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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
1章 ー朝陽覚醒編ー
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第十一星:罪状

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた謎の青年。纏っている服装から『軍』の将校であると思われるが正体は不明。優しい笑みを浮かべるなど心優しそうな青年。しかしてその正体は…


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。礼儀正しい言動をとる。大和と同じく謎が多く正体は不明。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至っておらず、現在は指揮官の報告官を務めている。戦えないことに引け目を感じている。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。根拠地にいる『グリッター』を束ねる部隊の隊長。責任感が強く、仲間たちから信頼されているが、妹の朝陽が絡むとポンコツ化する。


樹神 三咲 (22)

 千葉支部所属。夜宵の率いる『輝く戦士グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。


塚間義一(35)

千葉根拠地における指揮官で階級は少佐。『グリッター』に対する差別意識が強く、彼女達を平気や道具のように思い扱っている。

「き、貴様は……」



 執務室に突如として現れた青年に、義一は思わず立ち上がってしまう。


 これに対し、青年─国舘 大和─とその後ろで静かに佇む女性が悠々とした様子で立っていた。


 やがて後ろに立っていた女性が、圧のある冷たい瞳で義一を睨み付ける。



「余裕のない緊迫した状況であることは理解していますが…自分より()()()()()()を『貴様』呼ばわりですか、塚間少佐」



 眼光だけでなく、言葉にも凛とする圧を感じさせる女性の言葉に、義一は完全に臆していた。


 日頃の傲慢な態度は鳴りを潜め、ただ大人しくその言葉を聞き入れていた。


 緊張感が漂う執務室の中で、報告官として尋ねていた夕は、ただただオロオロしていた。


 そのことを察してか、大和は後ろに立つ女性に耳打ちする。



「咲夜、ちょっと圧が強すぎるよ。見てごらん、あの子あんなに怖がってるじゃないか」



 言われて咲耶(さくや)と呼ばれた女性ももその様子に気が付いたのか、すぐさま殺気を潜め、普段から出しているおしとやかな雰囲気へと戻す。



「す、すいません…少佐のあまりにも不遜な態度につい…」



 先程まで発していた殺気が嘘のように消え、義一はその圧から解放された。


 大和はそんな義一に目もくれず、夕の元へと歩み寄っていった。



「やぁ新島 夕くん。怖がらせてごめんよ」

「え…?あ、あの…どうして私の名前、知ってるんですか?」



 大和の柔和な笑みに緊張が解けたのか、夕はゆっくりと大和に返した。



「それはもちろん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。メンバー全員の顔と名前は憶えていて当然だろう?」



 「え…」と、夕が驚く前に声を出したのは義一だった。



「な、なにを言っているんですか特級殿?アナタが新しい指揮官…いや、司令官に?」

「その通りだ、塚間少佐」



 特級とは、正式な階級ではない。


 その名の通り、『軍』上層部より特別に与えられた階級であり、臨時的にではあるが大佐レベルの特権を持つことが出来る。


 本来、別の根拠地に出向く際や、国際的な立ち回りをする際に与えられるものであり、今回のような場面において与えられるモノではない。


 しかし、先日の訪問の際に、その特権が正式に与えられているものであることを、義一は知っていた。



「現時点を以て貴殿の指揮官としての任は解かれた。以降は関東支部総司令官から別途の指示があるまで関東本部にて待機せよ。これが命令だ」



 しかし、このあまりにも突然の宣告に、元々短気な義一は完全に冷静さを失う。



「ふ、ふざけるなクソガキが!!特級を与えられたからと上官気取りか!?」

「気取り、というか実際上官なんだけどね…」



 目の前で怒鳴り散らす義一に一切臆することなく、大和は飄々とした様子で答える。



「理由も無く指揮官の任を解くだぁ!?いくら特権を与えられたかれってそんな横暴が許されてたまるか!!」

「ふむ、まぁ正論だね。君じゃなくとも誰であれ怒るのも当然だ。では、その理由を提示するとしようか」

「……あ?」



 大和の言葉を聞いて固まる義一。


 大和は胸元から数枚の紙を取り出し、一番上に書かれている書面を読み上げる。



「『被告:塚間 義一少佐 罪状:補給物資における不正運用並びに軍資金私的活用 処遇:階級降格並びに当面期間における投獄処置 認可:軍総司令部最高司令官』。おやおや、随分なことをしていたみたいだね。【軍】の資材を使って私腹を肥やしていたのかい?」

「~~~ッ!!??」

「えっ!?」



 読み上げられた罪状の内容における反応は三者三様だ。


 静かに目を閉じ聞くもの、驚きのあまり当事者を見てしまうもの、そしてサッと顔が青ざめ明らかに動揺しているものだ。



「バ…何故…」

「何故分かったか、かい?別に特別なことは何もしてないさ。過去に提出された資源関係の書類と現場の状態を見比べれば収支が合っていないなんてこと直ぐに分かる」



 そういって大和は、手元にあった書類の束を義一に突き付ける。



「ば、バカな!?この書類は完全に偽装して…」



 言った瞬間、義一はすぐさま口を塞ぐが遅すぎた。


 その発言は大和、咲耶、夕、そして通信機越しに聞いていた『グリッター』全員が耳にしていた。



「愚かな人…自分から墓穴を掘るなんて…」



 咲耶は憐れみの目を向け、小さなため息をついた。



「これくらいの改竄、うちの優秀な部下たちにかかれば直ぐに発見できるさ。まぁ随分とお粗末な改竄だったそうだけどね」



 大和は笑みを浮かべたまま、義一の肩をポンポンと叩く。


 そこまでの距離になって義一はようやく気が付いた。


 大和の笑みが、怒りに満ちてるものであることに…



「が、これはあくまで君を指揮官として下ろすための口上だ。大切なことだが重要なことじゃあない…」



 肩を掴んでいた手に、次第に力が入っていく。



「君は先ほどこう言ったね。『お前らはただの兵器』、『お前らの代わりなんていくらでもいる』『一人や二人死のうが何だろうが、いくらでも補給できる』、と。悲しいかなその通りだ。今の時代優秀な人材が豊富だ。似たような役割を課せば全うできる人など多くいるだろう」



 額から汗が止まらない。


 肩を掴む力こそ強くなっているが、大和は特段恐ろしいことなど言っていない。


 寧ろ自分の考えを肯定する発言をしている筈だ。それなのに、義一の身体からは震えが止まらない。



「だが君は勘違いしている」

「…は?」

「彼女たちの『役割』にはいくらでも替えがきく。だけどね、彼女たちのもつ『心』は、『意思』は、命は替えのきかない、かけがえのない大切なモノなんだ!戦場で命を懸けて戦っている彼女たち自身は『兵器』じゃない。同じ『人間』なんだ!」



 大和の顔から笑みが消え、怒りの言葉を叫ぶ。


 義一が叫ぶよりも、咲夜が静かに放つ圧よりも、強い感情を爆発させて。


「な、なに言ってやがる!!人間があんなバケモノみたいな力を奮えるもんか!!」


 しかし義一もただ怯えるだけでは終わらなかった。いや、根底にある『差別』意識が基盤となっているが故に、純粋に大和の言葉を理解できなかったのかもしれない。


「成程、人間が特殊な力を持たない、という意味でなら君の言葉は間違っていないかもしれないね」


 大和は義一の言葉を頭ごなしに否定することはしなかった。しかし、話を聞いた上で、否定的な目を義一へと向けた。


「けどね、彼女達ががその力を得たおかげで、人類は救われたんだ。そう、彼女達が持っている意思ちからのおかげでね」

「そ、それがなんだって…」

「分からないかい?彼女達が人類を救う、生きるといった『意思』を持ってくれているから、メナスとの戦いで力を奮っているんだ。人が戦うために、生きるために『武器』を持って戦うのと、何が違うって言うんだい?」


 義一は言葉に詰まる。大和の言葉に、奥底にる自分の心の一部が、僅かに納得してしまったからだ。


「何も違わないさ。手にしている物が武器なのか力なのか、それだけなんだよ。ボクから言わせればね義一君。この力を持たずして戦おうとしている人間の方がよっぽど兵器だ(こわい)と感じているよ…」


 大和の言葉に、何か思う所があったのか、義一から抵抗らしい抵抗は無くなった。そして、関東支部からやってきた兵達に拘束され部屋から連れ出されていく。


「義一君、君にお別れの言葉としてこれを授けよう」


 それを、大和は僅かに止める。


「さようなら義一君。君の役割の代わりなんていくらでもいる。けれど、君自身の代わりだっていないんだからね」


 義一は僅かな懺悔のような表情を浮かべた後、今度こそ部屋を後にした。


 扉が閉まって直ぐに大和は動き出した。執務室のデスクに座り、地図を広げる。


「時間がない、夕君!」

「は、ひゃい!!」


 突然呼ばれ、夕は思わず声が裏返ってしまったものの、しっかりと返事をする。


「分かっている範囲で良い。今の情報を簡潔にまとめてくれ」

「は、はい!!えと、えと…!!」


 夕は大慌てで情報を纏めようとするものの、これまでの出来事で混乱し、まとめることが出来ない。その様子から、今までどのような扱いを受けて来たのかを察した大和は、もう一度名前を呼ぶ。


「夕君…」

「は、はい!!すいません直ぐに、直ぐにまとめますから!!」

「新島 夕 臨時報告官」


 ピタッ、と夕の混乱が止まり、冷静さを取り戻す。そして、目の前で座る青年が、真っ直ぐ()()()みつめ、優しい笑みを浮かべていることに気が付く。


「慌てる必要なんてない。落ち着いて、自分に出来ることを丁寧にこなしてくれれば良いんだ」

「…はい!!」


 求められているのは従順な兵器ではなく、個人としての自分自身であることに気が付いた夕の心に、喜びと落ち着きがもたらされた。


 そして目の前に広げられた地図に、現状のグリッターとメナス数、そして戦闘を行っている大まかな位置を記入していく。即席のマップではあったが、現在得られている情報量を考えれば簡潔であっても明確で分かりやすい出来だった。


「ありがとう、夕君。これで大分戦略が立てやすくなったよ。助かった」

「え…あ、いえ!!恐縮です!!」


 『ありがとう』という素直な感謝の言葉を言われたのは、『グリッター』の仲間以外では初めてだったかもしれない。そのせいか、それに対する返答も堅苦しいものになってしまった。しかし、夕の心は何故か温かいものを感じていた。


 その様子を悲しくも微笑ましく思いながら、大和と咲耶の二人は改めて戦況の深刻さを知る。


「想像以上に深刻な状況だね」

「そのようですね。恐らく包囲網を敷いた戦術を用いたのでしょうが、それが逆に裏目に出ている様です」

「うん。戦力が中央と外側に分断されている。数もメナスの方が上の様だし、一度戦力を集中させて強行突破を……」


 ふと、大和の指が一人の隊員を指さして止まる。咲耶は怪訝な顔をしてその指先をみるが、直ぐに大和と同じことに気が付いたようだ。


「これは…大和まさか…」

「…やってくれたね塚間君…まさか『グリット』に目覚めてない子を戦場に出すなんて」


 これには流石の大和も怒りの感情を隠し切れなかった。


「夕君、この子の情報を教えて……」


 そして大和がその人物について尋ねようとした時だった。


『朝陽っ!!』


 通信機越しに悲痛な叫びと、爆音が鳴り響いた。

※この先は筆者による後書きです!興味のない方は飛ばしてください




ども、琥珀です!


本日も【Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―】をお読み頂きありがとうございます!!


…いや違うんですよ

本当は昨日で連日投稿は終わる予定だったんです。でもよく見たら翌日金曜日だという事に気が付いて、悩んだ末に投稿すると決めました笑


次回からは通常通り(?)週三日更新になりますので宜しくお願いします!!

次は四月八日更新します!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 設定は良い。展開もスタンダードで悪くない。 もう少し捻った方が好みではあるが。 [気になる点] 台詞回しが勧善懲悪に過ぎる部分がある。 また、しばしばクレバーなシーンで感情的なセリフが優先…
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