第102星:試作
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。現在、現場を離れている大和に代わり、根拠地の指揮を執っている。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。
早乙女 護進(28)
派遣交流の監査役として千葉根拠地にやってきた(というか連行)非戦闘員・専門指揮官。『軍』最高司令官である早乙女 護里の息女であるが、品行は非常に悪い。大和の戦術の師であるが、過去に重いトラウマを抱えており…?
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23) 四等星
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。
久留 華 (22)四等星
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。
曲山 奏(20)四等星
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。
【三咲小隊】
椎名 紬 22歳 四等星
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。
八条 凛 16歳 四等星
自信家で勝気な性格だが、実際は素直で純粋な性格。
大刀祢 タチ 17歳 四等星
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。
朝陽が交戦を続ける少し前、中後方支援組である、凛、奏、華の三人は、凛のたてた作戦を試みるべく準備を進めていた。
「どう華さん、できそう?」
「うん、思ってたよりも何とかなりそうだねぇ〜とりあえず一つ作ってみたから試してみてぇ」
そう言って手渡されたのは、銃弾サイズの鉄筒。
凛はそれを受け取ると、前回のベレッタとは異なる、リボルバー式の銃を取り出し、六つの穴のうちの一つに装填する。
「うん、サイズピッタリね!!あとは私の『エナジー』を吸収してくれるかだけど…」
凛の『グリット』、『アナタの・ハートを・狙い撃ち』は、自身のエナジー同士を引き付け合う能力である。
通常なら相手に触れる必要がある能力であるが、凛は技術班のリナと開発を進めていくことで、自身のエナジーを吸収する弾丸と、それを促進する銃を創り出していた。
また、凛自身の『グリット』も、モノにエナジーを付与することに向いていたこともあり、開発した弾丸でなくとも、一定のエナジーを付与することが可能となっていた。
「…お!行けそう!これは試してみる価値あるよ華さん!!」
「おぉ〜じゃぁ試してこぉ〜」
戦場にいるのか分からなくなるようなフワフワした声で、華は凛の作戦を推していく。
『…奏!』
「おっと危ない!!」
その作業に意識を向けすぎていたのか、凛の方へとメナスのレーザーの流れ弾が飛んできていた。
しかし、それをいち早く視ていた三咲が伝え、奏がすぐに反応し、『目的地変更』によって、レーザーを曲げていった。
「危ないところでしたね!!防御は私が務めますので、凛さんはどうぞ狙撃に集中してください!!」
「ありがとう奏さん!!助かったわ!!」
礼を述べると凛はゆっくりとリボルバーを構える。
凛は優弦のような狙撃手ではない。そのため、距離の離れた相手に対しては、それなりに時間をかけて狙わなくてはならない。
「(まぁ数撃ちゃ当たりはするでしょうけど、出来るだけ手の内は晒さないようにしておきたいし、何より適当に撃って味方に当たることだけは絶対に避けないといけないわ)」
凛は千葉根拠地の四小隊において最年少の部類に入る。
その若さゆえに先走ることもあるが、その実力は伊達ではない。
その実力を発揮するための力量も十分に備えられている。
しかし、大和が凛を三咲小隊に組み込んだのは、その相性の良さがあったからである。
そして、それを考えついた大和の考えは、当然護進も気付いていた。
『おい巨乳メガネ』
『巨…ッ!?わ、私のことですか!?』
突然の通信よりも、その呼称に驚く三咲であったが、護進は一切相手にしない。
『あのツンドラロシアッ娘に動き出しを指示してやれ』
『ツ、ツンドラロシアッ娘!?ヴィルヴァーラさんのことですよね!?動き出しというのは?』
『んなのお前が一番視えてんだろうが。貧乳ツインテの射線を作ってやれって言ってんだよ』
呼称がめちゃくちゃであるにも関わらず、何となく誰のことを指しているのか分かってしまうことを悲しく思いながら、三咲は護進の言わんとしていることを理解する。
そして改めて視界を広げ、ヴィルヴァーラの位置と凛の位置、そして周囲にいるメナスの位置を確認する。
『ヴィルヴァーラさん、次の攻撃でメナスを左へ誘導出来ますか?』
「Что?誘導?それに何の意味があるというの?」
『言葉にするより行動にする方が早いと思います。私を信じてください』
ヴィルヴァーラは僅かに躊躇いはしたまのの、三咲の言葉を信じ、冷気を放つ。
もとより当てるつもりのなかった冷気は当然のように避けられるが、三咲の指示通り左方向への誘導に成功していた。
次の瞬間ーーーーーダァン!!
轟く轟音と同時に、誘導したメナスの腹部に銃弾が命中する。
【ーーーア゛ア゛!?】
どこからともなく撃ち抜かれたことに驚くメナスは、射線を読み取り、凛達の方へと目を向ける。
「お見事です!!見事に命中しましたね!!」
「これだけお膳立てしてくれれば流石にね!ヴィルヴァーラさんもナイスアシスト!」
タイミングも狙いも完璧であった。
ヴィルヴァーラの冷気を放つタイミングを見計らい、メナスが回避に動いたところで引き金を引く。
狙撃手ではないというのが嘘だと思うほど、見事な腕前であった。
そして、この完璧な連携攻撃に、ヴィルヴァーラは意図しない高揚感を感じていた。
「(Почему?戦闘中だというのに、私は何を高揚しているの…?)」
ヴィルヴァーラにとって未体験であったこの感覚に、戸惑いを隠さずにいた。
「(戦いの場で気を高めるなんて、不利なことしか無いはずなのに…なのに…私は今、この高揚感を…悪く無いと感じている)」
凛達にとっては日常レベルともいえる基本的な連携攻撃であったが、これまで一人で戦い続けてきたヴィルヴァーラにとっては、未知のスタイル。
それが、彼女の心を震わせ、昂らせていた。
『…!!ヴィルヴァーラさん!!メナスはまだ生きてます!!』
「っ!?しまっ…!?」
その未知の経験は、これまで常に戦場で油断をしなかったヴィルヴァーラに、一瞬の隙を生ませた。
元々メナスとの距離はさほど離れていない。その距離で出遅れれば、ヴィルヴァーラと言えど対応が間に合うはずもなかった。
「なめなさんなっての!!こっからが私達の本当の連携よ!!」
「と言ってもぉ、次に攻撃するのは私だけだけどねぇ」
がしかし、次の一手はメナスではなく、凛と華が打った。いや寧ろ、ここまでが二人にとっての攻撃であった。
華はこれまで通りフワッとした笑みを浮かべたまま、ポンッと掌と掌を重ねると、『グリット』を発動させる言葉を吐いた。
「はいぃ、解放ぉ〜」
その直後であった。
【ーーーーーカッ…!?】
突如メナスが発光。だけでなく、腹部を貫くようにして光線がどこからともなく放たれていた。
訳もわからず貫かれた自身の腹部を見つめながら、メナスはゆっくりと黒い塵と化し消滅していった。
「い、今のは?貴方達の攻撃なの?」
状況が掴めていないのはヴィルヴァーラも同様で、驚いた目付きで凛と華の二人を見る。
二人はそれぞれ特徴的な笑みを浮かべながら頷いた。
「えっとねぇ、まず私の『抑圧開解』で、朝陽ちゃんのレーザーを圧縮したポットを、更に圧縮したのねぇ」
「ま、待って…そんなこと出来るの?」
初めから話の内容についていけなかったヴィルヴァーラが思わず待ったをかける。
「出来るよぉ。私の圧縮は基本的に限界が無いからなぇ。勿論、圧縮すればするほどエナジーは消費しちゃうけどぉ」
タメもなく即答され、ヴィルヴァーラは考えるのをやめ、一先ず無理やり納得させて話をの続きを聞くことにした。
「でぇ、ポットをちょうど弾丸くらいまでのサイズに圧縮したらぁ」
「私の特別仕様の輝線銃に装填して撃つ」
「それでぇ、メナスの体内に弾丸が残ってるタイミングでぇ、ポットの圧縮を解除ぉ。そしたらパーンって撃ち抜けるっていう…」
「…無茶苦茶だわ…弾丸を圧縮して創り出して、それが当たれば中から光線…?初手でそれをくらって消滅したメナスに同情しかねないわ…」
強力無比な攻撃方法に、先程までの昂りは何処へやら、ヴィルヴァーラは最早引いていた。
しかし、結果的に自身がその連携攻撃により助けられたのも事実であるため、複雑な心境ながらも二人に感謝の言葉を告げていた。
それと同時に、ヴィルヴァーラは冷静に今の攻撃のさりげないことにも気が付いていた。
初めてリナと出会ってから、それなりに会話を交わすくらいに友好を深めていたヴィルヴァーラは、以前、凛のカスタマイズ銃であるベレッタ型の輝線銃を目にしていた。
しかし、今回から取り出したのはリボルバー型の銃であった。
リボルバーの利点は、弾詰まりを起こさない点にある。その利点を、凛は今の攻撃でしっかりと活かしていた。
初の連携攻撃であるにも関わらず、もし華の圧縮弾が十分にフィットしなかった場合に備えて、凛はベレッタではなく、リボルバーを選択したのである。
万が一ベレッタを選択し、圧縮弾が上手く排出されなければ、凛は攻撃の手を一つ失っていただろう。
この咄嗟の判断力の高さも、凛が実力者であることを表す証拠のひとつであった。
「(ロシアはЯпонияと並ぶ戦力保持国だと言われているけれど、考えを改める必要があるわね。これ程等星が低い者でさえこれ程の実力。正直まだまだ底が知れないわ)」
感嘆と畏怖の感情を交えながら、ヴィルヴァーラは凛達を見つめる。
二人はヴィルヴァーラの視線に気づくことなく、既に次の攻撃の準備に入っていた。
「上手くいけばかなり数を減らせそうだねぇ。このまま次もいってみよぉ」
「そうね!!まずは数の多い朝陽さんのメナスから…」
そう言って、華から受け取った圧縮弾を再びリボルバーに装填しようとした瞬間であった。
『…っ!?凛!!』
「…え?」
先程とは真逆。一筋の光線が、凛の腹部を貫いていた。
※謝罪会見
お久し振りです、琥珀です
長らくお休みいただき申し訳ありませんでした。
完治はしましたが、なんだか指には違和感を感じますね…
とはいえ執筆はこなせそうですので、まずは週2、落ち着いたら週3に戻していきますので宜しくお願いします!!