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タイムトラベルなんてテクノロジーは無い方が良いのかもしれない…

車の中で眠ってしまった由起。

館山道をかなやに向かい直走る車中で冬威と柳瀬がタイムトラベルに関して考えを語る。

「タイムトラベラーの命はタイムトラベルをすればするほど縮んでいくような気がします。時空を超えて時間を消費し、戻ってまた生きる。通常よりも多く時間を消費する感じですからね」

「…」

窓の外に目をやりながら冬威が言い、その言葉に無言になる柳瀬。

膝の上の由起がむずがる様にわずかに体を動かした。

そんな由起の頭をそっと撫でる冬威。


「この先も物理的なタイムトラベルは実現しないと思うんです。量子レベル、エネルギー体レベルでのタイムトラベルが唯一実現可能なタイムトラベルだと思います。いわゆる精神活動のひとつ。だから全人類がその能力を手にする可能性を秘めていると言っても良いと思います‥。でも、そうなったらどうなっちゃうのかな? 想像もつかないけど、誰もが正しい使い方をするとは考えにくいですね。だとしたらタイムトラベルなんてテクノロジーは無い方が良いのかもしれませんね…」

窓の外の見慣れた風景がいつもと違って見えた。


「ブロック宇宙論では過去現在未来が全て存在しているとされています。だとしたらそれは一元的な物ではなく輪廻した先の過去現在未来も存在しなければならないはずなんです。というか…輪廻した先はある時点からは未来になりますが転生した先では現在となる。するとブロック宇宙論では、その時点から先の未来も既に存在していなければならないことになる…。そうなると、それだけの空間を内在できるのは内的宇宙、深層心理の世界しかないと思うんです。そもそも物理的に過去現在未来が存在していたらそれは観測の対象となり得るはずなんですが、現時点ではそうではない…。つまり現に在りながらも現象としては存在しない…みたいな感じ? こうなるともう完全に無意識の領域と言った類の空間でしか存在し得ないと感覚的には捉えています」

「…」

無言で冬威の宇宙観について聴き入る柳瀬。


「ブロック宇宙論は輪廻まで定義していませんが、実はこの観点は外せないはずなんです。しかし現状ではビックバンからビッククランチまでの時間がまるで箱が並ぶように存在しているとまでにとどまっている。始まりから終わりまでが既に存在しているって言うことですね。でもこうなるともう過去現在未来の意味がそもそも消滅すると言っても過言ではないと思うんです。俺はビッククランチというのは理論上存在したとしても決して終焉でとはなり得ないはず…だと思っています。時空間もまた輪廻転生する…ビッククランチの先の過去現在未来もまた既に存在しているはずだと…」


「柳瀬さん、ごめんなさい勝手な持論を話し続けてしまいました」

「ううん、とても興味深かったわ」

「柳瀬さん? 俺はCERNの一部過激派のバックにいる組織は、彼らの純真な研究者としての心を操っている様な気がしてきました」

「どういう事?」


「創造主の望みが『終焉』であるっとAIシヴァに導き出させ、彼らがその研究を行う過程で創造するテクノロジーを利用するみたいな。例えばそれはタイムトラベルであったり瞬間移動であったり、量子力学を応用した破壊兵器だったり…。つまり黒幕は世界の終焉なんて本当は望んでいない。その過程での成果物をいただいて…」

「いただいて?」


「妄想的なのでこんなこと言うの気恥しいんですが、例えば究極のテクノロジーや兵器で世界を統治すると言った思想…」

「それがタイムトラベルの技術であればさっき冬威君が言ったように主体的に未来の技術を取り込み、その地点でも市場を制圧できるし、その変化は主体者である彼らの母体企業しかわからない。つまり未来の誰かが発明した技術も全て彼らの利益の為に利用される…みたいな?」


「そう言うことですね。基本的にタイムトラベルが可能となった段階でこう言った類に関しての時間の流れは全て無意味になります。さっきの話も究極1000年後の過去と未来を行き来することで、本来経過すべき1000年なんて飛び越して1000年後に画期的なテクノロジーをもたらした瞬間に1000年先に飛び、そこで1000年分熟成されたテクノロジーを得てまた過去に戻る…の繰り返しですからね。全てが瞬間的に終わります。最終的に行きつく先まで…」


「どこまで行けるのかしらね…人類は」

「物理的な存在としての限界は低いと思います。例えば完全な遺伝子治療が実現したとしても生命体としての『死』からは逃れられない。仮に逃れられたとすれば『不老不死』ですが、それは本当に生命が求めるべき物なのか疑問です。生き続けること『不老不死』=『幸せ』に繋がるのか…どうも違う気がするんです。それよりも意識レベルでの進化にこそ見るべくがあると思います。そしてそこに『ひとつになる』という大いなる目的が隠されているのではないかと…」


「う~ん…冬威君の仮説から推測するにやっぱりシヴァ達はCERNの研究者たちを利用して世界市場、ううん世の中を支配することにあるんだって思ったわ。シヴァはきっと純粋に創造主の意志を…なんて考えてないって…」


「そう考えるのが自然だと思います。しかしその過程でCERNの実験が破滅的な事態をもたらす能性があるとすれば何としても阻止しなければならない…」

「そうね…」


「いずれ科学は生命の根源、意志の源を手繰り寄せると思います。『笑う門には福来る』『仏は三世を見渡す』『情けは人のためならず』とか、ことわざが現在の科学で実証されている例がありますよね? 笑う門には~とか情けの人の~とかはNK細胞が活性化されて癌細胞を駆除する、仏は三世~などはまさにブロック宇宙論のことだと思うんです! だとすれば逆説的にことわざからこの先の科学技術というかこれから解明される真理を探ることも可能かな、なんて考えたりします」


「例えばどんなことを考えているの冬威君は?」

柳瀬が興味深げに言う。

「例えば…『袖振り合うも多生の縁』とか」

「…今のちょっとした関わりも実は前世からの縁、みたいなことわざよね?」


「そうです、このことわざは明確に輪廻転生、ひとつの意識が繰り返し生死を繰り返していることを指しています。だとすればこの先の、もっと具体的に言えば量子力学の研究が進むに連れ、意志の存在について明らかになって来るのではないかと思っています」

冬威は確信を持った視線をミラーを隔てた柳瀬に送った。








 

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