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冬威! 絶対に無事でいて! 由起の『願い事』よ! 絶対に叶えて!

冬威救出に動く面々。

冬威をピンチから救いだせるか!



「美優ちゃん冬威と連絡取れた?」

電話口でせわしなく由起が問いかける。


「由起ちゃんダメ、ラインも送り続けているけど全然リアクションがないの」

「私も全然返信がない…こんなこと今までなかったのに…」

「美夏にも連絡取ってみたんだけどやっぱり連絡取れないって…」

由起と美夏が慌ただしく会話を交わす。


冬威との連絡が取れないことについて双方の状況を伝え合っている。

「由起今日は冬威と会っていないの…最後に誰と会ってたのかがわかればその後の行方も想定しやすいんだけど…」

「お兄ちゃん昨日こっちに帰ってきたから美優と美夏は会っているけど夜になって出かけてから全然連絡が取れない…」


「美優ちゃんバイクは? 冬威バイクに乗って出かけてない?」

由起が不意に思い出したという感じで美優に問いかける。


「最近は夜走りに行くことってほとんどないけど…それにさっきから雨も降ってるし…。でもちょっとガレージ見てくる」

そう言うと美優は表に出てバイクの所在を確認する。


「由起ちゃんバイクない。お兄ちゃんバイクで出かけたんだ!」

電話口の由起に向かって美優が叫ぶ。

「美優ちゃんそっちは雨どう? 千葉は結構降ってるけど…」

「由起ちゃん、こっちもかなり降ってるよ」

美優は夜空を仰ぐ。


「もうお兄ちゃんこんな大事な時期に何やってるんだろ? 最近じゃあバイクに乗ること自体珍しいのにこんな雨の日に走りに行くなんて…」

「美優ちゃん…冬威どこに行ったんだろう…」

「由起ちゃんお兄ちゃんがどこに走りに行くとかあんまり聞いたことがないんだよね…」

しばし無言となる二人。


「美優ちゃん」「由起ちゃん」

二人が同時に名前を呼び合う。


「昔、みんなで鋸山に登った日に帰って来てから位置情報設定した!」

「そうそう! 下山してから疲れて寝ちゃったお兄ちゃんが起きて来た時、由起ちゃんとお兄ちゃんと美夏と美優で設定した!」

「ずいぶん前の話だけあれから設定は変えてないよね?」

「変えてないよ由起ちゃん!」


そう言うと二人は携帯電話を操作する。

「由起ちゃん…ここって山の中だよ?」

「どうしよう…こんな山の中にバイクで行ってこの時間まで全然リアクションがないってことは…」

「考えたくないけどバイクで事故ったって考えた方が良いよね由起ちゃん」

「…」

由起は無言になるがそれはこれからどう行動すべきか考えを巡らせているためであった。

『考えること、熟考すること、最善を選択し…行動すること、冬威が教えてくれたこと…』

由起が心の中で呟く。


「美優ちゃんキープさんに連絡して冬威の位置を伝えて! キープさんなら冬威がどういう状況にあったとしてもきっと何とかしてくれる」

「由起ちゃんわかった、冬兄ゆふにいに連絡する」

「由起もそっちに向かう!」

「由起ちゃんこんな山道に一人で言ったらダメ! お兄ちゃんならきっと止めるよ! 今、美夏が千葉方面にいるはずだから由起ちゃんを迎えに行かせるからそこで待っててね!」

「わかった美夏ちゃんを待ってる…ありがとう美優ちゃん」


そう言葉を交わすと電話を切り、美夏に連絡して状況を伝える美優。

そしてキープにも…。

「冬威ちゃんが…その場所なら俺もよく知ってる。昔、二人でよく走りに行ったとこだよ。もっとも最近じゃあ俺は全然行ってないけど。でも…やばいな。もしそこで冬威ちゃんがコケて谷に落ちてたとしたらこの雨はやばい。あそこは雨降ると山から水がしもって来て流れ込むんだよ…。美優ちゃん俺はすぐに向かうよ」

キープがそういうや否や電話も切らずに車に向かう。


「冬兄! 美優も乗っけて行って!」

「了解! 有以と千秋も一緒に連れて美優ちゃん迎えに行くよ!」


『冬威ちゃん…夜のライディングで油断したのか? あそこはトリッキーなコーナー多くてそれほどスピードは上がらないはずだけど、夜だとブラインドカーブもライトで対向車来るか来ないか確認できる分勢いブレーキング遅くなるからな…。スピードはさほど出ていないだろうけど…。ただ谷底に落ちたとなれば高さは結構あるからなぁ…。でかい岩はなかったはずだけど…』


キープは冬威の状況を想像し対策を練る。

そしておもむろに携帯の画面に指を持ってくる。


『ポイントXXX冬威ちゃんがバイクでコケてたぶん谷底に落ちた。連絡が取れないとこ見ると意識を失ってる可能性高い。谷から引きあげるのに人手とロープが必要。あとバイク引き上げるのに軽トラ! 対応できる者がいたらラインで応答後、力を貸してくれ! 冬威ちゃんがピンチだ! それから情報拡散頼む』

キープは仲間のライングループにメッセージを入力した後、有以と千秋を連れ車に乗り込んだ。

千秋は手早くバスタオルや毛布を用意している。


「千秋は気が利くね、ん? 有以ちゃん水筒?」

「温かい飲み物も用意してみた…」

「だね、この季節にこの雨だ、転倒、転落による怪我も心配だけど低体温症も心配だ…」

「兄ちゃん…早く冬威君のところに連れて行って!」

「わかってるよ千秋…」

いつものキープであれば冗談の一つも出るところであるが今は様子が違った。


「とりあえず携帯が入る場所で良かった。場合によっては…救急車呼ばないとな…」

「兄ちゃん…」

千秋が心配気な顔をする。

「大丈夫! 心配すんな! 冬威ちゃんは不死身だしこの俺がついてんだ! 今までだって何度も仲間と一緒に窮地を切り抜けてきたんだ! 冬威ちゃんは仲間を守ってきた! 今度は冬威ちゃんが助けられる番だ!」

「うん…兄ちゃん冬威君を助けて」

「その上可愛い妹の頼みとあっちゃあ張り切らずにはいられないな~」

いつものキープ節が出たことで千秋の緊張も少し緩む。


「有以は~」

緊張感のないふんわりとした有以が頬を膨らめて拗ねたように言う。

「もちろん有以ちゃんも可愛いよ~」

「兄ちゃん…そんなこと言ってる場合でもないけど…有以ちゃんのおかげでなんか空気が和む…。冬威君大丈夫だって気がしてきたよ…」


「千秋っ! 大丈夫だよ! 冬威は絶対大丈夫! 有以が保障する~。だってキープちゃんが助けに向かってるんだもん! 千秋の兄ちゃんは象でも谷底から引き揚げちゃう象~」

そう言うと右手を鼻のところに持ってきて象の真似をする有以。


「ぷっ有以ちゃんダジャレ?」

千秋が笑いその姿を横目に見たキープも微笑む。

『そうだ、何が何でも俺が冬威ちゃんを助ける! 谷底に落ちてるんなら例えそれが象でもクジラでも俺が引き上げてみせるさ!』


キープの腕に力が入り唸るように力を蓄えた。


『冬威…由起もすぐにそっちに行くから…無事でいて!』

美夏の迎えを待ちながら冬威の無事を祈る由起。


「冬威! 絶対に無事でいて! 由起の『願い事』よ! 絶対に叶えて!」

由起が冬威に向けて叫ぶ。


暗闇に溶け込んでしまいそうな冬威。

その指がまるで由起の『願い事』に呼応する様にピクリと動いた…





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