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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
6章 ー東京最高本部編ー
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第135星:睨み合い

■関東本部『グリッター』

唯我 天城(17)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。将来を有望視される育成組織に所属し、教官である一羽にもその才能を認められている。同期の飛鳥が最高峰の『シュヴァリエ』に、後から入った大和が司令官に着任していることから、怒りを抱いている。


スフィア・フォート(18)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。『グリット』に関しては不鮮明な部分が多いものの、勤勉さと発想力を買われる。礼儀正しく生真面目。飛鳥と大和の兄妹の凄さに憧れている。同期の天城とは幼馴染で良く気にかけている。


射手島 一羽(27)

東京本部に所属する一等星『グリッター』。実力とカリスマ、豊富な経験を買われ、飛鳥、天城、スフィアの3人の指導教官となる。豪快でガサツな言動を取るが、実際には天城やスフィアの細かな機微に気付きケアする教官の鏡。


■『アウトロー』

暁 シノ

『無気配サインアウト』の異名を持つ『アウトロー』。荒くれ者の多い『アウトロー』のなかでは清楚な面持ちを持つが、中身は冷徹冷酷な性格の持ち主。


篝火 焔

『爆発魔ボマー』の異名を持つ『アウトロー』。血の気が多く喧嘩早い。自身もそれを認め理解しているため迷いがない。


棗 羽衣

シノ、焔と行動を共にする『アウトロー』の少女。純真無垢な外見通りの表情を浮かべることが多く、独特な話し方をする。本部にも情報がなく、最も正体が不明。


「わっわっ!!スゴイねスゴイね!!あんなに落ち込んでたのにもう立ち直ったよ!!」



 序盤こそ焔が圧倒していた戦闘であったが、スフィアが復帰し、訓練通りの動きを取り戻したことで、戦況は五分にまで押し返されていた。



「…羽衣さん、貴方も焔さんの方へ向かって下さい」



 これまで一羽と睨み合いを続けていたシノが、視線を外すことなく羽衣に告げる。



「エッエッ!!大丈夫なの大丈夫なの??『戦鬼』を一人で相手して大丈夫なの??」



 見かけは少女でありながら、戦況と力量を見計らいこの場に留まり続けた羽衣は、『アウトロー』の名に恥じない実力者であることが分かる。


 それを踏まえた上で、シノは焔の元へと向かと告げていた。



「大丈夫…ではありませんが、今の焔さんの状況を見ると万が一が起こりうる可能性が高いです。そうなればこちらが不利。撤退を考慮しなくてはなりません」



 シノは「ですが…」と続ける。



「私達の姿を知られ、『グリット』の情報まで知られて撤退するのでは、私達にはデメリットしかありません。それだけはなんとしても避けたい。ですから…」

「アッアッ!!分かったよ分かったよ!!だから私が加勢して、あの二人を()()()()()()()()有利な状況を作れば良いんだね!!」

「…とても優秀ですね羽衣さん。その通りです」



 羽衣の答えにシノはにっこりと笑って答える。


 実際、焔と羽衣の二人が天城とスフィアの二人を先に倒すようなことがあれば、一羽は自身の手負を気にせず一気に仕掛けてくるだろう。


 そうなれば目の前に立つシノは勿論のこと、離れて戦う焔と羽衣の二人も()()()()()()()()()()



「(ですが、あの二人が致命傷を負う直前であれば、流石の彼女もそれを避けようと僅かに動揺を見せることでしょう。その隙さえつけば、私の『グリット』なら十分に仕留められます。まぁ、その二人を相手にしている二人には()()()()()が出るかもしれませんがね)」



 シノは表情に出すことこそ無かったが、その裏でどす黒い笑みを心の奥底で浮かべていた。


 それに気付くことなく、羽衣はシノの指示通り焔の元へと向かっていった。



「…お前、清楚な面してやることはえげつねぇな」

「…私の考えを読んだ上で止めもしなかった貴方に言われる筋合いはありませんね」



 視線だけでなく、言葉での牽制を交えながら、二人は互いに仕掛ける好機を待つ。


 シノとの距離は10m程。正直なところ、一羽の『グリット』の効果の射程圏内には十分に収まっていた。


 それでも一羽が攻撃を仕掛けないのは、スフィアの背後をとられた時の違和感が残っていたからである。



「(こいつの『グリット』はどこか得体が知れない…下手に攻撃を仕掛ければこっちが手負を負いかねねぇ。ただでさえ不利な状況。今は慎重に動くところだな)」



 それは逆の立場であるシノも同様であった。


 一羽とは逆に、シノは一羽の『グリット』を知っているからこそ攻撃を仕掛けられずにいた。


「(彼女の『グリット』、『無限銃創シェプフング・ゲヴェーア』はエナジーによって創り出される銃による広範囲攻撃。私の『意思改変(エニグマン・クオリア)』を用いても万が一ということが起こりうる…下手は出来ませんね…)」



 暁 シノの『グリット』、『意思改変(エニグマン・クオリア)』は、相手の意識の認識を阻害する能力を持つ。


 例えば、一羽がスフィアの救出に遅れたのは、『スフィアを救出する』という一羽の意思にシノが介入し、『どうやって』という過程の意識を阻害したことにより遅らされたものである。


 阻害が出来るのはほんの一瞬であるが、実力者であればある程、この一瞬が命取りになるのである。



「(私の『グリット』が『戦鬼』に通用することは分かりました。ですが種がバレれば効果が現れる前に攻撃を仕掛けられる…一瞬の隙を突きつつ、短期決戦で挑まなければ…)」



 状況と内情は違えど、互いに仕掛けられない状況。一羽とシノによる無言の牽制は尚も続いていた。


 それとは真逆に、焔、羽衣の二人と対峙する天城・スフィアの戦いは苛烈さを増していた。



「エイエイッ!!いくよいくよ〜!!」



 中でも恐ろしいのは羽衣という少女。身長は140に満たない程度にも関わらず、彼女はその倍はありそうな巨大なハンマーを振り回していた。



「危ない!!」

「チッ!!」



 巨大なことに加えそのリーチも長く、更には面積もあるため、二人は回避するのにも一苦労だった。



「…なんであんなモノをブンブン振り回せるのかしら。最初は素材が軽いのかと思ったけど、さっき振り下ろした時の地面との衝突音は完全に金属だったわよね」



 先程は違い、落ち着きを取り戻したスフィアは、冷静に敵を分析していた。



「みたいだな。だとすればあのガキの能力は腕力の強化とかそういう感じの…ッ!!」



 やりとりをしている最中、天城は自身の周囲が淡く光ったことに気が付き、一気にその場を離れる。


 直後、その近辺に爆発が起こり、辺りに煙と風が飛び散る。



「カァ〜!!やっぱ私の『グリット』は正面戦闘にむかねぇな。簡単にかわされちまうぜ」



 言葉の割に、焔からは悔しそうな様子を一切感じない。寧ろ笑みさえ浮かべていた。


 焔の『グリット』、『暴爆発(タイラント・ボム)』は、視線の先を爆発させる能力である。


 アバウトな能力でありながら、実際その能力はかなりの優れものである。


 焔の視界にさえ収まれば爆発させる射程距離はほぼ無限。どこでもどこからでも爆破することが可能である。


 爆破の威力は視界に収めた時間に比例し、一点を集中して見続ければ見続けるほどその箇所に強い爆発を起こすことが可能である。


 がしかし、当然能力には大なり小なり弱点が存在する。


 焔の能力の弱点は二つ。一つは、爆破までに時間を要すること。


 小規模な爆発であれば、最短1秒で実行することができる。しかし、それでは威力は全く物足らず、仕留めることは到底不可能。


 小さな火傷を負わせるのがせいぜいだろう。


 致命傷とまではいかずとも、怯ませる程度の規模の爆破を行うには、最低3秒を要するが、その間ジッとしている敵は通常なら存在しない。


 更に、もう一つの弱点がさらにこの問題を強く浮き彫りにする。


 それは、『グリット』発動時に目が発光すること、そして爆心地も同様に発光してしまうことだ。


 一羽を始め、天城やスフィアがこれだけ不意打ちの爆発で致命傷を負わなかったのは、まさにこの弱点の恩恵と言えるだろう。


 これにより、敵はいち早く爆発の予兆を感じ取ることができ、回避に至ることができるのである。



「(恐ろしい能力だし、当たれば確かにヤバイが、かわすのは難しくない。分からないのはもう一人のガキだ)」



 視界から焔を離さない程度に、天城は羽衣の方を見る。


 羽衣は相変わらず体躯に似合わない巨大なハンマーを軽々しく持ち上げており、その表情には笑みさえ浮かんでいた。



「(肉体強化系の『グリット』なら、下手に踏み込むのはヤバい。俺らの攻撃が通用しない可能性もある。もう少し情報が欲しいな…)」



 戦闘の中で天城は羽衣の『グリット』を探ろうと試みたが、羽衣はハンマーを振るうだけのため、成果を得ることは出来ずにいた。



「ジリ貧…よね、天城」

「…あぁ。押し切られてこそいないが、押されてるのは俺らの方だ。このままだと負ける」

「打つ手は…」



 スフィアが肩を並べながら天城に尋ねるが、天城の表情は冴えなかった。


 良くない現状であるにも関わらず、スフィアの冷静さは逆に増していた。



「(大丈夫、落ち着いてる。状況もよく見えてる)」



 隣に立つ天城が前に出て奮闘してくれていることもあり、スフィアには考える余裕があったのだ。



「(元々考えて組み立てるのは私の役割。実力で劣るところは知性で補うのよスフィア)」



 スフィアが考えをまとめていると、羽衣がハンマーを構える。



「えいえいっ!いくよいくよ〜!!投げちゃうよ〜!!」



 その発言通り、羽衣は横に構えていたハンマーを、横に振るうようにして放り投げた。



「ッ!ざけんな!!」



 予想外の行動ではあったが、行動に移る前に羽衣自身が投げることを宣言していたことで、二人はどうにか回避することが出来た。


 二人が立っていた箇所にハンマーが投げつけられ、凄まじい衝撃音と共に、その先端が地面にめり込んでいた。



「…一つ確信できたね。あのハンマー、本当に重いみたいよ」

「…出来れば嘘であって欲しかった確信だな」



 二人はもはや呆れるような笑みを浮かべ、めり込んだハンマーを見ていた。



「よいっしょ!!」



 そのハンマーを、羽衣は軽々しく持ち上げる。その様子を、スフィアは注意深く観察する。



「(…もしかしたらあの子の『グリット』は…でも、もう一つ確証が欲しい…)」



 何かを掴み始めたスフィアが、あと一歩を詰める算段を考えていると、ふと、一つの作戦を思いつく。



「ねぇ天城、私に考えがあるんだけど…」

「…この状況を打破できる作戦か?」

「打破できる()()()()()()()()()()()作戦なんだけど…、上手くいかないかもしれないし…信じてくれる?」



 戦闘では吹っ切れたスフィアだったが、やはり出だしの悪さを引きずっているところも残っていたのだろう、天城に尋ねる声は自身が無さげであった。



「お前の方が頭はキレるからな。お前が言うんだから何かあるんだろ。任せるよ」



 天城は単に事実を伝えただけ。素っ気なくも思えるその一言に、天城のスフィアに対する信頼がハッキリと込められていた。


 その一言で、スフィアは今度こそ吹っ切れた。


 天城の言葉に力強く頷くと、自分の考えた作戦を決行する。

※後書きです






ども、琥珀です

寝なきゃいけないと思うほど寝れなくなる。


ありますよね。私、八時間睡眠時間を確保したのに、結局寝れたのは四時間でした…


それも寝ては覚めて寝ては覚めての繰り返しで…起きてからが地獄でした…


皆さんも、寝れるルーティン、確立しておきましょう…


次回の更新は月曜日の朝を予定していますので宜しくお願いします!

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