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なに? 冬威? 何を見たらいいの?

由起の部屋で冬威が明かすクライシス?

「って由起ちゃん? 笑ってばっかりいられないよ?」

冬威の顔つきが急に変わる。

「なーに冬威急に真面目な顔しちゃって…」

由起が茶化すように言う。


「まずは…あそこ見て」

そう言うと冬威はベッドの下を指さす。

「なに? エッチな本なんて由起の部屋にはないよ?」

そう言いながらベッドの下を見る。


「なに? 冬威? 何を見たらいいの?」

「ベッドの下にあるコンセントのところにあるたこ足コンセント」


「あれ? あのコンセントがどうかした?」

「由起ちゃんあんなところにたこ足コンセントつけて何に使うの?」


「由起はあんなところにコンセントつけてないよ…。そう言えば…ベッドを置いた時にもともとあった…」

由起が怪訝な顔をして言う。


「由起ちゃんあれ取ってみても良い?」

「いいけど…あんなところにあっても使わないし」


「じゃ取るね」

そう言うと冬威はベッドの足元の方に移動して手を伸ばしてたこ足コンセントを取る。


「冬威? それがどうしたの?」

「由起ちゃんこれ分解すれば答えがわかるよ」

そう言うと冬威はポケットから鍵の様なものを取り出しコンセントをこじ開ける。


「これ見て由起ちゃん」

冬威が分解したコンセントを由起に見せる。

「なあにこれ?」

由起はポカンとして冬威に尋ねる。


「由起ちゃんこの基盤わかる? これって盗聴器だよ?」

「え? 嘘でしょ?」

呆然とする由起。


「盗聴器で間違いないよ。普通のコンセントにこんな基盤は組まれてない。このタイプはコンセントから電源を供給しながら盗聴電波を流してるってテレビで言ってた。たぶんそんなに遠くまで飛ばないと思うけど…」

「冬威どうしよう…怖いよ」

怯える由起。


「由起ちゃんたぶんこの部屋にまえに住んでいた人が仕掛けたか、もしくは前に住んでいた人の関係者が仕掛けたんだと思うけど…。この部屋って前に住んでたの女の子?」

「この学生マンションは女性専用だから…」

由起が怯えながら小声で言う。


「そっか、じゃあちょっと安心した」

「どうして安心なの?」


「この盗聴器はきっと前に住んでいた女の子の彼氏か親? もしくは…その子が好きでストーカーチックなことしてた奴…稀には女の友達?」

「そう…なの?」


「その可能性が高いってこと。この部屋に住んでいた前の住人が男だったらもっと警戒しなけりゃいけないって思ったけど女性専用ならまずその線だと思う。男だったらさ、この部屋盗聴して今の住民が女の子ってわかったらちょっとやばそうだったけど…。でも念のため警戒しようね」

「どうして…?」

引きつった顔をする由起。


「万が一この部屋に住んでいた前の女の子をストーカーしていたような奴がまだ残ってる盗聴電波を傍受していて由起ちゃんに興味を持ってたりしたら厄介だからさ…」

「冬威どうしよう…」


「ごめんね? 由起ちゃんを不安にさせるつもりはなかったんだけど可能性はゼロじゃないから警戒しようね! でも俺がついてるから大丈夫だし、もう盗聴器取っちゃったからね!」

「冬威…怖い…」

そう言うと冬威の腕にしがみつく由起。


「大丈夫だよ由起ちゃん? さっき由起ちゃん言ってたじゃん! 明日から由起を送り迎えするんだからねって!」

「冬威が送り迎えしてくれるの? いいの…?」

泣き出しそうな顔をする由起。


「ってそれはさっき由起ちゃんが俺に憑リついた時の決まり事でしょ? 約束約束! 盗聴器は後付の出来事だから」

「うん…冬威ごめんね…」


「大丈夫だよ気にしない気にしない~」

「ありがとう冬威…」


「由起ちゃんそれからさ、さっきこのマンションの周りを見たじゃん」

「うん…冬威何を見ていたの?」


「まずエントランスの横の生え込みと非常階段脇にある生え込み、あそこは不審者が隠れる格好の死角だから気を付けてね。それからここ3階だけど外から見たら隣りの部屋とベランダを区切るのはちょっとした壁だけだった。それで、由起ちゃんの部屋とちょうど反対側の部屋の脇には電柱が立ってた。そこから不審者が侵入してベランダづたいに移動することも可能だから3階だからって言って油断しないでベランダのカギはちゃんと閉めてね?」 

「…はい…」

と素直に短く返事をすると絶句する由起。


「いきなりたくさん言ってもピンとこないかな?」

「ううん大丈夫…」

さっきまでおちゃらけていた冬威を見る目とは明らかに違う目で見つめる由起。


「由起ちゃんマンションのセキュリティーの呼び出しシステムだけどさ? 電話で来客者を確認して#で自動ドア開けるっていうの?」

「うん…」


「あれも過信しないでね? 例えば風邪ひいてるから声が違うとか嘘言ったりとか、誰かに脅されて声だけ利用されるってパターンもある。だからちゃんと名前を確認してこの部屋のドアはいつもきちんと施錠して来訪者を迎える時にはドアを開ける前に必ずスコープで外を確認、それからまずドアチェーンをしたままドアを開けて来訪者以外に誰かが物陰に潜んでいないかも確認してね? そこまで? なんて言わないでちゃんと身を守ってね?」

「うん…そうする。由起そこまで考えもしなかった」


「由起ちゃん? 万が一って結構あることなんだよ。だから絶対に油断しちゃダメだよ? 特に女の子は絶対に油断しちゃダメだよ?」 

「わかったよ冬威…。でも…冬威が守ってくれるんでしょ?」

不安気な顔で冬威を見上げる由起。


「さっきも言ったじゃん? やっぱり由起ちゃんは守ってあげないとなって?」

「由起がキティちゃんのパンツ履いてるから?」

緊迫した空気を破る様に由起が言う。


「そっ! キティちゃんのパンツ履いてる様な女の子を怖い目に合わせられないからね?」

「冬威のバカっ! 由起のキティちゃんはセクシーなのっ!」

そう言いながらもその目は冬威を見つめ深い色になる。


「まだまだ気を付けることはたくさんあるけどだんだんね」

「うん…」

すっかり冬威を見る目が変わる由起。


「由起ちゃん? これはもう少し後にしようかなって思ったんだけど…」

「なに? 冬威?」


「由起ちゃん何か困ってる事あるでしょ?」

「どうしてそんなこと言うの?」


「由起ちゃんの部屋に来て思ったんだけど…やっぱり由起ちゃんってしっかりと親御さんに躾けられて育った良い子だなって…。その由起ちゃんがこんなに急いでって言うか何か不安を掻き消すように俺に急接近してきたってことにはきっと何か大きな悩み事か解決したい問題があるんじゃないかなって?」

「…」

無言で下を向く由起。


「由起ちゃん? 大丈夫だよ? 俺は由起ちゃんを守るって言ったでしょ?」

「冬威…」

ふたりを包む部屋の空気がピンと張りつめ、かわりに由起の心の緊張は徐々に解きほがされようとしていた。







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