第十五星:救出
国舘 大和(24)
再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。
咲耶(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『天照す日輪』を覚醒させた。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負った。
樹神 三咲 (22)
千葉支部所属。夜宵の率いる『輝く戦士』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。メガネがトレンドマーク。
塚間義一(35)
千葉根拠地における指揮官で階級は少佐。『グリッター』に対する差別意識が強く、彼女達を平気や道具のように思い扱っている。特攻をしろと命じたところに大和が現れ、更迭された。
両軍の戦いは拮抗していた。
三咲達『グリッター』の戦域では、これまでとは逆に数での優位で勝っている。
しかし、相手は『脅威』だ。
人間の規格には収まらない身体能力を有しており、一筋縄ではいかない。
「数で勝っているのになかなか崩せないって言うのは悔しいねぇ~」
「ぶつくさ文句言ってないで、真面目に戦ってください。私達にはこのあと朝陽の援護に向うという役目があるんですから」
その状況にも物怖じせず、陣の先頭に立つ三咲と椿の二人は『グリットガン』を手にし淡々と攻撃を仕掛け続ける。
「分かってるって~三咲ちゃんは相変わらず堅いよねぇ」
「あなたが緩すぎるんです。それよりも準備は出来ましたか?」
「出来てるよ~座標をマップに送るから皆で確認してねぇ」
三咲達の腕には、様々な機能を持ったアームが付けられている。
そして今そのモニターには、自分達を表す青いビーコンと、付近の地図が映し出されている。
そこに、黄色い複数のビーコンが表示され、その数が増えていく。
「効果は時間稼ぎと動きを封じるものにしてあるよぉ。ただ即席モノだから、あんまり長時間の持続効果は期待しないでねぇ」
「皆、座標位置は確認しましたね?各々の移動位置を把握しながら上手く誘導して下さい」
「「「了解!!」」」
三咲の指示を聞き、隊員達が各自メナス達の元へ散開し、移動していく。
包囲網を崩され、混戦状態が続き、心身ともに相当の疲労があるはずだが、『グリッター』達はそれを微塵も感じさせない動きで交戦する。
少しして椿の通信機に交戦中の一人の隊員から無線が届く。
『椿さん!!三番、三秒後です!!』
「はぁい~」
伝えられた通りの三秒後、椿はパチンッ!と指を鳴らす。
すると、連絡してきた隊員と交戦していたメナスの全身に電流が迸った。
直接的なダメージは無いように見えるが、電流が消えた後も全身に麻痺が残り、身動きが取れない。
「貰ったわ!!」
その隙を見逃さず、隊員は急接近する。
腰につけられたカバンから金属のアームを取り出し装着。
そのまま動くことのできないメナスの胸に押し当て、ボタンを押す。
するとアームの上部分に取り付けられていた杭が炸裂し、堅固な『メナス』の皮膚を砕き、胸を貫いた。
『メナス』は苦悶の表情を浮かべた後、全身が塵となって消えていった。
これは対超近距離戦戦闘補具、『パイルグリット』。
アームに付けられた杭を『グリッター』のエネルギーを推進剤として勢いよく打ち出して敵を貫く武器である。
的確に相手を貫くことのできる一撃必殺の武器ではあるが、攻撃範囲が杭の伸びる範囲までしか無いため実用性は高くない。
しかし、今回のように身動きが取れない相手には絶大な威力を発揮する武器なのである。
そして、その隙を生み出したのは、椿のグリットである『鮮美透涼の誑惑』によるものだ。
能力は、言ってしまえば罠を疑似的に作成し、設置するというもの。
作られた罠は『グリット』により透明となり、本人以外に認知できなくなる。
更にこの『グリット』の優れた点は、発動効果の素となる素材が簡略なもので発動可能であるという点である。
例えば、今回の電流によるシビレ罠は、使い捨ての電池を利用している。
電池は電気の性質を有しているために、『グリット』により設置された罠が電気系、即ちシビレ罠になったわけだ。
最大設置数は8。発動するには『グリット』発動時に設定した指を鳴らす必要がある。
左手の人差し指から順に1、右手の人差し指に移って5~という順になっている。
また、持続効果が長いのも長所である。発動しない限り罠はその場に留まり続けるが、その間常にエナジーを消費する。
効果範囲も具体的には定められていないが、範囲が広ければ広いほど消耗も激しいため、実際の戦闘の際には半径1m程度に収めている。
これにより消耗するエナジーは微々たるモノで、同規模のモノなら100は作れるだろう。
「(目のまえの戦闘をこなしながら、罠の位置と番号を把握しておくのって結構大変なのよねぇ…いつか誤発動しちゃいそうだね…っと!!)」
隊員が無事にメナスを撃破したのを見届ける間もなく、椿は自分が対峙しているメナスとの戦闘に引き戻される。
椿は無闇に罠を設置しているわけではない。
近辺の立地状況、敵味方の行動パターンなどを加味して設置する位置を決めている。
勿論予測の域を出ないため、味方の誘導あって活きる『グリット』ではある。
しかし、椿の洞察力は頭一つ抜けていて、ほぼ百パーセント的中する。
味方の動きの把握はもちろん、本能的に動くメナスの動きでさえ、癖を掴むことが出来る。
そこに椿の『グリット』が合わされば…
『椿さん!!7番お願いします!!』
「はぁい~了解~」
当然、必中である。
右手の薬指に親指を当て、パチンッ!と軽快な音を鳴らす。
それと同時に、設置していた罠が発動。
先ほどの『メナス』と同様に電流が発生し、メナスは麻痺を起こした。
そして身動きが取れなくなったところに攻撃を当てられ、黒い瘴気を溢れ出しながら、その姿を消していった。
「三咲ちゃん、予定通り二体片付いたよぉ。二人回して貰って大丈夫ぅ」
『分かりました。梓月、海音、お願いします』
『了解致しました』『よっしゃ!!』
三咲の指示を受け、海音、詩織と呼ばれた二人の女性が戦列を離れる。
二人は海上で戦う機会が多く、戦闘補具を利用した移動が熟練している。
それを見越して三咲は二人に夜宵の身柄の確保を任せたのである。
『周囲に敵影無し。用心して海中も確認しましたが問題ありません。そのまま根拠地へと帰還してください』
『任せとけ!!絶対夜宵隊長は無事に届けてみせっから!!』
『皆様もどうかご無事で…』
精度を上げた『対敵生命体感知』でギリギリまで見届けた三咲もひとまず夜宵の安全を確認し、再び戦場に目を向ける。
『良くやってくれた三咲君。あとは君達が無事に生きて戻ってきてくれるだけだ』
「いいえ、私は何もしていません。司令官の適切な指示と、皆の力があってこそですから」
通信機越しに自身を讃えてくれる大和の言葉に、内心嬉しく思いながらも、三咲はそれを感情に出さないよう努め、戦闘に集中する。
『謙虚だね。でも味方を想えるからこそ言える言葉だよ。さぁ最終局面だ。死ぬなよ皆』
「「「了解!!」」」
『グリッター』として戦ってきた彼女達にとって、「死ぬなよ」という言葉は特別な想いを抱かせる言葉だった。
兵器として扱われ、『差別』され、道具のように使用され…自分達はそういう定めの下に生まれてきたのだと思っていたから。
しかし今、自分達の背中で『死ぬな』と言ってくれる人がいる。
『生きろ』と自分達を支えてくれる人がいる。
そのことが、彼女達にとって新しい戦う原動力となっていた。
「椿!二番!!」
『了解~』
そして次に誘導に成功したのは三咲。
椿のトラップの範囲に入った瞬間、パチンッ!という音とともに全身に電流が走る。
「メナス、あなた達は確かに名前の通り人類の脅威です」
ゆっくりとその距離を詰めながら、三咲もこれまでと同じように、腕に『パイルグリット』を装着する。
「けれど、私達は決して貴方達には屈しません。これまでに受け継がれ来た意思と、誇り」
そしてメナスの胸元へ、その杭の先端を宛がう。しかし、早くも麻痺が解けて来たのか、震えた手をゆっくりと持ち上げ、三咲めがけて突き出す。
「そして、生きるために、生きて欲しいと言ってくれる人のために、私達は戦い続けます!!」
それを無駄なく躱し、『パイルグリット』を胸元に打ち込んだ。
※ここからは筆者の後書きです!興味のない方は読み飛ばして下さいませ!!
ども、琥珀でございます!!
今回のお話は朝陽ではなく、ほかのグリッターの戦い振りをメインにしております。
と言ってもほんの数名しか矢面に出せてないですが…これから少しずつ特徴を出していきますのでお待ち下さい笑
本日も【Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―
】をお読みくださりありがとうございます!!
次回の更新は水曜日になりますので宜しくお願いします!!