第104星:戦変
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。現在、現場を離れている大和に代わり、根拠地の指揮を執っている。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。
早乙女 護進(28)
派遣交流の監査役として千葉根拠地にやってきた(というか連行)非戦闘員・専門指揮官。『軍』最高司令官である早乙女 護里の息女であるが、品行は非常に悪い。大和の戦術の師であるが、過去に重いトラウマを抱えており…?
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23) 四等星
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。
久留 華 (22)四等星
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。
曲山 奏(20)四等星
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。
【三咲小隊】
椎名 紬 22歳 四等星
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。
八条 凛 16歳 四等星
自信家で勝気な性格だが、実際は素直で純粋な性格。
大刀祢 タチ 17歳 四等星
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。
「さて、じゃあ私はオペ室に行くわ。スタッフも招集をかけるけれど、良いわよね護進」
「あぁ任せんよ。…死なせんなよ」
「愚問ね。貴方が進むのだから私も進むわ。あの時と同じ過ちは繰り返さない」
両者間でのみ伝わる会話を交わし、紗雪は司令室を後にした。
僅かに笑みを零した護進は、モニターに視線を向けた時には、険しい表情へと変わっていた。
「護進さん、今のメナスの攻撃は一体…」
それは咲夜も同様であった。
偏光鏡の効果は今も作用している。擬態していたメナスは今も姿を消すことは出来ていない。
それにも関わらず、凛を貫いたメナスのレーザーは、どこからともなく現れた。そう、姿を見せることなく。
「ハッキリ言って私にもネタは分かんねぇ。だが、『アイドス・キュエネ』は、この新しいトリックを手に入れたら真正面から突っ込んできた。それだけは理解したよ」
護進は僅かに思考を巡らせ、次の指示を出す。
「おいガキ共。今のをみて気付いてるとは思うが、また姿の見えねぇ個体がいる。『偏光鏡』も効果がねぇ擬態をしてる奴らだ」
『偏光鏡が効かない…何か別の方法で擬態をしているということなのぉ?』
後方支援を続ける華が、護進の通信に応える。
「悪いが今は分からねぇ。そもそもこれが擬態なのかもな」
『…さっきのは、擬態じゃない可能性があるってことぉ?』
「言っただろ。まだ何も分からねぇってな。それについてはこっちで調べておく。お前らはまず陣形を組め。円形で良い。ほんわか娘と日影薄女も後退。その代わりキツ眼鏡とキザッタラシが少し前進しろ」
『前線の朝陽達はどうされるおつもりですか?』
三咲の問いに、護進は机の上のホログラム機能を起動させ、それを手慣れた手付きで操作していく。
「この後の動きをシミュレーションしたものをお前らの端末に送った。前線については梓月が『グリット』でサポートしつつ現状維持だ。凛と奏の二人が居なくなった分は紬がカバーに入れ。現状はメナスの動きよりも味方のカバーの方が優先だ」
『私はタラシは専門外なんだけどね…了解したよ』
『司令、これまでの準備で私は戦闘補具をいくつか使用していますが…』
「合流後、他の奴から補充しろ。直接的に扱わない分、通常よりは使用頻度は高くねぇ筈だ」
梓月からの問いにも即座に回答しつつ、護進は並行して謎の擬態の正体についても思考を張り巡らせていた。
しかし流石の護進も目に見えないものについては考えが進まず、解決方法を導き出すのに苦戦していた。
その糸口を見出したのは、三咲であった。
『司令、メナスの擬態のことなのですが…』
●●●
「クッ…!!」
メナスの攻撃を間一髪回避し、タチは一度距離を取る。
ここまでは拮抗した戦いを繰り広げてきたタチであったが、後方支援が薄くなったことで、次第に劣勢を強いられつつあった。
「(『残志彷徨う不朽の刃』で相手の動線を切ることでどうにか戦えてはいるが、少しずつ動きが見切られてきている…それに私の『グリット』の特性を理解してか、接近しての攻撃が少なくなっている…このままではジリ貧だ…)」
レーザーによる牽制により、タチは前に出ることが出来ず、更にはそれにより態勢を崩され、本来タチの十八番であるはずの近接戦闘でさえ後手に回らされる。
三咲達が随時援護射撃を行うものの、僅かに動きを止める程度にしかなっておらず、加えて援護は朝陽やヴィルヴァーラにも行なっている。
手数が手薄となっている現状では、その火力だけでは不足していた。
「(『飛影』で遠距離戦に応じるか…?否、私の『飛影』はあくまで必中場面でのみ有効な技。撃ち合いには向いていない…そもそもあの技はエナジーの消費が激しい…下手に扱えば私は一気に崩れる…)」
迫りくる攻撃を間一髪のところで凌ぎながら、タチは活路を見出すべく考え続けていた。
「(しかし、そのリスクなしに好転は見込めない…やむを得まい…一か八か、死中に活を見出す!!)」
タチが覚悟を決め、『影漆』にエナジーを込めようとした瞬間だった。
「…!?」
タチが相手をしていたメナスに対し、光線が放たれる。それは少し離れた位置で、同じく最前線で戦っていた朝陽から放たれたものであった。
「朝陽さん!?助かりますが貴方も既にいっぱいいっぱいのはずです!!自分のことに集中を!!」
タチの言う通り、朝陽にも他の前線組を庇う余裕はなかった。
元々6体を相手にし、その数は4体まで減ったとはいえ、後方支援が無くなったことで、差し引きはゼロである。
実際、今の攻撃の隙を突いて、メナスが朝陽に攻撃を仕掛けていた。
朝陽はそれを懸命にさばきつつ、タチとヴィルヴァーラに通信んを入れて話しかける。
「タチさん、ヴィルヴァーラさん!!このままだと私達三人はジリ貧です!!一度戦い方を変えましょう!!」
「戦い方を…変える?どういうことでしょうか」
朝陽の言葉に、タチが返す。
「後方支援が減った状態で、三人が散らばったまま戦うのは不利です!私達三人が集まって、前線での攻撃の厚みと、後方支援の不足を補いましょう!」
朝陽の話の内容に、タチは納得したように頷くが、ヴィルヴァーラは僅かな躊躇いを見せていた。
「確かにプランとしてはありだけれど…私達が距離を詰めるということは、私に関するリスクが増すことになるわ。下手をすればより状況を悪くする可能性だって…」
「大丈夫です!!信じてますから!!」
それは、朝陽がヴィルヴァーラを説得した時と同じ、身勝手な信頼だった。
けれど、その時と同じように、ヴィルヴァーラは呆れた様子を見せつつも、どこか不思議な安堵感を覚えていた。
根拠は何もないはずなのに、朝陽が言うのだから大丈夫だと、そういった自信が自分の中で生み出されていた。
「確かに追い詰められているのは私達の方…朝陽さんの作戦が一番得策か…」
タチも直ぐに納得し、朝陽の考えに賛同する。
「三咲さん、みんな!!いまの話聞こえてましたか?」
『聞こえてました。確かにいまはその方が効率は良さそうですね。ですが司令官の指示では…』
『いや、構わん。実際に戦場の前線で戦っているお前らがそう判断したのならそれで良い。プランの変更はしておく』
護進の指示は現状維持であったため、三咲は一瞬答えを躊躇したが、逆に護進がそれを推進する形となった。
『悪戯に形を変える方がいまは不利だと私は判断した。だがお前は現状のままでは形勢は覆せない。だから戦力を集約することで打破を図る。そういうことだな?』
自らの戦術の誤りを隠すどころかしっかりと受け入れ、それを伝える。それは護進と朝陽の意図をしっかりと伝える役割を果たしていた。
「そこまで深く考えていたわけじゃないです。でも、その方が仲間を守って戦えるし、きっと生き残れると思ったんです」
『思慮にかけるな。戦場での戦いでは本能と直感だけに従うのは危険だ。一つの間違いが大きな窮地を招くことになる。覚えとけ』
「…はい」
消沈気味に答える朝陽に対し、護進は『だが…』と続ける。
『そのプランを受けて計画を練るのが私達司令官の仕事だ。その私の目から見ても、いまのお前の判断は正しいぞ。良く進言してくれた』
「…!護進司令官!」
『プランを変更するぞ。前線三人は集結し、各個撃破から連携攻撃に切り替え。後方支援は防御支援から攻撃支援に切り替えろ』
護進の指示に、紬が質問する。
「攻撃支援ん〜?それってこれまでとは何が違うのぉ?」
『これまでは前線組が攻撃した後にできる隙を、後方支援組が攻撃することで防いできた。今度は逆だ。前線組が攻撃できるよう先手を仕掛けて隙をつくる。姿の見えない敵がいるからこそ、今見える敵を即座に倒す、攻撃的シフトだ』
「成る程ぉ。了解♪」
全員に指示が行き渡ったのを確認し、護進は再び声を上げ指示を出す。
『さぁ、反撃の時間だ!!』
「「「了解!!」」」
※後書き
ども、琥珀です
未だに世界は新型のニュースで溢れていますね
ただ日本はだいぶ好転しつつあるようで安堵です。
とかいって、私は全く新型関係なく出る職種なんですけどね…