第178星:連携技
国舘 大和(24)
千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに根拠地の指揮をとりつつ、環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。関東総司令官という立場であるが、それを隠している。
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』と接する。高い戦闘能力と強大な『グリット』を備えるが、その素性は謎が多い。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。大和により、現在は小隊長も務めている。陣営は前衛。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務め、今戦闘では前衛及び大隊の隊長を再び務める。
樹神 三咲 (22) 四等星
千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務め、今戦闘では後衛部隊の隊長も務める。
佐久間 椿(22) 四等星
千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長にして、今戦闘では中衛部隊の隊長も務める。
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。
久留 華 (22)
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。
曲山 奏(20)
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。
【椿小隊】
写沢 七 (21)
写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。
重袮 言葉 (20)
活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…幻覚・幻視・催眠の『グリット』を操る。
海藤 海音 (16)
誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな機微から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。
【三咲小隊】
椎名 紬 (22)
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手の視界を共有する『グリット』を持つ。
八条 凛 (16)
自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。自身の『エナジー』を纏わせ、その物体を操る『グリット』を持つ。
大刀祢 タチ (17)
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。
【夜宵小隊】
私市 伊与 (19) 《ベイルアウト》
年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。自身の肉体の動きを加減速する『グリット』を持つ。
早鞆 瑠衣 (18)
十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。人体・物体を強化する『グリット』を持つ。
矢々 優弦 16歳 四等星
幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。自然の声を聞き取る『グリット』を持つ。
【オリジン】の考え方が人間のソレと同じかどうかは分からない。
しかし、なかなか致命傷を与えられないながらも繰り出される三咲の指示を、少なからず不快に感じていたのは確かなようで、【オリジン】は引き続き三咲を狙う素振りを見せていた。
それを読み取っていた朝陽達は【オリジン】の動きは制限させ、攻撃を続けていく。
が、しかし、それだけでは抑え付けられない規格外の存在、それが【オリジン】である。
視線を気取り、攻撃で妨害、又は射線を切ることで防ごうと試みるも、【オリジン】はそれを力付くでこじ開けていく。
そしてその隙に三咲目掛けてレーザーは放たれる。
「『耐熱反射鏡』!!」
しかし、先程に比べれば動きは単調だった。その為、全体から【オリジン】を視ていた三咲は素早い動きで『耐熱反射鏡』を展開。レーザーを防ぐことに成功していた。
同時に、レーザーが放たれれば隙が出来る。そこへ、朝陽達は瞬間的に火力を上げ【オリジン】に攻撃を仕掛ける。
全てでは無いものの、朝陽達の攻撃は【オリジン】に直撃していた。
にも関わらず、【オリジン】は僅かに身体を揺らすだけで、ダメージを受けている様子は全く無かった。
それだけで、奮い立った筈の朝陽達の心が折れそうになる。
特に最前線で攻撃を続ける前衛組はそれが顕著であった。
『【オリジン】が身構えました!!範囲攻撃注意!!』
「ッ!!」
その度に、通信機から聞こえて来る力強い言葉が朝陽達に喝を入れてくれる。
三咲の指示を聞いて朝陽達が距離を取ると、直後に触手が辺りに振り回される。
海面が避け、思わず仰け反ってしまう程の衝撃が周囲を襲う。
それ明確な隙となり、フリーとなった【オリジン】は、レーザーではなく距離を詰めた。
レーザーだけでも三咲を追い詰めることは可能であったが、それだけでは時間がかかり過ぎると判断したからだ。
その前には椿率いる中衛組が残っていたが、【オリジン】は全く眼中になかった。
立ち塞がるなら蹴散らし、静観ならあとで始末する。それだけであった。
何かしらのアクションを起こすであろうと予想していた【オリジン】に対し、椿達は何もしなかった。
ならば後回しで良いと判断し、【オリジン】はその前を通過しようとした。
瞬間、全身に強い衝撃が走る。加えて痺れが襲い身体の自由が効かなくなっていく。
「その内突っ込んでくると思ってたよ〜。予め罠をセットしておいて正解だったね〜」
椿は【オリジン】が局面を崩すべく、必ず動きを見せると予想していた。
そして狙いが三咲であると分かってた以上、人の動きを読むことに長けている椿からすれば、【オリジン】と言えど、位置を予測して罠を設置することは容易かった。
とはいえ相手は全てにおいて規格外の【オリジン】。
これまで幾度となく『メナス』の動きを封じてきたシビレ罠ではあるが、それよりも持続時間が短いのは予想出来たことであった。
だから既に華は攻撃の準備を整えていた。
華の『グリット』である『抑圧開解』によって、モノを圧縮したポットを、【オリジン】周辺へ放っていた。
半開きになっていたポットから、次の瞬間大量の光線が放たれる。
中で圧縮されていたのは、朝陽の『天照す日輪』の光線であった。
以前、あるイベントの際に他者のエナジーを圧縮出来ることが判明し、朝陽との連携に使用できると判断した朝陽小隊の面々で試行錯誤を繰り返していた。
その産物として、華は朝陽の光線を圧縮したポットを持ち運んでいたのだ。
「(でも朝陽ちゃんの『エナジー』が強すぎてぇ、精々4つくらいしか保管出来ないのが難点だよねぇ。しかも私も相当の『エナジー』を使っちゃうから他に持ち運び出来るものも減っちゃうしぃ、これは使い道が難しいよねぇ)」
朝陽の光線による攻撃は数秒続き、動きを封じられていた【オリジン】には全て直撃していた。
その攻撃はまるで滝に打たれる修行僧のようであったが、その滝のなかで【オリジン】は攻撃から抜け出そうと、ギギギギ…と少しずつ移動を始めていた。
「まだ攻撃は終わっていませんわ!」
「ほいぃ〜、火力注入ぅ」
お嬢様のような口調で声を発した瑠偉のあとに、椿は指を鳴らし、もう一つの罠を発動させた。
朝陽の光線は、強い熱を帯びている。そのため、上から下へ放たれている光線は、下で揺蕩う海面を直撃し、海水を蒸発させていた。
【オリジン】の周囲に立ち込める水蒸気より更に外側で椿が発動させた罠は、黒い粉末状のものを散布させた。その粉末の正体は火薬である。
更に華は別のポットを放り投げた。中身は薬品の組み合わせにより生じた爆発を圧縮したもの。
放り投げると同時に開かれたポットは、【オリジン】の前で圧縮された爆発が一斉に開放された。
その狙いは水蒸気爆発。以前、派遣交流で日本へやってきたヴィルヴァーラの戦術を真似たものである。
【オリジン】相手には通常の爆発では不十分と判断した椿達は、爆発力を更に上げる為、二重の用意を進めていた。
水蒸気爆発を起こさせたあと、更に外側から粉塵爆発を起こさせ、ダメージを与えようと試みたのである。
「『能力付与』!『活性強化』!!」
椿達の攻撃はこれだけに留まらない。爆発直前に、瑠偉は『能力強化』を発動。
他者を強化する目的で使用されることの多い、瑠偉の『グリット』であるが、強化されるのは人だけに留まらない。
例えば粘着性の高いものを強化すれば、より粘着質の高いものに、発光性の高いものを強化すれば更に強く輝くことになる。
つまり、爆発性の高い両物質に、その性質を促進させる強化を施せば、更に強い爆発となるのである。
しかし、二重どころか三重の強化による爆発が目の前で起きれば、椿達も無事では済まない。
その最後の穴を埋めたのは、後衛にいる梓月だ。『念力操作』により梓月が浮遊させたのは、強い耐爆性を誇る素材で作られた壁状のもの。
それを無数に操り、爆発する直前に【オリジン】の周囲でドーム状に重ね合わせることで椿達への影響を最小限に留めていた。
それでも尚伝わってくる衝撃に身を震わせながら、椿達はその効果の程を推し測っていた。
「火力が足りない私達のために〜、司令官達が考えてくれた方法の組み合わせだよ〜」
『通常の爆発だけでも《メナス》を仕留めることは出来ました。それを更に強化したものです。討伐とまではいかずとも、致命傷くらいは…』
椿の言葉に続けて、梓月が期待と手応えを込めて呟く。
梓月が形成した耐爆ドームの隙間から、焼け焦げた匂いと煙が立ち込め、周囲には僅かな沈黙が訪れる。
「…!あぶ…ない!!」
突如椿は、優弦に横から突き飛ばされる。次の瞬間────ビュン!!
ドームの隙間から閃光が迸り、線状となったレーザーが椿を突き飛ばした優弦の腹部を貫通した。
「優弦ちゃん!!」
バランスが取れず海面に沈みそうになった優弦を、直ぐに椿が掬い上げるが、全身に力はなく、椿に身体を預けたまま動かなかった。
傷は見るからに致命傷で、焼け焦げた臭いを発っしなからも大量の出血が起きていた。
『矢々 優弦 四等星、生体反応危険水準まで低下、ベイルアウト、作動します』
すぐさま腰につけられたベイルアウトシステムが作動。
機械の音声がなったあと、水晶が発光し、優弦の全身を光が包んでいった。
「ご…めんなさ…何も出来…ないま…」
言葉を発することさえ難しいのか、苦しそうに呟く優弦の手を、椿は光が包み終える最後まで離さなかった。
「そんなことないよ〜優弦ちゃんが『精霊の囁き声』で自然の声を聞いて庇ってくれたおかげで命拾いしちゃったからね〜。あとは私達に任せて〜」
優しい口調ながら力強く、椿の言葉を聞いた優弦は、全身が光に包まれたあと、意識を手放した。
そのまま身体は宙に浮き、根拠地方面へと向かっていった。
ギュッと拳を握りしめ、椿はレーザーが放たれた方を睨むようにして見る。
直後にドームの一部が吹き飛び、そこからはやや焼け焦げた程度の傷しか負っていない【オリジン】が姿を現した。
【ヤッテクレルジャン!チョットビックリシチャッタ!】
「…化け物め…絶対に許さないよ…良くも優弦ちゃんを…」
殆ど無傷であることに驚きつつも、椿はそれ以上に怒りの感情が上回り、【オリジン】を睨み付けた。
吹き飛ばされていた前衛も再び合流し、他の面々も椿達と同様に、怒りの形相で【オリジン】を睨みつける。
【アハハ!!良イネ良イネソノ顔!!コレダカラ人間ハ面白インダ!!サァ!!モット私ヲ楽シマセテ!!】
戦いを、命のやり取りを楽しんでいる様子にますます苛立ちを募らせ、朝陽達は再び攻勢に討ってでた。
※後書きです
ども、琥珀です。
こうして連日小説を投稿していると、私の小説が年末のカウントダウンみたいで、どちらかというと寂しく感じてしまいますね。
…いや、私の作品、恐らくまだ3/1も進んでないんですけどね多分!
本日もお読みいただきありがとうございました。
引き続き年末までお付き合い頂けますと幸いです。