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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
6章 ー東京最高本部編ー
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第129星:違和感

国館 飛鳥(18)

明るく笑顔を絶やさない天真爛漫な大和の実妹。最高本部の『グリッター』であり、最高司令官である護里直属の戦士でもある。その正体は日本に8人しか存在しない『グリッター』の称号である、最年少の『シュヴァリエ』である。


唯我 天城(17)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。将来を有望視される育成組織に所属し、教官である一羽にもその才能を認められている。同期の飛鳥が最高峰の『シュヴァリエ』に、後から入った大和が司令官に着任していることから、怒りを抱いている。


スフィア・フォート(18)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。『グリット』に関しては不鮮明な部分が多いものの、勤勉さと発想力を買われる。礼儀正しく生真面目。飛鳥と大和の兄妹の凄さに憧れている。同期の天城とは幼馴染で良く気にかけている。


射手島 一羽(27)

東京本部に所属する一等星『グリッター』。実力とカリスマ、豊富な経験を買われ、飛鳥、天城、スフィアの3人の指導教官となる。豪快でガサツな言動を取るが、実際には天城やスフィアの細かな機微に気付きケアする教官の鏡。


早乙女 護里

『軍』における『グリッター』最高権力、最高司令官の女性。『グリッター』を仲間以上、家族のように思っており、子供達と呼ぶ。日本だけに留まらず国境を越えて人格者として知られ、一目置かれている、『グリッター』の母。

「だが、ちょっと待ってくれ。それはおかしくないか?」



 スフィアの過去を聞いた一羽だが、ひとつだけ腑に落ちない点があった。



「英国の『グリット』は次世代に受け継がれる。それは13騎士団の『グリット』も例外じゃないんだよな?それならどうしてスフィアの『グリット』は開花しない。いや、させないんだ?過去の記録とかを見れば、それも可能なんじゃないか?」



 一羽の疑問は至極当然なものである。


 経験、時間、試行、それらを必要としないことこそが英国の『グリット』の特徴であるはずが、スフィアはその利点が何一つ活きていないのである。



「それが、どうも『13騎士団』の『グリット』はまた特殊なようなの。過去の記録を遡っても、何がきっかけで開花しているのか不明な点が多いようなのよね」



 初めて『グリッター』が現れた日本でも、未だ『グリット』については不明な点が多い。


 寧ろ分かっていることはほとんど無い。分かっているのは能力発生源の部分のみ。


 イギリスの『グリット』の特性から疑問に考えてしまったが、そもそもとしてわからないのが普通なのである。



「(受け継がれると言ってもメナスとの戦いはまだ100年しか続いてない。人一人が生きることが可能な年だ。仮に戦場での早死にがあったとしても、せいぜい二人から三人程度の記録しかないだろ。なら、情報が不足していても不思議じゃ無いか…)」



 一羽は豪快な言動とは裏腹に、思慮深い性格をしている。


 考えなしに戦って生き延びられるほど、メナスとの戦いは甘く無いと理解しているからだ。


 寧ろ、こういう性格でなければ教官には選ばれることはないだろう。



「(護里さんの話を聞く限り、スフィアの『グリット』の開花もきっかけ次第のはず。まずはその辺りを探っていくとするか…)」



 時間は決して長くなかったが、沈黙している間、護里は一羽を温かい眼差しで見つめていた。



「…?なんです?」

「ふふっ、いえ。スフィアちゃんを初めて見たとき、私は何としても救わないといけないと思って、少し強引な手で彼女を引き取ったわ。どうしたら彼女を救えるのかも考え続けた。結果として私はその責任を貴方に押し付けてしまったわけだけど…」



 護里は真っ直ぐと一羽を見つめる。



「常にあの子たちのことを考え、悩み、信じる…貴方のその行いが、あの子の笑顔を取り戻させた。貴方に任せて本当に良かった。誇らしいわ」



 突然の褒め言葉に戸惑いながらも照れてしまった一羽は、それを隠すように顔を背け頰を掻いた。



「よして下さいよ。私はヒトに褒められるような質じゃないんだからさ…」

「うっふふ、だからこそよ。貴方の努力は私がちゃんと見てるわ。これまでの経緯もね。だから自身を持って挑んで頂戴。私が最後の責任は全て持つから」



 一羽は到底子どもと呼べる年齢ではないが、護里にとってはそんなこと関係なかった。


 一羽にとっても、護里は本当の母親のような存在であった。



「まだ一人生意気な奴が残ってますがね。まぁ、やるだけやってみますよ」



 それが天城のことを指しているのは明白であったが、護里は敢えて気付かないふりをして笑って誤魔化した。



「さて…あの騎士様がまだこの国に残っているんだとすれば、また接触してくる可能性はあるな…」

「それはあるわね。そのような言葉も残していたし」



 一羽の言葉に、護里も同意する。



「私がそばにいる時は良いが、いざという時に自分を守れる力も身につけて欲しい…護里さん、ちと無理をすることになるかもしれないが、頼みがあるんだ」

「…?何かしら」



 首を傾げる護里に、一羽は不敵な笑みを浮かべた。






●●●






 一時間後。


 天城とスフィアは一羽に呼び出され、集まっていた。



「どうしたんだよ。待機を促したかと思えば今度は集まれだなんて」

「あぁ、これからお前達と一つ仕事をこなそうと思ってな」

「仕事…ですか?」



 一羽の言葉に、天城とスフィアの二人は顔を見合わせる。


 これまで二人は、この本部内での訓練でしか経験を積んでこなかった。


 それは、実力がまだ至らない点が多かったことと、あくまで肩書きは訓練生であることが関係していた。



「そうだ。お前達にとっては初めての実戦になるな」

「ですが、私達は訓練生です。本部外での仕事や戦闘はまだ許可されていないはずでは?」



 スフィアの言葉に一羽は「チッチッチ」と指を立てながら舌を鳴らす。



「それにはキチンと例外があるんだよ。『訓練生であっても、十分に戦闘こなすと見込まれ、且つこれを担当する教官が認めた場合のみ、当該教官引率のもと実践を許可する』ってな」



 二人は「へぇ〜」と納得し頷く。



「それで?どんな仕事を受けてきたんだ?」

「ん、お前ら『アウトロー』って知ってるか?」



 天城の一羽は質問に質問で返す。



「アウトロー…私はちょっと分からないです」

「確かあれだろ。『グリッター』でありながら『軍』の管轄から離れたはぐれもののことだろ?」



 聞き慣れない単語に首を傾げるスフィアを横目に、天城はスラッと答えた。



「…よく知ってるね天城」

「…別に。ただ強くなるために書物を漁ってたらそのことが書いてあっただけだ」



 荒々しく感じさせる言動とは裏腹に、天城は意外と勤勉だ。


 強くなるためには実力だけでなく知性も必要と考え、独学ながらそっち方面にも力を入れていた。


 一羽の問いに答えられたのは、その賜物と言えるだろう。



「その通りだ。実は今、裏でその『アウトロー』と呼ばれる奴らが怪しい動きをしてるっていう情報が上がってる。私達の仕事はその情報の信憑性の確認と、緊急性の確認、必要に応じては『アウトロー』の確保を行う」

「え、戦闘をするということですか?」



 不安げな表情を浮かべるスフィアに、一羽は笑みを浮かべる。



「可能性の話だ。情報が正しく、緊急性が高いと判断した場合のみ、私達が動くっていう話だよ」



 つまりは可能性は低いという意味であり、スフィアはひとまず安堵の表情を浮かべた。



「仕事の内容は分かったが、どうして俺らなんだ?」

「なんだ?自信がないのか?」



 茶化すような言い方にムッとした表情を見せた天城だったが、直ぐに冷静になり説明を続ける。



「そうじゃない。ただ、それだけの可能性を秘めている仕事…俺らじゃなくてもっと経験を積んでる『グリッター』の方が良いんじゃないかっていう話だ」



 天城の言葉は現実的で正しい内容だった。可能性が低いとはいえないわけではない。


 実戦があり得ることを考慮すれば、天城達訓練生が動くというのはリスクを大きく孕むことになるからだ。


 それに対する答えも、一羽はすでに用意してあった。



「私が護里さんに推薦したんだ。今のお前らならやれる、ってな」

「す、推薦!?私達を、ですか?」



 一羽は深く頷く。



「そうだ。今回の件に当たれるだけの訓練は積んできたと私は思う。それにお前らは今伸び悩んでる。そういう時は、実戦での戦いが発展をもたらすと私は考えた。だから頼み込んだんだ」



 飛躍した話ではあるが、納得もできる内容であった。



 スフィアに関する『グリット』ももちろんであるが、自身の『グリット』を扱えていながら伸び悩む天城にとっても、必要な経験となることは間違い無いだろう。



「だがこれは訓練とは違う。場合によっては(タマ)をかけた戦いになる。だから強制はしない。だが待つことも出来ない。今ここで、お前達の考えを聞かせてくれ」



 命、と聞いて二人は僅かにたじろぐ様子が見られたが、次の瞬間、二人は目を合わせて頷くと、力強く答えた。



「「やります」」



 迷いはなく、ハッキリとした答えであった。



「(…コイツら、私が護里さんと話している時に何かあったのか?スフィアもそうだが、私と話して一皮剥けたと思っていた天城も、更にもう一段成長してやがる…)」



 二人の成長に驚きながらも、それ以上に嬉しく思いながら、一羽は二人の返事を受け入れたのであった。






●●●






「宜しかったんですか?」

「うん?」



 一羽が去った後の司令室に残った護里に、一人の女性が声をかける。


 『軍』準最高司令官、雛菊 楓(ひなぎく かえで)は、ソッと机の上にお茶を差し出す。


 とても落ち着いた雰囲気の女性だった。


 背中まで伸びたグレー色の髪を片方で三つ編みにして垂らし、おっとりとした顔立ちと瞳が見る人を安心させる。


 青紫色の和服を纏い、下には赤から黒紫に変わっていく袴を履き、最後には長い白靴下を履くなど、肌の露出を極力避けた着こなしをしている。


 護里とは違うタイプであるが、どこか母性を感じさせる魅力を持った女性だった。



「本来は、別の者に任せる任務だったはず。自ら申し出があったとはいえ、訓練生に任せてしまって」

「一羽ちゃんが言うんだから心配はいらないわ。あの子達に任せましょう」

「畏まりました」



 護里の答えに、楓はそれ以上問うことはしなかった。


 護里が一羽を信じたように、楓も護里を信じているからだ。



「心配なのは分かるわ。一羽ちゃんは貴方の後輩だものね」



 ピクリ、と楓は僅かな反応を見せた。護里は楓の僅かな不安さえも見逃さなかったのだ。



「そのような事は…いえ、護里さんには全てお見通しですね」



 護里は楓の言葉にニコリと微笑んで返した。



「心配ではあります。ですが、同時に信頼もしています。一羽を長く見てきましたから。ですからこれは、そうですね、親心のようなものです」

「親心、ふふっ、そうね!その気持ちはとてもよく分かるわ。私も毎日親心を抱いているから」

「でしょうね」



 思わず楓も笑みを溢し、二人は静かに一羽達に思いを馳せていた。

※後書き






ども、琥珀です

いきつけのお店とかにいくと、たまにサービスとかしてくれますよね。


それが定食屋とかだと、元が多めなのに更に盛り付けてくれて…

いやぁ…少食の私にはありがた迷わk…


いつも美味しいご飯ありがとうございますいきつけの定食屋さん!


本日もありがとうございました!

次回の更新は月曜日の朝8時ごろを予定しています。

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