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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
5章 ー海外交流編ー
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第105星:四次元

咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。現在、現場を離れている大和に代わり、根拠地の指揮を執っている。


斑鳩 朝陽(18)四等星

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。


早乙女 護進(28)

派遣交流の監査役として千葉根拠地にやってきた(というか連行)非戦闘員・専門指揮官。『軍』最高司令官である早乙女 護里の息女であるが、品行は非常に悪い。大和の戦術の師であるが、過去に重いトラウマを抱えており…?


【朝陽小隊】

譲羽 梓月(23) 四等星

 冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。


久留 華 (22)四等星

 おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。


曲山 奏(20)四等星

明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。


【三咲小隊】

椎名 紬 22歳 四等星

 ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。


八条 凛 16歳 四等星

 自信家で勝気な性格だが、実際は素直で純粋な性格。


大刀祢 タチ 17歳 四等星

 メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。

 三人のうち、最前線で戦うのはタチ。


 機刀『影漆』を振るうと同時に『グリット』を発動させ、その剣線上に、透明な刃のエナジーを残しメナスを牽制する。


 その隙を縫うようにして攻撃するのはヴィルヴァーラ。


 タチの『彷徨う不朽の刃イリュージョン・ラーマ』により動きが制限されたメナスに対し、冷気を放ち、凍結を図る。


 当然メナス達はそれを把握し、一度距離を取って戦おうとするが、それを制するのは朝陽。


 距離を取ろうとするメナスを、『六枚刃』を展開し光線で動きを封じる。


 距離を取ることが出来たメナスのレーザーに対しても、同じく展開された『六枚刃』で防いでいく。


 緊急措置ではあったものの、その連携はかなり上手く機能しており、その様子をモニターで見ていた護進達も僅かな安堵の様子をみせていた。



「悪くねぇな。劣勢だった形勢を五分くらいには持ち直せてる」

「そうですね。やや朝陽さんへの依存が高いようにも見えますが、一先ず対応できているようです」



 しかし、その安堵の表情は束の間のみ。



「だが、根本の部分は何も解決してねぇ」

「はい。凛さんを襲った攻撃…その正体は未だ掴めていません…」



 次の瞬間には、二人の表情は険しいものとなっていた。



「これまでの擬態とは違う、姿の見えない擬態…厄介ですね。いつまた攻撃を仕掛けられるか…」

「それに関しては集まったことが利点に働くだろ。全体を見渡せる樹神 三咲がいるのもでかい。八条 凛と同じような事態にはならねぇ筈だ」



 現状を語る護進の口調と表情に、咲夜はふと違和感を感じた。


 護進の様子は、全貌を掴めていない咲夜とは異なり、何かを理解した上で悩んでいるようであったからだ。



「護進さん…何かを掴んでいらっしゃるんですか?」

「……」



 護進は口に出して応えなかったが、それが無言の肯定であることを咲夜は理解していた。



「何か気付いてあるのであれば教えて頂けませんか?謎の攻撃の攻略になるかもしれません」



 咲夜の言葉掛けに、尚も護進は躊躇していたが、険しい表情の中、重苦しく口を開いた。



「私が前に『アイドス・キュエネ』と戦ってきた時、アイツは二つの擬態を使ってきた。一つは屈折による擬態。もう一つは野生の生き物が使う保護色による擬態だ」

「はい。当時の報告書を読ませて頂いたので存じております」

「なら知ってるだろうが、そん時は屈折による擬態がアイツにとっての奥の手だった。実際私も見抜くまでに時間が掛かったからな」



 護進は話をしながら、どこか悔しそうな表情を浮かべていた。



「つまり、アイツは戦う時に常に奥の手を用意していやがるってことだな。今回のこの擬態がそうだ…いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…?それはどういう…」



 咲夜が言い切る前に、護進は紙とペンを用意し、そこに一本の縦線を描く。



「この一本の線が『1次元』だとする。そこに人が居れば、その人間はその一本の線状でにしか移動できない」



 護進は次いで、その縦線に横線を加える。



「そのうちの人間の一人が、好奇心で横に歩いたとするだろ?それは横へ世界を生み出す、『二次元』の世界だ」



 更に護進は、縦線と横線が交わった箇所に円を描く。



「横の世界を手に入れた人間は、次に空や地下に興味を持つ。これが立体を作る、『三次元』の世界」

「…まさか…」



 護進の話を聞いていただけの咲夜であったが、次第に護進が何を話そうとしているのかを理解し始めていた。



「私ら人間がいま現在認識できるのはここまでだ。時間や物体のベクトルなど、理解は出来ても視認や認識は出来ないからな」

「まさか…『アイドス・キュエネ』はその四次元を操れるようになったと?」

「可能性の話だがな」



 護進は否定しなかった。



「もしかしたらもっと単純な擬態の可能性もある。保護色を利用した透明化とかな。それならメナスの電磁波探知の精度を上げれば対応できる」

「…では何故、四次元の可能性の話を…?」



 護進は目を瞑り、息をこぼした後口を開く。



「八条 凛を撤退させた後、樹神 三咲が伝えてきた言葉を覚えてるか?」

「はい。確か、『()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()』、という内容だったかと」



 凛が前線脱出時に、三咲は通信でそのような言葉を残していた。


 護進はそこから様々な可能性を模索し、辿り着いたの仮説が『四次元』であった。



「そうだ。そこから私は四次元攻撃の可能性を考えた。そもそも四次元ってのは、『空間』だとか『時間』だとか、三次元には存在しない、若しくは認識できないモノが重なった世界のことだとされてる。認識できないものには攻撃できないし視認もできない。逆を言やぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…!では、八条 凛を攻撃した時、一瞬視認することが出来たのは…」

「そう、もし四次元空間による擬態なのだとすれば、奴らは攻撃するその瞬間、四次元から三次元へと戻り、実体を持って攻撃しなくちゃならんってことだ」



 咲夜も解決の方法を何も考えていなかったわけではない。


 もう少し時間を与えられれば、護進と同様の結論に至った可能性はあった。


 驚くべきは護進のその思考の速さ。


 三咲のヒントを頼りに、知識をフル活用し統合させ、いち早く『四次元』という仮説に辿り着いていた。


 咲夜が遅いのではなく、護進が速すぎた、という方が正しいだろう。



「ですが…そこまで至っておきながら何故そのことを伝えないのですか?」

「…反撃の糸口を掴めないからだ」



 ギリッ…と護進は悔しそうな表情で歯噛みしながら答える。



「四次元は今でも未知の世界だ。三次元の世界に何をもたらして四次元としているのか…それが分からなきゃ手の加えようが無ぇ…」

「それは、確かに…では、反撃の手は無いということですか?」



 咲夜の問いに、護進は僅かに目を閉じてから答えた。



「…確実なものはな。だが、対抗手段はある」

「というと?」

認識し()ようとしないことだ。見ることは次元を低く認識することになる。意識すればするほど、余計な感覚を酷使し、かえってリスクを呼ぶ」

「…意識を最低限に裂くようにするために、必要以上の情報は与えていないというわけですか?」



 咲夜の答えに護進は頷く。しかし、その頷きは、重苦しいものであった。


 それも無理はなく、これまで様々な戦場下で最適解の答えを導き出してきた護進が、ただの対抗策しか思い付かない。


 それは、言ってしまえば『アイドス・キュエネ』に対する敗北宣言でしか無かった。


 護進は私情を優先する人間ではないが、味方が窮地に陥っている現状に、『アイドス・キュエネ』に対する敗北が重なり心中穏やかでは無かった。



「(あれだけ偉そうにほざいておきながらこの程度か私は…!!何か…何か攻略の手口を見出してみろ…!!)」



 自身の不甲斐なさを恥じながらも、護進は更に思考を続けていく。






●●●






「ハァ…ハァ…ハァ…」



 前線で激しい戦闘を続ける三人。その三人のうちの一人、朝陽に変化が生じていた。


 元から朝陽が前衛のバランスを取ることで成り立っていたこの戦術により、朝陽への負担は大きいものであったが、それを差し引いても朝陽の状態は深刻そうであった。


 それにいち早く気が付いたのは、直近行動を共にしてきたヴィルヴァーラであった。



「アサヒ?どうしたの?」

「ハァ…いえ、何でもありません」



 それが強がりであるのは明白であった。額からは汗が大量に滴り、顔色は蒼白で優れない。


 動きも明確に鈍っており、朝陽に何か異常が起きているのは間違いなかった。



「その顔色で言われても説得力がないわ。アナタ、一体何が…」



 その時、ヴィルヴァーラが朝陽が肩を庇いながら動いていることに気がつく。



「アサヒ…アナタまさか肩の傷が…!?」



 それは、ヴィルヴァーラと巡回に出来た傷口と同じ箇所であった。


 それから今日に至るまで、朝陽は負荷のない仕事をこなしてきたが、治りかけている段階でこの過酷な戦闘に耐えきれず、傷口が開いていた。


 それも無理はなく、この人数で12体のメナスと互角に戦えているのは、朝陽の全体のサポートあってこそだった。


 その分、朝陽への負担と依存は高くなり、それが傷口を開く結果となってしまっていた。



「(迂闊…いえ、何てバカなの私は…!!アサヒにケガを負わせてしまった張本人である私が、どうしてこうなることを真っ先に想像しなかったの…!!)」



 悔しさと情けなさから、ヴィルヴァーラの内心は自身への怒りで満ちていた。



「だ、大丈夫ですヴィルヴァーラさん。私まだ戦えますから!!それに、私までここを離れたら、勝ち目がなくなってしまいます!!」



 そう言い放つ朝陽の顔を、ヴィルヴァーラは真っ直ぐ見つめた。



「(無理をしているのは明白…けれど言っても聞かないのも、私は知っている…)」



 自身の怪我のことなど二の次。朝陽は自分が抜けることで味方への負担が増えることを最も懸念していた。


 どこまでも真っ直ぐで、純粋な想いに、ヴィルヴァーラの心は一転して穏やかなものとなっていた。


 そして同時に、自分の中で覚悟を決めることも出来た。



「バカね…貴方達の志を忘れたの?」

「…え?」



 ヴィルヴァーラは、これまで見せたこのない穏やかな笑みを浮かべ、朝陽の頭を撫でた。



「貴方達は勝つために戦うんじゃない。『生きるために立ち向かう』んでしょう」

「…あ」



 朝陽達にとっての絶対の誇りを口に出され、朝陽の表情が僅かに和らぐ。



「貴方は…貴方達はその志を曲げちゃダメよ。どんなことがあっても、生きることを第一に考える。それが貴方達の本当の強さであり、信念なのだから」



 ヴィルヴァーラは朝陽に背を向け、迫りくるメナスと向かい合う。



「だから…勝ち負けへのこだわりは私に任せなさい」

「え…?」



 朝陽は俯いていた顔を上げ、ヴィルヴァーラの背を見る。


 その背中には、強い覚悟が纏われているような力強さがあった。



「貴方の代わりは、私が果たす」



 次の瞬間、ヴィルヴァーラは強大な冷気を纏いながら、メナスの群れへと突き進んでいった。

※後書き






ども、琥珀です


分かったような口調で四次元について書いていますが、作者も各次元についてはかじった程度の知識しかないです。


果たして理論上正しいのかどうか…難しく考えるのはやめましょう!←

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