第181星:カオス
※後書きにお知らせがあります!!一度ご覧ください!!
国舘 大和(24)
千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに根拠地の指揮をとりつつ、環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。関東総司令官という立場であるが、それを隠している。
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』と接する。高い戦闘能力と強大な『グリット』を備えるが、その素性は謎が多い。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。大和により、現在は小隊長も務めている。陣営は前衛。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務め、今戦闘では前衛及び大隊の隊長を再び務める。
樹神 三咲 (22) 四等星 《ベイルアウト》
千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務め、今戦闘では後衛部隊の隊長も務める。
佐久間 椿(22) 四等星
千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長にして、今戦闘では中衛部隊の隊長も務める。
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。
久留 華 (22)
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。
曲山 奏(20)
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。
【椿小隊】
写沢 七 (21)
写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。
重袮 言葉 (20)
活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…幻覚・幻視・催眠の『グリット』を操る。
海藤 海音 (16)
誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな機微から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。
【三咲小隊】
椎名 紬 (22)
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手の視界を共有する『グリット』を持つ。
八条 凛 (16)
自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。自身の『エナジー』を纏わせ、その物体を操る『グリット』を持つ。
大刀祢 タチ (17)
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。
【夜宵小隊】
私市 伊与 (19) 《ベイルアウト》
年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。自身の肉体の動きを加減速する『グリット』を持つ。
早鞆 瑠衣 (18)
十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。人体・物体を強化する『グリット』を持つ。
矢々 優弦 16歳 四等星 《ベイルアウト》
幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。自然の声を聞き取る『グリット』を持つ。
────ガシッ
完全に意識を手放した筈の夜宵の身体が動き、胸ぐらを掴んでいた【オリジン】の手を握り締める。
【ン?】
『《混沌の闇》』
その異変に【オリジン】が気がつく前に、闇の粒子が一気に散布されていく。
その粒子が【オリジン】に付着すると、夜宵はニィと凶悪な笑みを浮かべ、顔の前に手を出し、それを握り締める。
次の瞬間、付着していた無数の粒子状の闇が一瞬肥大化し、その部分を覆っていた腕を消滅させていった。
【コレハ…コノ間ノ…!!】
腕を失った【オリジン】は、夜宵を抑えられず、自由になった夜宵に腹部を蹴り飛ばされる。
蹴り自体でダメージは無かったが、以前と同じ状況に警戒心を高めたのか、【オリジン】は距離をとった。
対して夜宵はそれを気にも止めず、手をグッパしてみたり、その場で飛び跳ねたりと、身体の調子を確かめているような様子を見せていた。
『ふむ…思うていたより悪くない。前回はボロボロであったが今回は五体満足のようだな。身体もしっかりと馴染んでおる』
その声は夜宵であり、そして夜宵では無かった。他の人が聞けば恐らく疑問に思う程度。
しかし朝陽は、今の夜宵が全くの別人であると気付いていた。
直感ではない何か、もっと奥の本能的な部分がそう訴えていた。
そしてもう一人、この変化に気付いている者がいた。【オリジン】である。
【コノ感覚…アノ時ト同ジダァ!!オ前!!コノ前ノアイツデショ!?】
呼称が支離滅裂であったが、夜宵はニィ…と、およそ夜宵は浮かべないであろう悪どい笑みを肯定的に浮かべた。
『おぉ…我も覚えておるぞ。以前小娘どもを追い詰めた化け物であったな』
その口調は完全に夜宵のものではなく、そこでようやく全員が夜宵がおかしいことに気が付く。
「や、夜宵さ…」
話しかけようとしたタチの言葉を、夜宵は手で遮る。
『あ〜あ話しかけるな小娘ども。我は人と話をするのが嫌いでな。次に話しかければ貴様から消すぞ』
ゾッとするような声色。しかしそれが、今の発言に嘘がないことを表していた。
その声に歓喜したのは【オリジン】であった。これまで遊び感覚でしか戦えなかったところに、ようやく実力を出せる相手が現れたことに喜びを覚えていたのだ。
【嬉シイナ嬉シイナ!!ヤット戦エルヤツガ現レテ嬉シイナ!!】
ルンルンとした様子で喜ぶ姿はまさに無邪気な子供そのものであったが、先程までの凶悪な姿を見ている朝陽達からすれば、恐怖でしか無かった。
『ハハ!!前に言うたであろう!?我はガキは嫌いなのよ!!』
喜ぶ【オリジン】に対し、夜宵は同じく笑みを浮かべながらも闇の粒子を散布させていく。
その粒子は広範囲に渡っており、朝陽達にも届いていた。
「…!!いけない!!皆さん下がって!!」
以前と似た状況に危険を感じた朝陽は、前衛組を一斉に下がらせ、他の面々もそれに従う。
漆黒の粒子は次々と生み出され、【オリジン】の周囲を漂っていく。
『ガキの姿なら尚更だな。消え失せよ』
そして夜宵が手を握りしめようとした瞬間、【オリジン】は長い触手をバッと広げ、そのまま高速で回転させていく。
『…ほう?我の《混沌の闇》を吹き飛ばす為に…』
夜宵の言う通り、触手によって生じた突風で、周囲を漂っていた粒子はあらかた吹き飛んでしまっていた。
【面白イ力ダヨネ。私結構頑丈ナハズナノニ、二回モ腕ヲ持ッテイカレチャッタ】
『我の力に性質は関係ないからな。全てを飲み込む闇の力が我の真骨頂よ』
ビリビリと張り詰める空気が二人の間でせめぎ合い、朝陽達は一歩も近付けないでいた。
「あ、朝陽さん、夜宵さんは一体どうなってしまったんですか!?夜宵さんのあんな力の使い方、見たことがない…」
タチが困惑した様子で朝陽に尋ねるが、朝陽も力無く首を振ることしかできなかった。
「わたしにも分からないんです。でも、何故か…今のお姉ちゃんはお姉ちゃんじゃないってことだけは分かります。お姉ちゃんの身体を、誰かが操ってるって」
にかわには信じられない言葉ではあったが、実際に夜宵が纏っている雰囲気と発せられる口調はまるで別人のようであり、今はその言葉を信じる他無かった。
【アハハ!!久々ニ楽シメソウダネ!!モット遊ボウヨ!!】
『言うたであろう?我はガキは嫌いであると。それに、我は長いこと顕現していられぬのよ、今はな』
夜宵の言葉を理解していないのか、はなから聞く気がないのか、【オリジン】は全く反応しない。
ただウキウキした様子で夜宵のことをみるだけであった。
『チッ…だからガキは嫌いだと言うのだ…』
それに苛立った様子で舌打ちをするも、夜宵に油断は微塵もなかった。
『(高密度の闇の粒子をああも容易く払い除けるとはな。前回は上手いこと退けることが出来たが、二度目はないか。厄介な相手よ)』
考え込む夜宵を他所に、無邪気な笑みを【オリジン】は浮かべていた。
【ジャア次ハ私ノ番ダネ!!イクヨォ!!】
すると【オリジン】はほぼノーモーションでレーザーを放つ。
ただでさえ光速で放たれるレーザーが、予備動作無しで放たれれば、『グリッター』からすればたまったものではないだろう。
『ふん』
しかし、夜宵はこれに難なく対応。
闇を最小限に展開し、レーザーを丸ごと飲み込んでいく。
『無駄よ。我にはいかなる攻撃も届かん』
【アッハハ!!スゴイスゴイ!!私ノ攻撃モ飲ミ込ンジャウンダネ!!】
攻撃が無効化されても、【オリジン】は驚くどころか歓喜の笑みを浮かべていた。
【面白イ面白イ!!アイツトハ違ウ楽シサガアルネ!!】
『誰と比べておるかは知らんが、我と肩を並べるモノなど一人もおらん。貴様も早く我の闇に飲み込んでやろうぞ』
夜宵も【オリジン】には全く臆する様子はなく、寧ろ煽ってさえいた。それに【オリジン】は再び歓喜の笑みを浮かべる。
【アッハ♪ソレハスゴイ楽シソウ!!ジャアソノ挑発ニノッテアゲルネ!!】
そういうと【オリジン】はグッと身体を曲げ、そして海面を蹴って一気に加速。
レーザーによる遠距離攻撃ではなく、リスク覚悟の近接戦闘を仕掛けた。
『クソ生意気なガキよ!!我が闇の礎になるが良い!!』
そして、夜宵もこれに応じ、闇を複数展開。何度も衝撃音が響き渡る激しい戦闘が繰り広げられていった。
●●●
夜宵の違和感は、根拠地にいる大和達も気が付いていた。
「あれは…夜宵君じゃないね」
「はい。モニター越しでも分かります。今彼女の身体は、別の者が乗り移っている…そのような様子が見て取れます」
大和の言葉に答える中、咲夜は一度だけ同じような光景を見た覚えがあった。
それは夜宵が復帰して間もないころ、咲夜が組手を行っていた時のこと。
咲夜の過度な発言で夜宵を精神的に追い詰めてしまった際に、『グリット』の暴走状態を引き起こしてしまったことがあった。
「(あの時は…純粋に暴走し抑えが効かないような様子でしたが、今回は意識そのものが入れ替わっているような感じです。ですが一体誰の意識が…)」
以前夜宵が暴走した時は、それまで見せたことのない規模の闇が襲い掛かってきたが、今回は違う。
意識はハッキリとし、そしてこれまでに見たことがないほど『闇夜の月輪』を操っていた。
否、操るというよりも、まるで自分自身のもののようであり、実力的にも相当のものであるようであった。
対して大和は、何かに気付いているかのように静かに考え込んでいた。
「(『グリット』には不明な点が多い…能力の特性、性質、発現するもの、しないもの…国によっては全てが同じ能力である国もあるし、死後別のものに受け継がれる国もある…)」
トントン、と机を指で叩きながら、大和は思考を続ける。
「(夜宵君は今、意識を乗っ取られて、潜在意識が表出しているような状態なんだろう。もし、その潜在意識の正体が、ボクの予想通りだとしたら…)」
「大和」
とそこで、大和の思考を咲夜の声が遮る。
「夜宵さんの急変は確かに配慮すべきことではありますが、【オリジン】との戦闘もまだ終えていません。戦場で戦う彼女達も困惑している筈です。まずは、彼女達が進むべき道の指示を」
咲夜に言われ、自分の思考が本来の司令官としてのものから外れていることに気が付かされ、大和は一度両手で自身の頬を叩き、喝を入れる。
「ごめん、ありがとう咲夜。もう一度集中するよ」
大和の言葉に咲夜は小さく笑みを浮かべて頷く。
「(そうだ迷うな俺。既に伊与君、優弦君、そして大体の要である三咲君まで失ってるんだ…彼女達が不安じゃないわけがない。俺が道を示さなければ、彼女達は不安を抱えたまま戦うことになる。それじゃ俺が来た意味がないだろ!)」
大和は残った人員を確認し、次の一手と動きを考える。しかし、更に現状を混沌とさせる事態が戦場に舞い込んでいく。
※後書きです
ども、琥珀です
ついに今年最後の日ですね
そんな日に私めの拙い作品を読んでくださり誠にありがとうございます。
連続更新は一旦ここまで。次回の更新は『1月4日の月曜日』から再開しようと思っております。
更新頻度は四日の後書きにてお知らせさせていただきますので宜しくお願いします。
それでは、今年一年、本作品をありがとうございました。来年もどうぞ宜しくお願いします。