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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
6章 ー東京最高本部編ー
129/481

第124星:東京最高本部(※7/25後書き追記)

国館 飛鳥(18)

明るく笑顔を絶やさない天真爛漫な大和の実妹。最高本部の『グリッター』であり、最高司令官である護里直属の戦士でもある。その正体は日本に8人しか存在しない『グリッター』の称号である、最年少の『シュヴァリエ』である。


唯我 天城(17)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。将来を有望視される育成組織に所属し、教官である一羽にもその才能を認められている。同期の飛鳥が最高峰の『シュヴァリエ』に、後から入った大和が司令官に着任していることから、怒りを抱いている。


スフィア・フォート(18)

東京本部に所属する見習い『グリッター』。『グリット』に関しては不鮮明な部分が多いものの、勤勉さと発想力を買われる。礼儀正しく生真面目。飛鳥と大和の兄妹の凄さに憧れている。同期の天城とは幼馴染で良く気にかけている。


射手島 一羽(27)

東京本部に所属する一等星『グリッター』。実力とカリスマ、豊富な経験を買われ、飛鳥、天城、スフィアの3人の指導教官となる。豪快でガサツな言動を取るが、実際には天城やスフィアの細かな機微に気付きケアする教官の鏡。

ーーーーー東京・最高本部



「それでねそれでね!絶対的ピンチのタイミングで、お兄ちゃんが颯爽と現れてね!!」

「はい!!」

「…おい」

「的確な指示で大逆転したんだよ!!」

「流石は大和さんです!!」

「おい!!」



 本部にある一室で、3人の人物が会話をしていた。楽しく嬉しそうに語るのは国舘 飛鳥。


 先日、千葉根拠地から帰還した飛鳥は先日の体験をいち早く語るべく、この場所へと訪れていた。


 その話を興味津々に聞いているのは、スフィア・フォート。鼻息を荒くして飛鳥の話…と言うより大和の活躍を聞いていた。


 それを鬱陶しそうにしていたのが唯我 天城。


 ただでさえ苦手としている大和の話を聞かされ、更に訓練中であったことも加わって、相当に苛立っていた。



「なぁによ天城〜。いま良いところなのにさぁ〜」

「ここで話してんじゃねぇよ!!他所行け他所!!そもそもなんでテメェがここにいんだ!!」



 トレーニングルームに用意された長椅子に横になり、足をパタパタさせている飛鳥を、天城が怒鳴りつける。



「え〜だってボク今日オフで暇なんだもん」

「理由になってねぇよ。暇だったらなんでここに来んだよ」

「もぉ、別にいいじゃない天城。こうして『シュヴァリエ』になっても話に来てくれるなんて、嬉しいじゃない」



 スフィアは基本的に誰に対しても敬語で話すが、同期である天城と飛鳥に関しては、比較的親しい口調で話していた。



「お前が休みでも、俺らは訓練なんだよ。邪魔だから出てけ」

「もぅ!!いい加減にしなさいよ天城!!」

「い〜のい〜のスフィア。確かに天城が正しいよ。訓練中に来るのは確かに邪魔だったよね」



 そう言うと飛鳥は寝転んだ姿勢から足を上に伸ばし、そのまま下ろすときの遠心力を利用して立ち上がった。



「ごめんね二人とも!また違うから時に来るからさ!」



 そう言って笑う飛鳥の顔は、どこか無理に使っているような表情で、スフィアは心がズクンと痛む。


 天城も流石に言いすぎたと感じたのか、バツの悪そうな顔をしていたが、その性格から何も言い出せずにいた。


 そして飛鳥が部屋を後にしようとした瞬間…



「おぅ!飛鳥じゃねぇか!!」



 休憩室に一人の女性が入ってきた。天城とスフィアの専任教官、射手島 一羽(いてじま かずは)だ。


 相も変わらず豪快そうな女性というイメージが強く、染め上げた長い金髪を不恰好に両サイドで束ね、本来白を基調とした軍服も黒くコーティングしたモノを着こなしていた。



「あ、射手島さん!」



 当然、天城達と同期である飛鳥にとっても元教官であり、周知の仲である。



「なんだお前、今日は休みか?」

「うん!この間ちょっと遠出してきたから、護里さんがお休みくれたんだ!!」



 一羽は「そうかそうか」と頷き、チラリと教え子二人を見て、「ふむ…」と考え込む。



「…?どうしたの射手島さん」

「せっかくだ二人とも。かの『シュヴァリエ』様と組み手でもしてみるか?」

「「えっ!?」」

「…!」



 飛鳥とスフィアの二人は驚いた表情を浮かべ、天城は僅かに目を細めて話の続きを待った。



「こいつら間違いなくセンスはあるんだけどよ。どうもいま伸び悩んでてな。お前と組み手したら良い刺激になるんじゃないかと思ってよ。もし時間あるなら受けちゃくれねぇか?」

「ボクは全然良いけど…」

「んじゃあ決まりだな!!待ってな、ちっとばっかし大きな訓練室借りてくるからよ!!」



 そう言うと一羽は慌ただしく部屋を後にし、残された飛鳥とスフィアは呆然する。


 ただ一人、天城だけはこの状況を喜んでいた。



「(これはチャンスだ…この組み手で飛鳥(コイツ)を倒せば、俺の価値は一気に上がる。上手く行けば一等星までいけるかもしれないな)」



 天城は心の中でほくそ笑み、そしてモチベーションを上げていた。






●●●






「よし!んじゃあいっちょ始めっとすっかね!!どっちからいく?」

「あ、射手島さん、組み手とはいえちゃんとルールは決めとこうよ。際限なくやってお互いに怪我でもしたら支障が出るだろうし」

「…何というか、そういう抜け目のなさをみると、本当にアイツの妹だなってのを理解させられるよ…」



 遠方の地で誰かがくしゃみする気配を感じながら、一羽は飛鳥の言う通りざっくらとしたルールを決めていく。


 ルールは全部で四つ。



・勝負の判定は審判である射手島が判断する

・制限時間は5分

・勝敗が決してからの攻撃は一切なし

・『グリット』の使用は可。但し必要以上の攻撃は禁止



「まぁこんなもんかね。どうだ飛鳥」

「うん、大丈夫だと思う!」

「うし、じゃあ改めて…そうだな、先にスフィアから行っとくか!」

「え、えぇ!!わ、私からですか!?」



 自分が先に呼ばれるとは思っていなかったのか、スフィアは驚いた声を上げる。



「どうせどっちからやるなんて聞いたって、お前は手を上げねぇだろ。だから指名した。ほら、こい」



 スフィアは「うぅ〜」と嘆きながらもしっかり立ち上がり、飛鳥の待つ中央へと歩み寄ってくる。


 恐らくこう言った無茶振りは日常茶飯事なのだろう、と飛鳥は思った。



「あの…それじゃあ飛鳥、宜しくお願いします」

「うん!頑張ろう!!」

「用意はいいな?そんじゃあ…始め!!」



 一羽は声をあげて開始の合図を出すが、両者の立ち上がりは静かであった。


 しかし、その内情は全く違う。


 スフィアの様子を伺うために、敢えて後手に回ろうとしている飛鳥に対し、ただ立っているだけのように見えるのに圧倒的存在感を放つ飛鳥に気圧され、なかなかしかけられないスフィア。


 そもそもの戦闘スタイルとして、スフィアは積極的に仕掛けるタイプではない。『グリット』の特性上、攻撃よりもサポートの方が向いているのだ。


 飛鳥も仕掛けてこないのは何か理由があるのだと気付き、自ら仕掛けることに決める。



「そっちからこないなら…ボクから行くよ!!」



 飛鳥は軽く地面を蹴った…だけであるにも関わらず、爆発的な加速をしたスフィアは一瞬その姿を見失う。



「こっちだよ!!」



 スフィアが飛鳥の気配を感じ取ったのと、後方から声がしたのはほぼ同時であった。


 飛鳥は拳を作り、スフィアの背後から仕掛ける。しかし……



ーーーーーガンッ!!!!



「ッ!!」



 飛鳥の拳がスフィアに直撃する直前、目の前に白い十字架のが現れ、飛鳥の拳を防ぐ。



「ハァ!!」



 その一瞬の硬直を見逃さず、スフィアは反撃に出るが、飛鳥は再び地面を蹴り、宙返りをしながらこれをかわし、スフィアから距離を取った。



「すご〜い!!スフィア、『グリット』の展開がめちゃくちゃ早くなったね!!ビックリしちゃった」

「…とかいって、しっかりとかわしてるんですから、強さの桁が違いますね」



 褒めたつもりが逆に褒められ、飛鳥はニヒッ!と笑った。


 スフィアの『白き十字盾(ホワイト・クリス)』は、自身の『エナジー』を固定し実体化する能力。


 と、言われているが、実際はその説明ほど広義な意味合いは持たず、『グリット』を発動することで具現化するのは、謎の白い十字架(の盾)のみ。


 初めて『グリット』に覚醒してから、何度も別のものの具現化を試みたが、今日にいたるまで成功はしていない。


 加えて、具現化できるのは一回のみ。自身の意思で消したあとは再度具現化できるが、それ以外に効果は持たない。


 強いて長所をあげるのであれば、具現化された盾は非常に強固で、並いる『グリッター』の面々だけでなく、教官である一羽でさえ、傷一つつけることは叶わなかった。



「(不意打ちは失敗。身体能力でもとても叶わないから、できるのはカウンター攻撃だけ…飛鳥さんが攻めてきた時が最大のチャンス!)」



 その盾に隠れ、スフィアは好機を伺っていた。元々防御に力を入れてきたスフィアの守りは鉄壁で、飛鳥もなかなか動かないでいた。



「スゥ〜…ハァ〜…スゥ〜…」

「……?」



 と、スフィアは飛鳥がおかしい動きをしていることに気がつく。


 深呼吸に合わせて、妙なタイミングで身体を揺らしている。


 違和感を感じさせる動きに意識を取られながらも、スフィアは飛鳥の動きに注視していた。



「…音衝波!!」

「…えっ!?〜〜〜〜〜ッ!?」



ーーーーード……ガアアアアァァァン



 その刹那。


 誰もが飛鳥の姿を見失った。距離は5m以上は離れていた筈なのに、次に飛鳥を見た瞬間、彼女は目の前に立っていた。


 その加速は凄まじく、身体全体を盾に当てられたスフィアは勢いを殺す間も無く後方へ吹き飛び、壁に激突した。



「うっ……ま、まだ…あ…」



 それでも勇んで立ち上がろうとするスフィアの目の前には、飛鳥の拳が目前に突きつけられていた。



「勝負あり!だな、スフィア」



 審判である一羽が指示を出し、飛鳥とスフィアの組み手は、飛鳥の勝利で幕を下ろした。






●●●






「飛鳥さん凄かったです!!今のはどうやったんですか?」

「んとね、不規則な動きを繰り返して相手の認識を少しずつずらすでしょ。んで、相手が瞬きとかで一瞬意識が外れた隙を見計らって一気に距離を詰めるの。ただでさえ動きの認識をずらされてるから、相手からしたら一気に距離を詰められたように感じるんだよね」



 高度過ぎて参考にならないと思いながらも、生真面目なスフィアはそれをメモに取っていた。


 それを傍目に見ていた天城は、客観的に見た上で汗を垂らしていた。



「(認識をずらしたから一気に距離を詰めたように感じる?バカ言え。そもそもの加速度がバカみてぇに早いんだよ。室内だから分かりづらいが、外でやったらソニックブームが出てもおかしく無い速度だったぞ)」



 改めて、『飛鳥(シュヴァリエ)』という桁違いの『グリッター』を目の当たりにした天城は、しかし武者震いで震えていた。



「(だが思っていたよりじゃない。常に最大限の警戒と細心の注意を払っていれば、俺なら捉えられる…油断しているうちに、アイツを叩きのめせば俺の勝ちだ)」



 鋭い目つきを飛鳥に向け妖しく笑う天城を、一羽はどこか呆れたようにため息を吐きながら見ていた。


※本日後書きはお休みさせていただきます


更新曜日を直近間違えておりました。

次回の更新は月曜日になりますので宜しくお願いします。

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