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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
5章 ー海外交流編ー
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第112星:『シュヴァリエ』飛鳥

【オリジン】

かつて人類の前に最初に現れた原初のメナス。朝陽や夜宵を圧倒し、同じ『悪厄災(マリス・ディザスター)』さえも恐れる原初にして最悪の究極のメナス。


アイドス・キュエネ

20年前に出現した『悪厄災(マリス・ディザスター)』。特有の高い身体能力だけでなく、人をたぶらかす魔法を用いる。『艶麗繊巧の魔女』の二つ名を持つ。


国館 飛鳥(18)

明るく笑顔を絶やさない天真爛漫な大和の実妹。最高本部の『グリッター』であり、最高司令官である護里直属の戦士でもある。その正体は日本に8人しか存在しない『グリッター』の称号である、最年少の『シュヴァリエ』である。

『ソンナ…馬鹿ナ…!!私ノ〈次元超越ディメンション・ムーブ〉ガコンナニ容易ク…』



 敗北を喫した『アイドス・キュエネ』は、明確な動揺を見せながら、その場に崩れ落ちる。


 その様子を、相変わらず楽しそうな笑みを浮かべたままの【オリジン】が見つめたまま、ゆっくりと耳元に語りかける。



【ホラネ…?負ケタデショ?】

『ッ!!』



 慰めでも、励ましでもない、追い討ちをかけるような言葉を囁かれ、『アイドス・キュエネ』は思わず【オリジン】を睨み付ける。


 しかし、【オリジン】はそれを意にも介さず、変わらない笑みを浮かべたまま続けた。



【アノ人間…私ヲ()退()()()()人間ガ現レタ時点デ攻撃ヲ続ケテイレバ、君ニモマダ勝機ハアッタカモネ】



 【オリジン】は【デモ…】と続ける。



【君ハ揺レタ。何カ仕掛ケテ来ルンジャナイカ、別ノ手ヲ用意シテルンジャナイカッテ…何十年モ戦ッテキタタメニ、迷ッタンダ。ダカラ負ケタ】

『ッ!!』



 戦いが始まった時、『アイドス・キュエネ』はこう考えていた。


 『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であると。


 その内容自体は間違いではない。実際、『エデン』が敗北した要因の一つには、経験不足が含まれるだろう。


 しかし、今回の襲撃に関してはその逆。経験が豊富であるが故に『知性』が逆に働き、一瞬の迷いから敗北を喫したのである。



【フフフ…今ドンナ気持チ?悔シイ?悲シイ?辛イ?】



 先程よりも更に嬉々とした笑顔を向けてくる【オリジン】に更に苛立ちを覚えながらも、『アイドス・キュエネ』は笑みを浮かべた。



『エェ…悔シイワ…ハラワタガ煮エクリ返ル程ネ…ケレド貴方モカツテ敗北シタ筈ヨ?圧倒的ナ力ヲ有シテイナガラ、一人ノ人間ニネ』



 それは、【オリジン】に対する意趣返しのつもりであったのだろう。『アイドス・キュエネ』は【オリジン】の動揺を誘うべく、それを口にした。


 しかし、【オリジン】は僅かにキョトンとした表情を見せただけで、次の瞬間には元の屈託のない笑みを浮かべていた。



【ウン、ソダネ〜私モ敗北者ダヨ。デモネ…】



 次の瞬間、『アイドス・キュエネ』は再び【オリジン】の姿を見失う。


 そして気付いた時には、見ていた方とは逆に回り込み、ゆっくりと肩に手を回されていた。



【私ハネ、敗北ヲ恥ダトハ思ッテナイヨ。生キテレバ次ノ楽シミガ増エルシ、私ダッテ成長スレバモット楽シメルカラネ】



 『アイドス・キュエネ』の耳に、【オリジン】の言葉の内容はほとんど入ってこなかった。


 【オリジン】の発する言葉の一つ一つから、小さくも恐ろしい殺気が込められていたからだ。



【私ハ、ソノ楽シミノ瞬間ヲ待チ続ケテ長イ間眠リ続ケテ来タンダ〜。今ハマダ会エテナイケドネ】



 【オリジン】は回していた手を緩め、今度は両手で『アイドス・キュエネ』の頬に触れ、真っ直ぐこちらを向くように顔を動かした。


 『アイドス・キュエネ』が向けられた視線の先には、笑みを浮かべながらも光と感情を一切感じさせない、ドス黒い瞳が映っていた。



『ヒッ…イヤ…』

【君達ヲ生カシテルノハ、戦力ダカラジャナイヨ?私ト同ジデ、『敗北』ヲ知ッテ、ソレヲ経テドンナ風ニ変化シテイクノカ気ニナルカラダヨ】



 【オリジン】の言葉に嘘偽りは無い。嘘をつく理由も必要もない。


 つまり、変化を止めれば、『アイドス・キュエネ』達はすぐにでも……


 『アイドス・キュエネ』はそれ以上考えれのを止めた。その考えに至ってしまえば、自分は直ぐにでも命を断ちかねないと思ったからだ。



『マダ…終ワリジャナイワ…』

【ン?】



 『アイドス・キュエネ』は【オリジン】の手から逃れ、真っ直ぐ千葉根拠地の方を見る。



『正面カラノ戦イハ私ノ負ケヨ!!ケレド()()()()!!私ニハマダ、最後ノ仕込ミガ残ッテル!!』



 【オリジン】はジッと『アイドス・キュエネ』を見つめ、すぐにそれが嘘でも強がりでもない事を見抜いた。



【ヘェ…楽シミ…】



 それも嘘偽りの無い本音であり、『アイドス・キュエネ』に続くようにして、【オリジン】も千葉根拠地の方へと目を向けた。






●●●






 千葉根拠地の訓練学校は、避難場所としても使用されており、現在戦闘地域近隣の住民や、訓練学校の生徒達が避難をしていた。



「(思ってたより戦闘長引いてるな…咲夜さんがいて、護進さんもいるから万が一、ってことも無いと思うけど…)」



 その群衆の中で、飛鳥は一人入り口付近に立ち、戦場の方角を眺めていた。



「ん〜何だろう…ボクはいま凄い大切な場面を逃してる気がする…今すぐ司令室に駆け込まないといけないような…そんな予感が…」



 大和に対する恐ろしいまでの第六感を働かせていた飛鳥のもとに、一つのメッセージ通信が入る。



「…あ!お兄ちゃ……」



 その送信者が大和であることに一瞬歓喜の表情を浮かべるも、その内容を見て直ぐに表情が切り替わる。



「ふぅん、成る程ね…厄介な相手だ」



 内容をスクロールしながら読んでいく中で、もう一通メッセージ通信が入る。


 一通目を丁度読み終えていた飛鳥は二通目にも目を通し、ニッコリと笑みを浮かべた。



「りょーかい()()さん!!」



 通信機の画面を切り、飛鳥はくるっと体を半回転させ、視線の先を避難してきた一般市民の群衆に向ける。


 大和から送られてきたメッセージの内容はこうだった。



『姿の見えないメナスが、根拠地内に侵入している可能性がある。恐らく本来の特性どおり人間…今回で言えば避難した人々を狙う可能性が高い。出来る限り混乱を招かないようにして撃退してくれ。攻撃する時に実体化するようだからそこを叩け。あ、護里さんには許可を貰っておくよ』



 次いで護里から送られてきたメッセージはより明確であった。



『戦闘を許可するわ。但し、一般人を守るため限定よ♡』

「う〜ん、どっちもひと使いが荒いというか、適当だよねぇ〜。ま、頼られるのは嬉しいけどね!」



 理由はどうあれ、飛鳥は『シュヴァリエ』としての戦闘行為を限定的に解除された。


 潜めていた実力を徐々に解放し、避難の敷地内に意識を広めていく。


 敷地内の広さは、およそ8,000㎡。広さは十分にあるとはいえ、かなりの人数が避難していることもあり、内部はかなり混雑していた。


 もしこの場にメナスが突如として現れれば…混沌とした状況となることは火を見るより明らかである。


 かといって、事前にメナスが出現することを伝えても、同じ結果を招くことになるだろう。


 また、どちらの結果になっても、根拠地内に侵入されたという結果は、一般人にとって不安の種に繋がる。


 どちらにせよ、相応の批判や非難は起こってしまうだろう。


ーーーーーこの場に飛鳥(シュヴァリエ)がいなければ、の話であるが。


 飛鳥が敷地内全域に意識を集中させるのと、一体目のメナスが姿を現したのはほぼ同時だった。



「わっ!!!」



 それと同時に、飛鳥は大声を上げる。これによりまず、一般人の意識と視線は声を上げた飛鳥に向けられる。


 その瞬間、飛鳥は地面を強く蹴り、()()()()()()()()()()()()()、200mは離れていたであろう距離を詰める。



【ーーーア゛…】



 メナスは飛鳥に気付いたものの、声を上げる間もなく胸を貫かれ、飛鳥と共に姿を消した。


 全員の視線と真逆の方へと移動した飛鳥は、胸を貫かれ塵となって消滅していくメナスには目もくれず、再び意識を群衆に集中させる。



「(多分一体だけじゃない。二体…多くて三体は来てる気がする…)」



 飛鳥には探知能力や感知能力は一切備わっていない。それでもメナスの個体数を当てたのは、野性に近い本能によるものであった。


 人が群れているのが幸いしてか、残りのメナスにも飛鳥の動きは悟られていないようで、直ぐに次のメナスが姿を現した。



ーーーーーパァン!!!!



 飛鳥は今度は一度力強く手を叩く。思わず耳を塞ぎたくなるような大きな音に、一般人の視線は再び後方の飛鳥の方へと移る。



『……ッ』



 その隙に、飛鳥は再び高速でメナスに迫り、攻撃に転じる。今度のメナスは飛鳥の気配に気付くことすら出来なかった。


 自分の口が塞がれ、背後に何者かがいると気付いた時には首はへし折られ、群衆から離れた時には、既にメナスの意識は塵とともに消えていた。



「(多分、あと一体…どこに出る?)」



 三度意識を集中させる。飛鳥の本能は、あくまで感覚によるもの。その精度は決して高くない。つまり…



「…っ!?しま、上空!?」



 意表を突くような形には対応しきれないことになる。


 恐らく飛鳥が仕留める姿を見ていたのだろう。先程までのメナスとは違い、既に攻撃態勢に入っていた。



「(今から攻撃に入れば間に合う…けど、普通に攻撃したら他の人に気付かれてパニックになっちゃう…)」



 この間コンマ数秒の施工時間であり、直感に優れる飛鳥は直ぐに別の答えを導き出した。



「せい…やぁ!!」



 地面を強く蹴り込み、飛鳥は球場一つはあるでろう敷地を()()()()()()


 瞬間、人々の意識は上空とは真逆の地面に向けられる。



『ッ!?』



 メナスが姿を現してから、飛鳥が行動に移るまで僅か2秒。その間に、飛鳥は既に()()()()()()()()



「『集突打砕(しゅうとつださい)拳』!!」



 目の前に見たのは黒い影。


 メナスがそれを拳だと認識した時には既に拳は放たれており、メナスの顔面に直撃した拳から信じられないほどの衝撃が走り、メナスの身体を粉砕していた。



「よっし!!作戦完了ミッション・コンプリート!!」



 片手で肘打ちを掴みながらのガッツポーズを決め、飛鳥は作戦完了の報告を大和と護里にメッセージで送る。


 『アイドス・キュエネ』との第二幕の戦いは、『グリット』すら発動しなかった飛鳥の圧倒的な力の前に敗北したのであった。






●●●






『ソン…ナ…』



 『アイドス・キュエネ』は今度こそ、その場に力なく崩れ落ちた。


 正真正銘奥の手。根拠地にメナスを忍ばせ襲撃するという手段さえ、打ち砕かれた。



【フフッ!!残念負ケチャッタネェ。デモ、手段トシテハ面白カッタヨ】



 崩れ落ちたまま立ち上がらない『アイドス・キュエネ』の肩に手を置き、【オリジン】はゆっくりと視線を根拠地に向ける。



【(クフフッ…アノ時トハモウ違ウッテワケダネ。アノ白銀ノ人間以外ニモ、楽シメソウナ人間ガイルダナンテ…)】



 この時、『アイドス・キュエネ』が意気消沈していたのは、不幸中の幸いだったと言えるだろう。


 もし、今の【オリジン】の絶望的な歓喜の笑みを直視していたら、今度こそ『アイドス・キュエネ』は自ら命を絶っていたであろう…

※後書き






ども、琥珀です

体調の悪さは心の悪さ。心に余裕が無くなった私は、ついにお仕事でボカをやらかしました…


心にゆとりを…現場に質を求めるのなら、質を向上させる環境を…


ただの愚痴な後書きでした…

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