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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
8章 ー千葉根拠地総力戦ー
175/481

第169星:からかい【挿絵有】

ーーーーー厄災に意思はない


ーーーーー厄災に目的はない


ーーーーーただ気まぐれに現れ


ーーーーーただ気まぐれに暴れる


ーーーーーそれが、悪意を持った厄災であろうと


ーーーーー『()()』もまた


ーーーーー気まぐれで暴れるのである

「警戒警報!?夜宵君、済まないが話はまたあとでだ。直ぐに出撃の準備を」

「はい!他の子達にも併せて伝達しておきます!」

「頼む」



 短いやり取りで意思を伝え切ったあと、夜宵は即座に部屋を後にした。入れ替わりでやってきたのは、情報官の新島 夕であった。



「遅くなりました!只今から配置に着きます!」

「全然遅くないよ夕君。寧ろここからが勝負だ。警報の内容を」

「はい!」



 大和達が指揮を執る司令室は、執務室から直接移動ることが出来る。


 但し精密な機材が多数あることや、万が一に根拠地が襲撃された際に備え、通常ではいけない地下に設置されている。


 執務室の複数箇所には、司令室に直結する高速エレベーターが設置されており、機械による認証後、移動することができるようになっている。



「モニター全起動完了!各支部からの情報統合完了!!個体数は…!!」



 と、そこで夕の報告が止まる。訝しげに思った大和が声をかけた。



「どうした、夕君」

「い、いえ…こ、個体数は…()()()()

「…なんだって?」






●●●







「お姉ちゃん!!」

「朝陽!!」



 先に準備を進めていた夜宵に続き、朝陽が遅れてやってくる。


 必要なバトルマシナリーを詰め込んだパックを腰に巻き付け、支度を進めていく。



「司令官からの指示は?」



 準備を終えた朝陽が尋ねると、夜宵は困惑したような表情を浮かべていた。



「それが、まだ何も来てないの。いつもなら何かしらの指示が届いてもおかしくないんだけど…」



 警報が鳴り響いてから、5分が経過しようとしていた。


 これまで迅速な対応を実施してきた大和の指示を受けてきた夜宵達が困惑するのも無理は無い話である。



「司令官、どうされたんですか…?」






●●●






「遅くなりました」



 大和達が地下の司令室に辿り着いてから数分後、咲夜も遅れてその場にやってくる。


 しかし、モニターを見たまま固まっている大和を見て、咲夜は眉を顰める。



「大和、どうされたんですか?早く指示を…」



 しかし大和の表情は強張ったまま動かない。訝しげに思った咲夜がモニターに映し出された映像を確認すると…



「あ…れは!?」



 大和に続き、咲夜も驚きの表情を浮かべた。否、咲夜が見せた感情はそれ以上のものであった。



「そん…な、何故…なぜ…」



 自身のデスクに用意されたモニターを掴み、咲夜は叫ぶ。



「何故、貴方がここにいるの!!『()()()()』!!」






●●●






 千葉の陸地より100km離れた海域。そこに()()はポツリと存在していた。



【ンフフ〜♪アンマリニモ退屈ダカラ、チョット()()()()()()()()()()♪】



挿絵(By みてみん)



 外見が年端もいかない少女の姿ということもあり、笑みを浮かべればまるで無邪気な少女のようであった。


 しかし、『メナス』特有の色素のない白い肌や白い髪、そして真っ赤に染まった赤い瞳が、()()をメナスであると証明していた。



【ホントハマダマダ見テルダケノツモリダッタケド、アンマリニモ平和過ギルカラネ〜】



 少女の姿をした『メナス』、この地球に最初の生まれた『悪厄災(マリス・ディザスター)』、【オリジン】は無邪気な笑みを浮かべ、ケタケタと笑う。



【『エデン』モ『アイドス』モ、アノ場所ヲ潰スコトダケニ熱中シチャッテ全ク姿ヲ見セナクナッチャッタカラナ〜。マァ『アイドス』ハ私ノセイカモ知レナイケドネ♪】



 クスクスと笑う笑みの中に邪なものを含めた【オリジン】は、遠くに視えているある場所を注視する。



【モット気軽ニ遊ブクライノ気持チデ良イト思ウンダケドナァ。人間達ッテ、チョットチョッカイ出スダケデ大慌テスルカラ可愛イジャナイ】



 当然、【オリジン】の言うちょっかいとは、人類からしたら災害である。


 街は破壊され、大地は抉られ、そして大勢の人が命を落とす。まさに悪意を持った厄災と呼ばれる所以である。



【マァデモ、私モアノ場所ニハナニカアルッテ感ジトッテルカラ、二人ノコトヲ言エナイカナ〜】



 今度はニィ…と邪気を孕んだ笑みを浮かべ、【オリジン】は根拠地の方向へと移動を始めた。






●●●






「…!!『メナス』、移動を開始しました!!進行方向、本根拠地!!到達時間は…およそ一時間です!!」

「…わざわざ真正面から向かってくるのか。それも…悠々と時間を使って…」



 笑みを浮かべながらも、大和に表情余裕は無かった。汗を一筋垂らしながら、移動する【オリジン】の姿をモニター越しに見る。



「(どうする…これまで二回も『悪厄災(マリス・ディザスター)』との戦闘は行ってきたが、正直【オリジン】だけは別格だ。現勢力をフルで投入しても勝てるかどうか…)」



 ここまでで既に時間は5分を経過していたが、大和は直ぐに結論を出さずにいた。


 そして、自分と同じくモニターを食いつくように見ている咲夜に視線を飛ばす。



「咲夜…君はどう判断する。【オリジン】については、正直君の方が詳しいはずだ」



 咲夜は険しい表情を浮かべたまま、数秒沈黙し続けたが、瞼を閉じ、大きく深呼吸をすると、その表情はもとの指揮官としてのものに戻っていた。



「…『最高本部』や関東の各根拠地に増援を依頼すべきだと思います。彼女達を信用していないわけではありませんが、【オリジン】に立ち向かうには、まだ心許ない」

「…そうだね。これまでも『悪厄災(マリス・ディザスター)』に対しては基本的に大多数の戦力を注ぎ込んできた。意図は掴めないが、今回の襲撃についても同様の対応を行うべきだ。夕君!至急『最高本部』への通信回線を開いてくれ!!」

「そ、それが…」



 大和の指示を受ける前から準備を進めていた夕であったが、その顔には困惑の表情を浮かべていた。



「先程から何度も交信を試みているんですが、全く繋がらないんです。あの『メナス』を中心に、妨害電波のようなものが発せられているようなんです」

「なんだって…!?」



 大和は自身のデスクにつけられた通信機を起動させ、同じく通信を試みるもやはり結果は同じであった。



「(確かに、以前【オリジン】が現れた際にも、根拠地のモニターが映らなくなることがあった。【オリジン】の影響である可能性も考慮して、機器の強度を上げてもらったはずだが…それでもダメか!)」



 技術班のリナと科学班の瑞樹に依頼し、大和は事前にこういった場面の対策を強めていた。



 そしてその効果が全く現れていないわけではなかった。前回は全く映らなかったモニターは機能しており、根拠地の機器類に大きな影響は見られていない。


 しかし、【オリジン】による影響範囲は凄まじく広く、根拠地だけを強化しても、効果はその外部にまで及ぶため、距離の離れた通信は不可能となっていた。



「外部との通信は不可…となると直接の通達が必要か。しかしそれだと恐らく上陸するまでの間に体制は整わない…」

「……ッ!」



 咲夜のすぐさま考えたのは撤退であった。


 今から素早く撤退を始め、根拠地のメンバー全員が『最高本部』に辿り着くことで、万全の状態で【オリジン】を迎え撃つことが可能であるからだ。


 しかし…



「(そんな事無理に決まっています!確かに迎撃体制は整うかも知れませんが、私達が『最高本部』に辿り着くまでに、一体どれ程の犠牲が出るか)」



 大和と同じく、いやそれ以上に【()()()()()()()()()()()()()()()、咲夜は苦悩していた。



「(【オリジン】がその気になれば、街の一つなんて数分あれば全て破壊できる。撤退をすれば、それこそ都市一つが滅ぼされ兼ねない…そんなこと許されるはずがない…!)」



 しかし、このまま迎え撃ったとしても、敗色が濃厚であることは、咲夜は理解していた。


 どちらをとってもリスクが高く、被害は免れない状況に、咲夜は頭を抱える。


 その時、思い浮かんだのは先程の朝陽との会話であった。




『それでも私は、司令官の…みんなの期待に応えたいと思います』

『…それは、何故でしょうか?』

『…だってそれは、私への信頼の証だって、教えて貰いましたから』




 脳裏に浮かんだのは、真っ直ぐこちらを見つめる、力強い決意を秘めた、朝陽の瞳と顔であった。


 その瞬間、咲夜の顔から迷いが消え、大和の方を向くとハッキリと進言した。



「迎え撃ちましょう」

※後書きです






ども、琥珀です


【オリジン】は間違いなく最強のボスです。

なのにこの最強らしくない登場頻度…


あまり出しすぎるのは良くないと悩みつつ、『メナス』の恐ろしさをそろそろ押し出さないといけないなと思い、登壇していただきました。


さて、【オリジン】先生…あとはお願いします笑


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回は金曜日に更新しますので宜しくお願いします!

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