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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
8章 ー千葉根拠地総力戦ー
188/481

第182星:超重力球

国舘 大和(24)

千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに根拠地の指揮をとりつつ、環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。関東総司令官という立場であるが、それを隠している。


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』と接する。高い戦闘能力と強大な『グリット』を備えるが、その素性は謎が多い。


斑鳩 朝陽(18)四等星

千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。大和により、現在は小隊長も務めている。陣営は前衛。


斑鳩夜宵(22)三等星

千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務め、今戦闘では前衛及び大隊の隊長を再び務める。窮地に陥ったことで再び謎の人格が現れ…?


樹神 三咲 (22) 四等星 《ベイルアウト》

千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務め、今戦闘では後衛部隊の隊長も務める。


佐久間 椿(22) 四等星

千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長にして、今戦闘では中衛部隊の隊長も務める。


【朝陽小隊】

譲羽 梓月(23

 冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。


久留 華 (22)

 おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。


曲山 奏(20)

明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。


【椿小隊】

写沢 七 (21)

 写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。


重袮 言葉 (20)

 活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…幻覚・幻視・催眠の『グリット』を操る。


海藤 海音 (16)

 誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな機微から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。


【三咲小隊】

椎名 紬 (22)

 ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手の視界を共有する『グリット』を持つ。


八条 凛 (16)

 自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。自身の『エナジー』を纏わせ、その物体を操る『グリット』を持つ。


大刀祢 タチ (17)

 メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。


【夜宵小隊】

私市 伊与 (19) 《ベイルアウト》

 年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。自身の肉体の動きを加減速する『グリット』を持つ。


早鞆 瑠衣 (18)

 十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。人体・物体を強化する『グリット』を持つ。


矢々 優弦 16歳 四等星 《ベイルアウト》

 幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。自然の声を聞き取る『グリット』を持つ。

 ここにきて、【オリジン】は遊びではなく戦闘を始めていた。


 ただ攻撃を受けて捌き、ゲームのように無造作にレーザーを放つのではなく、明確に命を摘み取る、まさに『メナス』らしい動きを繰り出していた。


 その動きは、先程までがいかに遊び心で動いていたのかを知らしめさせられる程桁違いであった。


 直前に進んでいたかと思えば横に入り込み、背後に回り込んだかと思えば上へ移動する。


 朝陽達であれば反応した頃には攻撃を食らっていただろう。


 そんな【オリジン】に対し、別人の様子となった夜宵は、これに食らい付いていた。


 一つ一つの動きに注視し、追いつかない、又は死角に回り込まれた時に備えて闇を展開し、決定打になり得る攻撃は全て防いでいた。


 さらに、これまでの夜宵がただ闇を拡げていただけなのに対し、今の夜宵はその形を自在に変形させ、攻撃にも使用していた。


 背後に回り込まれた時には、展開していた闇が鋭利な突起物となり、反撃に転じていく。


 更に近接戦闘で挑んできた【オリジン】に対し、足元にも徐々に闇を拡げており、距離をとった際にはそこから攻撃が出来るように仕掛けていた。


 攻撃が当たらずとも飲み込めば良い夜宵の闇に対して、【オリジン】の動きもやはり規格外であった。


 死角をついて背後に回った際に生み出される無数の闇の槍は、ほぼノーモーション・ゼロ距離で繰り出されている。


 しかし【オリジン】はこれを全て見切り回避していく。


 振り下ろされた拳は本来虚無である筈の闇を叩きつけ、蹴散らしていく。


 距離をとった際の足元に広げられた闇も、着地の瞬間に触手で薙ぎ散らかすことで霧散させていた。



『チィ…この化け物が。本来我の闇はそんな簡単に消せるものではないぞ!!』

【アハハ!!ソウダヨネ!!私モ結構力入レテヤッテルヨ!!】



 そう言いながら、【オリジン】は再び散布されていた黒い粒子を力技で払い除けながら夜宵に近づいて行く。



『(チッ…思うてた以上に規格外の化け物よの。本来の力さえ出せればやりようはあるが、今の小娘の身体でこれ以上の出力は器が壊れかねんからの。まだそれは避けておきたいところだが…)』



 迫り来る【オリジン】に対し、夜宵は闇を操って海面に大きな波を起こさせ、そこで出来た影を操り攻撃を繰り広げる。


 この不意打ちでさえも【オリジン】は反応し、身体を背中にのけ反らせることで回避する。



【アッハハハハ!!今ノハビックリシタァ!!モウチョットデ当タルトコロダッタヨ!!】



 ケタケタとおかしそうに笑う【オリジン】に、夜宵は苛立った様子を見せる。



『やはりこのままでは埒があかんか…やむを得まい。ここで器を壊されるよりはマシか』



 すると夜宵はピタリと動きを止める。突然動きが止まったことで、【オリジン】は首を傾げる。


 夜宵は両手を肩まで上げ、やがてその指先にサッカーボール程の大きさの球体が作られていく。


 球体はある程度形を作り上げていくと、ポンッ、とまるでシャボン玉のように夜宵の手から離れていく。


 最終的に計六つの球体が作られ、夜宵の周囲を漂っていた。いや、漂っているだけでは収まらなかった。


 宙に漂っていた黒い球体の周囲は歪み、更には近くの海面が不規則な波を起こしていた。


 最初は新しい遊び道具としか見ていなかった【オリジン】も、その異質さに気付き、眉を顰める。



『《超重力球(グラビティ・ホール)》』



 技名を告げた夜宵は球体を操り、無造作に【オリジン】へと投げつける。


 球体の速度は決して早くはない。ましてや【オリジン】であれば目を瞑っていても避けれる速度であった。


 当然【オリジン】はこれを難なく回避する。球体はその後何事もなく通過し…



【…!?】



 ()()()()。球体が【オリジン】の横を通過した直後、【オリジン】の身体が球体に吸い寄せられていった。



【ナニッ!?引ッ張ラレル!?】



 驚きながらも、【オリジン】はこれに抵抗する。


 しかし、驚くべきことに、球体の吸引力は【オリジン】の身体能力を持ってしても一筋縄でも引き剥がすことが叶わなかった。



【ウ…ギギ…コンノォ!!】



 たまらず【オリジン】は球体に向けてレーザーを放つ。


 しかし球体はレーザーで破壊されるどころか吸収していった。



【ウッソ!?ナニソレ!?】



 流石の【オリジン】も驚いた表情を浮かべる。


 一方球体を放った夜宵は、してやったりの笑みを浮かべていたが、何故か鼻からは少なくない量の鼻血を垂らしていた。



『フッ…ハハハ!やはりこれ程の力を行使すれば無傷とはいかんかったか…だがゲホッ!!貴様もこれで終いよ!!』



 鼻血だけでなく、顔色も青白く悪く、そして呼吸も荒ぶっていた。


 しかし、その口元に浮かべられた笑みだけは変わらなかった。


 謎の漆黒の球体。その正体は少し離れた位置にいた朝陽達が掴んでいた。



「あれは…もしかして擬似的なブラックホールなのではないでしょうか!?」



 観察を続けていた奏が声を上げると、一同が驚いた表情を浮かべる。



「ぶ、ブラックホール!?それを作り出したんですか!?」

「確証はありませんが、先程【オリジン】のレーザーをあの球体が飲み込んだ時、歪んで見えたのです!!恐らくあの球体自体が光さえも飲み込む重力を備えているのではないかと!!」



 あの一瞬でそこまで見ていたことに感心しつつ、確かにそれと似たような特徴を持っていることに気がつく。



「【オリジン】でさえも脱出するのに手間取ってる…本当にブラックホールなんだ…」



 一同が冷静に観察出来ていたのもそこまでで、夜宵が繰り出した漆黒の球体の引力が、朝陽達にも迫りつつあったからだ。



「ま、まさか、ここまで引力が届くと言うのか!?」



 タチを始め、全員が驚きながらも後退を始めるが、次第に強くなる引力に、徐々に引き寄せられていく。



「ま、まずい!!前衛組が吸い寄せられてる!!」



 圏外にいた中・後衛組が、救出に向かおうとするも、朝陽達前衛組が通信越しにそれを止める。



「ダメです!いま近付いたら皆さんまで巻き込まれてしまいます!」

「で、ですがこのままでは朝陽さん達が…!!」

「全員がここでやられてしまったら、【オリジン】と戦える人がいなくなってしまいます!!全滅だけは絶対に避けないと!!」



 朝陽の言葉に、一同は困惑し動きが取れない。


 こういった場面で判断をする夜宵達小隊長はおらず、さしもの大和や咲夜もこの局面で即判断を下すのは難しかった。


 刻一刻と磁力は強まり、そしてとうとう足場の踏ん張りがきかなくなった朝陽達は球体へと吸い込まれていった。



「「「きゃあああああ!!!!」」」



 その絶叫に、全員が目を瞑り、大和達は判断の遅さに悔いてモニターから目を離してしまう。


 その最中、朝陽の視界は()()()()染まっていった。






●●●






「あ…あれ?」



 目を覚ますと、いや、そもそも意識を失っていたのかさえ分からないが、朝陽が目を開くと、そこは見覚えのない空間であった。


 周囲には何もないものの、一定の空間を目処にカナリア色の光が円状に瞬いていた。



「私、どうしてここに?さっきまで黒い球体に吸い込まれそうだったのに…」



 うーん、と頭を悩ませる朝陽は、ハッと何かに気付く。



「も、もしかしてもう吸い込まれた後なんでしょうか!?と言うことはここは死後の世界!?そう言えばとても綺麗で…」

『ご心配には及びません。あなた方は()()命を堕とされてはいませんよ』

「わひぃ!!」



 突然声をかけられ、朝陽は思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。


 ゆっくりと振り返ると、そこには女性と思わしき人物が立っていた。


 思わしき、と言うのは、女性自身が強く光り輝いているために、シルエットのみで全容を把握することが出来なかったからだ。



「え、えと…貴方は?それにここは一体…」

『ここは私の…いえ、私と貴方の世界です』

「あ、貴方と私の…?あ、でもこの光…見覚えがある。私の『天照す日輪イノセント・サンシャイン』とよく似てる。あったかくて、心地よい光…」



 朝陽がそう呟くと、女性はニコリと小さく微笑んだ。



『申し訳ありません。本来であればこのような形で貴方をここに招くつもりはありませんでしたが、不測の事態が起きてしまいましたので』

「不測の事態…って、いま外で起きてることですか?」



 朝陽が問い詰めると、女性は申し訳なさそうに頷いた。



「もしかして、お姉ちゃんに何が起きてるのか知ってるんですか!?教えてください、お姉ちゃんはどうなって…」



 興奮気味に女性に問い正す朝陽を、女性はその両頬に触れることで落ち着かせる。



『申し訳ありません。今はゆっくりとご説明をしている時間がないのです。ですから、私の方で結論とご提案のお話を進めさせていただきます』



 不思議と女性の声は朝陽の心に強く響き渡り、興奮していた心を一瞬で落ち着かせていた。



『まず結論から申し上げますと、皆様はいま先程の磁球体に飲み込まれ危機に扮しています。このままでは強力な重力に皆様の肉体が耐えきれず、命を堕としてしまいます。ですが、()()()()()()()()()()()()()()



 突然の話に頭の整理が追いつかないでいたが、女性が嘘を言っていないことは、朝陽は理解していた。 



『ここからが提案です。()()()超重力球(グラビティ・ホール)》に対抗するには、以前のような間接的な力添えだけでは押し負けてしまいます。そこで、ほんの僅かな時間で構いませんので、貴方のお身体をお借りしたいのです』

「わ、私の身体ですか?」



 顔は見えないものの、女性は深く頷いた。



『貴方のお身体をお借りすることで、彼女の力に対抗するだけの力を発揮することが可能なのです。ですが、貴方の許可なしに行うことは気が咎めまして』



 突拍子もない提案であったが、朝陽は目の前の女性がひとえに朝陽達を思って悩んでいることに気が付いていた。


 それと同時に、朝陽はこの声に聞き覚えがあった。それも一度ではなく、何度でも自分に語りかけてくれた優しい声であった。


 だからこそ、朝陽はその話を聞いてから、迷うことなく即断即決を下した。



「分かりました!!私の身体を使ってください!!」



 迷いなく答えられるとは思っていなかったのか、今度は逆に女性側が困惑しているようであった。



『…お願いした身で言うことではないのですが、宜しいのですか?素性も知らない私に身を預けてしまって』

「それでみんなを救えるのなら、私が躊躇う理由はありません!それに、何だか貴方とは初めて会った気がしないんです。何度も助けてくれて、何度も支えてくれた…そんな気がするんです!だから、私貴方を信用します!!」



 朝陽の真っ直ぐな心が女性にも伝わり、女性は笑顔を浮かべながら小さく呟いた。



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 その言葉を最後に、女性はその身体を粒子へと変え、ゆっくりと朝陽の身体に入り込んでいった。


 ゆっくりと意識が遠のく中、朝陽は最後にもう一度女性の声を聞いていた。



『貴方のお仲間は、必ず守り抜いて見せます』

※後書きです






新年あけましておめでとうございます。


年始は仕事の兼ね合いもあり更新はお休みさせていただいておりましたが、本日から更新を再開して参りますので、また宜しくお願い致します。


また多くの皆様に読んでいただけるよう精進して参りますので、本作をどうぞ宜しくお願いします。


さて、更新ですが、頑張って週五更新を続けて行こうと思います。

つきましては今後は土日を除く五回更新でお送り致しますので、宜しくお願い致します。


それでは、今年もどうぞ宜しくお願い致します。

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