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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
6章 ー東京最高本部編ー
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第134星:交戦

■関東本部『グリッター』

唯我 天城(17)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。将来を有望視される育成組織に所属し、教官である一羽にもその才能を認められている。同期の飛鳥が最高峰の『シュヴァリエ』に、後から入った大和が司令官に着任していることから、怒りを抱いている。


スフィア・フォート(18)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。『グリット』に関しては不鮮明な部分が多いものの、勤勉さと発想力を買われる。礼儀正しく生真面目。飛鳥と大和の兄妹の凄さに憧れている。同期の天城とは幼馴染で良く気にかけている。


射手島 一羽(27)

東京本部に所属する一等星『グリッター』。実力とカリスマ、豊富な経験を買われ、飛鳥、天城、スフィアの3人の指導教官となる。豪快でガサツな言動を取るが、実際には天城やスフィアの細かな機微に気付きケアする教官の鏡。


■『アウトロー』

暁 シノ

無気配(サインアウト)』の異名を持つ『アウトロー』。荒くれ者の多い『アウトロー』のなかでは清楚な面持ちを持つが、中身は冷徹冷酷な性格の持ち主。


篝火(かがりび) 焔

爆発魔(ボマー)』の異名を持つ『アウトロー』。血の気が多く喧嘩早い。自身もそれを認め理解しているため迷いがない。


(なつめ) 羽衣(うい)

シノ、焔と行動を共にする『アウトロー』の少女。純真無垢な外見通りの表情を浮かべることが多く、独特な話し方をする。本部にも情報がなく、最も正体が不明。


「チッ!」



 一羽は日本の『軍』に並いる一等星のなかでも、かなり名を知られる『グリッター』である。


 がしかし、スフィアの背後にシノが忍び寄った時、一羽は反応できなかった。いや、気付くのが遅れてしまったのだ。


 既にシノはスフィアと目の鼻の位置。


 スフィアもシノに気付き反応するが、完全に後手であった。



「『光速操作(タキオン・レイン)』!!」

「ッ!?」



 それに真っ先に反応したのは天城だった。シノの存在を視認した瞬間『グリット』を発動。


 遅れた初動を、持ち前の高速移動で補い、シノを吹き飛ばした。


 体をぶつけられ吹き飛ばされたシノは、これを難なくいなし着地する。


 しかし、その顔には少なからず驚きの表情が浮かんでいた。



「あら…まさか防がれるとは思いませんでした。それも訓練生である貴方に」

「そうやって人のこと舐めてかかるから足元をすくわれるんだよ」



 してやったりの表情を浮かべる天城に対し、スフィアはドッと冷や汗を大量にかいていた。



「あ、ありがとう天城…また助けられちゃったね」



 平静を装ってはいたが、スフィアの声は震えていた。


 あと一歩で命を失っていたのだから、無理もない話である。


 と、そこへ対応が遅れた一羽が二人に近寄る。



「私の指示によく気が付いたな天城」

「指のサインで少し下がれってやつだろ。それのお陰でスフィアの背後に迫られても直ぐに視界に入れられたよ」



 一羽の指示(サイン)は、必ずしも敵の意図を読み取って出したものではなかった。


 ただ、情報通りの敵であるのなら、シノは不意打ちを仕掛けてくる可能性が高いと判断し、()()()距離を取るよう指示していたのだ。



「(スフィアは敵を注視し過ぎて私の指示に気付かなかったが…結果的にそれが功を奏したな)」



 一羽は視線をシノに戻す。



「(それにしてもなんだ…今アイツの動きに反応する時に、僅かだが違和感があった。反応が鈍るような、いや、ズレたような何とも言えない違和感…)」



 結果的に後手に回ってしまったが、一羽はシノの動きを追えていなかったわけではない。


 実際、舌打ちをするくらいの余裕はあり、正直なところ天城よりも早く反応はしていた。


 しかし、それに反応し行動しようとする瞬間、僅かにその反応が鈍っていた。それにより、天城がスフィアを救う形となっていた。



「ふむ…確かに否定できませんね。必要以上に貴方達を見くびっていたことは認めましょう。ですが…」



 ゾワッ、と天城は全身が身の毛立つ感覚を覚えた。



「次からはそれを無くして全力でお相手致しましょう。それで問題は無くなります」



 あくまで子どもを相手にする程度の感覚であった相手が本気を出したことで、その圧を感じ取った結果であった。



「おいおいおい!!何一人で楽しんでんだよ!!」



 と、次の瞬間、天城は自分達の周りが淡く発光していることに気が付く。



「ッ!!お前ら、後ろに飛べ!!」



 二人は直ぐに一羽の言葉に反応し、全力で後方に飛んだ。


 その直後、先程まで立っていた場所が突如爆発を起こす。


「はっはぁ!!良い反応だ!!思ってたより楽しめそうだぜ!!」

「わっわっ!!スゴイねスゴイね!!焔の攻撃を簡単にかわしちゃったね!!」



 気付けば焔と羽衣の二人も下に降りてきており、シノの背後に立っていた。



「せっかく正面切って戦うことにしたんだ。お前だけ楽しんでんじゃねぇよ」

「…楽しむつもりは毛頭ありませんでしたがね。ですが、確かに一人で突っ込むのも得策ではありませんでした。お二人のお力も借りると致しましょう」



 遊び感覚の焔に呆れたようなため息を吐きつつも、シノは二人の協力を仰ぐことを決める。


 天城とスフィアを抱えていることを勝利の利点としつつも、シノ一人では一羽には敵わないことを理解していたからだ。



「ヒャッハ!!そうこなくっちゃな!!」



 やはり最も好戦的なのは篝火 焔。


 先程のシノ冷たく圧のあるプレッシャーとは違い、鋭く迸る敵意が天城達に向けられる。



「御山の大将を真っ先に取るのもやり甲斐があるが…」



 チラリと視線を一羽に向け、焔は直ぐにスフィアへと目標を定め直した。



「やっぱり弱っちい奴から叩きのめすのが最高だよなぁ!!」



 駆け引きもへったくれもなく、焔は一直線にスフィアへと飛び掛かった。



「くっ…!」



 スフィアもこれに応じてバトル・マシナリー(武器)である西洋剣を構えるが、訓練の時とは違いその構えは固く弱々しかった。



「させるか!!」

「るせぇ!!お前はあとだ!!」



 天城が間に入ろうとするが、焔の瞳が真っ赤に輝き次の瞬間、突如として天城の目の前で爆発が起きた。



「うああああぁぁぁぁ!!」



 爆発の余波と爆発に巻き込まれ、天城は一気に吹き飛ばされる。



「あ、天城!?このぉ!!」



 天城がやられたことでスイッチが入ったのか、幾分か固さのとれた動きでスフィアが反撃に転じる。



「ハハッ!!基本の通りの動きだな!!素人感丸出しだぜ!!」



 焔はどこからともなく取り出した鞭のような武器を握り、それを奮ってスフィアの剣に絡めつかせる。



「そぉらよ!!」

「あっ!?」



 絡めたいた鞭は、スフィアの手から意図もたやすく剣を奪い去り、遠くへ投げ捨てられる。



「ヒャッハ!!まずは1人目だぁ!!」



 勢いをそのままに、焔はスフィアへと襲い掛かっていく。



「宜しいのですか?大事なお弟子さんがやられそうですが」



 シノは一羽を精神的に揺さぶろうと試みるが、一羽の心は微塵も揺れることは無かった。


 寧ろ自信に満ちた笑みを浮かべ、シノに答える。



「さっきも天城が言ってたろうが。お前らはアイツらのことを舐め過ぎだ」



 一羽の言葉に目を細め、シノは焔とスフィアの2人の成り行きを見届ける。



「終わり…だぁ!!」



 焔の鞭がスフィアを捉えようとした瞬間、横から超高速で通り過ぎた何かが鞭を弾き返した。



「なっ!?」



 攻撃を弾き返された焔は驚きつつも、反撃を警戒し数歩距離を取った。


 そこに立っていたのは、片手に火傷を負い血を流しながらも、力強い瞳で焔を睨み返す天城であった。



「あ、天城…ち、血が…」



 ポタポタと滴る血を見ながら、スフィアは顔を青く染める。



「ご、ごめんなさ…私、足を引っ張ってばかりで…」



 声は揺れ、身体は震え、スフィアは完全に萎縮していた。



「スフィア」



 天城に名前を呼ばれ、スフィアは全身をビクッとさせる。足手纏いになっていると叱咤されるも思ったからだ。


 ()()()()()()()()()()()()



「ケガ、してないか?」

「え…」



 しかし、かけられた言葉は全くの真逆のものであった。スフィアの身を案じ、心配してかけられたものであった。



「う…うん。アナタが助けてくれたから…」

「…そっか」



 そう言って天城はニコリと笑みをスフィアに向け、再び焔を睨みつけた。



「心配すんなスフィア。お前は俺が守る。約束したからな」



 背中を向けてはいたが、その言葉は真っ直ぐにスフィアの心へと突き刺さった。


 それはあの日、天城がスフィアにした約束。自分(スフィア)を守り、自分(スフィア)のために強くなると告げた、あの日の言葉であった。



「ハハ…ハハハハハハッ!!いいなぁお前!!熱いなぁ!!」



 それが焔にも刺激となったのか、歓喜の笑い声を上げ標的を天城へと定め直していた。



「狙いはやっぱりお前に変更だ!!名前を聞かせな!!」

「『アウトロー』に名乗る名前なんてない…って言いたいところだが、別に恥でも何でもないか。唯我 天城だ。()()()のな」



 皮肉たっぷりの答えに、焔は再びニヤリと笑みをこぼした。


 二人の間で火花が飛び交い、次の瞬間、二人は同時に距離を詰めた。


 初の実戦とは思えない天城の戦いぶりを、スフィアはどこか遠い感覚で眺めていた。



「(天城は…毎日のように成長していくんだね。私のことを置いていくようにして…)」



 天城の言葉と戦いに、僅かに気負いながら、しかし次第にその心の奥で湧き上がってくる何かを感じていた。



「(でもあの日、天城はこうも言ってくれたんだよね)」



『「でも俺は弱い。成長しても、力をつけても、一人じゃ絶対に勝てないときが来る。だから、そん時はお前が俺の隣に立て。俺とお前で一緒に成長して、強くなるんだ』



 頭の中でその言葉を思い出し、スフィアの全身に力が湧き出す。



「守られてばかりじゃいられない…」



 飛ばされた剣を拾い、力強い光を取り戻した瞳で前を向き、スフィアは立ち上がった。



「貴方と共に…貴方の隣で戦うわ!!そう、約束したもの!!」



 力強く剣を握りしめ、スフィアは再び焔へと立ち向かっていった。

※後書きです






ども、琥珀です。


私の地域では久しぶりに雨が降りました。

通り雨程度の短い時間でしたが、水が滴ったあとの独特な香りはよいものです。


梅雨はあまり好きではありませんが、時折降る雨は心地よいですよね。


小説家の皆様の中には、これが意欲に繋がる方もいらっしゃるのではないでしょうか?


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は金曜日の朝を予定しておりますので宜しくお願いします。

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