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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
6章 ー東京最高本部編ー
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第137星:正面突破


■関東本部『グリッター』

唯我 天城(17)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。将来を有望視される育成組織に所属し、教官である一羽にもその才能を認められている。同期の飛鳥が最高峰の『シュヴァリエ』に、後から入った大和が司令官に着任していることから、怒りを抱いている。


スフィア・フォート(18)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。『グリット』に関しては不鮮明な部分が多いものの、勤勉さと発想力を買われる。礼儀正しく生真面目。飛鳥と大和の兄妹の凄さに憧れている。同期の天城とは幼馴染で良く気にかけている。


射手島 一羽(27)

東京本部に所属する一等星『グリッター』。実力とカリスマ、豊富な経験を買われ、飛鳥、天城、スフィアの3人の指導教官となる。豪快でガサツな言動を取るが、実際には天城やスフィアの細かな機微に気付きケアする教官の鏡。


■『アウトロー』

暁 シノ

『無気配サインアウト』の異名を持つ『アウトロー』。荒くれ者の多い『アウトロー』のなかでは清楚な面持ちを持つが、中身は冷徹冷酷な性格の持ち主。


篝火 焔

『爆発魔ボマー』の異名を持つ『アウトロー』。血の気が多く喧嘩早い。自身もそれを認め理解しているため迷いがない。


棗 羽衣

シノ、焔と行動を共にする『アウトロー』の少女。純真無垢な外見通りの表情を浮かべることが多く、独特な話し方をする。本部にも情報がなく、最も正体が不明。

「…どうやら、あちらの戦いが先に決着がつきそうですね」

「みたいだな。まぁ戦いっつっても、私達はまだ動いてすらいないけどな」



 実際に経過した戦闘時間は僅か数十分。動き回り戦い続けた天城達にとっては短く感じたことだろう。


 しかし、その逆で睨み合いを続けていた一羽とシノにとっては、まるで永遠のように長く感じていた。



「えぇ、確かに。ですが、その理由は貴方も十分に理解されているでしょう?」



 一羽の言葉に、シノは口元を隠し上品にクスクスと笑う。



「私達の戦いは、恐らく()()()()()()()()。だから貴方も私も行動に出ない」



 一羽もそれは理解していた。同時に、その時はもう間もなく訪れることも感じ取っていた。


 二人が動く時。それは、もう一方の戦闘に決着がついた時だからだ。


 もし、天城達が敗れた場合、一羽は即座に彼等を助ける動きを取るだろう。例え自身の命を失うことになろうとも、一羽は二人を守ることに全てを投げ出す。


 日本の『軍』に所属する『グリッター』がそういう人物の集まりだということを、()()()()()()()()


 そして同時に、それが一羽を仕留める最高最大のチャンスになる。


 対してシノが取る行動は真逆だ。もし焔達が敗れることがあれば、シノは全力で撤退行動に移行する。


 そもそもシノ一人で目の前の一羽を止めていること自体奇跡に近い。


 シノの『グリット』は不意打ちを得意としており、天城達を護るためにシノを牽制するため、その場を動くことが出来ないのだ。


 しかし、焔達が敗れればその意味もなくなる。


 一羽が天城達の勝利を確信すれば、コンマ数秒の間にシノは仕留められるだろう。


 そのコンマ数秒の時間を、シノは自身の『グリット』で引き伸ばし、()()()()()()()逃走を図る。



「(そもそも仲間意識なんて持たないのが『アウトロー』ですからね。彼女もそれは分かっているでしょうから動揺などしないでしょうが…)」



 戦いの結末は、全て天城達に委ねられていた。






●●●






「ねっねっ!気付いた気づいた?あの子達の変化に気付いた??」

「…あぁ」



 天城とスフィアの表情が一気に変わったことを、焔と羽衣の二人は敏感に感じ取っていた。



「何だかしらねぇが、随分と気合い入れてきたみたいじゃねぇか。良いねぇ…」



 焔は生粋の戦闘好きの狂人だが、それ故に戦闘において真っ直ぐな人物を好意的に捉えることがある。


 いま、目の前で覚悟を決めた天城とスフィアなどはまさにその対象である。



「訓練生なんて言うからどんな雑魚かと思えば…思ってたより骨のある奴等だ」

「でっでっ?どうするのどうするの??私達はどうするの??」



 戦闘のスリルを楽しむ焔に対し、羽衣はあくまで冷静。足並みをそろえるために焔に対応の方法を尋ねる。



「簡単な話だ!正面切って突っ込んでくんなら、それを正面から打ち破ってやれば良い!!」

「だよねだよね!そうだよね!!正面から打ち破って心を打ち砕けば良いよね!!」



 羽衣はニカッと笑うと、軽くしたハンマーを握りしめ持ち上げた。


 その様子を、隣に立つ焔はどこか恐れた様子で見ていた。



「(…コイツ、たまにだが言葉というか雰囲気?がドッと冷たくなることがあんだよな。今の発言も、私はただ攻撃を破る意味で言ったのに、コイツはもっと先…心を折るとまで言い切った…本当にタダのガキなのかコイツは?)」



 『アウトロー』である時点で、ただの子どもではないが、それを踏まえても、焔は時折見せる羽衣の冷たさに、どこか恐怖を覚えていた。


 しかし、その迷いもその一瞬のみ。良くも悪くも戦闘狂である焔は、今の思考回路を全て捨て、目の前に立つ天城達に全神経を集中させていた。



「…いくぞ、スフィア!!」



 天城の言葉が開始の合図。先頭を天城が走り、その後ろをスフィアが続く。



「ハハハッ!!ホントに正面突破する気かよ!!正気じゃねぇなお前も!!」



 天城達の動きをみて、焔は面白そうに笑う。



「それじゃ格好の餌食だぜ!!爆ぜな!!」



 焔はその進行上を見つめ、『グリット』で爆心地を定める。


 進行ルートがハッキリしている分、長い時間『エナジー』を貯めることができていた。



「…いまだ!!『光速操作(タキオン・レイン)』!!」



 それを見抜いていた天城は、自身の『グリット』を発動させる。


 それにより天城は一気に加速。焔がセットしていた爆心地を一気に乗り越えていった。


 しかし…



「その動きはさっき見たぜ!!羽衣!!」

「えいえいっ!行くよ行くよ!!とりゃ〜!!」



 その動きを読んでいたかのように、羽衣はハンマーを縦に振るった。


 ここで、戦闘経験の差が如実に現れた。


 焔は狙いがバレていることを知ったうえで、天城を誘うためにわざと爆心地を設定。


 その加速度から、『グリット』解放直後は回避が間に合わないと見抜き、わざと加速させたのである。



「(読まれたっ!?だがこの距離なら、ハンマーより俺の方が速い!!)」



 動きを読まれたことに驚きつつも、天城は即座に互いの攻撃速度を見極め、羽衣よりも自身の攻撃の方が速いと判断。


 天城の推測通り、攻撃は天城の方が僅かに速いように見えた。



「おぉら!!()()()()()()()!!」



 その推測を、焔の戦闘センスが上回る。


 焔は羽衣のハンマーの動線上を視認。


 そして通り過ぎる直前に『グリット』を爆発させ、ハンマーを強制的に加速させた。



「なっ…!?」



 これにより形勢は一気に逆転。天城が羽衣に届くよりも先に、ハンマーが直撃する。



「ッ!!天城!!」

()()()()!!」



 スフィアが『グリット』を発動しようとした瞬間、天城はそれを制し、足を止めるなと叫んだ。


 スフィアは一瞬躊躇した様子を見せながらも、天城の言葉を信じ、足を止めなかった。



「(正面から受ければ俺がやられる!!直接攻撃が届かないならそれよりも手前…柄の部分を狙え!!)」



 その判断速度は一流戦士のそれであったが、純粋な問題として、今の速度ではそれが間に合わなかった。


 既に天城の動線上にはハンマーが迫っており、その狙いを果たすことは不可能だった。



「(だからどうしたっ!!今の俺の速度じゃ間に合わないなら…()()()()()()()()()()()!!)」



 そこで天城は超加速状態の中で、()()()()()()()』を発動。


 最早人間…否、『グリッター』でさえ到達不可能と思われる速度に達した状態で、羽衣へと向かっていった。



「ッ!?」



 ここで初めて羽衣は、初めて天城達に本当の表情を見せた。予想外の動きに驚きを隠さず、僅かに動きが鈍る。



「てぇあああああああ!!!!!!」



 目論見通り、天城は超加速状態で加速したハンマーの攻撃をすり抜け、柄の部分を強く殴り叩いた。



「…あ」



 その衝撃にハンマーを手放してしまった羽衣のもとに、ちょうど自身の頭上にあったハンマーが、元の重さを取り戻して落下してきた。



「やばいねやばいね…これはやば…」



ーーーーーズンッ



 羽衣が言葉を言い切る前に、ハンマーは羽衣を直撃。


 そのまま押し潰されたかのように、羽衣の姿は見えなくなった。



「ッ!?」



 直後、天城の身体が爆発。動きの止まった隙を突かれ、焔が爆発させたのだ。



「やるじゃねぇか!!だがこれで残るはお前だけだ!!」



 時間にして2秒の爆発を受けた天城はダウン。


 残るは直進を続けるスフィアと、それを迎え撃つ焔の二人だけであった。



「ハハハッ!!一人チキンレースかっ!?私が爆発を当てるか、お前がギリギリでかわすか!!良いな!!良いぞ!!良いスリルだ!!」



 この時、焔が一度距離を取ることがあれば、スフィアに勝ちの目は無くなっていただろう。


 しかし、この短時間で焔の性格を読み取っていたスフィアは、この状況を作り出すことで、間違いなくノッてくると確信していた。


 勝負は一瞬。焔が読み勝つか、スフィアが読み勝つか。残り距離は5mで先手を打ったのは焔だった。


 真っ直ぐ向かってくるスフィアに対し、焔は身体ではなく足元を爆発させた。


 時間はコンマ数秒の爆発。致命傷には到底至らない規模だが、全速力で向かってくるスフィアの姿勢を崩すには十分な威力だった。


 がーーー



「ッ!!」



 スフィアはこれを並外れた集中力で耐えた。


 一瞬グラつきながらも足の踏ん張りをきかせ、最後の一歩を踏み出した。



「あぁ()()()()()()()()()()()()()()!!」



 しかし、焔はこれさえも経験則から読み切っていた。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「切り札は最後まで残しておくってな!!私の『暴爆発(タイラント・ボム)』は、片目ずつで発動できんだよ!!しかも閉じてる間は発動した分の時間を溜めておける!!」



 そのチャージは天城達が動き始めてから始めていた。


 時間にして5秒。当たれば当然致命傷レベルの規模の爆発である。


 既にバランスを崩しているスフィアは、どうあがいても回避することは間に合わない。


 勝敗は完全に決していた。


 もし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、の話である。



「『白き十字盾(ホワイト・クリス)』!!」



 次の瞬間、スフィアは『グリット』を発動。


 指定した視線の先に突如として白い十字架状の盾が現れ、焔の爆発を全て防いだ。



「なっ…にぃ!?」



 これがスフィアの建てた作戦であった。


 焔の『グリット』が視線の先に爆発を起こすものであると知った時点で、スフィアは自身の『グリット』が奇襲に使えると判断し、一度も使用せずにいた。


 スフィアの『グリット』は自分の『エナジー』を固定化して顕現させる『グリット』。


 そしてソレは、シノではえ恐れる一羽であっても傷をつけられない強度を誇る。


 一度使えば警戒される、まさに一発勝負の作戦は、完全に焔の裏をかくことに成功した。



「やあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



 スフィアは勢いよく『西洋剣(バトル・マシナリー)』を振り下ろした。



「…ちっ、やるじゃねぇか」



 完全に虚を疲れた焔は、潔く、スフィアの攻撃を受け入れた。

※後書きです






ども、琥珀です

おやすみいただきありがとうございました。

本日からは何とか執筆の時間がとれるかと思います…


以前にも後書きに書いたことがあるかもしれませんが、私の職場は怪我と隣り合わせなもので、急遽人が足りなくなってしまうことがあるんですね…


明日は我が身…また急遽お休みをもらうこともあるかもしれませんが、続けられる限り宜しくお願いします。


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は月曜の朝を予定していますのでよろしくお願いします。

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