第99星:リスク
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。現在、現場を離れている大和に代わり、根拠地の指揮を執っている。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めており、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『グリット』を覚醒させ、仲間の命を救う。大和から信頼され、小隊長にも任命される。
早乙女 護進(28)
派遣交流の監査役として千葉根拠地にやってきた(というか連行)非戦闘員・専門指揮官。『軍』最高司令官である早乙女 護里の息女であるが、品行は非常に悪い。大和の戦術の師であるが、過去に重いトラウマを抱えており…?
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23) 四等星
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。
久留 華 (22)四等星
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。
曲山 奏(20)四等星
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。
【三咲小隊】
椎名 紬 22歳 四等星
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。
八条 凛 16歳 四等星
自信家で勝気な性格だが、実際は素直で純粋な性格。
大刀祢 タチ 17歳 四等星
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。
「朝陽小隊、敵影視認!!戦闘態勢に入ります!!」
展開された『偏光鏡』により姿を現したメナスを確認した朝陽達一行が、各々『グリット』を発動し、戦闘態勢に入る。
『朝陽さん。私達は後方でカバーに入りながらを戦闘を行います。報告通りなら敵の数は15。小隊による各個撃破より、纏まって撃退する方が効率的です』
「了解です!!」
通信機越しに入った三咲の指示に従い、朝陽達は後方から追い付いてきたタチと凛の二人と合流する。
「そういうわけだから宜しくね!!私は奏さん達と準サポートに入るから!!」
「私は朝陽さんと前衛の強化にあたります。朝陽小隊の皆さんはいつも通りの動きをお願いします」
既に三咲から指示を得ていた二人は、すぐさま自分達の役割を伝える。
「朝陽ちゃんの他にぃ、前線で戦える人が増えるのは嬉しいねぇ」
「そうですね!!得てして私達の小隊は朝陽さんの負担が増えがちでしたから」
「それに…今回はヴィルヴァーラさんもいらっしゃいます。前線の火力も申し分ありません」
自分が素直に頼られていることに、複雑ながらも照れた様子のヴィルヴァーラ。
すぐさま真剣な面持ちとなり、冷静に言葉を吐く。
「純粋な火力…いえ、私は氷力かしらね、なら負けはしないわ。けれど、貴方達の強みである連携に関しては、私は十分でない。勿論私も配慮はするけれど、絶対に巻き込まないという自信はないわ」
ヴィルヴァーラの『永久凍土』は冷気を発する『グリット』である。
メナスさえも凍らす強力な『グリット』であるが、放った冷気の射線状に入れば、味方も巻き込みかねない。
連携が取れていない現状を考えれば、そのリスクは小さくなかった。
その懸念を取り除いたのは、通信で割って入ってきた一人の女性であった。
『そんなのどーとでも出来るぞ』
「え…?えと…この声は確か…」
朝陽が名前を出そうとしているのも気にせず、声の主、護進が続ける。
『今から咲耶に代わって私が臨時で指揮を執る。文句も反論も聞かねぇ。黙って従え』
「え、えぇ!?で、ですがそれは…」
『申し訳ありません、皆さん。この方の言う通り、本戦闘における指揮は早乙女 護進司令官代理に委任しました。作戦中は護進さんの指示に従ってください』
突然の事態に、一行は戸惑いを隠せずにいたが、奏がそれを払拭する。
「悩んでいても仕方ありません!!咲夜さんがお認めになられる程の方ですし、問題は無いでしょう!!それに、何よりメナスはもう目前です。指揮に従うしか選択肢は無いでしょう!!」
『お、なかなか物分かりの良い奴がいるじゃねぇか。そういう奴は好きだぜ、私はよ』
「恐縮です。ですが、司令官代理殿。我々は日頃より大和司令官の指揮に慣れております。半端な指示では納得できませんよ!!」
味方を納得させつつ、護進にも臆せずプレッシャーをかけた奏だったが、マイクから返ってきたのは笑い声であった。
『はっはっはっ!!いいねぇ、引くだけでなく推す強さも持ってんのか。お前、なかなか見所があるよ』
怒号が返ってくることも覚悟していた奏はどこか気が抜けつつも、同時にこの寛容とも取れる対応に、見覚えがあった。
『さて、半端な指揮じゃあ満足出来ないんだったか?安心しろ、私はあの小僧の戦術の師だ。少なくともアイツよりは満足な指揮を見せてやるよ』
そして直ぐにその答えは返ってきた。そう、奏が感じた親近感は、大和のものであった。
上官に対する無礼を歯牙にも掛けないその寛容さを、奏は護進から感じていたのだ。
同時に、雰囲気こそ全く違うが、大和の師であることもスッと納得することが出来た。
「成る程!!それは楽しみです、宜しくお願いします!!」
最早反対するものは誰一人いなかった。護進は奏とのやり取りだけで、朝陽達を納得させていた。
「それで、マユキ司令官代理、どうやって私の戦闘参加リスクを減らすというの?」
『さっきも言ったが難しいことは何もねぇよ。そもそもお前だって無闇矢鱈に《グリット》をぶっ放すわけじゃねぇんだから、そのリスク自体少ないだろうが』
「それはそうだけど、それでもリスクがないわけじゃ無いわ。存分に力を発揮できないのでは、戦うに戦えないのだけれど?」
奏とは違う、真正面からぶつかり合うようにして、ヴィルヴァーラは護進に反論する。
『そのリスクはお得意のお仲間さんがカバーすりゃいい話だ。サポートタイプの小隊長…樹神 三咲とか言ったか?そいつの《グリット》を利用すればリスクは減らせんだろ』
「…成る程、三咲さんの『グリット』を、敵の視認ではなく、味方の観察用途に使用するわけですね」
「三咲さぁん、それは可能なのぉ?」
『可能です。私の《対敵生命体感知》の範囲内で、敵を視界に固定せず、味方の色に注視していれば出来ます』
三咲の答えは是であり、全員がヴィルヴァーラの攻撃のリスク回避に納得していた。
しかし、その役割を担う三咲は、まだ一つの懸念を抱いていた。
『ですが、その分メナスへの警戒が薄くなってしまいますが…』
『バカヤロォ、そのリスクを軽減するために、同系列の味方が小隊に組み込まれてんだろうが。一人が味方を見るならもう一人が敵に注視すれば良い。そのくらいの調節くらい出来んだろうが』
がしかし、護進はこれにも直ぐに答えを導き出していた。
『いいか、大和が編成を漠然としてるわけがねぇだろ。一部は説明してるかもしれねぇが、アイツの意図はもっと沢山ある。答えばっか聞いてねぇで自分達で考える癖もつけろ』
護進は指摘だけでなく、大和に甘え切った朝陽達に一度喝を入れる。
それだけで、朝陽達の空気は一気に引き締まる。
『戦術は確かにお前達の力を引き出すかもしれねぇけどな、元々お前達は自分達で考えて戦って来たんだろうが。アイツの出す戦術に自分達の考えを重ねることを考えたことは無かったのか?』
一行、特に三咲が思い出したのは、大和着任後の最初の戦闘時のことであった。
あの時、三咲は大和の考えに納得できないからと、ただ反発するような真似をしてしまっていた。
今にして思えば、護進の言う通り大和の考えを理解し、自分の思いを伝えれば良かっただけのことであったのだ。
『ちょうど良いやな。今回の戦闘で、私は基本の方針を指し示していく。それをどう活かすかはお前達次第だ。自分達で戦況を動かしてみろ』
「え、でもそれだと護進さんが戦術を建てられないのでは…」
『私を舐めるな。お前達程度がどう動こうが、直ぐに修正できる』
通信機越しからでも分かる護進の自信が伝わり、朝陽達は一先ず護進を信じることにした。
『最初の指示は言った通りだ。サポート役の片割れが味方を見て、もう片割れが敵を見る。交流生もそれだけに甘えんなよ?サポートを受けつつ、今まで以上に仲間の動きを意識しろ。そして慣れろ。味方を傷つけたく無いなら自分で動け』
「Да、もちろんそのつもりよ」
護進の指示と言葉掛かに、ヴィルヴァーラも力強く応じる。
『よし。分かってると思うが、相手は【悪厄災】だ。生半可な相手じゃねぇ。だが勝てない相手でもねぇ。お前達の力と、私達の頭脳があれば必ず打ち倒せる。お前達が全力を尽くす限り、私が必ず勝利に導く手立てを探し出す、だから…』
護進は一度言葉を止め、全員に無言で傾聴を促す。朝陽達もそれを感じとり、次の言葉を待つ。
『お前達の命、この戦闘の間だけ私に預けろ』
「はい!!!!」
※後書き
ども、琥珀です!!
年を明けてからの好調から一転
書けない日々が続きます。
忙しいのもあります。しかし、もう半分くらいは筆が乗らないというのが現実です…
これを乗り切ればまた書ける日々となりますが果たして…
そんな思いで投稿の設定をし、ふと気付く。
あれ、これ次の話で本編100話目じゃないk…
本日もお読みいただきありがとうございます!
次回の更新は水曜日の朝8時頃を予定していますので宜しくお願いします!