第179星:叱咤
国舘 大和(24)
千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに根拠地の指揮をとりつつ、環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。関東総司令官という立場であるが、それを隠している。
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』と接する。高い戦闘能力と強大な『グリット』を備えるが、その素性は謎が多い。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。大和により、現在は小隊長も務めている。陣営は前衛。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務め、今戦闘では前衛及び大隊の隊長を再び務める。
樹神 三咲 (22) 四等星
千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務め、今戦闘では後衛部隊の隊長も務める。
佐久間 椿(22) 四等星
千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長にして、今戦闘では中衛部隊の隊長も務める。
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。
久留 華 (22)
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。
曲山 奏(20)
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。
【椿小隊】
写沢 七 (21)
写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。
重袮 言葉 (20)
活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…幻覚・幻視・催眠の『グリット』を操る。
海藤 海音 (16)
誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな機微から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。
【三咲小隊】
椎名 紬 (22)
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手の視界を共有する『グリット』を持つ。
八条 凛 (16)
自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。自身の『エナジー』を纏わせ、その物体を操る『グリット』を持つ。
大刀祢 タチ (17)
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。
【夜宵小隊】
私市 伊与 (19) 《ベイルアウト》
年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。自身の肉体の動きを加減速する『グリット』を持つ。
早鞆 瑠衣 (18)
十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。人体・物体を強化する『グリット』を持つ。
矢々 優弦 16歳 四等星 《ベイルアウト》
幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。自然の声を聞き取る『グリット』を持つ。
────ダァン!!
司令室内に、大和が机を叩きつけた音が響き渡る。部屋にいた二人のうち、夕は涙を浮かべモニターから目を逸らし、咲夜は微動だにしなかった。
叩きつけた拳を強く握りしめ、歯を強く食いしばりながら、悔し気に言葉を溢す。
「何をやってるんだ俺は!!目の前で大事な部下を二名も負傷させて!!」
それは今までに見たことのない、荒々しさを醸し出した大和の姿であった。
しかしそれもほんの束の間。大きく息を吐き出し、冷静さを装う。
「ごめん、次の作戦を考えるよ」
仲間思いの大和がどれ程辛い心境で指揮を執っているのか、夕には痛いほど理解できていた。
だからこそ、それを口に出さず、司令官であるからこそ冷静でいなくてはならない大和のため、夕も表情には出さず、冷静に自分の仕事に戻っていった。
「…!!いけない!!隊を崩してはダメ!!」
その時、咲夜が慌てた様子で通信を入れる。モニターに目を移すと、そこには【オリジン】目掛けて無造作に攻撃を続ける『グリッター』の面々が映し出されていた。
●●●
「やあぁぁぁぁ!!」
攻撃で先陣を切ったのは朝陽だった。
高い攻撃力と自在な角度・距離からの攻撃の利点を活かし、他方から攻撃を続けていた。
しかし、その連携なしの攻撃により、他の前衛組が思うように攻撃できずにいた。
これについていったのは、同じ朝陽小隊のメンバーである奏、そして梓月の二人であった。
奏と梓月のうち、前者は距離を詰め、撃ち漏らした朝陽の光線を曲げ、【オリジン】に当たるよう調整、後者は複数の【偏光反射鏡】を操り、奏とは別のやり方で朝陽の光線を跳ね返していた。
「やめなさい朝陽!!貴方達も!!連携が取れていないわ!!」
それを必死に諌めようとしているのは夜宵。
優弦までやられたことで同じく冷静さを失いかけていたが、朝陽達が仕掛けたことで冷静さを取り戻し、元の連携の取れた動きを取ろうと指示を飛ばしていた。
しかし、冷静さを失っている朝陽達にはそれが届かず、危険な攻撃を続けていた。
なまじ連携が取れていることがここではマイナスに働いており、極限下により朝陽達に指示が届かないほどの集中力をもたらしていた。
しかし、それほどの猛攻にも関わらず、【オリジン】は余裕の笑みを浮かべていた。
朝陽達の攻撃を流し、あしらい、そしてグリンッ!と通常なら曲がらない角度に首を曲げ…
────ビュン!!
僅かに攻撃の手が止んだ隙を縫って、レーザーを放った。
『ッ!!』
狙いは変わらず三咲。
予め『耐熱反射鏡』を展開していたため直撃はしなかったものの、その衝撃はこれまでの『メナス』の攻撃とは桁違いであった。
その衝撃を受け止めつつ、三咲は【オリジン】の攻撃に違和感を覚えていた。
「(おかしい…何か違和感を感じる…)」
しかし、その違和感の正体は掴めなかった。考えを固める前に、次の攻撃が迫っていたからだ。
そして、自分達を前にしながら三咲を狙うという行動に、朝陽達はますます怒りを覚えていた。
「この…!!お前の相手は私よ!!」
朝陽の言葉に応えるようにして【オリジン】はグリッと顔を回して朝陽達の方を見る。
その奇怪な動きに、思わず肩を震わすが、その直後、【オリジン】は心底朝陽達の心を逆撫でするかのような挑発的な笑みを浮かべる。
完全に冷静さを失った朝陽が、高火力の技を放とうとしたところで、目の前に黒い影が広がる。
ただの牽制として展開した闇であったが、意外にも【オリジン】はこれを警戒して距離をとった。
「お姉ちゃん…!!」
朝陽達の前に現れたのは夜宵。
全身に黒いオーラを纏った状態で【オリジン】と朝陽達の間に立っていた。
「どうして止めたの!!次の攻撃を当てれば倒せたかもしれないの……!!」
────パァン!!
瞬間、夜宵は朝陽の頬を強く引っ叩いた。
それは、怒りに身を焦がしていた全員が冷静さを取り戻すほど衝撃的な光景であった。
「お姉…ちゃん!!」
「冷静になりなさいと何度も忠告したわよ。なのに貴方は一人で突っ込み、あまつさえ味方も巻き込みかねない攻撃を続けたわ。それじゃあ千葉根拠地の一員として失格だわ」
いつも朝陽には甘い夜宵とは思えない辛辣な言葉に、しかし朝陽は気丈に言い返す。
「だって…お姉ちゃんはどうして冷静でいられるの!!あんな…あんな奴に優弦さんと伊与さんはやられたんだよ!!さっきだって、遊んでるみたいな表情を浮かべて…お姉ちゃんは悔しくないの!?」
「悔しくないわけないでしょう!!!!」
朝陽の怒りのこもった言葉を、夜宵はそれ以上の怒気を含んで叫んだ。
「総力戦で挑んで、みんなが全力を尽くして、私の指示に従って…それで怪我をしていく…まるで、あの日と同じようだわ」
「…ッ!」
あの日、とはついさっき朝陽に話してくれたことの日、夜宵が自分を庇って怪我を負い、大和が着任し初めて指揮を執った時の日のことだ。
「あの日ほど、私は自分の無力さを呪ったことは無かった!!私は何もできなかったんだと実感させられた日はなかった!!」
夜宵は朝陽の両肩を掴み、ものすごい剣幕で朝陽に語りかける。
「けれど、あの日から変わっていった!!司令官、指揮官が着任し鍛えられて、みんなが成長していった!!私だって!!」
「お姉…ちゃん…」
「今も!!手も足も出ない状況下であっても、みんなで力を合わせて戦ってる!!」
言葉の端々から感じる激しい怒気と想い、それは朝陽に向けられたものではなく、夜宵自身に向けてのものであった。
「私達は一人じゃ勝てない!!支え合って、協力しあって、ようやく強大な敵に立ち向かえるの!!優弦だって椿を庇って怪我を負ったわ!!それは、椿が必要な人だってことでも、自分よりも優先すべき戦力だってことでもない!!仲間だから!!」
肩から胸ぐらに手を移し、夜宵は乱暴な形で朝陽を睨みつける。
「だから…!!あの二人の犠牲を無駄にするようなことは絶対に許せないわ!!あの二人のことを思うのなら!!力を合わせて戦うのよ!!」
朝陽の脳裏には傷付いた二人の姿が目に映る。しかし、夜宵の言葉を受け、本当に彼女達のためになることがどういうことなのかを、強く痛感させられていた。
「ごめん…お姉ちゃん…私が間違ってた」
夜宵は続け様に言葉を吐き出していたことで息を切らしながら、ゆっくりと朝陽から手を離す。そして強く抱きしめた。
「しっかりして朝陽。貴方の代わりを出来る人は誰もいない…二人の仇をうつためにも貴方の力は必要なの」
「うん…!今度こそ、私もみんなと一緒に戦うよ!!」
冷静さを取り戻した朝陽は、怒りに変わって闘志を燃やし、再び【オリジン】と向き合う。
当の本人である【オリジン】は、攻撃をするタイミングなどたくさんあったにも関わらず、まるで海面に寝るようにして浮かんでいた。
【ファ〜…ア、オ話は終ワッタカナ?】
朝陽達の様子に気が付くと、身を翻して語りかける。
その様子に朝陽達は僅かに苛立ちを覚えるが、今度は冷静さを失うことは無かった。
「随分と余裕じゃない…私達なんて不意を突く必要すらないってこと?」
【ンン〜?マ、ソウダネ?】
どこまでも人の神経を逆撫でするような発言に、朝陽は思わず槍を握る手が強くなる、が、夜宵が手で制することで落ち着きを取り戻す。
「その判断、後悔することになるかもしれないわよ?」
【ソレッテ、ココカラオマエ達ガ逆転スルッテコト?アハハナイナイ!!】
手を振り、自分で言った言葉を強く否定し、ケラケラ笑う。
「どうかしらね。そうやって余裕こいてたら足元救われるわよ」
鋭い目で睨みつけられるも、【オリジン】はこれを気にも止めず、【ン〜】と考える素振りを見せる。
【ソッカァ〜私ハ遊ンデルツモリダッタンダケド、オマエ達カラスルト戦エテルト思ッチャウノカ〜。ソレハソレデ面白イケドナンカ癪ダナァ】
【オリジン】はしばらく悩むような様子を見せた後、ハァ、と小さくため息を吐いた。
【モウ少シ遊ンデテモ良カッタンダケド、マァチョット飽キテキテタシネ。モウイッカ】
【オリジン】の発言の意図が読み取れず、困惑する夜宵達の目の前で、【オリジン】は軽く手を振った。
次の瞬間、海面が割れるように裂けると、その線状に立っていた三咲の身体は、まるで切りつけられたかのように切り裂かれた。
※後書きです
ども、琥珀です。
私は宣伝用にTwitterを使用させていただいているんですが、そのトプ画が琥珀色の物体(?)なんですね。
よく硬そう…って,言われるんですがそんなことないです、ゼリーのようにプルプルしてます。
…なんの話だ。
本日もお読みいただきありがとうございました。
引き続き、年末までお付き合い頂けますと幸いです。