第187星:退いて
国舘 大和(24)
千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに根拠地の指揮をとりつつ、環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。関東総司令官という立場であるが、それを隠している。
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』と接する。高い戦闘能力と強大な『グリット』を備えるが、その素性は謎が多い。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。大和により、現在は小隊長も務めている。陣営は前衛。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務め、今戦闘では前衛及び大隊の隊長を再び務める。
樹神 三咲 (22) 四等星 《ベイルアウト》
千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務め、今戦闘では後衛部隊の隊長も務める。
佐久間 椿(22) 四等星 《ベイルアウト》
千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長にして、今戦闘では中衛部隊の隊長も務める。
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。
久留 華 (22)
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。
曲山 奏(20)
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。
【椿小隊】
写沢 七 (21)
写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。
重袮 言葉 (20)
活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…幻覚・幻視・催眠の『グリット』を操る。
海藤 海音 (16)
誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな機微から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。
【三咲小隊】
椎名 紬 (22)
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手の視界を共有する『グリット』を持つ。
八条 凛 (16)
自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。自身の『エナジー』を纏わせ、その物体を操る『グリット』を持つ。
大刀祢 タチ (17)
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。
【夜宵小隊】
私市 伊与 (19) 《ベイルアウト》
年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。自身の肉体の動きを加減速する『グリット』を持つ。
早鞆 瑠衣 (18)
十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。人体・物体を強化する『グリット』を持つ。
矢々 優弦 (16)《ベイルアウト》
幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。自然の声を聞き取る『グリット』を持つ。
朝陽から放たれた閃光は、遠目から見ていても目を閉じてしまう程の輝きを放っていた。
それから間も無くして奏達に攻撃の衝撃波が襲い掛かる。
「す、凄い!!なんて威力なんでしょうか!!」
「ま、前を向けない!!姿勢を保つだけで精一杯だ!!」
奏とタチの二人が驚きを口にする中、全員が手を前に出し、突風から身を守る。
それは時間にして数秒の出来事であったが、奏達は呆然とし、閉口させるには十分なモノであった。
やがて辺りには静かな空間の中に、波の音だけが響き渡る。
視線の先には、朝陽と夜宵の姿があったが、やがて二人は力尽きたかのようにその場に崩れる。
「朝陽さん!夜宵さん!」
ドボンッという音ともに海面へと沈んでいった二人を見て、全員が一斉に詰め寄る。
「サルベージ!!」
梓月が叫ぶと、足に備え付けられたホバーのバトルマシナリーから、複数本のワイヤーが現れ、海面の中へと沈んでいく。
しばらく海面の奥へと進んでいったワイヤーは、やがてズシンとした重みを感じ取り、同時に引き上げられていった。
間も無くして、同じくホバーから出ていたワイヤー同士が結びつかれたことで引き上げられた朝陽と夜宵の二人が回収される。
「二人のバイタルは!?」
梓月の声に言葉が反応し、腰につけられたベイルアウトシステムから、二人のバイタルを確認する。
「…大丈夫です。二人ともバイタルは正常値。エナジーを使い果たして気を失ってるだけのようです」
言葉が確認すると、一同は安堵の表情を浮かべる。
「そりゃ枯渇もするでしょ。さっきの華さん達の連携爆発も相当の規模だったのに、朝陽ちゃんの光線は更に上だったもの」
七は手カメラを作り、先程まで光線が放たれていた場所をその中に収まる。
「めっちゃビックリしたわ。それに朝陽さんの戦いも凄かった。本当に別の人が戦ってるみたいだったものね!!」
朝陽の戦いぶりに興奮した様子の凛が、鼻息を荒くして話す。
「ふむ、確かにね。今までも素晴らしい戦いを披露していたが、今回の彼女はそれ以上の強さと美しさだったよ。しかし、それが朝陽自身によるものでないとなると、素直に称えられないな」
「夜宵さんの件も、御座いますしね…」
紬がその意見に賛同しつつも、やや困惑していると、瑠衣がこれに続いて同意する。
「ですが実際にこうして【オリジン】を仕留めたのです!!中の方が違おうと、大快挙であることには違いありません!!」
「そうだよぉ。難しい話はまたあとでぇ。今は素直に勝利したことを喜ぼうよぉ」
奏が周囲を嗜めると、華もこれに賛同する。一同も確かにその通りだと頷き、次第に笑みが浮かんでくる。
「あのめちゃヤバの【オリジン】仕留めたんだから、確かに文句は言えないよね!!」
「…ま、疑問は残るけど、あのバケモンに生き残られるよりは遥かにマシよね」
七、言葉の二人もこれに加わったのを皮切りに、次々と好意的な言葉が上がっていく。
「消して少なくなく、小さくもない犠牲は出てしまいましたが、私達の勝利です。司令官も見てくださっているはずです。そのご報告を致しましょう」
梓月はそう言うと、耳元につけられた通信機に手を当てる。
その時、ソレの気配を感じ取ることが出来たのは、超直感の『グリット』を持つ海音だけであった。
言葉を発する余裕もなく、海音は咄嗟に梓月を突き飛ばした。
瞬間、海音の身体を複数の槍のようなものが貫いていった。
「ガッ…ハッ…!!」
海音が身体と口から出血する中、一同は呆然と見ることしか出来なかった。
槍のようなものが抜かれ、海音の身体が海面に叩きつけられたことでようやく我に帰った一同が、直ぐに海音を救い出す。
「海音!!しっかりしなさい!!」
七が身体を抱き起す物の、既に海音の意識はなく、直後に機械音が鳴り響くと、ベイルアウトシステムが作動。
光が海音を包んで行き、ゆっくりと浮遊しその場を離れていった。
しかし、一同に海音を見届ける余裕はなかった。
今の攻撃の正体は分からずとも、攻撃を仕掛けた者の正体は分かっていたからだ。
「そ、そんな…生きていたのですか、【オリジン】!!」
海の中から現れたのは、触手を針のように突き立て張り巡らせていた【オリジン】であった。
あれ程の攻撃でありながら、驚くことにその身体は無傷であった。
【流石ニ…今ノハチョット焦ッタヨ…真下ヲレーザーデ撃チ抜イテ、海ノ中ニ逃ゲナキャ死ンデタカモ】
しかし、表情は先程までと比べやや影が見えており、笑みこそ浮かべていたが、その目は笑っていなかった。
対して『グリッター』達はその闘志こそ失っていなかったが、朝陽、夜宵、三咲、椿と隊の中核となる人物を全員失い、その機能をほとんど失っていた。
残った戦力は九人。
数として見れば十分に居るように見えるが、総戦力で挑んでも叶わなかった【オリジン】に対し、既に半数近い七人を失っている。
奏や梓月、華のような経験豊富な人物は気丈に振る舞ってはいたが、凛や瑠衣のようにまだ経験の浅いものが、恐怖に身体を震わせてしまうのも仕方のないことであった。
【モウ少シ遊ンデカラ殺スツモリダッタケド、今ノオ前ラガ前ヨリモ危険ダッテコトガ分カッタシ、ソコノ二人ミタイニ別人ミタイニナラレテモ面倒クサイカラネ…オ前達、モウ殺スネ】
ギロリ、と狂気的な笑みを浮かべながら睨みつけられ、奏達は一様に身体を震わす。
その中で、現メンバーの中では最年長である梓月が、通信機のマイクを入れ、小声で全員に伝える。
「(先程から司令官との通信が繋がりません…このままでは全滅してしまいます。私達朝陽小隊が隙を作りますから、その隙に他の皆さんは撤退を…)」
【聞コエテルヨォ!!誰一人逃ガサナイカラ!!オ前達ハココデ全員殺ス!!】
しかし、人智を越えた存在である【オリジン】は、遥か先に居た朝陽を捉えたように、およそ常人には聞き取れないような微々たる声でさえも正確に聞き取っていた。
僅かな反撃の手すら許されない、その圧倒的な絶望の状況に、残された面々がせめて一矢報いようと戦闘態勢を取る。
「邪魔、退いて」
その緊迫した雰囲気のなか、それを断ち切るような女性の声が割り込んできた。
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「ダメです!!通信、つながりません!!」
夕は手元の機械を操作し、突如繋がらなくなった通信機の復旧を試みるも、その成果は得られないでいた。
「…先程の朝陽さんの強大な攻撃により、【オリジン】が放つ電磁場が乱れたのでしょうか。それで通信が繋がらなくなったのかと」
「クソッ!!このままじゃ皆が危ない!!指示を出そうにも通信が届かないんじゃ…!!」
この戦いの中で、大和はただモニターを眺めていた訳ではない。
人員の配置を始め、攻撃のタイミングの指示や【オリジン】の攻撃パターンの分析、連携を意識した動きなど、細々とした箇所で随所に指示を出していた。
それがこれまで全滅を防いできた結果であり、椿達の連携攻撃を当てる契機となり、犠牲者が出た後の冷静な対応に繋がっていた。
しかし、それも限界が近付いていた。
通信が出来ないこともその理由の一つであるが、現勢力だけではこれ以上の戦闘は不可能な域に達していたからだ。
ましてや、各部隊の中核を担う四人全員が戦闘不能ともなっている。奏達だけでは統率を図るのも難しい状況である。
加えて相手は無類の強さを誇る【オリジン】。勝ち目がほぼないことは明白であった。
「(だが撤退をさせたところで、【オリジン】は当然のように追撃してくるはずだ。撤退を指示して張り詰めていた空気を緩めれば、全滅を促進させるようなもの…どうする…どう対応する…いや、そもそも伝える手段が、もう…)」
僅か数秒の中で幾つもの手を考えるものの、大和の脳内でのシミュレーションでは何れも失敗に終わっていた。
その中で、咲耶が何かを諦めたような表情を浮かべ、口を開こうとした時であった。
「司令官!!何者かが戦闘エリアに侵入していきます!!すごい速さです!!」
「なんだって!?」
驚いた様子でデスクのホログラムを確認すると、確かに何者かが奏達のもとへと急接近していた。
それも陸地ではなく海上から。
「識別シグナルは!?」
「でます!識別は…ゆ、友軍です!!それもこれは…」
モニターを見て驚いた様子の夕は、一度唾を飲み込んで、その正体を口にする。
「これは…『シュヴァリエ』、戦国 巴 さんのシグナルです!!」
※後書きです
ども、琥珀です。
前回は私のミスで更新日時がズレてしまい申し訳ありませんでした…以後ないよう気をつけて参ります…
さて、本編ではVS【オリジン】戦がだいぶ佳境に入って参りました!!
ここからの展開は正直怒涛です!!
お楽しみに!!
本日もお読みいただきありがとうございました!!
今週も月〜金の五回更新でお送りしますので宜しくお願い致します!!
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