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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
The everything Origin Saga
204/481

Saga― 4 ー

早乙女 咲夜

 『メナス』の襲撃により地下の施設へと逃げ延びた13歳の少女。英才教育により歳不相応の知識と身体能力を兼ね備える才色兼備。人類初の超能力に覚醒した。


早乙女 白夜

 咲夜の妹。姉とは違い英才教育を受けていないため、年相応の振る舞いを見せる。

 初の実戦から、はや数ヶ月が経ちました。


 その間にも継続的に戦闘は続いており、地上奪還の夢を描いて、私も戦い続けていました。


 ですが、その夢は早くも崩れ去ろうとしています。


 率直に言って全く手が足りないのです。


 一地帯を制圧しても、その地点を守れるのは私だけです。


 その為、別の地帯に攻め込もうものなら、制圧された地点にメナスが現れ、再び制圧されてしまうのです。


 そもそも『メナス』にはナワバリ意識のような無いようでしたが、奪い返した箇所を守りきれないようでは、制圧されたままであると同じことです。


 地上に帰れると思った人々の心は、再び塞ぎ込むような雰囲気が漂っていました。


 私自身も悔しい思いはありました。


 この力で『メナス』を打ち倒し、平穏を取り戻せると思っていたからです。


 ですが、現実はそう甘くはありませんでした。


 一体倒しても『メナス』は再び現れ、そして私達を脅かしていくのです。


 戦闘だけならば私に分があると思っています。


 ですが、それだけではカバー出来ない量が『メナス』にはあります。


 もちろん対策も練りました。実行もしました。


 ですが、守るのも戦うのも私一人では限界があったのです。


 活気が戻った地下に、再び気まずい沈黙が訪れ始めました。






●●●






 転機が訪れたのは、それからさらに1か月が経過した時のことでした。



「ハァ!!」



 もはやノルマのようになっていた『メナス』との戦闘をこなしていましたが、今日はいつもと状況が違いました。


 通常なら一個体を相手にするのですが、今日は同時に三体も相手にすることになってしまったのです。



「くっ!?」



 一体だけならば何の問題もありませんが、流石に三体同時は厳しいものがありました。


 戦いを重ねていくうちに分かったことですが、強化された私の身体でも、従来の『メナス』の身体能力には及ばないということです。


 それでも戦い勝ち続けることが出来たのは、母が仕込んでくれた武芸の数々と、心構えによる賜物でしょう。


 そして、その身体的な差を埋める私の優位性(アドバンテージ)が、この光なのでしょう。


 ですが、それにも限度があります。


 流石に三体同時ともなれば、その差は埋めることの出来ないものになるからです。



「きゃっ!」



 柄にも無い声を出してしまうほどに、私は追い詰められていました。


 身体を吹き飛ばされた私は、どなたかの家に直撃し、そのまま地面へと落下しました。


 母との修練の日々に身を打っていた時以来の痛み…いえ、加減をしていてくれていた分、『メナス』の攻撃の方が遥かに痛みは強かったです。


 その痛みを堪え、どうにか立ち上がろうとするものの、膝は震え、全身に力を入れることが出来ませんでした。


 そして、私の目の前では、三体の『メナス』が集い、一斉にレーザーの照準を合わせていました。



「くっ…光を前方に収束させて防御を…」



 無駄な抵抗であることは分かっていました。


 レーザーは貫通性が高く、私の光を全て掻き集めても、三体分のレーザーは防ぐことは叶いません。


 それでも、一縷の望みに掛けて、覚悟を決めた時でした。



────ゴッッッ!!!!



 『メナス』の真横から、光の光線が迸り、三体の『メナス』を全て飲み込み、消滅させたのです。


 流石の私も驚きを隠せず、光が放たれた方を振り返りました。


 そこに立っていたのは、防衛隊である一人の女性の隊員でした。






●●●






「えっと、私は泉 奈緒って言うんだ。よ、宜しく」



 彼女は訓練室に訪れると、そう自己紹介されました。


 肩まで伸びた若干茶がかったミドルヘアに、パッチリと開かれた目、引き締まった身体はスポーティさを醸し出しています。


 纏っている衣服は防衛隊員のモノであり、聞くところによると、彼女は組織に配属されたばかりだったそうです。


 それがいきなりこのような世になってしまい、いきなりベテランと同じレベルを求められてしまっているのは同情してしまいますね。



「ご丁寧なご挨拶痛み入ります。私は早乙女 咲夜と言います。先程は私の命を救って下さりありがとうございました」

「…ホントに十三歳?見た目が成長していないだけでホントは二十代じゃないの?」



 失礼してしまいますね。正真正銘の十三歳だと言うのに。


 まぁでも大人びて見られると言うのはそれ程悪いことではないのかもしれません。


 …老けて見えるとかでしたら怒りますけどね。


 さて、何故私と彼女が二人きりで訓練室に訪れているのかといいますと、彼女も私と同じような力に目覚めていたからです。


 と言っても、その能力は私とは大分異なる様です。


 その能力を確かめるために、この訓練室に来ていたわけです。



「それでは泉さん、こちらを」



 そう言って渡したのは、小型の銃です。なかなかに渋られてしまいましたが、隊長さんにお願いして拝借してきました。



「…おし、やってみるか」



 ポジティブ思考、というか深くは考えない方なのでしょうか。


 泉さんは銃を躊躇いもなく受け取ると、私とは反対方向に構えました。


 やがて、泉さんの全身が淡く発光し、その光は握られていた銃にも移っていきました。



「お!いけそうだぞ…オリャ!!」



 と、勢いよくトリガーを引くと、そこからはただの銃弾ではなく、光の弾丸が放たれていきました。


 弾丸はそのまま直進し、簡単には壊れない仕組みになっているはずの壁を一瞬で破壊しました。



「や、やば!?こ、これ怒られるかな…?」



 泉さんはおろおろした様子で焦った様子を見せていましたが、私はそれよりも壊れた壁の方を注視していました。



「(…成る程。泉さんの能力は、手にした武器からエネルギーを射出する能力ですか…いや…)」



 次いで私は、彼女に握られていた銃を見ます。


 その銃は先程までとは()()()()()()()()()()()


 全体的にサイズは大きくなっており、特に銃口の穴はエネルギーの弾丸を放つために特に巨大化していました。


 彼女が持っていたのは女性でも片手で持てるコンパクトガンでしたが、今はリボルバーとライフルの中間くらいまでのサイズになっています。


 確か、私を救って下さった際に持っていたのは、正真正銘のライフルだったそうですが、それは今大人二人でも持ち上げられないような大きさと重さの砲身になっているそうです。


 これを見るに、彼女の能力は…



「(…()()()()()()()()()…といったところでしょうか)」



 手に取った武器を強化し、『メナス』に対して有効的になるように強化する。


 印象としてはそのように感じます。


 問題は、この効果がどれ程の規模か、です。


 もし、彼女の効果が永続的なモノであれば、人類は私以上の武器を手にすることになります。


 『メナス』に対して有効な武器を無限に生成することができるのですから。



「…泉さん、そちらの武器、お借りしても宜しいですか?」

「あ、うんいーよ」



 そう言うと彼女は(近くにいたとはいえ)その武器を私にヒョイっと投げました。


 …いやいやいや、仮にも銃なのですからもっと丁寧に扱っていただきたいものです。この方本当に防衛隊員に受かったのでしょうか…


 さて、実はこれ、先程の可能性を試す試行でもあったのですが…


 残念ながらその目論見は泡となって消え失せてしまったようです。


 彼女の手から離れた武器は、淡く発光したのちその形を元へと戻ってしまったのです。



「ありゃ、戻っちゃったね…てことは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 先程までの武器がカッコ良いかはさておき、彼女の能力についての項目は一つ追加されました。


 もし仮に、強化された武器が彼女の手を離れて尚形を保っていたとしても、恐らく私達以外が扱うことは出来なかったでしょう。


 彼女の放った光弾は、私の纏う光と同じモノであると推測できます。


 つまり、弾は私達だけが持つエネルギーを元にしている可能性が高いということです。


 それでは私達以外の方が手に取っても撃つことは出来ません。


 彼女の武器の強化は、彼女自身のためのものであると言えるでしょう。


 それでも、私達にとって大きな戦力を手にしたことには変わりはありません。


 これまで私一人しか戦えなかった状況が大きく変化したのです。



「泉さん、どうやら貴方も私と同じ力を手にされたようです。ですが、貴方が戦いに加わっていただけるかどうかは泉さんの意思次第です。勿論私としては…」

「あ、うん勿論そのつもりだよ?」



 …軽い。とても軽い…。戦っていただけるのはとても心強いのですが、少し不安に感じてしまいます。



「私の家族さ〜、もうみんな死んじゃったんだよね。両親は『メナス』とかとは関係なくだけど、姉さん夫婦はさ、この襲撃で助からなかったみたいでさ…」

「…それは…」

「あ!仇討ちしてやろうって話じゃないよ?そん時にした辛い想いをさ、ここにいる人達は殆どしてるわけじゃん?そんなの、一度だけで十分だと思うんだよ。だからさ、私と戦うよ。皆があんな思いをもうしなかて良いように」



 …前言撤回します。この方はとても思慮深い方でした。そして、強い芯をもっていらっしゃる。


 軽く見られる言動の数々も、彼女なりに考えてがあってのものであったのかもしれません。



「あっつぅ!?!?壊れた壁めっちゃ熱いじゃんビックリしたぁっ!!」



 …多分…






●●●






 先程は疑ってしまいましたが、伊達に防衛隊員としての試験を合格したわけではなく、実践的な組手を試したところ、彼女の身体能力はかなりのものでした。


 武芸などに取り組んできたわけでは無いようですが、軍人に取り入れられている実戦的な近接格闘術を身につけており、その動きはなかなかのモノでした。



「ぉあ痛っ!?」



 踏み込んできた勢いを利用して泉さんの腕を掴み、そのまま背負い投げ。


 綺麗な円を描いて床に叩きつけられた泉さんは、お尻をさすりながら起き上がりました。


「マジかぁ…わたし結構近接戦闘の成績良かったんだけど…」

「えぇ、とても素晴らしい動きでした。もうあと五・六年程鍛錬を積まれれば、動きの澱みは無くなるかと思います」


 嘘ではありません。恐らく泉さんには近接戦闘の才能があります。


 これ程の使い手はなかなか見られないでしょう。



「えぇ〜…ひと回りくらい下の子に教えて貰っちゃったよ…ホントに咲夜ちゃん十三歳?何かもう色々とめっちゃ凄くない?」

「正真正銘、成長途中の十三歳ですよ」

「…あれ?もしかして怒ってる?」

「…怒ってません」

「怒ってるじゃん!」

「…怒ってないってば」



 いけないいけない、母から注意されてきた言葉遣いがつい…気を付けないと。



「でもそっか…ホントに十三歳なのか」



 そう言うと泉さんはその場に座り込み、天を(といっても天井ですが)仰ぎます。



「…何かご不満でも?」

「不満はある!」



 …ハッキリと仰る方ですね…。どうにも私のペースが乱されるというか…。



「…是非お聞かせ願えますか?泉さんとはこれから肩を並べていく仲です、少しでも不安の種は解消していきたいと…」

「それそれ!泉さんってのやめよう!」

「…は?」



 ぐいっと前のめりに詰め寄られ、思わず仰け反ってしまいました。


 しかし、どういう意味なのでしょうか?彼女の名前は泉 奈緒さんで間違っていないはずですが…。



「どうも堅っ苦しいんだよね〜泉さんって!私の方が歳上だから遠慮してるのかもしれないけど、私のことは奈緒って呼び捨てにして良いよ!」

「い、いえ、別に遠慮をしているわけではなく、元々こう言う話し方を…」

「でも私達、これから一緒に戦っていく()()何でしょ?だったら距離は近い方が良いし、親しみやすい方が連携も取れるでしょ?」



 サラッと私の『仲』という発言を『仲間』と言い換えていることはさておき、確かに泉さんの発言も一理あります。


 お互いを深く知ることで、より密の高い連携も可能になります。


 特に彼女は遠距離攻撃が可能であり、私は近接戦闘に重点が置かれている。


 こう言った面での連携には、お互いの理解が求められるでしょう。


 仲を深めるのは確かにメリットしかないでしょう。


 やむを得ません。ここは彼女の提案に乗ることにしましょう…。



「そ…それでは…その…な、奈緒………さん」

「さんはいらない!」

「で、ですが敬称は最低限の礼儀で…」

「構わぬ、無礼講じゃ」



 どういうキャラの位置付けをしているのでしょうか。



「うぅ…な…な…ハァハァ…」

「私名前を呼ばれるだけでそんなに疲弊されたの初めてだよ」



 ひ、人の名前は敬称を付けて呼ぶものと教え込まれてきましたから…


 いざ呼び捨てにしようとすると、何というか胸の動悸が激しくなって、顔が火照ってしまうのです。



「な、奈緒!」

「はいよ咲夜!これで私達はお友達だ!」

「へぇあっ!?お、お友達!?」



 人生で初めてのような素っ頓狂な声を出してしまいました…。



「そうそうお友達♪一緒に戦う仲間ってよりも親密でしょ?宜しくね!」



 そう言うと泉さ…な、奈緒は私の手を無理矢理取り、握手を交わしました。


 すると奈緒は、私の手を握ったまま、その表情をやや暗くしました。



「ホントを言うとさ、一番の不満はそこじゃなくて、まだ十三歳の貴方に戦いを強いらなきゃいけないこの世の中なんだよね…」

「え…?」



 先程までの快活な口調ではなく、辛そうなことを話す声色でした。



「だから、さ。そんな辛い世の中で、私達は戦わなきゃいけないんだからさ、仲間とか、戦友とかじゃなくて、お友達になりたいって思ったんだよ」

「…奈緒…」



 いつもの言葉が本心ではない、ということでは無いと思います。


 ですがこの時の奈緒の口から発せられたのも、紛れもない本心であり、同時に、自分の中の不安を吐き出して下さったのだと思います。



「ごめん!湿気った話しちゃって!私疲れたから休んでくるね。また後でね我が友よ!」



 シュッ!と手をあげて去っていく奈緒を、私はボーッと見届けることしか出来ませんでした。



「お友…達…」



 その言葉を呟くと、不思議と胸が温かくなるような気がしました。


 父や母、白夜に向けてきた感情とも違う、不思議な気持ち…


 私は、自分の口角が無意識に上がっていると言うことに、最後まで気付きませんでした。






●●●






 私のこれまでの生涯で、奈緒は初めて出来た大切な友人でした。


 それは現在においても色褪せない、私の中のかけがえの無い思い出…


 この記憶だけは、何年経とうとも、何百年眠りにつこうとも、忘れられないモノでした。


 例えこの先に待つのが、地獄しかないとしても…

※後書きです






ども、琥珀です


番外編3話でした。


本編と異なる点で言うと、文字の量だけでなく、展開の速さが挙げられますね


次の話になると1ヶ月後とか○年後とかはザラにあります笑


作者も計算を忘れて若返らせてたり老けさせてたりします…

間違えてたらコメントか何かで教えてください…←


本日もお読みいただきありがとうございました!

明日も朝の八時ごろに更新しますので宜しくお願い致します!

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