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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
5章 ー海外交流編ー
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第123星:事後報告

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。『グリッター』とのぶつかり合いを経て信頼を勝ち得た。


早乙女 護里

『軍』における『グリッター』最高権力、最高司令官の女性。『グリッター』を仲間以上、家族のように思っており、子供達と呼ぶ。日本だけに留まらず国境を越えて人格者として知られ、一目置かれている、『グリッター』の母。

『…と、言うわけで、ヴィルヴァーラ(あの子)は無事帰国し、裏で手を引いてたダラスは()()。人質にとられていたあの子の家族も無事保護されたそうよ』

「…そうですか。それは何よりです。安心しました」



 ヴィルヴァーラが帰国してから2日後。大和は執務室で護里からの連絡を受けやり取りをしていた。



『彼女も感謝していたそうよ。改めて、お礼がしたいって』

「まぁそれに関しては俺じゃなく咲夜に求めるべきでしょう。今回の総指揮は彼女が執ったんですから」

『…ふふ、指揮を咲夜ちゃんに任せて、裏では今回の交流に裏が無いか働き尽くめだったのは誰かしら?』

「…いったいどこまで把握しているんですか、護里さんは…」



 大和の言葉に対し、護里は『フフフッ』と妖艶に微笑むだけであった。



『それから、ビクトリカちゃんからは謝罪の言葉が届いてるわ。【私の優柔不断な対応が今回の件を招いてごめんなさい】、ですって』

「…優柔不断、ね」



 大和は伝えられたメッセージに対し、苦笑いを浮かべる。



『フフッ、貴方も同じことを考えてるかしら?』



 護里に内心を見透かしたような笑みを浮かべられ、大和はやや居心地の悪そうな表情を見せる。



「…確かに、今回の騒動でこっちは少しゴタゴタしたのは確かですが、それ以上に辛かったのはヴィルヴァーラ君でしょう。結果的にビクトリカ皇帝は彼女を救った。ならこれ以上両者を責めるのは不毛だ」

『そうね。それに、今回の件は彼女なりに最後まで人を信じたいと言う想いが故に起きたこと。結果をみればそれは裏切られてしまったけれど、ビクトリカちゃんは新しい絆を見出した。今回の騒動は、彼女からみてそれで十分な採算を得た、と感じてるんじゃないかしら』



 大和は椅子の背もたれに寄りかかり、息を吐く。



「…まぁなんであれ、終わり良ければ全てよし。一先ず今回の派遣()()は上手くいったって感じでしょうかね」

『フフッ、そうね。国の繋がりも出来たし、個人間での友情も紡げた。大成功じゃないかしら?』



 護里の回答に大和も笑みを浮かべるが、直ぐに別のことに思い至り、パソコンを弄りながら尋ねる。



「北海道にはイタリア、東北にはドイツ、中部にはスペイン、関西・中国・四国合同でイギリス、そして九州にはフランス…今回ここに来たロシアもそうですが、どこも『先進国』と有数の『軍』所有国ばかりだ。どこの国とも平等に親しくしている護里さんらしくないんじゃないですか?」

『…貴方もよく見てるわねぇ』



 成長を感慨深く思いつつも、自身の目論見まで見透かされつつあることに驚きながら、護里はゆっくりと話し出す。



『…実は最近、【軍】内部に怪しい動きがあってね。今回はその様子を見る意図もあったの』

「…成る程。以前ボクがお話ししたものと同じでしょうか」

『それは分からないわ。ただ、本来外部が知らないはずの情報が流されていたり、【軍】が独自に開発しているはずの【戦闘補具(バトル・マシナリー)】が外部で発見されたり、ね』

「それは…穏やかじゃないですね」



 大和の言葉に、護里はその通りと頷く。



『ただ、今回の騒動で起きたヴィルヴァーラちゃんの件については、完全に別件の問題ね。【軍】のこととは関係は無さそう。ヴィルヴァーラちゃんの身が安全になっとことに加えて、ロシアの潔癖を証明することにもなったわ』

「…まぁ確かに。護里さんでもなかなか見出せない裏の動きを、ボクが見抜けたわけですから、逆を言えばその程度の工作しか出来なかった。期せずしてロシアは『軍』としての力量を見せてしまったわけですか」



 護里はモニター越しに頷き続ける。



『そもそもロシアはビクトリカちゃんをはじめ、歴代の皇帝様の力が突出して高く、それで成り立っていた節があるわ。最近は【軍】としての組織力も飛躍してきているけれど、まだそこに関しては発展途上、といったところかしら。ビクトリカちゃんとは周知の仲だし、そもそもそこまで疑っていたわけじゃないわ』



 今回のヴィルヴァーラの状況を独自の情報網から掴んでいた大和は、その経緯を護里に伝えていた。


 そこから護里はビクトリカに連絡し、このような結果に繋がったのである。


 ビクトリカも暗躍する動きがあることには気が付いていたが、お人好しな性格から深入りしようとは思っていなかった。


 しかし、ヴィルヴァーラの家族が危機に晒されていると知ってからは、迷いはなく早かった。


 一早い家族の見守りと、ダラスへの警戒。そしてヴィルヴァーラの保護と、皇帝自ら動く程手厚く動き出していたのだ。



「となると他の諸外国に警戒を?」

『そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるわ』



 珍しく曖昧な返事をする護里に、大和は訝しげな表情を浮かべる。



『残念ながらアテがあるわけじゃないの。諸外国の中でも先進国を集めたのは、日本の【軍】を出し抜ける力があるから、という程度のものだしね』

「…珍しいですね。護里さんならもっと手際良く収集できると思うんですが…」



 ここでも珍しく深いため息を溢し、護里は声のトーンを下げて話す。



『真面目な話、誰が味方で誰が内通者(てき)なのか判断しかねてるの。誰もが私にとって家族ではあるけれど、もしかしたら向こうにとってはそうじゃないかも知らない…子ども達を疑うなんてこと、私はしたくないんだけどね』



 誰もを愛し、誰をも信じることを行動であらわしてきた護里にとって、今の状況は相当に辛いものだろう。


 それでも、護里は他人に弱いところを見せてこなかった。いま大和に見せたのは、ある意味で信頼の証と言えるだろう。



「…大丈夫ですよ護里さん」

『ん?』

「貴方が培い、育て上げてきた今の『軍』は…いえ、『グリッター』は、絶対に貴方を裏切らない。仮に裏で手引きしてる人物がいたとしても、貴方を慕う人達が手を取って貴方を守る。護里さん一人が背負うことないんですよ」



 大和の言葉に驚いた表情を浮かべ、それから護里はゆっくりと柔和笑みを浮かべた。



『ほんと…立派になったわね、大和君』

「…多くの人に育てられ、支えられてきましたから。勿論、護里さんにも」

『それを糧にして成長したのは貴方自身よ大和君。過度に恩義を感じちゃダメ。自分の力にしてきたことは自信を持ちなさい』

「…はい」



 護里と話をしていると、本当の母親のように感じてしまう大和は、柄にもなく照れた笑いを浮かべる。



「それで護里さん、こうして直接連絡をしてきたということは、何か別の仕事があるということですよね?」

『…そういう勘の良いところはお母さん複雑だわぁ』



 手を頬に当てて困った顔を浮かべる護里に、大和は苦笑いを浮かべることしか出来ない。



『まぁその通りよ。貴方に…というか貴方の根拠地に依頼したいことがあるの』

「えぇ、勿論承りますよ」

『…少しは躊躇っても良いのよ?貴方は根拠地の指揮官だけじゃなく、総司令官の任もあって大変なんだから…』



 自分の身を案じてくれる護里に笑顔を向けながら、大和はそれでも大丈夫だと返す。



「ボク一人が頑張っているわけじゃありませんから。関東本部には桐恵君がいるし、ここには咲夜がいます。何かあればちゃんと頼りなる仲間がいますから」

『そぉんなこといって、大事なところはいつも一人でこなそうとするんだから。私は見抜いてますからね』



 拗ねるようにしながらと、しっかりと注意され、大和は「敵わないな…」と呟いた。



「それで、任務の内容は?」

『うん。最近、【アウトロー】の動きが活発になっているのは聞いてるかしら?』

「えぇ、小耳程度には」

『【アウトロー】は本来、【軍】に反発する個人を指すのだけれど、ここ最近、その個々人が手を組むようになっているらしいの』

「…それはまた…厄介な話ですね」



 反乱分子、といえばまるで手に取るに足らないミクロの存在のように思えるが、実際はその逆である。


 『アウトロー』は組織名ではなく、『グリット』を所有する個人が、危険な思想を持っていることで指定される人物をを指す。


 その実力者の中には、『軍』の一等星に匹敵する者も存在と言われ、ましてやその実力者同士が手を組むとなれば、それは由々しき事態なのである。



『それで、その【アウトロー】に関する情報が、貴方達千葉根拠地近辺から出ているの』

「…成る程。それなら確かにこれはボク達が適任ですね。承りました。まずはこっちでも情報を集めて、人員を割いてみます」

『お願いね。…それから、これを言うのは躊躇っていたのだけど…』



 通信を切る前に、護里は尚も躊躇った様子で口籠もり、やがてゆっくりと口を開いた。



『私の得た情報の中に、こんなものもあったわ。《根拠地内に情報を流している者がいる可能性有り》…と』

「……それも、穏やかじゃないですね」



 大和は最後だけ表情を険しくし、護里との通信を終えた。


 椅子をギィと鳴らし、大和は息を吐く。



「ふぅ…なんだか護里さんの心境がハッキリと理解できた気分だよ…」

※後書き






ども、琥珀です。

危うく1話飛ばして投稿するところでした…

まぁ飛ばしてもそれほど影響のない話ではあるんですが、やっぱり次の話の伏線みたいな、ね笑


これにて派遣交流回は終了です。

さて、次のお話はどんな内容になるかなぁ〜


本日もお読みいただきありがとうございました!

次回は金曜日更新を予定しています。

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