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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
7章 ー『アウトロー』攻防戦ー
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第142星:調査

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。『グリッター』とのぶつかり合いを経て信頼を勝ち得た。


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。指揮官として司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


【椿小隊】

写沢 七 21歳 159cm 四等星

 写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。


重袮 言葉 20歳 158cm 四等星

 活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…


海藤 海音 16歳 151cm 四等星

 誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。

「『アウトロー』の調査、ですか〜?」



 根拠地の執務室に呼び出された椿が、大和から出された内容を繰り返す。



「そう。実はいま『アウトロー』の動きが静かながら活発でね。その調査の任務が最高本部から来てるんだ」

「ふぅん…全然知らなかったなぁ〜」



 相も変わらず本心から思ってるのか分からないようなフワフワした受け答えを返す。



「無理もありません。ただでさえ『アウトロー』の話題が表に出ることがほとんどない上に、その活動も個々人によるものが多いですからね。上層部でも得られる情報が僅かですから、一介の『グリッター』では知る由もないことでしょう」



 対照的に凛とした口調で話すのは咲夜。


 今日も例の如く大和の背後に待機し、仕事の補助を行なっていた。



「そうなんですねぇ〜。でも、どうしてその仕事がこの根拠地に来たんですか〜?」



 通常根拠地では請け負うことのない任務の内容に、椿は首を傾げる。



「ここ限定で来ているわけじゃないんだ。いま全国で掴んでいる『アウトロー』に動きがあってね。色んな支部が動き出してるんだ」

「そのうちの一つが千葉根拠地(ここ)、ってわけなんですね〜。それで、私が選ばれた理由は何でしょうか〜」



 やり取りの中で任務の内容を確かめるあたり、フワフワしながらも意外にしっかりしていることが伺える。


 勿論大和もそれを知っているからこそ、小隊長に選んだのだが。



「今回の任務は今までのようにメナスと戦闘をするわけじゃない。裏の世界の住人との邂逅だ。よってあまり表立った動きは握られたくないんだ」

「あ〜…成る程〜。それだと確かに朝陽ちゃんとかには頼みづらいですよね〜。ピッカピッカしてますもん」



 椿の言葉に、大和と咲夜も同時に頷いて同意する。



「そこで、判断力や『グリット』の相性を考えて君を抜粋した。最も適任だと思ってね」

「確かに私の『グリット』は目立たないですからね〜。成る程〜納得しました〜」



 ニマ〜とふんわりした笑みを浮かべながら、椿はこの任務を受諾する。



「人員はどうするおつもりです〜?」

「基本的に連携のとれる君の小隊に任せるつもりだ。ただ、今回の任務に限っては、海音君は外そうと思う」



 大和はこの提案に対し、椿は拒否感を持つと考えていたが、意外にも椿はこれにもすんなりと頷いた。



「ですね〜。あの子はどっちかって言うと朝陽ちゃん寄りだから〜」

「…少し意外だ。もう少し抵抗感を覚えると思っていたんだけど」

「あはは〜、まぁ可哀想だなぁとは思いますけど、戦いは非情ですから〜。可哀想と言うだけで連れて行って、それで命を落としてたら笑い者ですからね〜」



 冷たい言い様ではあったが、大和も椿の言葉が海音を思ってのことであると理解していた。



「ただ〜人が少なくなるのは少し動きにくくなりますよね〜」

「勿論代わりの人員を配置する予定だ。ボクとしては、代わりに優弦君を推薦するよ。山育ちの彼女なら、隠密行動はお手の物だろうしね」

「私もそれで良いと思います〜」



 互いの考えが一致し、話はスムーズに進んでいく。



「任務の詳細は追って伝える。開始時期は3日後だ。それまでに準備を進めておいてくれ」

「は〜い了解です〜。バッチリ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 そう言うと椿は一礼し、ゆっくりと部屋をあとにした。


 部屋に残された二人は、小さく息を吐き出す。



「…あの様子だと、椿君は今回の任務の過酷さを理解していそうだね」

「えぇ。大和は一度も戦闘とは言っていないのに、それに向けて仕上げると仰いましたからね」

「余計なプレッシャーを与えないよう、後から送る詳細に載せておくつもりだったんだけど…余計なお世話、というか逆効果だったかな?」



 大和は困ったような苦笑いを浮かべると、咲夜は小さく首を横に振った。



「そんなことはありません。大和の心配りは彼女も理解しているでしょう。だからこそ、キチンと伝わっているということを口にして伝えたのですから」



 咲夜に慰められ、大和は再び苦笑いを浮かべる。



「ホント、ボクはもう少し人の心を理解できるようにならないといけないね。戦いの場では分かるようになってきたんだけどさ」

「というよりもっと乙女心を理解してください」

「え?」

「おっと」



 小声で呟かれた言葉を聞き流した大和が振り返るも、咲夜は口を手で塞ぐだけで、もう一度口にすることはなかった。



「何はともあれ、今回の任務はこれまでとは異なる意味合いで危険なものだ。できうる限りのバックアップ体制は整えておかないといけないね」



 気を引き締め直す大和に対し、咲夜はどこか表情を曇らせていた。



「…?どうした咲夜。何か不満でも?」

「いえ、不満ではないのですが…どうしても気になることがありまして」

「…根拠地の内通者がいるという話かい?」



 考えを見透かされ、咲夜は肯定するように目を閉じた。



「確かに衝撃的な内容だったね。『軍』の考えに賛同できず、『軍』から離れたことで生まれたはずの『アウトロー』が、内通者として『軍』に所属している可能性があるだなんてね」



 大和の言葉に、咲夜は強く首を振る。



「とても信じられません。私は彼女達の日頃の様子を毎日と言うほど見ています。だれもかれもが直向きに励み、精一杯戦っています。その彼女達が、『アウトロー』と繋がっているなんて…」



 困惑する咲夜に、大和は立ち上がって歩み寄り、肩に手を置く。



「咲夜、まだ内通者がいると決まったわけじゃないし、仮にいたとしてもその内通者がこの根拠地の人間であると決まったわけじゃない」

「それは…はい、そうですね」



 大和に諭され、咲夜は小さく頷く。



「今は迷っちゃダメだ咲夜。上に立つボクらが迷えば、それは部下である彼女達にも伝わる。だからボク達は気丈に振る舞うんだ。そして信頼する。彼女達は大事な仲間なんだからね」

「…はい!」



 曇っていた表情は先程よりも明るくなり、咲夜の顔は前を向いていた。


 大和は満足そうに頷くと、少し険しい表情を浮かべる。



「(そう、指揮官である君()迷っちゃいけない。仲間でさえも疑い、全体を護るのは、ボクの役目だ)」






●●●







「へぇ〜『アウトロー』捜索に私達の小隊が出るんですか〜」



 大和達の元を離れた椿は、早速任務のことを小隊の面々に話していた。



「いやぁ写真映えするようなことばかりだろうなぁ〜!!今まで私達が踏み入ったことのない世界だし、いろいろありそうだ!!」



 各々最初こそ驚いていたが、すぐにそれを受け入れ、今は好奇心の方が優っているようであった。


 ただ一人、外されることを聞かされた海音を除いて。



「海音ちゃん…仲間外れにするような形になっちゃってごめんね〜」

「別に…私も今回の作戦に不向きなのはわかってるから…」



 そうは言いつつも、海音の表情は不満げで、どこか不貞腐れているようであった。


 とは言っても、それは椿や大和に向けられたものではない。


 今回のような任務に自分がついていけるレベルにないことを不甲斐なく思ってのことであった。


 純粋な実力だけでいえば、海音は必ず上位に名前が上がるほどの実力者だ。


 しかし、それは対メナス戦を想定したもの。


 人との戦闘でも十分に優位に働く『グリット』を有してはいるが、今回の作戦に求められるのは『隠密』。


 これに関してはまだ海音は自分を律せていない。


 今後の訓練次第で、海音もこういった作戦にある程度の適性を身につけることはできるだろう。


 しかし、本来彼女の戦闘スタイル的に、自分の感情を律する必要はない。


 感情を剥き出しにし、自分を鼓舞して戦うスタイルが、彼女の強さだからだ。


 だからこそ、この作戦には不向きと判断し、大和達は海音を外したのである。


 そこまで理解されていて外されたのだという大和の考えを、海音も理解していた。


 それでも、『グリッター』とはいえまだ16歳の海音は、心の底から納得するのが難しい年頃であった。



「海音ちゃん〜今回の作戦には、海音ちゃんは外れちゃうけど〜、またこれまで通りの任務に就く時は、絶対に海音ちゃんの力が必要だからね〜」

「椿さん…でも…」



 椿に頼りにされていることに一瞬表情を明るくさせるが、再びその顔を沈める。



「私達は海音ちゃんがいて『椿』小隊。一時的に人任務で離れようと、心はちゃんと繋がってるから〜。だから、思い込み過ぎないでね〜。そんで、帰ってきたら一緒に達成したことを喜ぼうね〜」

「…はい!!」



 納得する事は今は出来ない。


 それでも、椿の言葉を受けて海音は、まずは椿達の任務の成功、そして無事に帰ってくることを思うと決めたのであった。



「いやぁ〜良い絵になりますなぁ〜。写真に収めたいところだけど、今は海音ちゃんをからかう場面でもないし、目に焼き付けるだけで我慢しますかなぁ」

「…そうだね」



 微笑ましい光景を、しかし、言葉だけはどこか冷めた様子で眺めていた。

※後書きは思いつきませんでした…ごめんなさい

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