第184星:光闇
国舘 大和(24)
千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに根拠地の指揮をとりつつ、環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。関東総司令官という立場であるが、それを隠している。
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』と接する。高い戦闘能力と強大な『グリット』を備えるが、その素性は謎が多い。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。大和により、現在は小隊長も務めている。陣営は前衛。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務め、今戦闘では前衛及び大隊の隊長を再び務める。
樹神 三咲 (22) 四等星 《ベイルアウト》
千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務め、今戦闘では後衛部隊の隊長も務める。
佐久間 椿(22) 四等星
千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長にして、今戦闘では中衛部隊の隊長も務める。
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。
久留 華 (22)
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。
曲山 奏(20)
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。
【椿小隊】
写沢 七 (21)
写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。
重袮 言葉 (20)
活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…幻覚・幻視・催眠の『グリット』を操る。
海藤 海音 (16)
誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな機微から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。
【三咲小隊】
椎名 紬 (22)
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手の視界を共有する『グリット』を持つ。
八条 凛 (16)
自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。自身の『エナジー』を纏わせ、その物体を操る『グリット』を持つ。
大刀祢 タチ (17)
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。
【夜宵小隊】
私市 伊与 (19) 《ベイルアウト》
年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。自身の肉体の動きを加減速する『グリット』を持つ。
早鞆 瑠衣 (18)
十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。人体・物体を強化する『グリット』を持つ。
矢々 優弦 16歳 四等星 《ベイルアウト》
幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。自然の声を聞き取る『グリット』を持つ。
朝陽は、一同を無事に送り届けたことを確認すると、淡い光を纏って飛翔。
夜宵の放った漆黒の球体による引力をものともせず突き進み、そして夜宵の前に立った。
『以前に見た時は弱すぎて気付かんかったが…そうか、貴様も同じことをしていたか』
知らない仲では無いのだろう、夜宵はニヤリと笑みを浮かべ、朝陽に語りかける。
対して朝陽は、悲哀の目で夜宵を見つめながら、これに答える。
『貴方は…必ず現世に甦ると思っていました。ですから、私もその時に備えていたのです』
『クカカッ!!それでその小娘の身体を乗っ取ったのか!!貴様も悪よな!!』
『私は貴方とは違う!貴方はその方の意思を無視して身体を操っている。けれども私はこの方の同意を得た上でお借りしているのです』
夜宵の発言に不快感を覚えた朝陽は、怒りの感情を含んだ声を上げる。
しかし、夜宵はそれを受けても愉快そうに笑うだけであった。
『おぉ怖い怖い。それで?どうするのだ?ここで決着をつけようとでも?』
『…えぇ、本来ならそうすべきなのでしょうね。ですがその肉体は貴方のものではない。この状況下で貴方をどうにかすることは出来そうもありません。それに、今はそれよりも優先すべきことがあります』
『あの化け物のことか?それなら我の重力場に飲み込まれ、ぺしゃんことなっておろうよ』
勝ち誇った様子で話す夜宵に対し、朝陽は視線を横に向ける。
『…それはどうでしょうか?』
『あん?』
朝陽に釣られて視線を向けると、その先には夜宵が【オリジン】に放った球体が浮いている。
そして、そのすぐ側では、強力な引力に逆らい身を乗り出す【オリジン】の姿があった。
『おいおいおい…本物には遥かに劣るとは言え、超重力磁場だぞ?それを力技で抜けるというのか?』
これまで動揺する姿を見せてこなかった夜宵であったが、流石にこの状況は想定外だったのか、冷や汗を垂らしていた。
【アッハッハッハッハ!!コレ面白ーイ!!動キトリ辛ーイ!!】
ギギギギ…と僅かに動きにぎこちなさを見せるものの、【オリジン】はそれに抗っていた。
更にそれが逆に負荷を掛けているのか、漆黒の球体側にヒビが入り始めていた。
『お分かり頂けたでしょう。貴方には目的があるのかもしれませんが、あの生物を放っておけばそれも果たせたない』
『…だから力を合わせるしかない…と?』
ジロリと夜宵は朝陽の方を見るが、朝陽の方はコレに応えず【オリジン】の方を見つめていた。
『…ちっ、本当に不快な奴よのお前は』
『その言葉、そっくりそのままお返し致します』
それだけのやり取りで互いの意思を汲み取った両者は、共闘の構えを取る。
『気付いてあるだろうが我は《超重力球》を放ったせいで余力がもう殆ど残っとらん。やるのなら貴様が主軸だぞ』
『その身体は貴方のものでは無いのですから無理はさせないで下さい。元よりそのつもりでしたから構いません』
呆れた様子で答えつつも、長い付き合いを匂わせるやり取りで互いの立場を決めていく。
『貴様とて全力を出せるわけではあるまい。勝ちの目はあるのか』
『ですからこうして貴方に協力を仰いでいるのです。普段は唯我独尊な割に、こういう場面で必要以上に慎重になるのは悪い癖ですよ』
説教を喰らった夜宵は不貞腐れたようにそっぽを向く。
『…我が出来るのは球を操るくらいだ。今あの化け物を抑えてるやつはもう壊れる。お前が消したやつも含めると残りは四つ。それで仕留めろ』
『貴方がこの方々のお仲間を狙いさえしなければ残り五つだったのです。責任を私に押し付けないでください』
キッ!と互いに睨み合ったのは一瞬。直後にバキィン!という音が鳴り響き、二人は音のした方へ向き直る。
そこでは、球体を振り切り自由になった【オリジン】が立っていた。
【ンフフ〜♪壊レチャッタネェ?頑張ッテ作ッタノニネェ?】
煽るような物言いに、しかし夜宵は特に気にした様子も無く答える。
『壊れたのではなく壊したのだろうが。まぁ普通は壊れんのだがな。お前とこやつくらいだ。我の黒穴を壊せるのは』
親指で指された朝陽は僅かにムッとした表情を浮かべるが、一先ず聞き流すことにした。
【ン?ンンン?ナンカオ前モ様子変ワッタ?外見ジャナクテ…雰囲気ミタイナノガ違ウ】
【オリジン】の発言に、表情にこそ出さなかったが、朝陽は内心驚いていた。
『(彼女はともかく私の変化にも気付くだなんて…この方の身体を通して見てきた個体とはやはり違う、というわけですか)』
より一層警戒心を増した朝陽は、手に握っていた槍を構え直す。
いよいよ交戦開始となる雰囲気を察してか、夜宵も笑みを潜め、睨むように【オリジン】を見た。
【アハハ!!ワクワク、ワクワク!!】
対照的に子どものように笑う【オリジン】であったが、直ぐに異変に気がつく。
自身の身体が、否、それよりも下。自分の立つ海面上が光輝いていることに気がつく。
『反鏡光輪・《日輪昇華》』
瞬間、今まで【オリジン】が立っていた場所に、光線による光の柱が出来る。その柱は周囲の海面を蒸発させる程の熱を帯びていた。
『おうおう…海面に映る太陽の光を操って不意打ちとは。貴様我より悪ではないか?』
『余裕はなく、時間も掛けられないのです。先手必勝、確実に仕留めにいかねば』
水分が蒸発し出来た水蒸気により、【オリジン】の姿は直ぐには確認出来ない。
しかし、その直後、その水蒸気の中から朝陽の攻撃を回避した【オリジン】が姿を現す。
『あれほどの不意打ちをかわすか。どんな反射神経をしておるんだあ奴は』
『ですが回避すると言うことは効果はあるということです。それならば十分に可能性は持てます。当てるために動きを封じられれば、ですが』
朝陽の言葉を聞いた夜宵は、チッ、と舌打ちをしながらも、その意図を察し黒球を操る。
【…!】
残された四つのうち、一つを【オリジン】に近付けると、再び【オリジン】はその引力に引き寄せられる。
【マタコレッ!?コノッ…!】
いかに【オリジン】といえど、夜宵のこの球体から抜けるのは簡単では無いようで、ぎこちない動きで抜け出しを試みていた。
『光芒一閃・《光矢射放》』
動きが鈍った隙を見逃さず、朝陽は攻撃を行う。
槍から放たれたのは光の弓矢。一見普段の朝陽が放つ『光の矢』に酷似しているが、それよりも更に強く鋭かった。
【ア゛ア゛!!】
【オリジン】は従来の『メナス』のような雄叫びをあげ、レーザーを放つ。
何故かその視線の先は朝陽の放ったレーザーとは全く違う方向に向いていた。
しかし、それは全て計算されての動きであった。
【オリジン】を拘束する球体に対し垂直に放たれたレーザーは、球体の引力に引き寄せられ直角に曲がる。
結果、【オリジン】の放ったレーザーは曲げられたことで直線に放たれ、自身に向かっていた朝陽の光矢に直撃し相殺し合った。
『なっ!?』
『重力を利用してレーザーを曲げ、そして貴様のレーザーとぶつけたか。そんなことを思いつくか、普通』
驚く朝陽に対して、夜宵はもはや呆れたような表情を浮かべていた。
『…最初に吸い寄せられた時、あの化け物はレーザーを黒玉に放ち、吸い込まれたのを見ています。それで、レーザーが曲げられてしまうことを理解したのでしょう』
『だからといってそう簡単に使える手段ではなかろうに…あと黒玉じゃなくて《超重力球》ぞ』
『はいはい、貴方が覚えたての新しい言語を使いたいのは分かりました。それよりも次の手を考えましょう』
夜宵の指摘を適当にあしらい、朝陽は次の一手を考える。
『まぁ率直にいってこのまま押し込めるだろう。球はあと三つある。一度に二つや三つ近付ければ奴とて身動きは取れん。そこに今の貴様が使える最大火力をぶち込めば勝負ありよ』
癪なので口にはしなかったが、朝陽も同じ考えを持っていた。
これまで朝陽の攻撃を回避してきた様子を見るに、攻撃は当たれば致命傷となり得る。
そして、その攻撃を当てるために動きを制限することは、隣にいる夜宵がいれば十分に可能。
だとすれば朝陽達に勝機は十分あった。
見れば【オリジン】は既に重力場から脱出しようとしており、自由になるのも時間の問題であった。
『球を無駄にすることもあるまい。奴が抜け出す前に仕掛けるぞ』
『…えぇ、そうしましょう』
朝陽の同意を得た夜宵は、浮遊させていた三つのうち二つを操り、抜け出そうとしていた【オリジン】へと近づけて行った。
【…キタァ!!】
その瞬間、誰もがゾワっとするような不敵な笑みを【オリジン】は浮かべた。
※後書きです
ども、琥珀です。
出ました朝陽の別人格。この方も夜宵の別人格と同様に100話、1年ぶりくらいの登場になりますね。
この二人の設定は物語を作り始めた時から決めていたので、漸く表舞台に出せてほっこりです笑
今章では過去を意識していまして、夜宵の過去や過去の最強の敵【オリジン】など、今と現代を一致させるような形で書いてます。
詳細な過去はそのうち書く予定ですが、一先ず【オリジン】の強さなどをお伝えできれば良いなと思っております。
それでは、本日もお読みいただきありがとうございました!また明日更新されますので宜しくお願い致します!