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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
8章 ー千葉根拠地総力戦ー
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第185星: 果たすべきこと

国舘 大和(24)

千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに根拠地の指揮をとりつつ、環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。関東総司令官という立場であるが、それを隠している。


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』と接する。高い戦闘能力と強大な『グリット』を備えるが、その素性は謎が多い。


斑鳩 朝陽(18)四等星

千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。大和により、現在は小隊長も務めている。陣営は前衛。


斑鳩夜宵(22)三等星

千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務め、今戦闘では前衛及び大隊の隊長を再び務める。


樹神 三咲 (22) 四等星 《ベイルアウト》

千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務め、今戦闘では後衛部隊の隊長も務める。


佐久間 椿(22) 四等星

千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長にして、今戦闘では中衛部隊の隊長も務める。


【朝陽小隊】

譲羽 梓月(23

 冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。


久留 華 (22)

 おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。


曲山 奏(20)

明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。


【椿小隊】

写沢 七 (21)

 写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。


重袮 言葉 (20)

 活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…幻覚・幻視・催眠の『グリット』を操る。


海藤 海音 (16)

 誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな機微から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。


【三咲小隊】

椎名 紬 (22)

 ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手の視界を共有する『グリット』を持つ。


八条 凛 (16)

 自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。自身の『エナジー』を纏わせ、その物体を操る『グリット』を持つ。


大刀祢 タチ (17)

 メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。


【夜宵小隊】

私市 伊与 (19) 《ベイルアウト》

 年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。自身の肉体の動きを加減速する『グリット』を持つ。


早鞆 瑠衣 (18)

 十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。人体・物体を強化する『グリット』を持つ。


矢々 優弦 16歳 四等星 《ベイルアウト》

 幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。自然の声を聞き取る『グリット』を持つ。

 【オリジン】は別の球体が近付いて来たのを察すると、今まで自分を拘束していた球体にわざと近付ていく。



【ソォ…レ!!】



 そして、今までレーザーとして放たれていた光線を足もとで身に纏い発光させると、引き寄せられた勢いを利用して、近くにあった球体を思い切り蹴り上げた。



『ッ!?』



 蹴り上げられた球体は、近付いていた二つの球体と衝突する。



『いかん!!制御が外れるぞ!!』



 夜宵が叫ぶのと同時に、三つの球体は衝突した勢いで重なり合い弾けていった。


 次の瞬間、その三つの球体の中心から、黒い渦が発生し、これまでよりも更に強力な磁場が生み出されていた。



『ちぃ!!我の球体を故意に衝突させて制御を失わせおった!!このままだとまずいぞ!!』



 これまで影響を受けていなかった夜宵も、引力を律していた朝陽も、新たに生み出された強力な磁場に引き寄せられていく。


 一方【オリジン】は、強力な引力を持つ球体同士がぶつかった際の衝撃で距離を取ることに成功しており、引力がそれ程強く及んでいない場所にまで後退していた。



『あ奴、光さえ曲げられるほどの磁場であるのを見切って、光に質量が付与されたことを見極めおった!だから身に纏わせることで重力の球体を蹴り上げられたのか!』

『一度拘束されている間に、重力の強さを測っていたということですか!?では二度目の球体で動きが鈍っていたように見えたのも演技だと!?そこまで狡猾だとは…!!』



 立場は完全に逆転。強力な重力により、今度は朝陽達が身動きが取れない状況となっていた。



【アハハッ!ドウドウ?自分達ノ攻撃デ身動キガ取レナイッテ、ドンナ気分?】

『『ッ!!』』



 子どもにも分かるような煽り言葉に、しかし二人は答える余裕すら無く、ジリジリと引き寄せられていく現状に、どうにか争うことで精一杯であった。


 幸いなことに、【オリジン】よりも更に離れた位置にいる奏達までには引力は届いていない様子であったが、磁場は次第に強力になっており、それも時間の問題であった。



【ジャア次ハ私ノ番ダネ!!】



 そういうと【オリジン】の瞳が淡く発光。その視線の先には当然二人が立っており、【オリジン】は何の躊躇いもなくレーザーを放った。



『来るぞ!!』

『分かっています!!』



 朝陽は引力に逆らって強引に身体を動かし、握っていた槍を構える。



六光柱(りっこうちゅう)・《盾防光流(じゅんぼうこうりゅう)》!!』



 朝陽の呼びかけに応じて、槍の先端を浮遊していた六つの刃が正面に広がる。


 広がったそれぞれの刃に光が集約し、線状に繋がっていくと、最終的に傘のような形を成していく。


 そこへメナスのレーザーが直撃するも、光の盾は受け流すようにして防いでいく。



【アッハ!!スゴイ凄イ!!】



 その光景を見ても、【オリジン】は無邪気に喜ぶだけであり、逆に朝陽達には焦りの表情が表れていた。



『ちぃ…よもやここまで規格外だとはな。こんな奴がこの世に居ようとは…』



 一種の諦めのようにも取れる発言を溢す夜宵に対し、朝陽は瞼を閉じ考える様子を見せる。


 そして目を開き、一瞬奏達の方を見ると、覚悟を決めたように槍を構える。



『おい、何をするつもりだ』

『私の力であの磁場を封じます』



 夜宵は恐らく尋ねる前からそう答えることは分かっていた。


 分かっていた上で尋ねたが、予想通りの答えが返って来たことに苛立ちを覚える。



『貴様はバカか!!そんな事をすれば今の貴様の余力を全て使うことになるぞ!?そうなれば今度こそあの化け物を討つことは叶わなくなる!それさえも分からんのか!!』

『分かっています!それでも、今の私にはあの怪物よりも、貴方よりも優先する、果たすべきことがあるのです!仲間のことは必ず守ると、この方と約束をしましたのです!』



 強い口調で叫ぶ夜宵に対し、朝陽はそれよりも強い思いをぶつけ返す。



『この肉体と精神はこの時代を生きる彼女のものです。その肉体を借りているからには、私には彼女達を守る責務があります』

『…この堅物が。どうなっても知らんぞ』



 説得は不可能と判断したのか、夜宵はこれ以上言葉を投げかけることは無かった。


 朝陽もそれを理解し、それ以上のことを口にすることはしなかった。


 代わりに槍を構え、歪みを見せ始めた磁場に向ける。



六光柱(りっこうちゅう)・《封殲包光(ふうせんほうこう)》!!』



 朝陽の叫びに応じ、浮遊していた六つの刃が磁場に向かって飛んでいく。


 刃は軽量なこともあり、また強力な推進力も備えているため、飲み込まれることなく周囲を旋回し続ける。


 やがてそれぞれの刃は光を放ち、動線上に光の線を残していく。次々と線は引かれていき、やがて黒い重力場を包み込んでいった。


 刃は更に回転速度を上げていき、光の線は完全に磁場を飲み込んでいく。


 内部がどうなっているのかは定かではないが、黒が白に塗りつぶされ、中和されていったかのように、磁場は静かに消滅していった。



『ーーーッ!!ハァ…!ハァ…!』



 それと同時に、今のいままで平然としていた朝陽は息を荒くし、額には大量の汗をかいていた。



『おぅおぅ、慣れん身体、限られた気力でようあの磁場を消し去ったものよ。大したもんだ』



 半分は賞賛、半分は呆れた様子で夜宵は朝陽に語りかける。



『それで、どうするのだ?これで貴様も、もうまともに力を使える余力はあるまい。残された一つの重力球だけではどうにもならん。既に破られたようなものだからな』



 直後に冷ややかな目を向け、夜宵は朝陽に追い討ちをかける。



『ハァ…ハァ…分かっています…なんとしても…あの【オリジン】を…』

『勇むな。貴様に出来ることなどもう無いも同然。それ以上戦おうものなら、その肉体が傷付くだけぞ。貴様はそれを望むのか』

『ッ…』



 夜宵の言う通り、朝陽の身体は限界に達していた。


 息を整えることもままならず、手足は震え、立つことさえやっとの状態であった。



『です…が、このままでは【オリジン】はこの方の仲間を再び狙います。そうなれば…今度こそ彼女達は…』

『そんなもの我が知ったことでは無い。敢えて言うのならさっきまでならその犠牲を少なくすることぐらいは出来ただろうよ。だが貴様はそれをしなかった。今全員を救う事を優先したからだ』



 朝陽の言葉に対し、夜宵の態度はどこまでも冷ややかであった。



『貴様の悪い癖だ。全ばかりをみて先を見ない。結果として身内を窮地に晒す。今のようにな』



 身体を動かすことさえ難しいなかで、朝陽は顔だけ動かし、夜宵を睨みつける。


 が、当然夜宵はこれに全く臆さない。



『この戦いは我々二人の負けだ。どう足掻こうともここからの勝ちの目はない。諦めろ』

『…ハッ…ハッ…せめて…この方の肉体だけでも…』

『だから無駄よ。()()()()()()()()()()()()()()()()()、あの化け物は微塵も興味を持たん。あ奴は最初から今までずっとここにいる奴らを、自分が楽しむ玩具程度にしか見ておらん。その玩具が動かなくなり、飽きてしまえば、あとは壊すだけよ』



 意気込む朝陽に対し、夜宵は完全に諦めの雰囲気を出しており、どういう原理か海面の上に座り込んだ。



『…万全ではないとはいえ、我ら二人の力を持ってしても及ばぬ奴がおるとはの…世も末よ』



 無気力に呟く夜宵に、朝陽もこれ以上言葉を返すことはできなかった。



【アレアレ?モウ終ワリ??モウ諦メチャッタノ??】



 指を顎に当て小首を傾げる可愛らしい仕草で尋ねる【オリジン】に対し、夜宵がめんどくさそうな声色で答える。



『あーあーもう終わり。貴様との戦いは我々二人の負けよ。あわよくば見逃して貰えんかの』

【ソレハダメ♪オ前達逃シタラアイツガ来ナイモン!】



 その人物が誰を指しているのか二人には分からなかったが、夜宵は失笑した。



『ハッ!我らでさえ貴様にとっては前座でしかないということか。それは何だか腹立たしいのう…』

【ン〜デモ結構楽シカッタヨ?前ノ時ニ比ベタラ沢山遊ベタシネ!】



 前の時がいつなのかは不明だが、少なくともやはり【オリジン】にとってこの戦いは遊びでしかなかったのは確かであった。



『フハハ。そこまでハッキリと言われると笑いしか出てこんの』



 その時、夜宵はチラリと一瞬朝陽の方を見る。朝陽もこれを見逃さなかった。



『しかしなんだ…先に貴様にはああ言ったが…やはりアレだな』



 夜宵は海面に手をつき、後ろに重心をかけるようにして天を仰ぐ。



『やはりこのままやられっぱなしというのも口惜しいからやはり貴様は死ね』



 急な早口に、手のひら返しのような発言。


 その姿勢のまま目線だけを向けると、夜宵は残されていた最後の重力球を操り、【オリジン】に最後の攻撃を仕掛けた。

※本日は後書きお休みです






次回も明日更新されますのでので宜しくお願い致します!

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