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冬威…これで冬威の未来も変わるよね?

埼玉男を撃退した面々がそれぞれの家路につく…

冬威達は現場検証、事情聴取を終えようやく警察署から解放された。

冬威の持つ証拠は埼玉の男の行動を裏付けるに十分な役割を果たした。


警察署から連れだって表に出て来る5人。

「冬威? どうしてキープさんと有以ちゃんが来てくれたの?」

ふたりの突然の救出劇がなぜ実現したのか気になる由起。


「あれあれ…」

そう言うと冬威は警察署の駐車場の一角を指さす。

その指の先にはキープの車の前に立つ千秋とひと葉の姿があった。


「千秋ちゃん…? どういう事?」

ますます訳がわからないと言う顔をする由起。


「つまり…千秋ちゃんに逢いに来たキープちゃんと有以ちゃんに応援に来てもらったってわけ! で、千秋ちゃん先輩のひと葉さんの部屋がなんと由起の隣だったから俺はひと葉さんの部屋のベランダから由起の部屋に侵入できたのさ」


「どうしてキープさんと有以ちゃんが千秋ちゃんに会いに来るの…?」

「由起さん、千秋は俺の妹なんだよ」

キープが由起に向かって言う。


「え~っつキープさんの妹…ってことは冬威とキープさんって同級生なの…?」

冬威とキープを見比べる何か言いたげな由起。


「そうだよ、キープちゃんと千秋ちゃんは年子で千秋ちゃんは俺のひとつ下の後輩だからね。なんだよ何か言いたそうだね由起?」

「だってキープさんの方が全然大人に見えるから…」


「どうせ俺はチビで童顔だよ!」「どうせ俺は外人顔で老け顔だよ!」

冬威とキープが同時に言いそれを聞いた女の子たちも同時に笑う。


「でも有以はキープちゃんの顔、大好き! シュワちゃんみたいでかっこいいもん!」

有以が満足気な顔でそう言うとキープの腕にしがみつく。


「俺も有以ちゃんのこと大好き! だって可愛いんだもん…」

そう言いながら有以の頭を優しく撫でる。


「オイオイ…キープちゃんキャラに合ってないって…『だもん』ってなんだよ『だもん』って…」

「良いんだもん! 可愛いんだもん」

冬威の言葉に反応してキープがおどけ、再び笑いの渦が広がる。


緊迫した状況から警察での取り調べ。

非日常から解き放たれた面々は気持ちをほぐすかのように笑い合う。


「千秋ちゃんの先輩ってさっき一緒に歩いてた人だね」

「そうだね。由起の部屋に有以ちゃんが自然に入り込んだところで、隙をついて俺が窓から侵入。由起と奈美ちゃんを救出するってのが当初の作戦だったんだけど…」


「有以思わず闘っちゃった~。だってあいつ隙だらけだったもん。それにその方が女の子たち安全だと思ったし~」


「オイオイ…有以ちゃんお願いだから…危ないことしないで…」

キープが困り顔で言う。


「冬威ちゃんは、あの埼玉男、有以ちゃんが一人で来たか必ず確認する。そして有以ちゃんの姿を見れば必ずドアを開けるって踏んだんだ」

キープが作戦について解説する。


「作戦通りだったでしょキープちゃん?」

「だね! 有以ちゃん可愛いから~。だけど想定外だったのは有以ちゃんがそのままミドルキック繰り出した辺りからだね…」


「で、有以ちゃんを守るためにキープちゃんが突入、逆エビ固めね。本来の作戦では有以ちゃんが部屋に入った段階で俺が突入して、その隙に有以ちゃんがカギを開けてキープちゃんも突入、だったんだけどね」


「埼玉男が有以ちゃんのこと変な目で見て鍵を開けたと思ったら腹が立って…本当は俺はハイキックか右ストレートで潰してやろうって思ってたんだけど…女の子たちの確実な安全を優先してマウント取ることにしたんだ…でも…有以に触りやがって、やっぱり右ストレート入れときゃよかった…」

そう言いながらこぶしを撫でるキープ。


「いやいやいや…キープちゃん? キープちゃんの右ストレート入ってたら今頃取り調べ出来ない状態だって…アゴ、砕けるでしょ?」


「まぁ…砕けてたと思うけど…」

「ダメじゃん…」

「怖~い」

由起と奈美が声を合わせて言う。


「有以だってあんな男のアゴ簡単に砕いちゃうんだから!」


「有以ちゃん…だからそう言うのは俺がやるからお願いだから暴れるのはリングで試合の時だけにして…」

「は~い」

むくれた顔で有以が返事をする。


しかしその目はキープを頼りにするように見つめ、まるで大木の幹の様な腕にしっかりとしがみついていた。


「冬威ちゃん俺達は行くよ」

キープが自分の車の前まで来るとそう言う。


「キープちゃんありがとう、助かったよ。俺一人じゃあ、ああは上手くいかなかった…」

そう言うと手のひらを上げキープとハイタッチをする。


「冬威ちゃん、俺達はいつだって一緒だよ! どっちかのピンチには必ず駆けつける! 仲間たちもそれに呼応して集まる。天羽HRあまはハートリングは仲間のピンチに目を背けない! だよね?」


「だね! キープちゃん! 千秋ちゃん、ひと葉さんありがとう」

「冬威君…由起ちゃんが無事でよかった、ひと葉先輩のことも冬威君に紹介できたし…なんだか慌ただしかったけど」


「ひと葉さん助けてくれてありがとうございました」

「ううん…役に立てて良かった…。冬威君すごいね…三階だよ? 怖くなかったの?」

ひと葉が冬威の顔をうかがいながら言う。


「いや…無茶苦茶怖かった。俺あんまり高いところ得意じゃないから。だからほんとに助かりました。一階から三階まで登るんじゃとんでもないことでした」

ひとしきり言葉を交わすとキープの車が走り出した。


奈美はキープの車に乗り蘇我駅まで送ってもらったようだ。


駐車場に残された由起と冬威。

「由起…これで由起の未来は完全に守られた…本当に良かった…」

「冬威…これで冬威の未来も変わるよね?」

心配気な顔で冬威を見上げる。


「きっと変わってるさ!」

「そうだよね!」

ことさら明るい顔で言う冬威にホッとする由起。


「冬威君…」

冬威と由起のそばに車が柳瀬の停まる。

「柳瀬さん」

「冬威? 誰?」

由起が怪訝な顔をする。


「葵衣ちゃんの隣に住んでる…」

冬威がそう言いかけると。

「あ、あ~あの時の! ごめんなさい私全然気が付かなくって…あの時は本当にありがとうございました」

由起が頭を下げながら言う。

「いいのよ、私も役に立ててうれしかったし。冬威君、由起ちゃん乗って」

そう言うと後部座先のドアを開ける。


「由起ちゃん、お家まで送るわ。帰りはパトカーってわけにはいかないだろうから」

「え…」

由起が返事に困って冬威の顔を見る。


「由起、お言葉に甘えて乗せてもらおう」

そう言うと由起をエスコートし自分もまた車に乗り込む。


「ふたりとも無事でよかった…」

「ありがとうございます柳瀬さん」

「ふたりは世界の未来にとって重要な人物なんだからね」

柳瀬が何気なく言う。


「冬威…柳瀬さんが言ってることってどういう意味? それにどうして柳瀬さんがここにいたの?」

由起が小声で冬威に囁く。


「ふたりの未来が世界の未来に必要ってことよ。 ふふっ私が警察署にいたのはね、私フリーライターなのよ。だから警察で何かニュースソースないか取材ってとこね」

由起の声を聞き止めた柳瀬が言う。

そして余計な詮索で苦しまない様、方便を交えて由起に話す。


「そうだったんですね、ふたりの未来が…って言うのは?」

由起が冬威の方を見て言う。

「さぁ…俺にもよくわからないな」

冬威がとぼける。


「ふふっそうね。由起ちゃんごめんね気にしないでね。ふたりは極自然にそのままで一緒にいてくれればいいの」

「あ、はい…由起はそのつもりですけど…」

由起が怪訝な顔で言う。


「由起?」

「ん?」

「一度由起の部屋に戻って荷物を取って今日は俺の家に泊まりにおいで…」

「え? いいの?」

由起の顔がパッと明るくなる。


「今日はあの部屋に帰りたくないだろ?」

「うん…」

「由起ちゃん、冬威君の家までは私が送るわ」

柳瀬が言う。


「柳瀬さんすみません…助かります」

「いいのよ冬威君…心配しないで。由起ちゃんには『ごめんね』かな? 冬威君と二人っきりの時間を邪魔してごめんね」

「そんな! そんなことないです柳瀬さん」

すまなそうに言う柳瀬に由起が慌てる。


「ありがとう、それならよかったわ冬威君道案内してね。由起ちゃん疲れたでしょ?」

「大丈夫です」

「なにも気にしないでリラックスして…なんなら寝ちゃったって良いんだからね?」

「ありがとうございます柳瀬さん」


「あんな怖い目に合ったんだもんな…。でももう何も心配いらない」

冬威が由起の肩をグッとつか見ながら言う。

「うん…」

由起が視線で冬威に答える。


由起の家に寄り荷物を持った三人は、館山道を南へ南へと進んだ。








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