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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
6章 ー東京最高本部編ー
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第136星:作戦、そして作戦

■関東本部『グリッター』

唯我 天城(17)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。将来を有望視される育成組織に所属し、教官である一羽にもその才能を認められている。同期の飛鳥が最高峰の『シュヴァリエ』に、後から入った大和が司令官に着任していることから、怒りを抱いている。


スフィア・フォート(18)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。『グリット』に関しては不鮮明な部分が多いものの、勤勉さと発想力を買われる。礼儀正しく生真面目。飛鳥と大和の兄妹の凄さに憧れている。同期の天城とは幼馴染で良く気にかけている。


射手島 一羽(27)

東京本部に所属する一等星『グリッター』。実力とカリスマ、豊富な経験を買われ、飛鳥、天城、スフィアの3人の指導教官となる。豪快でガサツな言動を取るが、実際には天城やスフィアの細かな機微に気付きケアする教官の鏡。


■『アウトロー』

暁 シノ

『無気配サインアウト』の異名を持つ『アウトロー』。荒くれ者の多い『アウトロー』のなかでは清楚な面持ちを持つが、中身は冷徹冷酷な性格の持ち主。


篝火 焔

『爆発魔ボマー』の異名を持つ『アウトロー』。血の気が多く喧嘩早い。自身もそれを認め理解しているため迷いがない。


棗 羽衣

シノ、焔と行動を共にする『アウトロー』の少女。純真無垢な外見通りの表情を浮かべることが多く、独特な話し方をする。本部にも情報がなく、最も正体が不明。


 スフィアが取り出したのは、メナスのレーザーを防ぐ『耐熱反射鏡ゲトゥルト・シュピーゲル』。


 耐熱反射鏡は、未開放時はコンパクトな形をしているが、最大開放時は最大8mの面積にまで広がる巨大な戦闘補具(バトル・マシナリー)である。


 展開後に『グリッター』の『エナジー』を使用することで、展開後にできるスペースを埋める物質が構成され、それにより長時間の耐久力を得ているのである。



「(最大開放時の『耐熱反射鏡』の重さは50kgを軽く超える。もし、あの子の力が私の推測通りの『グリット』なら…)」



 結論を急がず、スフィアは未開放時状態の『耐熱反射鏡』を勢いよく放り投げた。


 その方向には羽衣が立っている。



「なんだ…?」



 訝しげな表情を浮かべながらも、焔がこれを爆破し破壊しようとするが、その直後、『耐熱反射鏡』が起動し、一気に鏡が開かれていく。



「アァ!?『耐熱反射鏡』っ!?なんでこんなものを!?」



 突如として面積を広げた『耐熱反射鏡』に対し、焔が発動した爆破規模では全く足りず、その勢いのまま羽衣の方へと向かっていった。



「ワッワッ!!こっちにきたこっちにきた!!怖いよぉ〜!!」



 驚いた表情こそ浮かべているが、怖がっている様子は一切ない。


 向かってくる『耐熱反射鏡』に対し、羽衣はハンマーを振りかぶって対応をしようとするが、



「『加速剣(イグナイト・ソード)』!!」



 その行動を見越していたスフィアは、次の手を打ち、握っていた剣を一直線に羽衣目掛けて投げつけた。


 戦闘補具(バトル・マシナリー)、『加速剣(イグナイト・ソード)』は、その名の通り戦闘時の加速を売りとする武器である。


 剣の全方位に付けられた噴出口から下方向に噴出され、一気に加速。


 『耐熱反射鏡』を追い越し、ハンマーを構えていた羽衣の手元に直撃する。



「アレアレ!?離しちゃった離しちゃった!!まずいよぉ!!」



 その衝撃でハンマーは手から離れ、膨大な質量で地面に落ちる。


 そして目前には事前に投げていた『耐熱反射鏡』が迫っていた。


 しかし、驚きこそすれ、羽衣の表情に恐怖は無かった。スッと無造作に手を差し、その手に『耐熱反射鏡』が触れた瞬間…



「『無重取手(ボイド・グラビティ)』」



 まるで重さを失ったかのようにフワッと浮き上がり、羽衣が手を離すと、自重を思い出したかのようにその場に落下した。


 その様子を、スフィアはしっかりと観察し、羽衣の『グリット』の能力について確信を得ていた。



「分かったわ天城。あっちの小ちゃい子の『グリット』は、触れたものの重さを無くすのよ」

「重さを無くす?無重力みたいになるってことか?」



 天城の言葉にスフィアが頷く。



「そう、だからあの子はあんなに重たいハンマーを振り回せるし、私の鏡も触ることで勢いを殺せたの」



 その説明に、これまでの動きの辻褄が合い、天城も納得したように頷いた。



「これで懸念点は無くなった…あとはこっちの手の内を見せる前に…」



 情報を手に入れたスフィアは、考えをまとめているのであろう、小声でブツブツと呟き始める。



「チッ…まんまと策に嵌められたな」

「グズグス…ごめんねごめんね、私が油断しすぎちゃった」



 シュンとうな垂れる羽衣の行動に居心地の悪さを感じた焔は、乱雑に髪を掻きむしる。



「だぁ!ウジウジしてんじゃねぇ!!ネタは明かされたがそんでも私らの方が強いんだ。純粋な力でぶっ殺してやれば良い」

「うんうん!!そうだよねそうだよね!!勝てばなんの問題もないもんね!!」



 二人のいうことは正しい。『グリット』の能力を明かすことが出来ても、根本的な実力差を覆すほどのきっかけには繋がらない。


 この差を覆すには、もう一つ、何か意表を突くような()()が必要であった。


 そしてその()()を、スフィアは考えつこうとしていた。



「これ以上時間をかけるメリットはなんもねぇ。一気に仕掛けんぞ」

「ヨシヨシ!!そうだよねそうだよね!!一気に行っちゃおう!!」



 そういうと羽衣は子どもような鞄を弄り、小型の球体状の何かを取り出した。



「えいえいっ!!いくよぉいくよぉ!!攻撃しちゃうよ!!」



 すると羽衣は、手に持っていた何かを放り投げ、それを鋼鉄のハンマーで打ち上げた。


 球体の何かは空中を漂ったあと、咳を切ったかのように天城達の方へと落下しだす。



「うおっ!?」



 落下したそれは地面に減り込み、土煙を上げていた。



「これは…鉄球?そうか、手に持てば無重力ってことは、離れた瞬間に質量の重さは戻る。だからこういう鉄球は浮遊してから降り注ぐことになるのか」



 鉄球はとても重く、落下したものを足で動かそうとしてもびくともしなかった。



「(これだけの質量…手に触れてない状態で持ち運ぶのは不可能だろ…多分あのカバン自体が戦闘補具(バトル・マシナリー)なんだ。触れた物体を軽くする能力を、身体が触れるだけでそれを発動させるような効果があんのかもな)」


 スフィアに負けず劣らず、天城も冷静に相手を分析していた。


 それでも、天城には現状を打破する作戦を思いつくことは出来なかった。


 足を止めていると、そこら一帯が薄く発光していることに気が付き、二人は一斉にその場を後にする。


 予想通り、直後に一帯が爆発を起こし、周囲には土煙が漂う。


 その煙に紛れ姿を隠しつつも、ジリジリと追い詰められていく感覚を二人は感じていた。


 その最中、スフィアが意を決したように天城に話しかけた。



「天城…作戦、思いついたんだけど…」



 思いついた、という割に、スフィアの表情は険しかった。



「…冴えない表情だな。どんな作戦だよ」



 天城もそれを感じ取っており、思わず声色が硬くなる。


 スフィアは焔達に聞き取られないよう、小声で天城に耳打ちする。その内容を聞くうちに、天城の表情は強張っていく。



「バカ野郎!そんな作戦飲めるわけないだろ!」



 聞かされた内容に驚き、天城は強い口調でそれを拒否した。


 しかし、スフィアはそれに怯まず意見を曲げようとはしなかった。



「このままじゃ私達が不利なのは変わらない。いずれ負けると分かってて戦い続ける方がよっぽどバカだよ」



 真っ直ぐな瞳で正論をぶつけられ、天城は思わずたじろぐ。それでも納得できないのか、首を何度も横に振った。



「でも…ダメだ!何か別の作戦がきっと…!!」

()()()()()()()()けど、戦場でそれを待ってくれる敵なんていないでしょ」



 最早天城が言い返せる要素は何もなかった。


 ただ子どものように、無言でスフィアの作戦に抵抗感を出すことしかできなかった。



「天城…」



 その天城に対し、スフィアは諭すように優しい口調で語りかける。



「私達は訓練生だけど、『軍』人で『輝戦士(グリッター)』よ。一羽さんは守ってくれるって言ってくれたけど、守られてばかりじゃダメ。自分達で戦えることを証明しなくちゃ」

「それは…そう、だけどよっ…!!」

生き残る(勝つ)ことを目指すのは大切なこと。でと、何かをかける覚悟はないと、きっとこの先も生き残ることなんて出来ない。そして、生き残るための今の最善の策は、私はこれがベストだと思う。傷付かずに勝利を目指すなんて、今の私たちじゃ絶対に無理だから」



 最早最初の頃の弱気な面影は一切なく、寧ろその立場を逆にして、スフィアは天城に強い意志を示していた。



「怖くないのかよ。下手すりゃ命をおとしかねない…そんな作戦を自分でたてて」

()()()



 スフィアはハッキリと答えた。



「でも、天城がいるから。貴方が隣にいてくれるから、私もきっと前に進めるの」

「スフィア…」

「天城一人じゃ勝てない…だから私が貴方の隣に立つ。勝利を目指すために。そう、貴方と約束したから」



 強く、固い意志を込めた瞳を真っ直ぐに向けられ、天城は一度目蓋を閉じた後、覚悟を決めたように同じ瞳でスフィアを見た。



「分かったよ。俺も覚悟を決めた」



 天城とスフィアは土煙が晴れたのを見計らって立ち上がり、焔と羽衣の二人を見据える。



「勝つぞ、二人で」

「うん!!」



 天城、スフィア両名の初の実戦が、間もなく終わりを迎えようとしていた。

※後書きというかお知らせ






ども、琥珀です

まだまだ暑い日が続きますね…皆様も健康にお気をつけ下さい…


さて、お知らせなのですが、今週がどうしても多忙になってしまう兼ね合いで執筆が出来ません。

つきましては、今週の金曜日、来週の月曜日の更新はお休みにさせていただきます。


お読みくださってる皆様申し訳ありません…

次回の更新は来週の金曜日を予定していますので宜しくお願いします。

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