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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
6章 ー東京最高本部編ー
136/481

第131星:お風呂の回

ーーーーー宿


ーーーーーそれは旅人の泊まるところ…憩いの場


ーーーーーしかし日本人にとっては単なる休憩所に留まらない…


ーーーーー長い年月世界から注目されてきた日本の秘境…


ーーーーーそう、『温泉』である

「わぁ、すごーい!!」



 ドアの仕切りを変えると、そこには趣のある露天風呂が設けられていた。


 大人数は入れるであろう風呂は勿論、近くには壺湯や竹湯など各種の浴槽があり、様々な湯船が楽しめる作りとなっていた。



「どぉだ凄いだろ。予めここはリサーチしてあってな。穴場として知る人ぞ知る秘境なんだ」



 タオルで身体を隠すスフィアと反対に、一羽はその引き締まった恥ずかしげもなく見せていた。



「本部の大浴場も素晴らしいですけど、こう言った旅館の温泉というのも風情がありますよね。私、こういうところは本当に日本が好きです」



 スフィアの言う通り、本部の大浴場は十分な作りとなっている。


 効能を求めた湯船やサウナ、水風呂、電気風呂など、『グリッター』の疲労を癒すための機能を備えたモノが揃えられている。


 しかし、それはそれとして、こういった外で見られる風呂、特に露天風呂などはやはり他に替えがたい魅力と風情があるモノだ。


 小さな悩みかも知れないが、スフィアがイギリスにいた頃、このお風呂の微妙な差にも悩まされていたと言う。



「さ、こんな風呂を前にしていつまでも突っ立ってたら失礼だ!身体洗い流してお湯に浸かろうや!」

「はい!!」



 露天風呂の効果は絶大だった。


 先程まで緊張と入れ込みすぎで強張っていたスフィアの表情はすっかり元の柔和さを取り戻していた。


 爛々とした表情で腰まで伸びた髪を洗い流し、身体も清めたあと、二人はゆっくりと露天風呂に身体を沈めた。



「はぁ〜気持ちいい…それにほのかに香りがしますね」

「元々は単なる単純温泉だったらしいんだが、メナスとの戦いで地形の変動があったらしくてな。いまは硫黄温泉になってるらしい」

「確か…保湿効果が高くて美容にも良いんですよね。こんなに気持ち良いのに美容にも良いなんて贅沢です」



 無駄に博識なスフィアの話を他所に、一羽はいつの間にやら持ち出した酒器とおちょこをお盆に乗せ、湯船に浮かしながらそれを嗜んでいた。



「あ、一羽さんそれ、お酒…ですよね?良いんですか?」

「良いんだよぉ。せっかくの温泉なんだから楽しんだもん勝ちだ。今だけは堅いこと言いっこ無しだぜ」

「ん〜?そう、なんですかね?…そうですよね!こんなに心地よいんですもんね!」

「そ〜そ〜良いの良いの」



 露天風呂の趣と温泉の心地よさに当てられ、珍しく冷静な判断が出来ないスフィアをノせて、一羽は再び酒を口に運ぶ…




「ーーーーーって良いわけあるかぁぁぁぁ!!!!」




 その雰囲気を、竹の仕切り越しにある男湯から天城が叫び吹き飛ばした。



「何で俺ら温泉に入ってんだ!?俺らは任務でここに来てんじゃないのか!?」

「天城ぃ〜、あんまり任務って大声で言うの良くないよ?誰に聞かれてるか分からないんだからぁ」

「そう思うのならその気の抜けた声を何とかしろ!!」

「とか言ってお前もちゃっかり湯船に浸かってんだろ?」

「あまりにも自然な流れで促されたからな!!」



 湯船で緩んだ気を取り戻すようなキレの良いツッコミを披露した天城は、荒れた息を整える。



「でもなぁ天城。今はもう夕刻なんだぞ?今から出たところで数時間したら戻ってこないと行けない。それなら今日はしっかりと英気を養って、明日に備えるのが一番じゃないか?」

「…そりゃ、まぁ、一理あるけどよ…」

「な?そんなら今は気を楽にしてるくらいが一番良いんだよ」



 そこでふと、一羽はいたずらを思い付いた子どものような笑みを浮かべる。



「はっは〜ん?さてはお前、自分一人で温泉に入ってるのが寂しいんだな?」

「はっ?」

「そ〜かそ〜か、そりゃ悪いことをしたよ天城。いいんだぜぇこっちに来てもよ」

「ええっ!?」



 これに驚いたのは一緒に浸かっていたスフィア。サッと身体を隠し、男湯にいる天城に向かって叫ぶ。



「だ、ダメだからね!!絶対来ちゃダメよ!?」

「バカッ!!誰が行くか!!」

「ハッハッハッ!!ウブだねぇ!!」



 二人の初々しい反応を見ながら一羽はまた一杯酒を煽る。



「〜〜〜、俺は先に上がるからな!!」

「おう、湯冷めには気を付けろよ〜」



 反対側から中へと戻っていく音を聞き届け、スフィアはホッと胸を撫で下ろす。



「もう一羽さん、イタズラが過ぎます」

「ハッハッハッ、悪い悪い。けどまぁお前も別に本気にしたわけじゃないだろ?」

「それはそうですけど…そう言う問題じゃありません!せっかく緊張が解けてきてたのに…」



 可愛らしく拗ねるスフィアの顔を見ながら残された酒を飲み切った一羽は、笑みを浮かべながらも真剣な面持ちで口を開く。



「緊張をほぐす、ってのは大事なことだ。けど、緊張感のないまま戦うのは危険だ。そこには油断と慢心が生まれるからな」

「え…?」



 一羽はソッと湯船の中でも眼帯に覆われた右目をソッと撫でる。



「戦いが始まる前も、戦闘中も、多少の緊張感は必要なんだよ。自分が学び得てきたモノを最大限に発揮するためにはな。ほんの少しでも綻びが生じれば、それが命取りになることもある。私の右目みたいにな」



 過去を憂うような一羽の言葉には確かな説得力があり、スフィアは思わず息を飲む。



「ま、お前らの場合、もし戦闘になったらまずはがむしゃらに戦えば良いさ。必死に戦って生き残る術を学べば良い」

「…もし」

「ん?」



 スフィアが恐る恐る一羽に尋ねる。



「もし、全力を尽くしても勝てなかったら…?目の前に死が迫ったら…どうしたら良いのでしょうか。その時は、決死の覚悟で…」

「バカを言うんじゃねぇ」



 スフィアの言葉を、一羽が強く遮った。



「決死とか死を覚悟とか、そんなことを前提に動くことは絶対にするな。私達『グリッター』は死ぬために戦うんじゃねぇ。それは最初に生まれた『グリッター』からずっと受け継がれてきた意思だ」

「…『生きるために、立ち向かう』…」

「そうだ。だから、自分一人でどうしようもなくなったら仲間を頼れ。それでもダメな時でも安心しろ」



 一羽は湯船から立ち上がり、スフィアを見下ろすような形で、力強く答えた。



「お前達は、私が絶対に守ってやるからよ」



 強い瞳、口調、そして意思。目の前で放たれたその言葉は、スフィアの心に強く打ち込まれていた。


 同じく、浴室の入り口付近に立っていた天城にも、強く行き届いていた。






●●●






「ネッネッ!聞いた聞いた??『軍』の『グリッター』がここに来てるんだってよ?」



 薄暗く、どこにいるのか分からないような場所に、場違いのような少女の声が響き渡る。



「ネッネッ!聞いてる聞いてる??」

「…チッ、るせぇな聞いてるよ」



 そこからもう一人、女性の声が発せられる。


 最初の少女に比べれば歳は言っているが、やはり若い女性の声であった。



「ネッネッ!どうしてかなどうしてかな??どうして私達のことがバレたのかな?」

「んなこと(アタシ)が知るかよ!どうせお前らがボカして勘付かれでもしたんだろうが!」



 若い女性の口調は荒々しく、少女にも容赦なく放っていた。



「エッエッ!私のせい?私のせい?」

「だから私が知るかっての!!」



 少女の大きな声が煩わしいのか、女性は一層苛立った声で怒鳴る。



「ったく…だから人と組むのは嫌なんだよ。私は一人でやった方がやり易いんだ…」

「それでも私達と組んだのは、その方がメリットが大きいと踏んだからではないかしら?」



 と、不意にどこからともなく、気配すらはなく、荒々しい女性よりも年齢の高い、それでいて落ち着いた声色の女性の声が辺りに響く。



「テメェ…気配消して私の後ろに立つなつってんだろ」

「ウフフ、ごめんなさい。けれどコレ、私の()なのよね。わざとやっている訳じゃないから許してほしいわ」



 荒々しい言葉にもどこ吹く風の女性は、フッと移動し、二人の前に立つ。



「さてお二人とも。既に知っての通り『軍』に私達の存在がバレました」

「ネッネッ!なんでかななんでかな??なんでバレたのかな!!」



 先程荒々しい女性に尋ねたように、少女は清楚な女性にも尋ねた。



「理由は定かではありません。そもそも日本の『軍』の情報網は随一ですからね。出所は何も私達が原因とも限りません」

「…他の『連中(アウトロー)』がゲロったってことか?」



 清楚な女性はニコリと微笑み、否定も肯定もしなかった。



「可能性の話です。ですが確率の話をすればより高いものがあります。『私達(アウトロー)』と『軍』、そこに入り込む第三戦力です」

「…『レジスタンス』か…ちっ!ホントにロクなマネをしねぇなアイツらは!!」



 荒れ気味の女性は近くにあったモノを強く蹴り飛ばした。



「まぁまぁ、こちらも可能性の話ですから。それよりもいま行うべきはこれからの私達の動きです」

「考えるまでもねぇだろ!!真正面から向かいうつ、これで良いだろ!!」



 元々血の気の多い性格なのか、荒れた女性は大声で撃退を進言する。



「勿論それも一つの手ですね。ですがその場合、まず相手を知らなくてはなりません。あり得ないことではありますが、もし相手が『シュヴァリエ』クラスであれば…残念ながら戦闘は避けなくてはなりません。貴方もそれはご理解頂けますね」

「…ちっ」



 血の気は多くともただの戦闘狂でもないのか、清楚な女性の言葉に荒れた女性も反論はしなかった。



「さて、貴方はどう思いますか?」

「エッエッ!私かな私かな??私はねぇ、撤退で良いと思うよ!!」



 今出た意見とは一転、少女は『逃走』を進言した。



「どうしてそう思いますか?」

「えっとえっと!それはねそれはね!私達長い間見つからないで来て、『軍』からすれば漸く手に入れた手掛かりなのに、わざわざ逃すような人を送らないと思うの!!」

「成る程…一理あります。私達にそれ程の価値があるかどうかは分かりませんが」



 清楚な女性はニッコリと微笑みながら言葉を放つが、荒々しい女性は快く思わなかったようで、更に目つきを険しくしていた。



「何はともあれ、まずは相手を知ることから始めないといけないようです。向こうも情報を手に入れようとするでしょうし、それを逆手に知るとしましょう」

「ようは偵察か?誰が行くんだよ」



 不機嫌そうな荒々しい女性に、清楚な女性は再びニコリと微笑み、答えた。



「勿論、私です」

※後書きです






ども、琥珀にございます


色気もへったくれもない温泉回でした。

どうも色気を持したお話は苦手で…笑

そのうち書ければ良いなとは夢に描いてます←


まぁせっかくの温泉回になんもないので、バストサイズくらいは置いておきます←?


スフィアはCカップ。一羽はFカップ。そして天城がAカップですね。


本日もお読みいただきありがとうございました!

一先ずお盆も通常営業で、次回の更新は月曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。

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