我、蘇る蘇我にて その組織の名前は…CERN、欧州原子核研究機構よ…
謎の女柳瀬の車に乗り込む冬威。
柳瀬が口にした謎の組織。
神の息・人の息とリンクしていきます。
セラ、椿姫の世界に融合していきます。
願い事の登場人物、奈々、雅樹と先行してリンクしているセラ、椿姫、リンダの世界と、愛とかよくわからないけど、ちょっと痛いの世界を交差させていきます。
神の息・人の息での対立組織がここで今やっと成立しました。
別の物語書いてて、先行するストーリへの道が開けてきました(笑)
「冬威…君?」
千秋の横を通り過ぎる車の助手席に冬威の姿が見える。
「千秋? どうしたの」
走り去る車をいつまでも見送る千秋の顔を覗き込んでひと葉が言う。
「なんでもないです…今走り去った車に冬威君が乗っていた気がして…」
「冬威君って前に千秋が話していた同級生?」
「そうです! いつかひと葉先輩にも紹介したいなって…。でも冬威君なわけないか…」
そう言うとひと葉と共に歩き出す千秋。
昨日兄の運転で実家に帰った千秋だったが休日をひと葉と過ごすため蘇我に戻って来ていたのだ。
ふたりはひと葉の家に向かっているところであった。
「ひと葉先輩の学生マンションってエレベーター付いてるから良いですよね」
「3階まで階段だと買い物した時とかちょっときついからエレベーター付いてて助かるよ。階段使えば運動にはなるけどね…」
「スイーツ食べる前と後は階段使いますか?」
「あは、そうね! そしたら心置きなく食べられるね! じゃあ今日は非常階段使って3階まで行こうか!」
そう言いながらスイーツの入った買い物袋を目の高さまで持ってくるひと葉。
そんな様子を見て千秋が笑いひと葉も一緒に笑い出す。
一方、柳瀬の車に乗った冬威は次に柳瀬が何を言い出すのかをじっと待っていた。
「蘇我駅…」
柳瀬が国道に出る手前の標識を見て呟く。
「我、蘇る…蘇我」
信号待ちの交差点で冬威の方を見てそう言う。
「そっかレ点を付けると『我、蘇る』って読めますね…なんか面白いな」
「私もこの街で青春時代を過ごしたのよ」
「柳瀬さん? もしかして同じ学校?」
冬威が柳瀬に問いかける。
「そうよ、あなたの先輩になるのね、私は心理学部に所属していたわ。で、卒業後は大学院に残ったから学生時代のアパートにそのまま住み続けて今も住んでるってわけ。院生終わっても何となく住み続けちゃて。ここって東京へもアクセス良いからね」
「柳瀬さんは何をしている方なんですか?」
学生時代のアパートに住み続けている割にはちょっと普通では乗れないような高級車に乗っていることを暗にほのめかしながら問いかける。
「フリーライターよ、もっともそんなに売れっ子じゃないけどね。その割に高級車に乗ってるって顔してるわね? この車はパパから借りてるの」
「パパ…? ですか…」
「あ、変な意味じゃなくて本当のパパのことよ! 父は車の輸入関係の会社経営してるの」
「そうなんですね、すごい車だからビックリしました」
「そっか、逆効果だったか~。冬威君に乗ってもらうのにあんまり変な車だと怪しまれると思ったからこの車にしたんだけど…。って普段も気に入って良く乗ってる車ではあるけど」
「柳瀬さん? 俺の何を知ってるんすか?」
冬威がストレートに柳瀬にぶつける。
柳瀬は冬威の白い腕時計を指さす。
「その腕時計…」
「ああ…これ、預かりものなんです」
「知ってるわ、あなたは約束通りちゃんと身に着けてくれてるのね」
「柳瀬さんこの腕時計のこと知ってる?」
「知ってるわ…その時計をあなたに託した子のこともね」
そう言うと冬威に意味深な視線を投げかける。
「さっきの柳瀬さんの口ぶりから類推すると…その子もタイムトラベラー?」
「そうよ、遥もあなたと同じタイムトラベラー。あなたにその時計を託した時、ある組織から追われていたの。それでその時計をあなたに託して他の時空に飛んで行った」
「そんな気がしていたけど、やっぱりこの時計がなくても時空を超えられるんですね」
冬威は白い腕時計を柳瀬の方に向けながら話す。
「その時計自体はタイムトラベルとは全く無関係だわ」
「ですよね…きっとそうだと思っていました…。不思議なのは時空を超える時この腕時計が一緒に移動する事であって…」
「時計は特殊な音波を出力して脳内でアルファ波が発生しやすくする機能があるだけ。時空を超えた時に一緒に飛び越えることについては本当のこと言うと良くわかっていないみたい。もつれた量子がどうとか基本文系の私には良くわからないの」
そう言うと美しく笑う柳瀬。
「あの子遥ちゃんって言うんですね。いきなりこの時計を渡して来て『必ず取りに来るからその時にわかるようにいつも身に着けていて』って言った切、今日まで会えてないんですけど…組織に追われてるって大丈夫だったんですか?」
「大丈夫! 遥は無事よ。時計を組織に奪われても全く問題ないけどタイムトラベルにはその腕時計が必要だって思わせるために敢えて組織から時計を隠すみたいな行動を取ったみたいね」
「なるほど…その組織はタイムトラベルの方法が知りたいんですね。だとすればその組織は、タイムトラベルが物理的に行われているのではなく意識レベルで行われている現象だとまで迫り切れていないと言うことですね」
「その通りよ冬威君。タイムトラベルは量子レベルの意識転送によって実現している。彼らはまだそのことを知らない…。だから何らかの装置を懸命に探してるってわけ。でそう思わせるために意図的に腕時計を組織から隠した」
「なぜそんなことをする必要があったんですか?」
「知られたくないのね…彼らの組織には」
「なぜ?」
「危険だから…」
「なぜ?」
「ふふっなんだか小さい子供を持つお母さんの気持がわかっちゃった」
そう笑いながら言う柳瀬。
「どう言うことですか?」
怪訝な顔をする冬威。
「ごめんね、つまり彼らの組織が行おうとしていることを私たちが阻止する上でこちらのポテンシャルを知られたくないってとこかしら。敵にとって謎が多ければ多いほどこちらには有利だし、あちらが対策する上でこちらの認識に錯誤があればあるほどこちらは裏をかきやすいしね!」
「柳瀬さん? なんだか聞けば聞くほど俺には良くわからないよ。その組織って?」
「その組織の名前は…CERN、欧州原子核研究機構よ…。正確にはその組織の一部の過激、急進的な研究員達から組織されているグループと彼らを援助する企業体…そして何らかの意思を持った者? 達のことね」
「CERN…?」
冬威は聴き慣れないその組織の名前に戸惑いの顔を見せた。