美少女JK。覚醒
目覚めよ……目覚めよ……め、目覚めて……
呻き声が聞こえた
人間の声だ
悲鳴が聞こえた
人間の悲鳴だ
痛い、助けて、やめてと叫ぶ声
重たい瞼を開けると、隣の席の少女が血だらけのクラスメイト達に群がられていた
クラスメイト達は足を太腿をお腹を胸を肩を顔を頭を、無我夢中で食べていた
少女は必死に叫んでいるが、喉に噛み付かれたのか、悲鳴は掠れた声に変わり、最後には何も聞こえなくなった
クラスメイト達は少女を食べ尽くすと、新しいご飯を求めて、ゆっくりと外へ歩き始めた
「ゥゔ……」
小女は起き上がった
食べ尽くされたはずの身体は何故か再生していた
少女と目が合った
どうやら私を食べるつもりらしい
目の前で大きく口を開けたので私は
少女を喰べることにした
九月のまだまだ暑さが続く中、気がつくと私は教室の机で眠ってしまっていた。
朝から激しい頭痛と倦怠感に襲われ、突然きた睡魔に抗えず、授業中に寝てしまったのだ。
目を開けようとするが何かがこびり付いて、うまく開けられない。
手で擦ると簡単に取れたので、目を開けて見ると、辺り一面が赤黒い血でいっぱいだった。
「⁉︎」
あまりの驚きに悲鳴をあげようとしたが、声が出ない事に驚く。
「……」あー、あー
まるで声を奪われた人魚姫のように口から音が出ない。
喉に触れてみても違和感はなく、呼吸も出来ることから、仕方ないかと諦める。
椅子から立ち上がると、朝からあれほど重かった身体が羽根のように軽く、頭もスッキリしていることに驚く。
今なら跳び箱十段を楽々と飛べそうだと、アホなことを考えられる程に、落ち着いていた。
血を避けながら窓の外が見える位置まで移動すると、ボロボロの制服を着た生徒と血でまだら模様になったワイシャツを着た先生達が、校門や運動場に佇んでいるのが見える。
目を凝らして見てみれば、クラスメイトや庭師のおじさんも生気の無い目で佇んでいるのがわかる。
そして気がつく、三階の教室から校門や運動場まではかなり距離が離れているのに、何故ここまでよく見えるのだろう。
私が四月に測った視力検査は0.8とB結果。
一番後ろの席であったので、今後のために眼鏡女子にジョブチェンジするかしないかを悩んでいたJKであった私が、マサイ族の血族でもない私が、軽く50mは離れている人の顔を認識出来たのか。
__まさか私……人間を辞めた?
それからの私の行動は、他人から見れば気が狂ったかのような光景だっただろう。
まず私はスクワットを初めて、椅子の足を思いっきり曲げるという筋力テストをした。
結果は普通に曲がった。
どうやら私はJKからゴリラJKにランクアップしたらしい。
続いて鞄に入っていた教科書を流し読みして、サイコロを二つ転がして出た目のページ内容をノートに書いてみた。
普通にかけなかった。
知能は据え置きでした。
化粧道具箱から立て掛けられる鏡で自分の容姿を見てみる。
スクワットをしている血塗れの私が写っていました。
爆笑ものですね。ただ、海で焼けた肌が真っ白になっていたり、目が赤くなってたりする以外は変わらず、美少女の私がそこにはいました。
体力的な面も、あれから続けているスクワットが100を越しても疲れを感じないことから、身体能力は人間を辞めたんだなと結論に至りました。
__私、美少女ゴリラJKになりました。
完璧なドヤ顔を晒し、廊下に出ると人の気配は無く、とりあえず空いたお腹を満たすために食堂へと足を運んで行く。
バーチャルゴリラちゅき