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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
5章 ー海外交流編ー
123/481

第118星:お出かけ

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。『グリッター』とのぶつかり合いを経て信頼を勝ち得た。


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。指揮官として司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)四等星

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。


【朝陽小隊】

譲羽 梓月(23) 四等星

 冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。


久留 華 (22)四等星

 おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。


曲山 奏(20)四等星

明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。


ヴィルヴァーラ・スビルコフ (20) 二等星

ロシアスルーツク支部所属。海外派遣交流により日本の千葉根拠地にやってきたロシアの『グリッター』。根拠地の『グリッター』と少しずつ交友を深めていたが…?

 ヴィルヴァーラ(ロシア)との交流期間の最終日。


 この日ヴィルヴァーラは、大和の命令で約束の時刻に根拠地の入り口門に来ていた。


 最終日であることから、何か特別な任務があると思っていたヴィルヴァーラであったが…



「えっ…と?」

「あ、ヴィルヴァーラさんが来ましたよ!!」



 そこで待っていたのは大和ではなく、朝陽とその小隊の面々であった。



「これは、一体…というか貴方達、その格好は…」



 朝陽達は普段の『軍』服ではなく、年頃相応の私服をそれぞれ着こなしていた。


 朝陽は明るい性格に合ったラフでアクティブさを意識した、カジュアルな服装を、クルリと一回転しヴィルヴァーラに見せつつ答える。



「あ、私達今日お休みをいただけたんです!だから私服を着てるんですよ」

「まぁ本当はぁ、朝陽ちゃんの傷を考慮してぇ、司令官がお休みにしてくれたんだけどねぇ」



 フリフリした服を着こなす華の説明に、朝陽は「いやぁ〜…」と苦笑いを浮かべる。


 一先ず朝陽達の格好には納得したヴィルヴァーラであったが、別の疑問が思い浮かぶ。



「それで、貴方達は何故ここに?口振からするに、私を待っていたようだけど…」

「おや?司令官から何も聞いていませんか?」



 逆に驚いた表情を浮かべ尋ねてきたのは可愛さよりもカッコ良さが目立つ服装の奏。


 オフの日はバイクを嗜む彼女らしい私服であった。



「本日は交流最終日と言うこともありまして、司令官より、ヴィルヴァーラさんに()()()()()()()()()()と言伝を預かっているんです」



 ヴィルヴァーラの疑問に答えたのは、コンサバ系の清潔感のあるジャッケット・パンツを着こなす梓月であった。



「日本を…案内?」

「って言っても、案内できるのは根拠地近くの地域だけなんですけどね」



 朝陽は頰を掻きながら苦笑いを浮かべる。



「でも、司令官はヴィルヴァーラさんに『軍』だけじゃなくて日本の文化を知ってもらいたいって仰ってました」

「司令官が…」



 そこでふと、ヴィルヴァーラは昨日の大和と咲夜が同じような話をしたいことを思い出す。



「(…あれは戯言だと思ってたわ…まさか本当に計画するだなんて…)」



 とはいえ、それが大和からの好意であることに気付かないほどヴィルヴァーラも馬鹿ではない。


 例えありがた迷惑であっても、それを無碍にしようとは思わなかった。


 それに、ヴィルヴァーラ自身も最初の頃とは違い、日本そのものを知りたいと言う気持ちが芽生えていた。



「あの…ヴィルヴァーラさん、もしかしてご迷惑でしたか…ね?」



 朝陽が申し訳なさそうに顔を覗かせると、ヴィルヴァーラは思わず微笑んで首を振った。



「いいえ、そんなことない。司令官と貴方達のご厚意に甘えさせていただくわ」






●●●






 思い返してみれば、ヴィルヴァーラは日本に来てから任務以外で根拠地から出るのは初めてであった。


 特段出たかった想いがあったわけではない。日本そのものに興味は無かったし、そもそもここに訪れたのも任務のため。


 外界に興味を持って出歩くと言うのもおかしな話だ。


 それでも、今のヴィルヴァーラの内情は変わっていた。朝陽を始め、この根拠地の面々と出会い、戦ううちに、日本という国そのものを知りたいと思うようになっていった。


 朝陽達に返した言葉も、気遣いなどではなく、自身の本心を口に出していた。



「(の、だけれど…)」



 いま、ヴィルヴァーラは最初に訪れた場所で、早くも困惑していた。



「えと…アサヒ?ここは…」

「はい!衣服のショッピングモールです!!」



 聞かなくとも分かってはいたが、ヴィルヴァーラは引きつる表情を止めることができなかった。



「日本のことを知るのに、なぜここへ…?」

その格好(軍服)で移動してたら目立つじゃないですか!!観光を楽しむにはまず格好からです!!」

「…なら私の部屋にロシアの私服が…」

「日本に馴染むなら日本を感じてみましょう!!」

「うっ…圧がスゴイ…分かった、分かったからちょっと離れて!!」



 朝陽お得意のド直球発言に気圧され、ヴィルヴァーラは思わずその言葉を承認してしまう。



「はぁ…C волками(郷に) жить(入っては) по-волчьи(郷に) выть.(従え) …てことね…」

「え?何か言いました?」

「なにも。さぁとっとと服を買って観光に行きましょう」






●●●






「とは言ったけれどこれはないでしょう!!!!」



 試着室から勢いよく出てきたヴィルヴァーラは、顔を真っ赤にして朝陽達に抗議する。


 纏っていた服装は、肩から胸元にかけてカットされたオフショルダー型の白いシャツ、下は膝よりやや上までの丈となっているスカートで、可愛さを重視した着こなしとなっていた。



「え〜?でも可愛いと思いますよ?」

дурак(バカ)!!わ、私はこんなに露出した服はきれないわ!!というか今までの私を見てきて、どうやったらこの服装になるのよ!!」

「まぁまぁクフッ…朝陽さんの言う通りその服装もブフッ…似合ってますよ?」

「そこ!!笑いを隠しきれていないわよ!!と、兎に角これは却下よ!!やっぱり衣服は自分で選ぶわ!!」



 シャッ!!と勢いよくカーテンを閉めたヴィルヴァーラだったが、やがて少しだけ開き、顔を覗かせる。



「ねぇ…私の服がないのだけれど…?」

「軍服大きいので邪魔になるかなって思って私が持ってます」



 ピクピク…と顔を痙攣らせながら、ヴィルヴァーラはぎこちない笑みを浮かべて口を開く。



「あ…あ〜ありがとう。それじゃあちょっとそれに着替えるからそれをこっちに…」

「いやです。その服似合ってます」

「ヴ…」



 予想通り、朝陽はキラキラした笑顔でヴィルヴァーラのお願いを断る。


 圧倒的不利な状況下で、ヴィルヴァーラも何とか説得を試みる。


 しかし流石はヴィルヴァーラさえも説き伏せた朝陽。


 ヴィルヴァーラの必死の説得にも屈することなく、今着ている服とそれを着こなすヴィルヴァーラの魅力を語り続ける。


 次第にヴィルヴァーラの顔が赤く染まり上がり、やがて観念したかのようにガックリとうな垂れた。


 結局ヴィルヴァーラはこの服を購入。


 但し着るのは後日という約束を交わし、これとは別の依頼も購入したヴィルヴァーラであった。






●●●






 千葉根拠地の執務室。


 そこでは、司令官の任に戻った大和と、指揮官の咲夜がこれまで通り書類に目を通し、ペンを走らせていた。


 長い時間事務作業に囚われていた大和は、グッと一つ伸びをする。



「ん、ん〜!!行けど戻れど書類ばかり!!これも大切な業務とはいえ、流石に辛くなってくるね」

「これでも大分私が減らしているんですよ?感謝して欲しいくらいです」

「…なんだか関東本部(向こう)でも聞いたことのある返しだ…」



 表情にこそ出していなかったが、大和は息を一つこぼした。



「(…長距離の移動をこなして、向こうでもこちらでと働き詰め…加えて戻ってすぐに戦闘の指揮を執り、且つその対策会議も開かれて…確かに疲労は溜まりますね…)」



 思わず強く言い返していた咲夜であったが、普段は見せない疲労の色を隠し切れていない大和を心配する気持ちが強くなっていた。


 チラリ、と時計を確認すると、時刻は15時前。


 途中食事の休憩を挟んだが、それ以外はずっと働き詰めであったことを考えると、小休憩を挟むにはちょうど良い時間であった。



「それでは少し休憩を入れましょう。いまお茶をお入れしますね」

「ありがとう咲夜。でも無理はしないでくれよ?君も疲れてるだろう」



 咲夜は手際よくお茶の準備を進めつつ、微笑みを浮かべて答える。



「いいえ。私はこうして大和に尽くすことが休息であり、英気を養うことに繋がります。ですからお気になさらないでください」



 予め用意をしてあったのだろう。数分としないうちに大和の前に紅茶のカップが置かれる。



「ん?これは…」



 その隣には、砂糖とレモン、そして数種類のジャムが置かれていた。



「少し濃い目の紅茶です。そちらに砂糖とレモンをお好きにお混ぜください。ジャムは紅茶に混ぜず、お茶受けがわりにどうぞ」

「…あぁ成る程。俗に言う『ロシアンティー』だね」



 合点が言ったように頷くと、大和は用意された紅茶を一口飲み、ついでジャムを少量口に含む。


 その味を吟味し、いつものように「美味しい」とこぼした。


 咲夜は嬉しそうに微笑み浮かべながら小さく会釈し、この紅茶の意図を話し出す。



「これは、私が彼女と打ち解ける機会があった際に出そうと思っていたものです。もしかしたら、彼女と対面して話す機会を設けないといけないとも考えていましたので」

「…成る程ね」



 意図を察した大和だが、深くは追求せずもう一口紅茶を含む。



「…大和。私は正直まだ不安です。彼女自身は信頼に値すると私は判断しました。けれど、ロシアの内情に関しては、私は把握し切れていません。本当にこのままで良いのか…」



 今もヴィルヴァーラが手に握る千葉根拠地の…いや、日本の『軍事機密ファイル』。


 大和からの命があったとは言え、最終的な判断を下したのは咲夜であり、その情報が情報だけに、やはり迷っているようであった。



「…君が不安に思うのも当然だ。下手をすれば国との関係を揺るがしかねない情報だからね。勿論今回の件に関して君に責任を負わせることは一切しない。容認したのはボクの指示だからね」

「責任は私がいくらでも取ります!!けれど、私がお伝えしたいのはそう言うことではなく…」



 動揺し、感情が昂る咲夜に、大和は立ち上がって肩に手を乗せる。



「分かってる。君が気にしているのは、彼女がそこまでしなくてはならない状況下であること、そしてこの後の顛末のことだろう?」

「…はい。彼女が進んでこのようなことをする方ではありません。寧ろ、行為に及ばざるを得ない状況であることの方が深刻な問題なのです…ですから…!?」



 バッ、と顔を上げ訴える咲夜を、大和はソッと抱き寄せた。



「(どれだけ()()()()()()()()()()()()()、彼女の心はいつでも純粋で善良だ…それが故に時折脆く、砕けやすい…つい先日まで他人であった彼女を想い、冷静でいられなくなる程に…)」



 咲夜の過去を知る大和は、その心を沈め癒すために、咲夜を優しく包んでいた。



「(過去を背負う君に、指揮官という仕事は酷なのは分かってる…それでも過去を乗り越えるのは君自身の力でしかできない。それまで、ボクが君を支える)」

「あ、あのあのあのあの…大和?」



 時間にして数秒であったが、咲夜の頬は真っ赤に染め上げられていた。



「ん?落ち着いたかい?」

「い、いえあの余計に動揺してしまったというか興奮してしまったというか…」



 それでも、先程までの感情の昂りは大分落ち着き、大和の気遣いにも咲夜は気付いていた。



「…ありがとうございます、大和。もう大丈夫です」



 ソッと大和の手から離れた咲夜は、いつもの冷静さを取り戻していた。


 その表情に安堵した大和は、さらに咲夜を安堵させる話を口にする。



「君が心配するのもよくわかるよ。けれど、多分恐れていることにはならないと思うよ」

「…?それは、何故でしょうか」



 大和は椅子に座り直し、口に紅茶を運ぶ。それを飲み込んでから、小さく笑みを浮かべて答えた。



「護進さんが、()()()に相談してるから」

※筆者の後書きになります!






ども、琥珀です。

以前お伝えさせていただきました通り、来週の更新はお休みさせていただきます。


併せました腕を負傷してしまい、若干麻痺しております。回復の経過によっては、数週間お休みをいただく可能性があります。ご了承ください…


本日をお読みいただきありがとうございました!!

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― 新着の感想 ―
[一言] お体優先で、養生されて下さい~。 更新されない日は過去の話を読むことがあり、ふと護進さんが大和へ教え、咲耶が大和に教わり……。 あれ? 今度は夜宵へ教えることもできるのでは?? もともと…
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