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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
1章 ー朝陽覚醒編ー
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第十二星:悔恨

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかるが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至っておらず、報告官を務めていたが、戦闘補具を与えられ無理矢理実戦へ。しかし、その代償はでかく…?


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き…


樹神 三咲 (22)

 千葉支部所属。夜宵の率いる『輝く戦士(グリッター)』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。メガネがトレンドマーク。


塚間義一(35)

千葉根拠地における指揮官で階級は少佐。『グリッター』に対する差別意識が強く、彼女達を平気や道具のように思い扱っている。特攻をしろと命じたところに、大和が現れた。

 朝陽が目の前の出来事全てをを理解するのに、数十秒時間を要した。


 初めは眩いばかりの閃光。


 目の前に立っていた脅威(メナス)にだけ集中していたために、真横から接近していたメナスに気が付くことが出来なかったのだ。


 それがレーザーだと気が付く前に、目の前が真っ暗になった。


 意識が飛んでしまったのかと思ったが、それは朝陽(じぶん)を中心に黒い影が包み込んでいるからだということに気が付いた。



「朝陽っ!!」



 ここまでの展開に、数秒はかからなかっただろう。


 しかし朝陽は今、目の前で何が起こったのかを、その声で理解することが出来た。


 僅かな衝撃と甲高い音が鳴り響く。


 自分に覆い被さった人物とともにその衝撃波で吹き飛ばされながら、朝陽は海上に倒れこんだ。


 すぐさま体勢を立て直した朝陽は、自分が抱え込んでいる人物の姿を見て息を飲む。



「お、お姉ちゃん!!」



 夜宵が、朝陽を庇うようにして覆い被さっていたのだ。


 その傷は思わず目を背けたくなるような酷さだった。


 背中の衣服は全て燃え尽き、皮膚は黒く焼け焦げ、至る所が発赤化していた。


 そして高熱に当てられた背中からは、今も焼けている音が発せられており、想像を絶する痛みが夜宵を襲っているだろう。



「なんで…どうして…お姉ちゃんの『闇夜の月輪(グリット)』ならメナスのレーザーくらい吸収して…」



 そこで朝陽は、自分の周りに包み込むようにして夜宵の闇があることに気が付く。



「もしかして…お姉ちゃん私に…」



 自分を庇ってケガをさせてしまった事に気が付き、朝陽は意気消沈する。


 動く様子のない朝陽達を好機と見たメナスは、躊躇なく朝陽に襲い掛かる。


 しかし、その攻撃が届くより前に、駆け付けた三咲達の攻撃が割って入った。



「隊長!!」



 他のメンバーが攻撃している間に、三咲が夜宵のもとに駆けつけ状態を確認する。


 しかし、そのあまりに惨さに、思わず三咲も顔を顰めてしまう。



「み、三咲さ…ご、ごめんな…私ただ…」



 涙をボロボロと零しながら謝る朝陽に、しかし三咲は耳を傾ける余裕はなかった。



『夜宵君の状態は?』



 状況をいち早く察した大和は、三咲に夜宵の状態を尋ねる。



「傷が酷過ぎます…手元にある医療キッドでどうにかなるケガじゃない…」



 レーザーをほぼ直に受けた夜宵の背中は今も高熱に当てられ、焼け焦げながら火傷を悪化させてる。


 不幸中の幸いというべきか夜宵は意識を失っている為、痛みを感じてはいないが、一刻も早い処置が必要なのは明白である。



『…現時点での一点突破は可能かい?』



 大和の指示を受け、三咲はあたりを見渡し、そして見えないながらも首を横に振った。



「無理です…陣形も崩れていて各個撃破の状況にまで追い詰められています…数でも劣っていますし、これでは、もう…」



 いつも気丈で夜宵を支えてきた三咲らしからぬ、暗く諦めに満ちた表情を浮かべていた。


 そしてゆっくりと顔を俯かせ…



『諦めちゃいけない。顔を上げるんだ』



 大和の言葉で三咲はゆっくりと顔を上げた。


 そして大和は続けてその場にいる『グリッター』全員に向けて言葉を放った。



『君達はなんのために戦っている?勝つためか?メナスを倒すためか?違うだろう?君達は()()()()()()()()()()()()いるんだろう?』



 それは、夜宵達が常に出撃前に唱えていた…いや、最初に出現した『グリッター』が告げたと言われている言葉だった。


 この言葉に何度も支えられ、何度も奮い立たされ、夜宵達は戦ってきた、生きるために。



『ここで諦めたらそれこそ待っているのは死だけだ!絶望の淵に立っている今だからこそ立ち向かうときなんだ!目の前の死から、絶望から!抗って立ち向かって見せろ!』



 朝陽と違って、三咲達が大和の声を聞くのは初めてだ。


 にも関わらず、何故か三咲達の心は強い安堵と、勇気が与えられている気がした。


 上っ面だけの言葉ではない、大和が本気で言っているからこそ、三咲達の心に直接響いていた。


 そしてそれは、夜宵とて例外ではない。



「そう…よ皆…」

「…!!隊長!!」



 その声が届いたのか、夜宵は朦朧としながらも意識を取り戻し、か細い声で答える。



「今までだって…何度も、窮地を乗り越えて…きたじゃない…」



 意識を取り戻した夜宵には、想像すらしたくない激痛が全身を襲っているはずだ。


 しかし、言葉がきれきれになりながらも、力強く三咲達の心に発破をかけていた。



「皆でなら乗り越えられる…今日だって…そう、私達は戦いに行くんじゃない…!」



 夜宵の声は全員に行き届き、目に力を取り戻させた。



「「「生きるために、立ち向かう!!」」」



 その言葉を発するのと同時に、三咲は近くにいた仲間を呼び集める。



「ポイントを決めての合流は不可能です。私達が起点となって移動し、バラバラに散ったメンバーを一人一人回収していきます!!包囲網を敷いていた椿さん達は私達を見つけ少しずつ移動してください!!」

『ひと塊になって量より質で押すわけね。了解~』



 詳細を伝えずとも、メンバーにはその意図が理解できていた。


 それまでバラバラに動いていた『グリッター』達の動きにも統率されたものが戻っていった。



『三咲君。ボク達は君たちが合流している間に脱出に向けた最善のルートを導き出す。その間旋回運動を繰り返して攻撃を掻い潜り、時間を稼いでくれ』

「了解しました!!」



 最早微塵の躊躇いも無く、三咲は大和の指示に従っていく。


 そして全員が突破口を創り出すために、もてる力すべてを振り絞って戦いだした。


 ただ一人、呆然とした様子のまま動かない朝陽を除いて…



「私のせいだ…私が無茶な戦いをしたからお姉ちゃんが…」



 朝陽は涙をボロボロ零しながら、自分の耳元でで苦しそうに呻く夜宵を抱きしめていた。


 自責の念にかられ、心身ともにその場から動くことさえ出来なかった。



「ごめんなさい…ごめんなさい!!」



 ただただ泣きじゃくる朝陽。


 そんな朝陽に、夜宵は弱った体に鞭を打ち、震えながら腕をあげ、弱々しくも優しく朝陽の頬を撫でた。



「朝陽が謝ることなんて…何もないよ…」

「お姉ちゃ…でも…私止められたのに…邪魔者になるって言われてたのに…それなのに…!!」

「謝らなくちゃいけないのは…私の方よ朝陽…」



 夜宵は痛みを堪え、ゆっくりと朝陽の身体から離れ、真っ直ぐ目を見て話す。



「あなたが陰に隠れてどれだけ努力をしていたのか…あなたが力に目覚めずどれだけ苦しんでいたのか…そんなこと…気付いていたのに、分かった気になって、あなたを傷つけるようなことを言っちゃった…ごめんね朝陽…」

「ち、ちが…何も分かってなかったのは私の方で…一人で無茶をして、お姉ちゃんにもけがをさせて…私最低だよ…」



 再び涙を溢す朝陽。その涙を、夜宵は優しく拭う。そして、力強く朝陽の手を握った。



「泣かないで朝陽。お姉ちゃん、本当は嬉しかったんだよ。朝陽と一緒に戦えて、朝陽が助けに来てくれて」

「…え?」

「でも、あの時私は、あなたが傷つくの恐れた…喜びより…も、不安な気持ちを優先してしまった…だからあんなことを言っちゃた…んだ…でも、ね…」



 ズルズル…と、再び夜宵の腕がずれ落ち、力なく朝陽の身体へと体重を預けていく。



「お、お姉ちゃん…?お姉ちゃん!!」

「立派…だったよ…朝陽は……もう……立派な…グリ…ッター………」



 夜宵は再び意識を失った。


 先程よりも呼吸は浅く、弱々しい。それでも、力強く握った朝陽の手だけは放さなかった。



「う…あぁ…ああああああああああ!!!!」



 自分への怒り、憎しみ、後悔、そして悲しみ。


 様々な感情が朝陽の心の中で蠢き合い、心の器を壊していった。


 泣いているのか、怒っているのか、笑っているのか、最早朝陽本人にも分からなかった。


 このままメナスによって消滅させられたい、そんな考えさえ思い付いていた。



『斑鳩 朝陽君』



 そんな彼女を、一声で現実に戻したのは、以前に聞いた大和の声だった。



「この…声…前に根拠地で…確か国舘 大和さん…?」



 先程までも何度も耳にしていた筈だが、ひどく動揺していた朝陽に耳には届いていなかったのだろう。



『そう、覚えてくれていたんだね』



 あの時と同じ、大和の心は朝陽の心を直接響かせていた。


 今は静かで落ち着かせるような口調で、朝陽の気を静めていく。



『君が戦場に出ているとは正直思っていなかった。君は()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 それは、夜宵からも聞いた言葉だった。しかし、朝陽はこの部分に違和感を感じていた。



「それは違います…私は戦うことを望んでいた…メナスと戦うための『グリット』を求めていた…だから戦闘補具(バトル・マシナリー)を使ってまで戦おうとしたんです…」



 朝陽の声には覇気がない。ただ小さく、それでいて自虐的に言葉を溢すだけだ。



「結果がこれですよ…大した戦果も挙げられず、それだけじゃなくお姉ちゃんを…」



 朝陽の瞳からはもう涙が出ない。代わりに、乾いた笑みを浮かべ、心を沈ませる。



『それはそうだ。それは君自身が望んだ力じゃないんだからね』



 その沈んだ心を、大和は強引に引き上げる。



「またそれですか…では貴方には分かるのですか!?私が、一体何を望んでいたのかが!!」

()()()()()()()()()()



 その瞬間、朝陽の沈んでいた心に一気に怒りの火が灯る。



「ふざけ……!!」

『ボクが分かるのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということだけだ』



 遮るようにして伝えられた言葉に、朝陽の頭は混乱していく。


 大和が一体何を伝えたいのか、何を理解させたいのかが一向に理解できなかった。



『なら、言葉を変えようか』



 しかし、次の大和の言葉で、朝陽は我に返る。



『【こころ】を持つ君に、この問い(ことば)を届けよう、斑鳩 朝陽君。()()()()()()()()()()()()()()()

※ここから先は作者の後書きです。興味のない方は読み飛ばして下さいませ





ども、琥珀にございます!!


本日も【Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―】をお読みくださりありがとうございます!!


さぁ再び現れました大和くん!!大物感出しての登場です(まぁ一応大筋の主人公だからね)!!


土日明けの更新にも関わらず、投稿されるのを待って頂けた読者の皆様本当にありがとうございます!!

次回の更新は、明後日水曜日になりますので宜しくお願いします!!

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