第183星:光臨
国舘 大和(24)
千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに根拠地の指揮をとりつつ、環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。関東総司令官という立場であるが、それを隠している。
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』と接する。高い戦闘能力と強大な『グリット』を備えるが、その素性は謎が多い。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。大和により、現在は小隊長も務めている。陣営は前衛。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務め、今戦闘では前衛及び大隊の隊長を再び務める。
樹神 三咲 (22) 四等星 《ベイルアウト》
千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務め、今戦闘では後衛部隊の隊長も務める。
佐久間 椿(22) 四等星
千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長にして、今戦闘では中衛部隊の隊長も務める。
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。
久留 華 (22)
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。
曲山 奏(20)
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。
【椿小隊】
写沢 七 (21)
写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。
重袮 言葉 (20)
活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…幻覚・幻視・催眠の『グリット』を操る。
海藤 海音 (16)
誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな機微から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。
【三咲小隊】
椎名 紬 (22)
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手の視界を共有する『グリット』を持つ。
八条 凛 (16)
自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。自身の『エナジー』を纏わせ、その物体を操る『グリット』を持つ。
大刀祢 タチ (17)
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。
【夜宵小隊】
私市 伊与 (19) 《ベイルアウト》
年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。自身の肉体の動きを加減速する『グリット』を持つ。
早鞆 瑠衣 (18)
十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。人体・物体を強化する『グリット』を持つ。
矢々 優弦 16歳 四等星 《ベイルアウト》
幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。自然の声を聞き取る『グリット』を持つ。
『…む?』
その気配に、真っ先に気が付いたのは夜宵であった。
正確にいえば、夜宵の意識を乗っ取った存在は、自身の放った一つの球体の方を振り返る。
彼女にとってこの肉体以外の存在は有象無象で、気にも留めるに値しないものであった。
しかし、今感じ取った気配は、彼女にとって無視できるものでは無かった。
『…成る程。以前も間違いなく消滅させたと思った小娘どもが無事であったのは、貴様のせいであったか』
ニヤリと笑みを浮かべる夜宵の表情は、どこか歓喜めいたものであった。
彼女の視線の先にある黒い球体に、突如ヒビが入る。
やがてタマゴの殻のように砕けていくと、中から純白の光の球体に包まれた朝陽達が現れた。
光を発していた朝陽は、いつもの力強い瞳ではなく、慈愛に満ちた瞳で夜宵を一瞥する。
夜宵が再び笑みを浮かべると、朝陽はどこか悲しげな表情で返した。
「こ、これは…朝陽さんが救ってくれたのですか!?」
その後ろで奏が自分達の無事を確認すると、辺りが光で覆われていることに気が付き、朝陽に尋ねる。
他の面々も驚いた様子で身体を見渡した後、奏に続いて朝陽の方を見た。
朝陽は振り返り、再び慈愛に満ちた瞳で奏達に語りかける。
『ご無事で何よりでございます。この方との約束は無事に果たせたようです』
その雰囲気と口調に、奏達はすぐに違和感に気がつく。
「朝陽…さん?では、ありませんよね?」
その違和感を確信的に捉えていたのは、一番戦場を共にした、同じ小隊の奏であった。
対して朝陽の身体を借りている存在は、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
『申し訳ありません。訳あって、この方の身体と意識をお借りしております』
「そ、そんな…借りてるって…じゃあ朝陽さんは!?」
興奮気味に話すタチに対し、朝陽の身体を借りている人物は優しい口調で語りかける。
『ご心配なく。この方の意識は無事です。私自身も間も無く元のところへ帰ります。ご安心ください』
姿は同じでも、その存在との対面は初である筈なのに、その人物の口調は不思議と奏達の心を落ち着かせる特徴を持っていた。
朝陽はニッコリと笑みを浮かべると、握られていた槍、『光り輝く聖槍』を奏達に翳す。
すると、奏達の周りに、今まで周囲を包んでいた光と同じものが現れ、全員を包み込んでいった。
『これから御三方をお仲間の元へ送り届けます』
「私達を…って、アンタはどうするんだ!?」
光に包まれた奏、タチ、海音の三人は宙に浮かび、既にゆっくりと移動を始めていた。
そのなかで海音が朝陽の身を案じて叫ぶが、朝陽は笑みを崩さずに答えた。
『申し訳ありません。私にはまだやらなくてはならないことがあります。ですからこの場に留まります』
「やらないといけないことって…だってそれじゃあ…!!」
『お約束致します。この方の肉体には一切傷を負わせません。必ず無事にお返しいたします。ですからどうか、ここからの戦いに、暫く手出しはされないでください』
そう告げると、奏達は返事をする前に光球に包まれたまま移動し、直ぐに中・後衛組の元へと戻されていった。
「奏さん!タチ!海音!無事でよかった!」
たどり着くと同時に光は消え、迎えにきた七が一同に抱き着く。
「あれ?朝陽ちゃんは」
そこに、朝陽がいないことに気が付いた凛が尋ねると、三人は複雑な表情を浮かべる。
「なんていうか…めっちゃ説明しづらいんだけどさ…」
珍しく言い淀んだ様子の海音の様子に、一同が困惑するなか、奏はいつもの調子で話し始める。
「いま、朝陽さんはどうやら別の人物のようです!どういう原理なのかさっぱりですが、何者かと入れ替わっているようですね!」
全く理解の追いつかない発言をする奏に対し、梓月が困惑した様子で尋ねる。
「それが事実だとして、朝陽さんは大丈夫なのですか?」
そのことを尋ねられても、ハッキリとした答えを持つ人物はこの中に誰一人居ないだろう。
その上で奏は、自信を持って答えた。
「ご心配は無いかと!!あの球体に飲み込まれた私達を救って下さいましたし、何よりあの方からは一切敵意を感じませんでしたから!!」
奏の言葉に、一同は迷いながら他の二人の方を見る。
「私も…いま朝陽さんと入れ替わっている人物は信頼しても良いと思う」
とタチが発言すれば、海音も頷いてこれに続く。
実際に命を救われ、言葉を交わした三人が言うのであれば、信用する他ないと梓月達は判断した。
「あ、その方からこうも言われました。ここからの戦いには暫く手を出すな、と」
「そ、それはどういう?」
「真意はわかりませんが、私には遠回しに邪魔をするなと言われているように感じましたね!!」
奏の解釈した内容に、一同は複雑な表情を浮かべるが、もっと具体的にいえば、実力不足だと言われていることには気が付いていた。
「もし、いま朝陽ちゃんの身体を操ってる人が夜宵さんと同じ実力を持ってるなら、確かに私達は足手纏いよね」
言葉のこぼした言葉に、何人かが否定しようとするが、その言葉は出てこなかった。
「実際奏さん達は、危うく命を落とすところだったわけで、朝陽ちゃんの入れ替わった人物の助けがあったからこそ生きているんでしょ。その私達が参戦したって、そりゃ邪魔でしか無いわ」
ハッキリした物言いに、しかし、やはり誰も反論することは出来なかった。
「少なくとも私達だけの判断じゃね」
その後続けられた言葉のセリフに、一同が顔を上げる。
「と、いった状況なんですが、どうしたら良いですか司令官」
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このイレギュラー続きの状況を静観してきた大和であったが、最優先事項を決めていき、次の一手を考えていた。
「いまの夜宵君も朝陽君も、行動目的が不明すぎる。朝陽君の方は分からないが、夜宵君は君達にも危害が及ぶことを気にも留めていない。本来なら夜宵君の暴走を止めるべき何だろうが…」
大和がその先の言葉に言い淀んだのは、先程の黒い球体に吸い込まれそうになった場面が頭にチラついていたからである。
「(あの擬似ブラックホールが厄介だ。朝陽君の推進力でも振り切れない程強力な引力…いま聞いた通りのことを今の朝陽君が言ったとすれば、確かに従うのが一番良いんだろうけど…)」
この状況で最善の選択が取れるものは殆どいないだろう。対メナスならまだしも、相手は本来味方の者。
加えて味方側と思えるいまの朝陽でさえも、その素性はハッキリしていないのだ。
さらに言えば従来の敵である【オリジン】も健在であり、そちらの対策も練らなくてはならない。
この混沌とした状況では、流石の大和も即座に案を出すことは難しかった。
そんな時、必ず大和を支えるのは、常に彼の隣立つ咲夜であった。
「今は待機で良いのではないでしょうか」
咲夜は落ち着いた声で大和に提案する。
「敵は想定以上に強力。夜宵、朝陽両名の状況は不明。加えて前線の三人は九死に一生を得て間もないので落ち着く時間が必要です。現場の状況を整理する間も必要でしょう」
大和達を落ち着かせるために、咲夜は敢えて淡々と語る。
その効果は的面で、現場の『グリッター』達は勿論、大和も納得させていた。
そして咲夜は振り返り、大和を見て微笑む。
「ご心配には及びません。いざとなれば貴方の指示で皆が動きます。今は慌てず、焦らず、いずれ必ず来るであろう好機を待ちましょう」
指揮をする能力的には、咲夜は幾分か大和には劣るだろう。
特に戦術的な面に関しては、大和に軍配が上がる。
しかし、味方の士気を上げたり、鼓舞する能力に関しては、咲夜の方が長けていると言えるだろう。
大和とて例外ではなく、夜宵に異変が起きた時に言葉を掛けられたように、それは大和にも効果を及ぼしていた。
大和が戦術を練り、組織の調和を図れば、咲夜は組織を奮い立たせ、士気を高める。
司令官、指揮官としての関係において、この二人ほど最高の組み合わせは他に無いだろう。
その立場と役割を理解しているからこそ、咲夜は冷静であった。
「…ほんと、君が隣にいてくれて良かった」
大和が溢した小さな一言は誰にも届かなかったが、口にしたことで、更にその想いを認識することが出来た。
大和は通信機に手を当て、一同に指示を飛ばす。
「聞こえた通りだみんな。まずは一旦待機。戦況を把握し、今後の動きを決めていく。但し、二人のうちどちらかが危険な状況になった場合は即座に動く。良いね」
『『『了解!!』』』
大和の言葉に、奏達は力強く応えた。
通信を終えた大和は、ゆっくりと咲夜の隣に移動し、互いにモニターを見つめ目を合わせていない状況で、話しかける。
「ありがとう、咲夜」
「いいえ。本当の戦いはここからですよ、大和」
二人は小さく笑みを浮かべ、ここからの作戦を練り始めるのであった。
※後書きです
ども、琥珀です。
もう年が明けてから5日が経つんですね…年末年始は仕事だった私は全く実感が湧きません…
前回記載を忘れてしまいましたので、本日代わりにご挨拶を。
皆様にとって、本年が素晴らしい一年となりますようお祈り申し上げます。
次回は明日の8時に更新されますので、宜しくお願い致します。