第111星:終結
国舘 大和(24)
再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。『グリッター』とのぶつかり合いを経て信頼を勝ち得た。
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。指揮官として司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の元隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は『夜宵小隊』の小隊長。
樹神 三咲 (22) 三等星
千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。『三咲小隊』小隊長。
佐久間 椿(22) 三等星
千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。『椿小隊』小隊長。
ヴィルヴァーラ・スビルコフ (20) 二等星
ロシアスルーツク支部所属。海外派遣交流により日本の千葉根拠地にやってきたロシアの『グリッター』。根拠地の『グリッター』と少しずつ交友を深めていたが…?
早乙女 護進(28)
派遣交流の監査役として千葉根拠地にやってきた(というか連行)非戦闘員・専門指揮官。『軍』最高司令官である早乙女 護里の息女であるが、品行は非常に悪い。大和の戦術の師であるが、過去に重いトラウマを抱えており…?
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23) 四等星
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。
久留 華 (22)四等星
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。
曲山 奏(20)四等星
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。
【椿小隊】
写沢 七 21歳 159cm 四等星
写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。
重袮 言葉 20歳 158cm 四等星
活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…
海藤 海音 16歳 151cm 四等星
誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。
【三咲小隊】
椎名 紬 22歳 四等星
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。
八条 凛 16歳 四等星
自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。
大刀祢 タチ 17歳 四等星
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。
【夜宵小隊】
私市 伊与 19歳 四等星
年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。
早鞆 瑠衣 18歳 四等星
十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。
矢々 優弦 16歳 四等星
幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。
「…見つけた」
静かな時間が始まってからほんの数分後。これまでずっと目を閉じていた優弦が目を開き、言葉を発した。
「ナイスタイミング。私も丁度準備が出来たところよ」
その言葉を引き金に、夜宵も準備が整ったことを優弦に告げる。
「貴方の『グリット』が正確なら、勝負は一瞬で着く。信じてるわよ優弦」
「大丈夫…ぶ。どんな時…でも、自然は嘘をつかないから」
優弦はその言葉と同時に端末を操作。何かを打ち終えると、今度は夜宵の端末が僅かに震え光る。
夜宵はそれを確認すると、そっと『グリット』に意識を集中する。
「(…あの日…【オリジン】と呼ばれたメナスと相対してから、私の中の『グリット』が変わった…)」
意識を集中させていくなかで、夜宵は周囲と自分の心の中に蠢く闇を感じ取っていく。
「(成長…じゃない。言ってしまえば変質…より、私に馴染むようになったかのような感覚…)」
明らかに異質な変化に、しかし夜宵は不思議と恐怖を覚えていなかった。
寧ろ、何故か安堵のような感覚を感じ取っていた。
「(だからこそ分かる…この闇の本当の恐ろしさが…そして、その扱い方が…)」
集中力を極限まで高めた夜宵は、ゆっくりと目を開き、何かを持ち上げるように片手を上げていった。
「『混沌の闇』」
次の瞬間、周囲一帯に黒い粒子が拡散していく。
いや、その表現は正しくない。粒子は、まるで最初からそこに存在していたかのように、突如として辺りを漂い始めたのだ。
「!?この黒い粒子は…」
「前に…【オリジン】が出現した時の…?」
あの日、朝陽達は改めて夜宵のその時の事を尋ねていたが、夜宵は根拠地に戻って意識を取り戻すまでの間の記憶が一切ないと言う。
これにより、夜宵が意図的に起こした現象ではなかったと知り、一同はその日は安堵していた。
しかし今、夜宵にその意図があったわけではないとは言え、目の前でそれと同じモノを見せつけられ、朝陽達は不安に駆られていた。
「この粒子がもし…また私達を襲ってきたら…」
誰かが呟いた言葉に反応したのは朝陽だった。
「大丈夫です。今回のこの粒子は、私達に危害は加えません」
「何故、そう思うの?」
当然の疑問を三咲がぶつけると、朝陽は笑顔で応えた。
「前回と違って、この闇からはお姉ちゃんを感じるんです。だから大丈夫です」
言葉としての根拠は不足していたが、不思議と信じられる内容であった。
夜宵を感じる、というのは、三咲達も同様であったからだ。
朝陽達のやり取りを他所に、夜宵は更に粒子を拡散させていく。
そして、一定以上拡がったところで、ゆっくりと上げていた手の指先をギュッと握りしめ、拳を作った。
次の瞬間ーーーーー
『ーーーッ!?』
周囲にあった無数の粒子状の闇が一瞬肥大化し、その部分を覆っていた箇所から、身体の大部分を消失したメナスが姿を現した。
『ーーーカハッ…ア゛ァ…』
姿を現した三体のメナスは、そこから反撃することもなく、黒い塵となって消滅していった。
朝陽達を苦しめた別次元の個体種との戦いは、応援に駆け付けた夜宵と優弦により、あっけなく消滅し僅か数分で幕をおろしたのであった。
●●●
「なん…これは…」
目の前の光景を、護進は信じられないと言った様子で見ていた。
実際にそれを目にしたあとである今も、信じられなかった。
「よくやった夜宵君、優弦君。作戦完了だ」
驚きの表情を浮かべたまま固まる一同の中で、唯一勝利の報告をあげる余裕を持っていた大和が、夜宵達に通信機で勝利を報告していた。
『ありがとうございます司令官。適切な指示あってこその勝利です』
「今回ばかりは謙遜だ夜宵君。君達が宇都宮での戦いで違和感に気が付き、直ぐに帰還するという行動を起こしていなければ、決着はこうは簡単にはつかなかっただろう。この功績は大きいよ」
『…ありがとうございます。そのお言葉、ありがたく受け取らせて頂きます』
僅かな沈黙は、尚も謙遜しようとして止めたものによるものだろう。次いで大和は通信を全体に切り替える。
「君達も良く頑張ってくれた。一人一人の活躍と健闘が無ければ、更なる犠牲、最悪根拠地にも被害が及んでいた可能性があるだろう。残念ながら八条 凛君が傷を負ってしまったが、先程市原医師より連絡を受けて、命に別状はないとのことだ。安心して良いよ」
直接的な表情を見ることはできないが、通信機越しに微かに聴こえてくる安堵の声が、今の彼女達の心境を表していた。
「みんな、ホントに良く頑張ってくれた。怪我人もいるし、ゆっくりと帰還してくれ」
『『『了解!!』』』
全員の返答を聞いたのち、大和はゆっくりと通信を切る。
そして、ゆっくりと振り返ると、視線の先では護進が何かを訴える険しい瞳で大和を見ていた。
大和はそれに臆することなく、笑みを浮かべて対応した。
「護進さんもありがとうございました。咲夜への指摘や仲間達への叱咤激励は、主観的に染まっていたボクでは出来なかったことです。戦況を見抜く慧眼も相変わらずでした」
「……お前、一体どこから見てやがったんだ…」
大和の反応が好ましくなかったのか、護進の表情はますます険しくなる。
「どこから見ていたか…と聞かれれば、最初から、と言うのが答えになりますかね」
帽子をたくし上げながら、大和はうっすら笑みを浮かべて答える。
「とは言っても、ここに到着したのは本当に今さっきです。見ていた、と言うのは船のモニターで、というこですね」
「…それだけで私が指揮を執ったのが分かったと?」
「何年貴方の弟子として指揮を見てきたと思ってるんですか?モニター越しでも、彼女達の動きや戦況の読みが鋭くなったのが分かりましたよ」
チッ…と舌打ちしながらも、護進は大和の言葉が嘘ではないと理解していた。
実際、司令室に向かうまでの間にモニターを見ることで、咲夜がどういう指揮を執っていたのかを把握していたからだ。
「…四次元についてはいつから気付いてた…その対策方法はいつ思い付いた」
恐らく護進が最も気になっている点がここだろう。その理屈が分かった段階で護進は常にその対応策を考えていたが、ついぞ最後まで思いつくことは無かった。
にも関わらず、大和はここにたどり着くまでの間に解決策を見出し、即座に実戦し、巻き返しどころか一瞬で戦いを終わらせた。
更に言えば、モニターから戦況を見ていたということは、時間帯は護進と変わらない。条件は五分だったということになる。
僻みや妬みから聞いているのではなく、純粋に、戦術家としての好奇心が湧き立ち、半ば無意識に尋ねていた。
「四次元については恐らく護進さんと同じくらいのタイミングだと思いますよ。見ようとしない事を徹底する事で、反射的な反応を上げる必要はあったと思いますので。それと同時に、夜宵君の能力にも気付いていたので、直ぐ様連絡を取りました。対応策を思い付いたのもほぼ同時ですね」
「…斑鳩 夜宵の『グリット』が、次元を超えて作用する根拠は無かったはずだ…」
大和の先程の発言は少し間違っていた。
確かに護進は全盛期ほど用意周到な準備はしていなかったが、それでも最低限、根拠地内の『グリッター』の情報には目を通していた。
それは使命感や義務感によるものではなく、どちらかと言えば習慣に近かった。
非常事態に居ても立っても居られず司令室に向かった時と同じように、手渡された資料をそのまま放置しておくことは、彼女にはできなかったのである。
「資料だけを見ればそう思われるでしょうね。ですけどボクはこれまで彼女の戦いと、『グリット』を見てきて、その可能性は非常に高いと踏んでいました」
「…説明になってない。そう思う根拠はなんだ?」
「逆に尋ねますが護進さん、彼女の『グリット』はどんな能力ですか?」
質問に質問で返され、眉を顰める護進であったが、答えを聞き出すために一先ず大和の問いに答える。
「確か…闇を生み出してあらゆる物質を飲み込む、特異系の『グリット』だったな」
「その通りです。他の『グリッター』と比べても異質な『グリット』ですね」
「それがなんだって言うんだ?確かに異質ではあるが、特異系の『グリッター』なら他にもいるだろう」
答えを急く護進に大和は苦笑いを浮かべながらも、ようやく答えを口にし出す。
「護進さん、そもそも彼女の『グリット』が飲み込んだ物質は、どこへ行くと思いますか?ワープ?それともはたまた異空間?」
「あぁ?んなもん分かるわけが…」
そこまで話されて、護進はようやく大和の言わんとしている事を理解したようであった。
「そうか…そもそもアイツの『グリット』自体がそうってわけか…」
護進が納得する傍ら、咲夜と夕の二人はまだ理解が追いつかず首を傾げていた。
大和もそれに気付いており、追加での説明を始める。
「つまりね二人とも。夜宵君の『闇』が飲み込んだ行き先がどこであるかなんて、ボクにも分からないよ。けれど、目の前に確かに存在した物質が、飲み込まれ消える、という時点で、彼女の能力が次元さえも超越したモノ、である可能性は高いという話だよ」
「あ…確かに…飲み込み、消滅させた物体がその場に残らない点は、四次元に通ずるものがあります」
咲夜が口に出して反応し、夕は無言で頷いて理解した事をアピールしていた。
「念のためそこに至った根拠を上げておくと、前回の戦闘での報告書を読んだ時、文章には『黒い粒子が肥大化し、【オリジン】と思わしきメナスの身体の一部を消滅させた』とあった」
実際にその報告書を作成した咲夜が頷く。
「朝陽君のように、攻撃で蒸発させたわけではなく、『消滅させた』。この時からボクは、夜宵君の能力が特異系の中でも更に特異的な能力であると感じ取っていた。文字通り別次元のような『グリット』だとね。だから、今回のメナスの擬態が次元であると仮定した時から、有効的な作戦は夜宵君だと判断したんだよ」
戦いの後で落ち着かない中、大和はそれでも咲夜達を納得させるのに十分な説明を施していた。
護進もこれには納得せざるを得ないと言った様子で、どこか不貞腐れそっぽを向きながらも、それ以上突っかかてくるようなことはしなかった。
大和は一先ず場が収まったことに安堵しつつ、もう一つの不安の芽を摘むべく、通信機のチャット機能を使用し、二人の人物にメッセージを送っていた。
※後書き
ども、琥珀です
朝陽が早く昇り、日が沈むのが遅れ、夏を予感させる日が増えてきましたね
私は春秋が好きなので夏冬はあまり得意じゃないのですが、なかでも夏が苦手ですね…
基礎体温が高い私にとっては、夏は寝ても覚めても地獄なのです…
これから暑い日が始まりますが、体調管理にはお気をつけください。