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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
1章 ー朝陽覚醒編ー
18/481

第十七星:日輪【挿絵有】

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『天照す日輪イノセント・サンシャイン』を覚醒させた。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負った。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『輝く戦士グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。


塚間義一(35)

千葉根拠地における指揮官で階級は少佐。『グリッター』に対する差別意識が強く、彼女達を平気や道具のように思い扱っている。特攻をしろと命じたところに大和が現れ、更迭された。

「あちゃ~()()()()()()()…」

「メナスの戦いは先程から何か違うものでした。()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 『メナス』達は上空を飛び、ひと塊の集団になった。


 一人では足りない、ならば全員で同時に放てば良いと理解して。


 『メナス』達は一斉にレーザーの照射準備を始める。


 今まで即時放たれていたものとは違い、発射までにチャージする時間を要しているようだ。


 これまでとは比べ物にならない質量のレーザーが放たれるのだろうことは想像に難くない。


 恐らく退避は間に合わない。


 現在使用可能な【耐熱反射鏡ゲドゥルト・シュピゲール】を全て駆使しても防ぐことは叶わないだろう。



「ど、どうするんですか副隊長…」

「こ、このままじゃ私達…」



 この絶体絶命の状況にあっても大きな反応を見せない二人に、残された隊員達は不安と動揺を隠せずにいた。


 それも当然だ。目の前に死が迫っている状況で冷静でいられるわけがない。


 むしろ冷静でいられる二人のほうが例外的であると言えるだろう。



「どうするもこうする、ねぇ…」

「現状の私達に出来ることなどあまり無いでしょう。『メナス』達の急激な成長に後手後手になってしまった、これはその結果です」



 二人の回答に、全員がサッと顔を青く染める。


 それは事実上の白旗宣言とも取れる発言であったからだ。


 それでもこの場から逃げ出さないのは、『グリッター』として戦い続けてきたプライドを持っているからだろう。



「でも朝陽ちゃんはちょっと事情が違うからねぇ。あの子なら何とかしてくれるかもしれないよねぇ」

「えっ…」



 椿の言葉に、隊員の一人が反応し言葉の真意を図ろうとする。



「戦うために力を得た私達とは違う。あの子は純粋に私達を…人々を守るために力を得ました。この絶体絶命のピンチを、朝陽なら救ってくれるかもしれない」



 それは、一見すればただの他人任せにも聞こえる発言。


 しかし、本質はもっと無慈悲で温かいものだ。


 絶対的な信頼。朝陽ならきっと命を救ってくれるであろう信頼だ。


 その信頼は、この僅かな戦闘の間だけでも十分に得られるに足る光景だった。



「信じましょう、朝陽の『グリット』の力を…その想いを…」






●●●






 上空に漂う『メナス』から目を背け、朝陽は手に握る槍、『光輝く聖槍ブリリアント・ヘレバルデ』を見つめる。


 この槍は朝陽にとって自分自身の写し鏡。


 自分の想い、覚悟、信念、その全てがこの槍に籠っている。



「私に出来るかな…『光輝く聖槍ブリリアント・ヘレバルデ』…今の私なら、皆を守れるかな?」



 自分の分身に語り掛けるも槍は煌々と輝くだけで、当然答えは返ってこない。



『できるさ』



 代わりに応えたのは、通信機越しの声だった。


 自分を導き、自分を気付かせてくれた最大の理解者。


 その一言一言が、朝陽の心を奮い立たせてくれた。しかし…



「大和さん…でも、本当は不安です。私一人で、皆のことを守れるのか…」



 今は少し状況が違う。


 自分が失敗すれば、自分が負ければ、全部失ってしまう。


 その心の不安は、大和一人の言葉では拭い去ることは出来なかった。


 大和もその事を理解していたからこそ、仲間を頼った。



『守れるさ。だって、君はずっと大切な人守るために力を備えてきたのだから。それに君は一人じゃない。後ろを振り返れば、支え、支えられてきた仲間がいるだろう?』



 大和に言われ、朝陽はゆっくりと背後を振り返る。


 そこには、今の状況にも微塵も動じていない三咲と椿、そして朝陽を信じる9人の『グリッター』の姿があった。


 朝陽が憧れ、目指してきた姿がここにある。


 そのことを、朝陽は今、強く実感していた。それに呼応するように、槍の輝きも増していく。



「ありがとうございます、大和さん。ありがとう皆」



 槍の光と、全員の想いを強く胸に抱きしめ、顔を上げた朝陽は地面を強く蹴り、()()()






●●●






 翔んだ。


 今まで地を這うことしか出来なかった人間(エモノ)が、空を飛んだのだ。


 最早成長を続ける本能であっても理解が及ばない。


 しかし、ある意味では朝陽も同じことである。


 彼女自身、空が飛べると理解して飛んだわけではない。朝陽の本能が飛べると感じ取ったのだ。


 そして翔んだ。朝陽に驚きは無い。


 根拠はなくとも飛べる確信があったからだ。


 高く、高く、宙に浮いていた『メナス』達よりもさらに高く飛翔する。


 雲を掻き分け、貫き、その先の空には何もない。あるのは星を照らす太陽が光るだけ。



「(キレイ…私の光よりももっと強くて、神々しい…)」



 上昇を続けながら、朝陽は常に自分達を照らし続ける太陽の輝きに見惚れる。


 あれは毎日の訓練の後に見届けた夕日。


 それはあの日、秘密を共有した大和(あの人)と見届けた沈みゆく日輪。


 その神々しさを、朝陽は目にしばし焼き付けていた。


 上昇を止め、その太陽に背を向ける。


 目に焼き付けた太陽を、今度は全身で感じる。



「(温かい…私達を、大地を、星を温めてくれる温もり…)」



 『メナス』達は一斉に向きを変えた。


 最優先に討つべきはあの人間エモノだと判断し、そう本能が告げていたからだ。


 既に照射準備は完了。


 数秒もしないうちに朝陽の元へ無数のレーザーが届くことだろう。


 しかし、その数秒だけで十分だった。


 朝陽は頭上に一度槍をかかげ、ゆっくりと下ろしながらその矛先を『メナス』達に向けた。



「お願いします。今この一時、大切な人達を守るために、あなたのその温かな光を私に貸してください」



 朝陽の言葉に、まるで太陽が応えたかのように輝きだす。


 燦々と輝いていた太陽の光が歪み、地球全体を照らしていた日輪の輝きが、朝陽に集まっていく。


 強大なエナジーの収束に、下で漂っていた雲が全て吹き飛ばされていく。


 その光の収束が収まるのと、メナスのレーザーの準備が整ったのは同時のことだった。両者は互いを見つめ合い、叫ぶ。



【【【────アアアアアアア゛ア゛ア゛!!!!】】】

「【天照す極光の日輪サン・ライズ・シュトラール】!!!!」






●●●






 その衝撃波と閃光は、地上にいた三咲達にも及んだ。


 ホバーを最大稼働することでようやくその場に留まることができる程の衝撃、目を開ける事も難しい閃光。


 その先では、二つの激しい光が衝突し合っていた。



「な、なんて凄まじいエネルギーのぶつかり合いなんですか!?」

「こ、これはちょっと度を越してるねぇ~!!」



 単発の衝突ではない。継続されたエネルギー同士の衝突。


 その閃光と波は留まるところを知らず、海面に大きな波を起こしていた。


 両者のエネルギーは全くの互角。それが長時間にわたる衝突を招いていた。



「うっ…うううううううううううううううっ!!!!」

【【【―――――ァァァァァァァァアアアアア゛ア゛ア゛!!!!】】】



 拮抗しているからこそ、ほんの僅かな出来事がそれを崩す『きっかけ』となる。



「気張りなさい、朝陽!」

「負けちゃだめよぉ朝陽ちゃん~」

「朝陽 (ちゃん)(さん)!!頑張れ!!」



 迸る閃光と轟音で、朝陽の耳には音などほとんど聞こえない。


 しかし、朝陽にはその声がハッキリ聞こえていた。そして、この声も…



『頑張れ…朝陽…』



 全員の言葉が『きっかけ』となった。


 朝陽の心に火が、否光が灯り、閃光を爆発的に増幅させていく。



《そう…あなたは、それで良いのです》



 最後の言葉は誰だったか。それは分からなかった。


 最早目も開ける事が出来ないほどの閃光が、『メナス』のレーザーを押し返し、そしてメナスを巻き込み消滅させた。





●●●






「よくやってくれましたね、朝陽」

「いやぁ凄かったねぇ最後の攻撃。私たまげちゃったよぉ」



 戦いを終え、朝陽が皆の下に着陸すると全員から熱い歓迎を受けた。


 握手、ハグ、()()()()()など様々だ。


 照れくさくも、朝陽はそれを受け入れた。守りきれたと、そう実感することが出来たからだ。



「良かった、私、皆のこと守れたんですね…」



 朝陽の表情からは疲労の色が見える。


 それも当然だ。持てる力すべてを振り絞ったのだから。


 抱きしめられているのも最早支えられていると言っても差し支えない。



「えぇ、あなたが守ってくれたのですよ」

「そぅそぅ。ここにいる皆、朝陽ちゃんが守ってくれたんだよぉ~」



 まともに動けないことに気が付いた三咲と椿が、肩を貸して支える。



「さあ、帰りましょう、私達の家へ…」






『報告します!!根拠地支部にメナスの敵影を補足しました!!』






●●●






 朝陽の攻撃が直撃する直前、『メナス』は数体の壁を作った。


 それにより、3体の『メナス』は攻撃を回避。


 そしてターゲットを変えたのだ。より、心臓に近い大物へと。


 その判断は間違っていない。


 戦力となる『グリッター』はほとんど出撃し、3体とはいえメナスを撃退できる『グリッター』は今の根拠地にはいない。


 まさに的確な狙いだったと言えるだろう。


 既に『メナス』は、戦域を離脱していた詩織と海音を追い越し、根拠地が目に届く位置にまで迫っていた。落とされるのも時間の問題だ。


 もし、この時『メナス』達に誤算があったとするなら……






●●●







 もし、この時『メナス』達に誤算があったとするなら、咲夜という女性がこの場に居たことだろう。


 咲夜は根拠地の敷地外にある海崖に、黒く長い髪を潮風でたなびかせながら静かに佇んでいた。



『状況はいま伝えた通りだ。警邏に出ていた子たちはまだ帰還しておらず、その他の兵達は避難させた。いまこの場に君の姿を見ている者は一人もいない』

「ありがとうございます、大和」



 耳元に付けられた小型の通信機から聞こえる大和の声に、咲夜は柔和な笑みを浮かべながら感謝の意を伝える。



『礼なんていらないよ。これは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。…そろそろ目視できたかい?』

「はい、メナスを確認しました」



 目視できたと言っても僅かに黒点が見える程度のもの。しかし咲夜はその影をハッキリと捉えていた。


 それと同時に、咲夜の全身から少しずつ光が溢れ出す。


 朝陽の温かな白光とは違う、凛として鋭く輝く白銀の光だ。


 それと同時に、咲夜の身体にも変化が表れる。


 夜の影のよう落ち着きををもたらしていた黒い髪は、光と同じく輝く白銀に変色し、鏡のように光を反射し品をもたらしていた黒い瞳は、宝石のように輝くサファイア色の瞳へと変わっていった。



『では千葉根拠地の司令官として命ずる。本拠点を脅かすメナスを殲滅せよ』

「了解しました」



 大和の指示に淡々と答えると、咲夜はゆっくりと腕を持ち上げ、その名前を呟いた。






「『原初の輝(イルミナル・オリジン)』」

挿絵(By みてみん)





 瞬間、根拠地一帯を飲み込みかねない白銀の閃光の柱が、咲夜を中心に迸る。


 『メナス』達がその光に目を奪われたのは一瞬。


 本能が死を悟った瞬間、光の柱はまるで巨大な刃のように振り下ろされ、『メナス』達を包み込み、消滅させた。


 これにより、出現した30体全ての『メナス』は消滅し、戦いの幕が下ろされた。

※ここからは筆者の後書きになります!ご興味の無い方は読み飛ばしてください!






ども!琥珀です!

今回は話の文字数が非常に多くなってしまいましたが、その分読み応えがある内容になっていると思います!


これにて朝陽の覚醒に至るまでの話は終わりになります!次の物語は誰が主人公となるのか…お楽しみに笑


本日も【Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―

】をお読みくださりありがとうございます!!

次の更新は月曜日になりますので宜しくお願い致します!!

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