきありがとうございました!!

明日も朝の7時ごろに更新されますので宜しくお願いします!

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