第103星:負傷
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。現在、現場を離れている大和に代わり、根拠地の指揮を執っている。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。
早乙女 護進(28)
派遣交流の監査役として千葉根拠地にやってきた(というか連行)非戦闘員・専門指揮官。『軍』最高司令官である早乙女 護里の息女であるが、品行は非常に悪い。大和の戦術の師であるが、過去に重いトラウマを抱えており…?
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23) 四等星
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。
久留 華 (22)四等星
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。
曲山 奏(20)四等星
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。
【三咲小隊】
椎名 紬 22歳 四等星
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。
八条 凛 16歳 四等星
自信家で勝気な性格だが、実際は素直で純粋な性格。
大刀祢 タチ 17歳 四等星
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。
「カハッ!だ、大じょ…急所…外れ…」
「喋らないで下さい凛さん!!直ぐに処置しますので!!」
腹部をレーザーで貫かれ倒れ込んだ凛のもとに、奏が真っ先に駆けつけ応急処置を試みる。
不幸中の幸いというべきか、凛の言う通り急所は外れていた。
しかし、その出血量は少なくなく、このままでは出血多量により最悪の事態を招く恐れがあった。
「とにかくまずは止血を…ッ!?」
応急パックを取り出し、治療を試みた奏であったが、これを好機と見た数体のメナスがここぞとばかりに攻撃を仕掛けてくる。
レーザーを屈折させるために『グリット』を発動する必要のある奏は、その対処に追われ処置にまで手が回らなかった。
「くっ!!急いでいるという時にっ!!」
珍しく奏には余裕が見られず、その表情は険しかった。
「私がぁ、応急処置をするよぉ」
とそこへ、奏に遅れて華がやってくる。
「だ、ダメ…華さ…華さんまで…ゲホッ!治療に回った…ら、前線の支援…が」
命の危険に瀕している状況でありながら、凛は自身よりも朝陽達、前線組の心配をしていた。
「私達は問題ありません!!奏さん、華さん!!凛さんをお願いします!!」
それにすかさず答えたのは、前線で戦い続ける朝陽であった。
これまで後方支援として居るだけでプレッシャーを与えていた凛達がいなくなったことで、前線の戦いはより激しさを増していた。
そんな状況下でありながらも、朝陽は凛と同様、自分のことよりも凛の身を第一に考えていた。
『三人の抜けた穴は私達がカバーするさ』
『奏、華さん、二人はとにかく凛の救命を第一に動いてください』
朝陽だけでなく、更に後方で視ていた三咲と紬の二人も、凛を第一に動くよう二人に伝える。
「みん…な、ごめん…タチ…援護できなくって…」
「謝る必要はないですよ凛。貴方にはこれまで幾度と助けられ、救われてきました。今度は、私が貴方を救う番です」
同じ小隊のメンバーであり、前線で戦い続けるタチに言葉をかけ、タチはこれにしっかりと答えた。
激しい戦闘音が響き渡る中で、華が必死に止血を試み続ける。
「…ごめんねぇ凛ちゃん。私が油断したばかりにぃ、凛ちゃんに怪我を負わせちゃったねぇ」
「ゲホッ…華さん…が、謝ることじゃない…よ。攻撃に気付かなかっ…た私の失態…だから」
その声には明らかに覇気がなく、かすれた声は精気を失いつつあった。
ある程度出血は治ったものの、そこに至るまでに明らかに出血しすぎていた。
しかし、手持ちの救急パックでできるのはこれが限界であった。
さしもの華達も判断に迷う中で、護進がすぐに次の動きを指示を出す。
『おいストレートカーブ女。貧乳ツインテを連れて根拠地に戻ってこい』
「ストレートなのか曲山なのか分からないのに、私だと分かってしまう複雑な心境!!ですが私が撤退ですか!?」
メナスの攻撃を曲げながら、奏は護進に問い返す。
『そうだ。恐らくいま貧乳ツインテは出血多量によるショック状態だ。そんままじゃいつ何が起きてもおかしくねぇ。だからソイツをお前が…』
『いつ貴方は医者になったのかしら』
その護進の指示を、別の声が遮った。
『お前…』
『ここの暫定指揮官は貴方かもしれないけれど、ここの医療責任者は私よ。例え司令官であろうと、命に関わることであるのならば、私に従ってもらうわ』
その声は、千葉根拠地の医師、市原 紗雪な声であった。
『…あぁ、そうだな。貧乳ツインテのことはお前に任せるよ』
『元よりそのつもりよ。曲山 奏』
「はい!!」
普段の気怠げでめんどくさそうな雰囲気とは違う、真剣な声色で話しかける紗雪に緊張感を覚えながら、奏が返事を返す。
『護進の言う通り、八条 凛を連れてくるのは貴方が適任よ。理由の一つは彼女をレーザーから守りながら移動できること。そしてもう一つは、緊急処置をしながら帰還できるからよ』
「私が、ですか!?どのようにしてでしょうか!?」
戦闘をこなしながらの状況でありながらも、奏は出来ないとは答えず、直ぐにその動き方を尋ねた。
『いま八条 凛は脈拍が弱まり、全身に血が回りきってない状況よ。特に脳に十分な血液と酸素が回らない状況が続くと後遺症が残りかねない。だから、貴方の『グリット』で一時的に…』
「屈折を利用して血液の循環を擬似的に行うわけですね!!理解しました!!」
そこからの奏の動きは迅速であった。『偏光反射鏡』を一枚取り出し、それを自身の右上に展開。
メナスの放ったレーザーを、その鏡の方へと屈折させると、『偏光反射鏡』は更にレーザーを反射させ、レーザーを放ったメナスへと跳ね返っていった。
メナス達はこれを直ぐに回避するが、その間、先程までの攻撃は止まっていた。
その一瞬の間に奏は腰につけていたパックを外し、華に手渡す。
「私が持ってきた『戦闘補具』です。いま一枚使用してしまいましたが、まだ数は十分にあります。これで朝陽さんを援護してあげてください」
「わかったよぉ。奏ちゃんに負担をかけちゃってごめんねぇ」
「お任せください!!私も凛さんを送り届けたら直ぐに戻ってきますので!!それまではどうか…」
言葉にし辛そうな奏の手を華はそっと握り微笑む。
「大丈夫だよぉ。私達にはたくさん頼れる仲間がいるしぃ、朝陽小隊にはまだ梓月ちゃんもいるからぁ」
『ずっと不通で申し訳ありません。任せてください。私も準備は進めておきますので』
戦闘開始からこれまで裏で仕込みを進めていた梓月からの通信を聞き奏は頷くと、ゆっくりと凛を抱る。
「今から根拠地に戻ります。『グリット』を使用しながらの移動ですのでやや手荒くなりますが許してくださいね!!」
「ありがと…奏さん。宜し…くね」
それを最後に、凛はゆっくりと意識を手放していった。
奏はそれと同時に『グリット』を発動。凛の傷の部分を屈折させ、止血と同時に血液の循環を誘導させる。
「離れます!!援護を!!」
その言葉と同時に奏は移動を開始。既に攻撃態勢を取り戻していたメナスが攻撃を仕掛けるが、『グリッター』の各々がそれを阻止していく。
「そうは…」
「させん!!」
朝陽は『六枚刃』を展開させメナスを牽制。同じくタチも『影漆』を振り切り、メナスの動線を絶っていく。
それでもそれを通り抜けてきたメナスのレーザーを、華が『耐熱反射鏡』を展開することで防ぐ。
「二度も仲間はやらせないわぁ」
華専用のポットを取り出し圧縮を解除。中から取り出した輝線機関銃を撃ち放つ。
これにより、戦いは再び均衡化。その隙に奏は戦線の離脱に成功していた。
「(早い段階で機関銃を出すことになっちゃったわねぇ…私はエナジー量が多くないからぁ、消費の激しい機関銃は出来るだけあとに出したかったんだけどぉ…)」
それでも、華は撤退する奏達を守るために、輝線機関銃を撃つことを止めなかった。
戦線からある程度離れた位置まで移動した奏は、凛の治療に集中しつつ、周囲への警戒は怠っていなかった。
直後、再びどこからともなくレーザーが放たれる。奏はこれを屈折させ防ぐ。
「(後方から放たれたということは、追撃してくる様子はなさそうですね。一先ず安心ではありますが…)」
奏はレーザーが放たれた方角に視線を向けるが、その先にはメナスの姿を確認することは出来なかった。
「(これも擬態…なのでしょうか?しかし、それとは何か違う…そもそも擬態は無効化しているはず。それではこれは…)」
その時、意識を失っている凛が咳き込み、僅かに吐血する。それを見て奏は顔を振り、自身の周りと凛に意識を集中させた。
「(それを確認するのは私の役目ではありませんね。今はとにかく、一刻も早く凛さんを送り届けなければ!!)」
奏は更に『戦闘補具』のギアを上げ、根拠地へと急いで行った。
※感想
指が痛い…