第174星:開戦
国舘 大和(24)
千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに根拠地の指揮をとりつつ、環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。関東総司令官という立場であるが、それを隠している。
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』と接する。高い戦闘能力と強大な『グリット』を備えるが、その素性は謎が多い。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。大和により、現在は小隊長も務めている。陣営は前衛。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務め、今戦闘では前衛及び大隊の隊長を再び務める。
樹神 三咲 (22) 四等星
千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務め、今戦闘では後衛部隊の隊長も務める。
佐久間 椿(22) 四等星
千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。『アウトロー』との戦いでかつての自分と葛藤するが、三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』隊長にして、今戦闘では中衛部隊の隊長も務める。
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。
久留 華 (22)
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。
曲山 奏(20)
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。
【椿小隊】
写沢 七 (21)
写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。
重袮 言葉 (20)
活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…幻覚・幻視・催眠の『グリット』を操る。
海藤 海音 (16)
誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな機微から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。
【三咲小隊】
椎名 紬 (22)
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手の視界を共有する『グリット』を持つ。
八条 凛 (16)
自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。自身の『エナジー』を纏わせ、その物体を操る『グリット』を持つ。
大刀祢 タチ (17)
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。
【夜宵小隊】
私市 伊与 (19)
年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。自身の肉体の動きを加減速する『グリット』を持つ。
早鞆 瑠衣 (18)
十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。人体・物体を強化する『グリット』を持つ。
矢々 優弦 16歳 四等星
幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。自然の声を聞き取る『グリット』を持つ。
「夜宵大隊、【オリジン】との距離5000m!!両者の移動速度からまもなく邂逅します!!」
「いよいよか…頼むぞ、みんな…」
●●●
「…!敵視認!間違いありません!以前遭遇した『メナス』、【オリジン】です!!」
上空から様子を伺っていた朝陽が通信を飛ばすと、全員の表情が一気に険しくなっていく。
「事前に決められたように、前衛組は前へ!後方は上手く拡がって支援を、中衛は二手に分かれて前衛の攻撃の隙間を縫うように!絶対にひとまとまりにはならないで!」
「「「了解!!」」」
夜宵の指示を受け、大隊の面々はひとまとまりの集団から複数のグループへと隊列を変えていく。
前衛組は朝陽、奏、タチ、海音、伊与、そして大隊長の夜宵の六人。後方支援には三咲を筆頭に紬、梓月、言葉の四人が回り、両グループをサポートする中衛には指揮を取る椿、七、華、優弦、凛、瑠衣の六人がついていた。
それぞれに指揮を執る人物が配置されており、これにより夜宵の負担は軽減されることになる。
これに関しては大和の小隊編成による恩恵を受けていると言えるだろう。
メンバーの動きの指示は夜宵が行いつつ、全体の指揮は咲夜が行う。更に重要な判断が必要な際は、大和が決断を下す指揮系統となっていた。
「見えた…」
小型望遠鏡を利用した朝陽が、『グリッター』により強化された視力とも相まって、【オリジン】を捉える。
「来たわね。総員戦闘準……」
夜宵が声を上げ、全員に戦闘の心構えを持たせようとした瞬間だった。
────ピュン!!
迸る一筋の閃光が、上空を飛んでいた朝陽に直撃する。
「ッ!?朝陽!?」
全員が呆気に取られる中、真っ先に声を上げたのは夜宵であった。
メナスとの距離はまだ5km近く離れている。にも関わらず、【オリジン】は眼球から放たれるレーザーは朝陽に直撃していた。
つまり、【オリジン】はこの距離であっても、正確に朝陽達を捉えているということを表していた。
『メナス』の身体能力が、『グリット』によって身体能力が強化された『グリッター』を上回っているのは周知の事実である。
それでもその差が極端にまで開いている、と言うわけではない。
純粋な肉弾戦になれば敗れるだろう、と言った程度の差である。
しかし、その上位種とも言える『悪厄災』の進化は、予想の遥か上をいっていた。
直接的な戦闘が無かったために計測されていなかったが、恐らくは『グリッター』の二倍ほどの身体能力を兼ね備えている。
つまり、朝陽達には豆粒状にしか認識出来ない距離であっても、『悪厄災』達には十分に捉えられている、ということを表す。
そしてそれは、眼から放たれるレーザーが猛威を振るうことにもつながっていた。
「朝陽!!応答して朝陽っ!!」
必死な形相で通信機に叫ぶ夜宵の耳元に、ノイズが混ざりながらも返答が返ってくる。
『だ、大丈夫!ギリギリのところで拡散させたから!!』
改めて上空を確認すると、そこには返答通り無傷の姿で朝陽が浮いていた。
一同が安堵の表情を浮かべる中、攻撃を受けた朝陽の表情は強張っていた。
「(危なかった…発光が見えたと思ったら、もうレーザーが届いて…こんなに距離があったのに…)」
無意識に滴る汗を拭い、加速する鼓動を深呼吸で落ち着かせながら、朝陽は顕現させていた『光輝く聖槍』を見つめる。
「(正直、私は全く反応できてなかった…あの時、私の『グリット』が勝手に反応してくれたみたいだった…)」
ジッと見つめるものの、当然槍はなんの反応も示さない。
それでも朝陽は槍に強く感謝し、二度目はないという強い覚悟を持って、二度目の戦いに挑んだ。
距離は残り1500m。
今回は遊び半分で襲撃をしていた【オリジン】であったが、今の初撃は確実に殺りにいって放ったものであった。
【アレレ…?普通ノ人間ダト、最初ハ今ノデ死ヌンダケドナ…少シ離レ過ギテタカナ?】
仕留めるはずの攻撃を防がれ、【オリジン】は一瞬驚きを見せるものの、直ぐにそれは好奇な笑みに変わっていく。
【アハ♪良イネ良イネ!楽シメル人間ハマダイルッテコトダネ!】
まるで外見通りの無邪気な笑みを浮かべ、【オリジン】は動きを加速させる。
【イックヨ〜!!】
否、加速などと生易しいものではない。
【オリジン】が移動速度を早めるべく、海面を蹴ると、その後方の海水が大量の水飛沫をあげて割れる。
風を切る高音を鳴らし、1km以上あった距離を僅か数秒で縮めた。
「来るわよ!!構えて!!」
夜宵に指示で全員が臨戦態勢に入る。
笑みを浮かべながら急激に近寄る【オリジン】に対し、先制攻撃を仕掛けたのは『グリッター』側であった。
いや、先制と言うよりは、後の先をとった、と言うべきだろう。
「恐ろしいまでの加速力だが、だからこそ避けられまい。そこは、私の剣線上だ」
【ーーー!?】
呟いたのは前線組のタチ。既に『影漆』の太刀を抜いており、自身の『グリット』である『残志彷徨う不朽の刃』を発動していた。
予め【オリジン】が通る動線に刃の残滓を残しており、透明化したエナジーに直撃させたのだ。
残り50mまで迫っていた【オリジン】であったが、その動きは止まり、頭はぶつかった衝撃で仰反るような姿勢になっている。
初手は成功。
しかし、攻撃した後の違和感に気付いたのは、仕掛け人であるタチであった。
「…!!斬れてない!!」
タチの『残志彷徨う不朽の刃』は、エナジーの残滓を極限にまで薄くすることで、相手を切り裂く能力である。
しかしいま、【オリジン】は凄まじい速度でタチのエナジーに直撃したにも関わらず、斬れたのではなくぶつかったような衝撃音を轟かせていた。
本来切断される筈の身体は、壁にぶつかったような形で頭部をのけぞらせていた。
「(なんて硬い外皮なんだ…!)」
その堅固な肉体に驚きながらも、タチ含め前衛組はバランスを崩した今が攻め時であることを見逃さなかった。
朝陽が最初に『天照す日輪』で追撃行い、タチ、海音、伊与が続く。
動きがないのを見極め、夜宵が『闇夜の月輪』を展開。一気に勝負を決めるべく闇で【オリジン】を包み込もうとするが…
「…!!みんなヤバい!!離れろ!」
【オリジン】の動きに真っ先に感づいたのは海音であった。
自身の『グリット』、『ノレない波は無い』により【オリジン】の僅かな機微から危険を直感で感じ取っていた。
全員が一斉に攻撃の手を止め一気に距離を取ると、直後に一同が立っていた場所を髪が薙ぎ払った。
言葉にすればそれだけの動きであったが、実際はそれだけに収まらなかった。
振われた触手は空を切り、辺りに衝撃波を生み出した。
その衝撃で夜宵の闇は吹き飛ばされ、【オリジン】を中心として海面は円状に、まるで切り裂かれたかのように沈み込んでいた。
回避には十分な距離をとったにも関わらず、その衝撃で朝陽達は思わずバランスを崩してしまう。
「なんっ…だそりゃ…本物のバケモンかよ…」
回避を指示した海音は、その異常な光景に顔を引き攣らせる。
「これは一撃でも貰えばアウトですね!!直撃でもしようものならぶっちゃけ即死です!!」
「怖いことをハッキリと言うなよ!!近づけなくなるだろ!!」
「指揮官に喧嘩ふっかけるような奴が何を言ってるんだか」
【オリジン】に対し僅かながら恐怖心を感じ始めていた海音の心情に気付いた奏とタチの二人は、敢えていつものようなおちゃらけた話を切り出し、海音の平常心を保たせていた。
自覚のない恐怖心は危険であり、ほんの一瞬、恐怖からくる硬直が命取りになるからだ。相手が【オリジン】ともなれば尚更である。
加えて、前衛組において、相手の攻撃を先読みできる海音の存在は大きい。
今の攻撃も、海音がいなければ回避は出来ても衝撃波までは避けることは出来なかったかもしれない。
そう言った意味でも、キーパーソンでもある海音を失うことだけは何としても避けたかった、という意図もあった。
とは言っても、朝陽達に仲間の優先順位をつけることなどはない為、誰であっても同じように励ましてはいたであろうが。
「みんなまだ前掛かりになり過ぎる必要はないわ。中衛と後衛の準備が整ってから一気に攻める。良いわね」
夜宵の指示に、朝陽達は一様に頷く。
対して【オリジン】は不敵な笑みを浮かべるだけで、自ら攻勢に出てくることは無かった。
その光景に、どうにも不気味な感覚を、朝陽達は感じ取っていた。
※後書きです
ども、琥珀です。
前書きの量がえぐい。
まぁ以前のものをコピーしてる部分もあるのですが、そこからやっぱり変わったこともあるので変更を加えてるんですよね…
前書きの欄ですが、もし追記して欲しいことやルビ振りして欲しいなどのご要望がありましたら、感想やメッセージを送ってください。直ぐに対応いたします。
逆に前書きが鬱陶しいなどがありましたら、今後は控えようかなとも思っていますので、そちらも同様にメッセージなどを下されば、と思います。
本日もお読みいただきありがとうございます。
明日も更新しますので、お楽しみにお待ち下さい。